目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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77話 VSナナ

 ノエルとの修行が始まって一週間近くが経った。そしてナナの視力が完治するのはアリスの素人診断で最低でも半年だと判明した。ナナは当分の間は眼帯生活だろう。そして修行をしている間にナナはさらに力を伸ばしていた。

 

「……トレース。ツタージャ」

 

 トレースを人間だけではなくポケモンにも出来るようにするという離れ業。ある程度の思考と感情まで分かるようになったみたいだが、それ以上は分からないらしい。なんでも 人間相手なら、そこから同一人物のように振る舞うことが出来ると言っていた。

 

「タジャ?(どう?)」

「そろそろ進化の頃合いね。あと数回バトルをしたらジャノビーになるかしら」

「タジャ!(ほんと!)」

「ええ。ただジャノビーになったら体格の変化で思うように動かせないだろうから注意しなさい」

 

 ナナの人間離れが止まらない。もう完全にポケモンと会話している。前から似たようなことはしていたが、練度に磨きがかかっている。まじでポケモンの喋っていることが分かるんじゃないかというレベルだ。

 

「ダークライ。私のことはいいから修行に集中しなさい」

「ナ!」

「あと会話は出来ない。近くにいるポケモンの思考が手に取るように分かるようになっただけよ」

 

 いや、もっと怖いわ! つまり声に出さずとも思っていることが分かるということだろ。もはやテレパシーの領域だ……

 

「テレパシーね。分かるのは私の手持ちのポケモンだけ。そこまで万能じゃない」

 

 それでも充分におかしいのだが。まぁ気にしたら負けだろう。

 

「そういえばダークライ。新しい技を覚えたみたいだけど見せてもらってもいいかしら?」

 

 僕はナナに言われると同時にステップを踏む。それにより僕の姿は二体にある。そしてステップを重ねて四体。次は十六体と増やしていく。厳しいノエルとの修行で身につけた技だ。

 

「なるほど。かげぶんしんを覚えたのね……だけど今の練度じゃ……」

 

 ナナが近くにある小石を軽く投げて僕の分身に当てる。すると分身は跡形もなく消える。この分身は衝撃に弱いのだ。

 

「このように衝撃にあまりに弱い。『なみのり』や『ふんえん』をされたら終わりよ。もう少し強度を上げなさい」

 

 まぁそれが難しいのだが……

 

「それと次のジム戦だけどダークライに任せるわ。どう考えてもキンランさん以外のジムリーダーくらい一匹で勝てるようにならないと四天王には敵わない。これからのジム戦は強敵との戦いじゃなくて普段通りの野良トレーナーとの戦い程度に考えていくわ」

 

 おう……なんてキツい発言。しかし可能な気がする。それに今は出来ないがきずなへんげもある。それを使えば……

 

「それと正式にミミッキュを手持ちに加えることになったからよろしくね」

 

 うむ。これでナナの手持ちは六体か。『ダークライ』『ムシャーナ』『スピアー』『ツタージャ』『ドラミドロ』『ミミッキュ』というわけか。恐らくこのメンバーでポケモンリーグに挑むことになるのだろうな。もっともツタージャはジャローダに進化する可能性が高いが。

 

「ナナ。目の調子はどうだ?」

 

 そんな会話をしているとノエルが駆け寄ってくる、ナナはそれに微笑みで返事をする。

 

「笑うだけじゃわからねぇよ……」

「もう痛みは無いわ。まだ見えないけど左目が使えるから大丈夫よ」

「そうか……」

「心配しなくてもいいのよ。眼帯も可愛くて気に入ってるのだから」

「眼帯をしてるナナも可愛いよ」

「それはそうとダークライ達はどう?」

「全体的に伸びてるぞ。パワー系アイテムを使った集中訓練で基礎能力を向上。バトルはさせていない。恐らく経験は足りてるからな」

「ポッ拳は?」

「前よりも身についている。だけど伸ばそうと思えば、まだ伸ばせるという感じだ」

「なるほど。それじゃあダークライ。少しポケモンバトルでもしましょうか。おいでツタージャ」

 

 は? いや、待て。

 僕にトレーナーはいない。ナナと勝負で誰が指示を出すんだよ。

 

「ポッ拳を身につけたならトレーナーがいなくても戦えるはずよ。自分で考えて動きなさい。それじゃあ行くわよ! ツタージャ!」

「タジャ(うん!)」

 

 ツタージャが有無を言わせずに突っ込んでくる。衝突に始まるポケモンバトル。それに今はノエルと修行中なのだが!

