目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
ナナ達が目を覚ます。最初は死後の世界なのかと動揺していたが、今では現実だと受け入れて、ここから脱出する術を考えていた。二人は空中に浮かぶ足場を移動しながら出口というものを探していた。
「重力の方向も違う……上ってるはずが下ってる滝……そしてポケモンが一切いない」
「恐らく異世界……そして影に飲み込まれてきたという経緯とその他の観点から考察するに世界の裏側である可能性が高い」
「また例の影は表世界とこちらの世界を行き来できる生命体。つまり例の生物を見つけて説得するのが戻る道……」
ナナとノエルは怖いくらい冷静で状況証拠のみでここを『やぶれたせかい』だと言い当てていた。それもギラティナの存在を知らず。やはりナナ達は只者ではないとすぐに分かる。
「ウルトラホールの世界とも考えたが、それならウルトラビーストと呼ばれるポケモンが多く存在している。さすがに一体で、こちらの世界と行き来出来る存在というのは不自然だわ」
「ナナ。もしかしたら、あの生物は新手のウルトラビーストじゃないか?」
「そうね……技が効かないのも思い返せば『ゴーストタイプ特有のすり抜ける体質』を使っていた可能性がある。あの質量なら数回使った程度じゃ空腹にはならないはずよ」
「つまりタイプはゴースト……そして龍に近い見た目と威圧感。恐らくドラゴンタイプも持ってるだろうな」
「戦うならまずは相手を空腹状態まで追い込んですり抜けを不可能にする。そのタイミングで私のダークライでZワザ……」
「そして問題はどうやって空腹状態まで追い込むか……」
二人は神にも等しい圧倒的な力を見せつけられても諦めずに倒す術を模索していた。そして模索して作戦は現実的なものになっていく。
「追い込んだとしても攻撃力が不安だわ」
「それなら俺のレジアイスにあやしいかぜを撃ってくれ」
「そうね……あやしいかぜで身体能力を上げた後のZワザなら、あの別次元のポケモンと言えど効く可能性は充分にある」
「あとはパチリスの『うそなき』で相手の気を緩めると同時に『てだすけ』でダークライの支援に徹する。そして奴の攻撃もパチリスの『このゆびとまれ』で引き付ける。彼には少し前仕事が多いが、仕方ない」
一通り話すとナナはその場でしゃがんで体を休める。それと同時にボールを投げてスピアーを出す。スピアーはナナの方をきょとんとしたように見る。
「スピアー。ちょっと辛い思いをさせることになるわ」
「ピアッ……ピアッ!(それがナナのためなら問題ねぇ!)」
ナナはスピアーの首にネックレスをかける。そこにはスピアナイトが嵌め込まれている。いつの間にこんなものを……
「あのポケモンと戦う。その時にあなたのメガシンカは必要不可欠。それにメガシンカしても恐らく勝てない。今回の相手はそれほどまでに別次元よ……だから負けたとしても自分を責めないで」
「ピアッ?(なら拙者の仕事は?)」
「スピアー。あなたに頼むはダークライが万全のコンディションになるまでの時間稼ぎ。今回は捨て駒のように扱うわ。本当にごめんなさい。でも、これ以外に勝つ術が思い浮かばないの」
「ピアッ(そういうことなら了解だ)」
ナナは口には出さないがスピアーを信用してるから囮なんて指示を出せるのだろうな。そしてナナは鞄から漁って蜂蜜が入ってる瓶を出した。
「ノエル。そろそろ例のポケモンを呼び出すけど地形の把握は大丈夫?」
「問題ない」
まさか今までの移動は出口を探していたわけではない?
あのポケモンと戦うための地形の把握をしていただけだったのか。ナナはンノエルの返事を聞くと蜂蜜の瓶を砕いた。それと同時に甘い匂いが辺りに広がる。まさか蜂蜜は『あまいみつ』か! それでポケモンをおびき寄せる気か!
蜜の匂いは瞬く間に広がり、下の方から巨体が現れる。間違いなくギラティナだ。
「お願い! ツタージャ!」
「タジャ!(あれと戦うというの!)」
「いくぞっ! シャンデラ!」
ナナ達は戦いに巻き込まれないように距離を取る。そしてギラティナは爪で辺りを引っ掻いた。それにより突風が巻き起こる。しかし二体とも瞬時に反応して一瞬で回避。
「ツタージャ! メロメロ!」
ツタージャはギラティナを魅了する。しかしギラティナは無関心だ。だけどナナは動揺することはない。まるで情報を得るための手だな。
「あの感じだと性別は無しよ!」
「了解! シャンデラ! トリック!」
それと同時にギラティナが火傷する。ギラティナの体には火炎玉が持たされていた。それによって火傷を負ったのか!
