目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
ナナ達はエラニ森を歩いていた。なんでもそこの奥にアリスがいるという話だ。しかし四天王。そのトレーナーというものはどれほど強いのだろうか……
「なぁダークライ」
「ムシャーナ。なんだ?」
ボール越しにムシャーナが話しかける。そろそろ本気で勝つならムシャーナの悪夢のストックも貯めたい。しかし僕からナイトメアは消失した。問題はどうやってムシャーナの悪夢のストックを増やすか……
「俺達の旅も終わりが見えてきたな」
「終わり?」
「あとジムリーダーを三人。それにキンランを倒したらポケモンリーグだ」
「うむ……」
「ポケモンリーグは全部で四戦。それを終えたら四天王。そしてチャンピオンとのバトルだ」
恐らくナナの性格からしてラルムともバトルするだろうな。つまり大きなポケモンバトルは残り十四回。それを終えたらナナはチャンピオンになってるわけか。
「そしてポケモンリーグ開催まで残りは三ヶ月もない……」
「あ……」
「チャンピオンになって、それからどうするんだろうな……」
旅の終わりか。考えたこともなかった。だけどナナのやることは決まっている。恐らくナナはチャンピオンになっても旅を続けるだろう。ナナはチャンピオンになったら次はポケモンマスターを目指すはずだ。そしてポケモンマスターへの旅はチャンピオンになる旅よりも長い。それでポケモンマスターになったら?
恐らく更に上を目指すだろう。僕たちの旅が終わることはない。ナナとの旅はまだ続く。
「ダークライ。俺は思うことがあるんだ」
「なんだ?」
「俺はナナに救われた。ナナのおかげで俺はやっと生まれてきて良かったと思える。散々な人生でナナが光になってくれた。だからナナの悲しむ顔は二度と見たくない」
「僕も同じだ」
「だから負けちゃいけないんだ。俺はナナを悲しませないためにどんなポケモンが相手だろうが勝ちたい……」
言うことは一つだ。今のムシャーナにかける言葉は一つ。
「これから二度とナナを負けさせない」
「その言葉が聞きたかったぜ。ダークライ。俺達はナナからいっぱい貰った。
そろそろ俺達が返す番だよな」
だけど気持ちだけで勝てるほど甘くない。それは痛いくらい分かってる。これからナナを負けさせないために僕達も勉強しなければならない。ナナに頼ってばかりじゃダメなんだ。今まではナナならどうにかしてくれると思っていた。でも、それじゃあダメだ。僕達でどうにかするんだ。キンランさんも言っていたように自分で考えて動く。それをもっと確かなものへと昇華するんだ……
「くだらない。ナナはトレーナーとして最悪よ。たった一度の敗北で泣きわめく。そんなトレーナーになにが出来るの?」
会話にツタージャも入り、厳しい言葉を投げる。ツタージャの言うことも間違っていない。だから否定してはいけないな。
「私はあんな小娘の指示は聞かない。自分の力だけで……」
「それでメアのメロエッタに手も足も出なかったのはどこのどいつじゃ?」
「うるさいわね! 相手が悪かったのよ! そもそも見えない相手と戦うなんて……」
毒を吐くようにドラミドロが話に入ってくる。まさかナナのフォローをするなんて意外だな。
「たしかにナナが未熟なのは事実。だけどそれは心意気の話。あの娘の指示は的確で文句の言いようはない」
「あの程度の指示を出せるトレーナーなんて……」
「そうはいない。ナナの才能はトレーナーの中でも大きく飛びぬけたものだ。少なくとも妾はそう思う」
「……私は認めないんだから」
「人間性にトレーナーとしての器などは認めておらぬ。しかしバトルの腕だけは妾でも認めるしかないくらい確かだ。それに妾達はナナのポケモン。それなら指示に従うのが道理。文句があるならボールを破壊して逃げればいい」
「……分かったわよ。でも次にナナがポケモンバトルで負けたら私は絶対に信じない」
そんな時だった。ザァァァァァと急に土砂降りの大雨が降る。ゲリラ豪雨というやつだろうだろう。ナナ達は走って雨宿りできる場所を探す。とりあえずツタージャの問題も少しは解決してくれただろう。ナナ達が走ってる間に僕は話に入ってこない一匹のポケモンに話しかける。彼は一体どう思ってるのだろうか……
「スピアー……お前はナナについてどうなんだ?」
「拙者はナナに従う。ナナが倒せと言われたら倒す。それだけだ。ただ拙者も実力が足りないとは思い始めた」
「うむ……」