 

「ゼロ距離でリーフストーム!」

 

 ツタージャが無言で草の嵐を放つ。僕は瞬時に後ろに跳ねて回避。しかしツタージャは既に僕の背後に回っていた。まさかリーフストームはダミー! リーフストームを打つと同時に走り始めていたのか! そしてリーフストームに気を取られてる間に……

 

「そのままアイアンテール!」

 

 だけど遅い。僕は体を捻ってツタージャの尻尾を使った攻撃を回避。そのままノエルに教わった技を使う。まず攻撃をした時には隙が生まれる。そしてダークライなら触れただけで相手を倒すことも可能だ。隙が出来たら触れる。それだけでいい。無駄に大きく動く必要なんかない。僕はそのままツタージャの首を掴む。

 

「ツタージャ!」

 

 そして僕の力を流し込むイメージで強くツタージャの首を握る。それと同時にツタージャは深い眠りにつく。その気になればダークライは触れただけで相手を眠らせれられる。それをノエルに教わった。これで勝負は……

 

「トレース。トケイソウ」

 

 ナナがボソッと呟く。それによりナナの雰囲気が一気に変わる。そしてナナは冷たい声で言う。

 

「起きなさい。ツタージャ」

 

 その声でツタージャは瞬く間に目覚める。トケイソウは僕達が挑んだ二人目のジムリーダー。彼は脅すような感じで声一つでポケモンの状態異常を回復出来るという芸当を身につけていた。ナナはそれを模倣したのか。しかし練度が足りていない。この程度の小技で目覚める眠り。もっと深い眠りに誘えるようにならねば。声も届かないくらい深い眠りに誘うんだ。

 

「そのままリーフストームで押し切りなさい」

 

 再び草の嵐が襲う。これは罠だ。僕は恐れることなく真っ直ぐ特攻する。草の葉が僕の身を刻む。しかし嵐の先にはツタージャがいるはずだ! そこを突けば……

 

「トレース。ダークライ。あなたの考えは全てお見通し」

 

 嵐が終わった頃にはツタージャはいなかった。それと同時に頭に鈍器で殴られたような痛みが走る。そうかツタージャは上に飛んだんだ。そして上から回転しながら勢いをつけてアイアンテールをした。そういうことか……だけど、そのくらいで倒せるとは随分と甘く見たものだな! 僕は痛みに怯むことなくツタージャの尻尾を掴んで地面に叩きつける。そして間髪入れずに首を絞めて、れいとうビームを撃って地面に固定する。

 

「……タジャ?(これで勝ったつもり?)」

「オ前に……ナニが出来ル……」

「ダークライ。随分と詰めが甘いわよ。ツタージャ。めざめるパワー」

 

 ナナが初めて使う技。それによってツタージャが体から熱を発する。それにより固定していた氷がジワジワと溶けていく。

 

「ツタージャのめざめるパワー。ちなみにタイプは炎よ」

 

 いつの間にそんな技を……

 

「ここで決めるわよ。トレース。キンラン」

 

 その時だった。ツタージャの動きが段違いに上がる。顔を叩かれたと思ったら体が殴られる。あまりに速い連撃。息をつく間もない。だけどチャンスだ。これは大きなチャンスだ。ナナの人格トレース。たしかに強力な技だ。だけど弱点もある。僕は一か八かの賭けであくのはどうを放つ。それは幸いにもツタージャに命中して一撃で戦闘不能に追い込む。

 

 人格トレース。それをしている間は『ナナはナナとしての思考』が出来なくなる。つまりトレースした相手の弱点がそのまま残る。キンランさんの弱点は理論的ではない行動。今のようなギャンブル的な攻撃。そうノエルが言っていた……

 

 しかしツタージャは踏ん張り。今の一撃に耐える。そして輝き始めた。これは!

 

「……進化ね。行くわよ。ジャノビー!」

「ジャノォ!(うん!)」

 

 ツタージャは少し大きくなる。それに前よりも蛇っぽさが増している。しかし進化してくるとは少し予想外だ。これは仕方ない。少し気合いを入れていこう。

 

 ――ナイトメアシフト44%。

 

 体が裂けそうになる。しかし最近は常時20%くらいで活動していたため意識は保てる。ここまでの負荷なら問題ない。今の僕は天下無敵。ギラティナには敵わない。だけど並大抵のポケモンなら確実に勝てる。そしてナナとジャノビーにも……

 

「随分と高い出力を出せるようになったのね。だけど負けないわよ」

 

 僕は右手を払う。青い闇の炎で辺りを覆う。やきつくすをポケモンではなくフィールドに放つことで場を制圧。そして炎の壁の効果はそれだけじゃない。

 

「随分と悪知恵が働くわね」

 

 ナナの視界を炎の壁で遮る。ナナの最大の長所は目。つまり視界を奪えば一気に形成はこちらが有利になる。もっとも人格トレースを使われたら話は変わるかもしれないが。

 

「……見えないから中の状況が分からない。ダークライの位置も掴めない」

 

 人格トレース。もしも完璧なら対応されるだろう。しかし推測だがナナは自身への負担を減らすために出力を下げているはずだ。そのため視界に頼るナナの戦い方が色濃く反映されている。

 

「随分と舐められたものね。私がナナがいないと戦えないと思ってないかしら??」

「ジャノビー、お前に勝ち目はない」

 