「すり抜けの利用なら変化技は防げないよな? それじゃあトリックルーム!」
「ツタージャはトリックルームを利用してつるのムチで叩きなさい!」
周りが半透明の箱で覆われる。それでツタージャが一気に加速。ツタージャは速いポケモンだがギラティナに比べたら遅い。トリックルームをすればギラティナより早く動けるのだ。連続的にギラティナをつるのムチで叩く。しかし技は先程と同じように体をすり抜ける。
「シャンデラはシャドーボールで援護!」
「攻撃が来るわ! 戻りなさい! ツタージャ!」
ナナがツタージャをボールに戻す。それと同時にギラティナの影で出来た腕が無造作に暴れ回り、辺り一面を破壊する。それにシャンデラは巻き込まれて戦闘不能。トリックルームも破壊される。もしもナナがツタージャを戻すのが一瞬でも遅れていたら……
「頼むわよ! ドラミドロ! ムシャーナ!」
「お前に任せるぞ!ガブリアス!」
ノエルが出したポケモンはガブリアスだ。いつの間にそんなポケモンを持っていたのか。そしてガブリアスはボールから出ると同時にマッハで動いてギラティナの頬を叩いた。それによりギラティナに初めて攻撃が当たり、少し吹き飛ばされる。
「よくやった!」
「ガブッ(俺様だぜ? そのくらい容易い)」
なんて速さだ。完全にギラティナが反応出来ていなかった。そして同時にドラミドロとガブリアスの位置が入れ替える。そしてドラミドロが紫色の光線で間髪入れずに追撃を決めていく。攻撃を受けて怯んでいたギラティナは防ぐことが出来ずにダメージを受ける。
「トリックでポケモンとポケモンの場所を入れ替える。そんなの基本でしょ?」
「ムシャー(だな!)」
「いや、かなり変態的な使い方だぞ。理屈は分かるが普通は出来ない……どんだけこのムシャーナは賢いんだよ……」
「…………シャ」
しかしギラティナは何事もなかったかのように起き上がり、再び影で出来た腕で辺りを振り払う。しかも腕は伸縮してまるで嵐のように襲いかかる。それにガブリアスは辛うじて耐えるが、ドラミドロは吹き飛ばされて一撃でやられる。ナナは軽くお礼を言うとドラミドロをボールに戻した。そして起き上がったガブリアスノエルは命じる。
「げきりんだ!」
「ガブッ!(おうっ!)」
ガブリアスが連続的にギラティナを殴っていく。途中まで技は当たらなかった。しかし途中でギラティナのすり抜けが解除。それによりガブリアスの攻撃が何度か当たるようになる。ギラティナは殴られると同時に眉をひそめる。またしばらくして鬱々しくなったのかギラティナは爪でガブリアスに攻撃しようとした。しかしガブリアスは力尽きてバタッと倒れる。そしてノエルもガブリアスは限界だと判断してボールに戻す。
「技でもない攻撃……それに火傷を入れてる。これでこの威力……桁違い。明らかに人が相手出来るポケモンじゃないわ」
「でも勝つんだろ?」
「無理よ。あれは明らかに人が勝てる相手じゃない」
「え?」
「だけど元の世界に帰る入り口くらいは作ってもらうわ。幸いにも空腹まで追い込めたみたいだしね!」
「そうこなくっちゃ!」
「悪夢姫の異名を見せてあげる。ムシャーナ! 招いてあげなさい! 悪夢の世界に!」
今後は色が一つも無い世界だ。白一色の世界。それによりギラティナは大きな動揺を見せる。なにが起こったのか理解できてない要素だ。
「あなたは地球の裏側に生きている。それで自分は世界のことは全て知った気になってる」
「……まさか!」
「未知より怖いものは無いでしょ? 知らない世界に拉致された私達と同じ恐怖を味わいなさい」
ナナがボールを投げる。出てきたのはスピアーだ。そしてスピアーが光に包まれて姿を変えていく。これはメガシンカ!