「だから拙者は『視覚に頼らず敵の位置を見つける』ことを出来るようにすべきだと思った。メロエッタやラティアスといった透明化する相手とも戦えるように……そして拙者はなりたい。ナナが拙者を出せばどんなポケモンだろうが絶対に倒してくれると思ってくれるくらい強いポケモンに……」
今回の四天王。恐らくナナよりも僕達の方が得る物が多そうだな。四天王の使うポケモンはどんなポケモンなのだろうか。どうして強いのか。それを知りたい。四天王クラスなら強いのがトレーナーだけなんてことはありえない。恐らくポケモンもそれ相応に強いはずだ。
「ノエル! あそこの洋館で雨宿りしましょう!」
「エラニ森に洋館なんかあったか? そういうときの洋館はゴーストタイプの罠だって聞いたことがあるぞ!」
「でも、この大雨の中にいるのも危険よ! それにポケモンもいるし大丈夫よ!」
「そうだな!」
「失礼します!」
そうしてナナ達は謎の洋館に入っていく。明らかにヤバい場所に飛び込んだな。ただナナ達もそれを理解した上で入ってくれたのが救いか。
「ふぅ……キャッ!」
洋館に入ると同時にシャンデリアが墜ちてくる。それにナナが可愛らしく叫ぶ。ノエルは呆れ気味にシャンデラを出して辺りを照らす……
「これは明らかにゴーストタイプのポケモンの巣だろ……」
「そうね。まぁいきなりで驚いたけど問題はないわ」
「ちなみにドアは開かない。これは……」
「そういう時はポケモンの特定をしましょうか」
「ゴース……ヒトモシ……カゲボウズにヨマワル……」
「最悪な場合はヨノワールにゲンガー、そしてミミッキュ……」
「ミミッキュだけは勘弁してくれよ」
ミミッキュ。あの可愛らしいポケモンってそんなヤバいのか?
「とりあえず出てきなさい。ダークライ」
「ウム……」
「とりあえず周辺の警戒をお願い。もしもポケモンが見えたら迷わずダークホールで眠らせない。特性で眠らない場合はこっちで考えるわ」
「ちなみにロトムだったら場合によっては俺はゲットする」
「それなら後で電化製品をたくさん買わないとね」
なんて呑気な会話。この状況ならもう少し怯えても良いと思うんですが……
「ダークライ。怖いのは未知だからよ。知識さえあれば怖くもなんともない」
ナナが見透かしたように言う。まぁたしかにそうだ。ナナ達はこれから起こる怪奇現象を全て説明できてしまう類の人間だもんな……
「ただオーベムがいたら最悪だな」
「オーベムがいたらSAN値チェックは免れないわね」
なんで平然とナナはSAN値とか言うのだろうか。ニャースのニャル様やムシャーナの悪夢の具現化とか明らかにクトゥルフの要素なのだが。この世界にクトゥルフ神話あるのか? それともクトゥルフ系の存在がポケモンとしていたりするのか?
「やっぱり警戒するのはゴーストタイプよりエスパータイプだよな。うん」
「どんなポケモンだろうが怖いものは怖いのよ。少しでも扱いを間違えれば簡単に人の命を奪うくらいの力はあるのだから」
「それはそうだが……」
「とりあえずカレーでも作ろうかしら。食堂はどこだと思う? ノエル」
「右の扉だと思う。違ったら別の部屋に行こう」
危機感というものがまったくない。それから何度も皿が飛んできたり、女の子がすすり泣く声が聞こえるが、二人は振り向きもせずにスルーする。そして適当に歩いて食堂を見つけるとナナは適当に鍋を出した。そしてマッチで火をつける。
「うん。良い感じだ」
「少し屋敷が燃えないか心配ね。もしもなにかあったらポケモンで消化しましょう。とりあえず具材はヤシのミルクでモモンのみを5つ……」
「俺はオボンのみを5つ出せるぞ」
「ありがとう。それを混ぜましょう」
そして鼻歌交じりに二人は料理していく。最初に食材を切って、それからルーを入れてベースを作り、そこに先程の『ヤシのミルク』ときのみを入れていく。
「それから適当に仰ぎます」
「よし!」
いや、良しじゃねぇよ。絶対に屋敷が焼けるぞ。損害賠償とかなったらどうするんだよ。まぁナナは某女社長からブラックカードを貰っていたが……
「そしてまた混ぜる」
「こうか?」
「少し早いわね……まぁいいわ。最後に真心を込めて『あまくちココナッツカレー』の完成ね!」
お、美味しそうなカレーが出来た。ナナが上手く皿に盛りつけて周りに振る舞う。そして気が付くとゴースやヨマワルにヒトモシといったポケモンが姿を見せる。ナナもそれらに気にすることなくカレーを振る舞っていく。
「かなり甘口だがミルク由来だからしつこくないな」
「そうね。次は『やさいパック』にクラボのみでも入れて辛口にしようかしら……」