「そして未知の世界に来たら自分の知る世界に戻ろうとするわよね?」
ナナの解説と同時に空間が歪む。そこは先程まで僕達がいた場所だ。ここに飛び込めば恐らく元の世界に戻れる。しかしギラティナが先に出たら出口は塞がれるだろう。だからこそギラティナを押さえつけて先に外に出る必要がある……
「いけっ! パチリス! うそなき!」
「スピアー メガホーン!」
ナナ達は指示を出すと同時に出口に向かって走り始めた。しかし途中で幅跳びをしたりと少し変則的な動きだ。普通に真っ直ぐ走れば……
「ダークライ。これはムシャーナの幻影よ。元あった裏世界に投影してるだけ。だから地形は一切変わってない!」
「ああ! そのために俺達は歩いて地形の把握をしていたんだよ!」
そういうことか! なんて頭の回転の速さ。しかも互いにそのことは一切口に出していない。それなのに伝わってるのかよ。まるで互いの考えてることが分かってるみたいだ。
「スピアーのメガシンカは成功。特に暴走もしてない」
「だけど時間はない。恐らくスピアーを倒してここまですぐに来るぞ」
「そのためのダークライよ!」
「レジアイス! 頼んだ!」
「レ・ジジジジジジジジジジ」
「ダークライ!あやしいかぜ!」
僕は心の中で謝りながら、あやしいかぜを何度もレジアイスに叩き込む。しかしレジアイスはものともしない。なんて硬さだろう。それをしている最中にスピアーが戦闘不能になって吹き飛ばされる。ナナはすぐにスピアーをボールに戻す。あやしいかぜを何度か叩き込んで身体能力もある程度上がった。今ならいける!
その時だった。ギラティナがこちらを攻撃しようとしてきた。こちらに接近して攻撃をする数秒前。そんな時だった。ギラティナはパチリスの方を見て。こちらには興味を無くしたかのようにパチリスの方に向かった。
「ナイス! このゆびとまれ!」
そしてパチリスに爪が襲いかかる。だがパチリスは体を丸くして回避。そのままころがるようにして僕の足元まで来る。
「パチッ(俺の仕事は終えたぜ。あとは任せた)」
それと同時に体から更に力が湧いてくる。今ならかつてないくらいの大技が出せる!
「俺達も援護するぞ! グソクムシャ! ぜったいほしょくかいてんざん!」
「私達の最高のゼンリョクを人理の外側に教えてあげる! ブラックホールイクリプス!」
もっと体から一気に力が湧いてくる。それを一点に集めた大きな力でギラティナを吹き飛ばす。これが今の僕とナナで出せる最高の一撃でゼンリョクだ。それにより数十メートル吹き飛ばす。しかしギラティナはなんともなく起き上がる。今の威力でもギラティナには大したダメージを与えられない。改めて絶対に勝てないと実感させられる。しかし、一瞬は稼げた。その一瞬が大きい。ナナ達はすぐに僕達をボールに戻す。それと同時に穴に飛び込み、外の世界に脱出をした。外に出ると森の中だった。既に雨は止んでいて、ギラティナが追ってくる気配もない。そしてナナ達はバタッと倒れ込む。完全に満身創痍だ。
「……さすがに疲れたわ」
「身体能力上昇にてだすけの抜群を突いたダークライのZワザでビクともしないとか化け物過ぎるだろ……」
「あれと戦うならどくどくが欲しいわね……」
「そう……だな」
無事にギラティナから逃れることに成功した。これで強く思い知らされた。この世界にはどう足掻いても勝てない存在がいると。あれは恐らくチャンピオンでも苦戦を強いられるだろう。災厄のようなものだ。まさか伝説のポケモンがここまで別格とは……
そんな時だった。木陰に一人の女の子がいることに食づく。そして女の子もこちらに気付くと、立ち上がってのんびりと向かってくる。女の子は不思議の国のアリスに出てくるアリスのような水色と白を基調としたエプロンドレスを着ている。しかし問題はそこではない。彼女の顔を見てナナ達は青ざめる。
少女の顔は怖いくらい白く、乾いた血に塗れて手術痕だらけだったから。一言で言うならゾンビだ。そんな見た目をしている。そして彼女の足元から一体のポケモンの頭だけがちょこんと出てくる。彼女はそのポケモンの頭を優しく撫でた。
「私のギラティナ。強かったでしょ?」
それで気付く。彼女が撫でているポケモンがギラティナの頭部だということに。まさかあのギラティナが人のポケモンだというのか! あそこまでの力を持つ存在を行使するトレーナーだと! さすがにナナ達もそれに驚きを隠せずにいた。二人が驚いてる中で少女が間髪入れずに自己紹介をする。
「初めまして! 私はアリス! デトワール地方で四天王をさせていただいてるゴーストタイプの使い手だよ! ナナとノエルはあなた達で間違いないかな?」