そんな時だった。体に寒気が走った。それと同時に明らかに異質な空気が辺りに充満する。これは間違いなく別格のポケモンが近くにいるな。それこそラティ兄妹やカプ・コケコに匹敵するなにか。
「ダークライ。どうしたの?」
「イヤ……」
もっと言うなら神に等しいなにかだな。なるべくここから早く出た方がいい。どうも嫌な予感がする。ここは明らかに普通ではない。僕はそれをナナに目で訴える。
「ダークライもカレー食べたいの?」
違う! そうではない! なんでこういう時に限って伝わら……
「冗談よ。ここにヤバいポケモンがいるって話でしょ。私もノエルも気付いてるわよ。この感じは間違いなく伝説のポケモンね」
気付いていたのか……それでこの対応か。どれだけナナは肝が据わってるのだろうか。それとも明るく振る舞ってるのは怖さを誤魔化すためか……
その時だった。ナナ達の足元に大きな影が現れた。さすがにナナもそれには即座に反応して戦闘態勢をとる。
「ノエル! きたわよ!」
「こりゃ想像以上! 明らかに別格だ! 勝つとかそういう次元じゃない! ポケモンに収まる力じゃない! 逃げるぞ!」
「そうね!」
ナナとノエルはすぐに走る。それと同時に影に包まれた強大なナニカが出てくる。ノエルの言った通り、格が違う。それが肌で分かる。間違いなく勝てる相手ではない。
「ダークライ! あくのはどうで時間を稼いで!」
僕はナナに言われた通りにあくのはどうを撃つ。しかし陰には当たることなく貫通して壁を破壊する。技が一切聞いていないだと。それにあのビジュアル……まさか!
いや、そんなはずはない!
――こんなところに『ギラティナ』なんて規格外がいるはずがない!
恐らくギラティナに似たなにか。別のポケモンだろう。そうであってくれ……
「……すり抜けた?」
「これは明らかに常識を逸脱している! 戦おうとすることが間違いだ!」
もしもギラティナだとしたらノエルの言う通りかもしれない。僕達でどうこう出来る相手ではない。しかし逃げられるとも思えない……
そもそもギラティナの狙いはなんだ?
まずギラティナというポケモンは複数体いるようなものなのか。恐らく否だ。そもそも見つかっていない可能性すらある。だから博識のナナ達もギラティナというポケモンだと分からない。しかし何故デトワール地方に存在している?
本来ならシンオウ地方にいるポケモンだろう……つまりこいつはギラティナを装った別の生き物。それとも幻惑の類のもので実在はしていない?
「これは本物よ! 幻惑でもなんでもない! 実態もないし名前も分からないんだけど、こいつは生き物として確かに存在している!」
ナナが叫ぶと同時に走る。そして食堂を後にしようとする。ノエルもそれに続いていく。逃げられないとしても逃げるしかない。しかし影のポケモンの方が速い。影となって瞬く間に移動してナナ達の前に立ちふさがる。
「グソクムシャ! であいがしら!」
「グソクッ(まかせろ)」
そしてノエルがグソクムシャを出して一撃を叩き込もうとする。しかし影のポケモンの体に当たることはない。その技はすり抜けて影には一切ダメージを与えられない。そして影はそのままナナ達を飲み込んだ。それと同時に僕達は意識を奪われた……
それから数時間後。目を覚ますと群青色の空が広がっている。そして不気味なピンク色をした地面。それが物理法則を無視してあちこちに散らばっている。近くにはナナ達が気を失っていて倒れている。そして真上を赤と黒の腹をした大きな龍のような姿をしたポケモンが通りすぎていく。その龍の顔は金色の甲冑を被ったようで、体には影で出来た細い腕が六本ある。あれは間違いなくギラティナだな……
どうやら僕達は本物のギラティナと遭遇してしまったらしい。
The補足
最近は更新出来ておらず、ネタ切れでエタるんじゃないかと不安な方が多いと思いますので、この場を借りて少しこの作品の終わりについて話します。ナナがジムリーダーを8人倒してポケモンリーグに出場して、四天王を倒してチャンピオンに勝ったら終わる予定です。道筋は既に完成してるので時間が無いだけでネタが切れることはないです。
またムシャーナも言ってた通り、あとは『ジムリーダー残り4人』に『ゴォー団のボスのラルム』と『ポケモンリーグ(全四回戦)』に『四天王』と『チャンピオン』を倒すだけなので終わりは見えてきています。現在は大体半分くらいまで来ました。まだまだナナの旅は続きますので応援していただけると幸いです。