 僕はジャノビーの背後に回り、れいとうビームで首元を凍らせる。それから距離を取ってシャドーボールをグミ撃ちすることでジャノビーをじわじわと追い詰めていく。しかしジャノビーはつるのムチで的確にシャドーボールの軌道を逸らしていく。こういうときナナなら恐らく……

 

『近づいてゼロ距離であくのはどう』

 

 そう命じるだろう。ジャノビーはシャドーボールに気を取られていて、至近距離が死角になっている。つまり近づけば確実な一撃となるだろう。

 

「……え!」

「終わりだ」

 

 高速で接近してジャノビーの胸元に手を置いてあくのはどうで吹き飛ばす。それと同時にかげぶんしんで自分の数を増やす。そして吹き飛んだジャノビーをボールのように連続的に蹴っていく。蹴り飛ばして自分の分身にパス。そして飛んできたジャノビーを再び蹴り飛ばす。それをジャノビーの意識を奪うまで繰り返す。

 

「ジャノ……」

 

 ジャノビーが倒れる。それと同時に僕は炎を消す。ナナは戦闘不能になったジャノビーを静かにボールに戻す。なんとか勝てたな。

 

「ありがとう。ジャノビー」

 

 そしてナナの声で察する。これはかなり機嫌が悪い時の声だ。今の負けでイライラしてるんだろうな。しかし手を抜いてもナナは怒るだろう。この展開はどうしても避けられないか。

 

「それと見事ね。ダークライ」

「ウム……」

「視界を遮るのは賢かった。あれは完全に私のミス。両目が使えれば対応出来たのだけどね」

 

 ん? 両目を使えば対応出来た?

 改めて思うがナナってもしかしたら規格外で強いのではないか?

 

「やっぱり左目だけだと見にくいわね。両目を使わないとダメね」

 

 待て。両目を使えたら炎の壁くらいで視界が遮れないとサラリと言うな。これは本気で人間をやめてるレベルだと思うぞ。

 

「……もっとも右目を使えてもダークライに勝てるか怪しかったわね」

「ン?」

「なんでもないわ」

 

 そしてナナとのバトルも終えた。それから軽くノエルに鍛えてもらう。そして訓練を終える。その時にナナは旅の支度をしていた。どうやらやぶれたせかいから出るらしい。それにナナもアリスに軽くメガシンカの扱いについての指導も受けていたみたいだ。恐らく完全にメガシンカを使いこなせるようになったのだろう。

 

「ナナ。もう行くのか?」

「ええ。ノエルは?」

「俺はもう少しだけ残るよ。少なくとも一人でギラティナに勝てるようになるまでは」

「そう。ポケモンリーグには間に合わせなさいよ」

 

 そしてナナは次に向かって歩き出す。そんなナナの前にアリスとギラティナが立ち塞がる。ギラティナは相変わらずの覇気でこちらを威圧している。しかし敵意は無さそうだ。

 

「ナナ。ミミッキュをよろしくね。あの子は誰よりもギラティナに憧れていて、心の底からギラティナを超えたいと思ってる。そして私ではミミッキュをその高見まで連れていけなかった。だけどチャレンジャーのナナなら……」

「安心してください。ちゃんとミミッキュを貴方のギラティナよりも強くしますから」

「そう。それなら四天王としてナナを待つわ。その時はギラティナにそれよりも強いゲンガーを使って全力で倒してあげる。もっともナナがポケモンリーグに勝てる保証はないけど」

「えぇ……今までのポケモンリーグならまだしも今回はノエルがいる。きっとノエルはギラティナに勝てるくらい強くなってくる」

「それだけじゃないよ。ナナ達がやぶれたせかいにいる間にジムバッジを最速で八つ集めたトレーナーが現れてね。彼女も相当な強さ……」

「名前はなんていうのですか?」

「マリア。大人の女性で二ロロノクス社の社長さん。裏ではゴォー団との繋がりも噂されてるけど真偽は不明。そしてラティオスとラティアスを使うみたい」

 

 彼女もポケモンリーグに出るのか。目的は分からないが怖いな。彼女の実力は折り紙付きだ。強さも身に染みて知っている。基本的にポケモンリーグへの参加権に年齢制限はない。強いて言うならジムリーダーにフロンティアブレーン、四天王やチャンピオンは参加出来ないというくらいだ。そして優秀なポケモントレーナーは二十歳を超えたら大体がそれらの仕事に就くため大会に出場することはない。つまりマリアのようなケースはイレギュラーと言っても過言ではないだろう。

 

「倒した順番は?」

「詳しくは分からない。だけど一つ目にキンランを倒したのは確定みたい」

 

 ジムの規約か。ジムリーダーはバッジが0の相手には大きな縛りが与えられる。その状態ではさすがに勝てないか。

 

「一部ではキンランと互角という声も……」

「知ってます。私も戦ってボコされたことがありますから」

「あらそうなの。とりあえずポケモンリーグ頑張ってね!」

 

 そして元の世界に戻る。外に出ると夜中だった。恐らく相当な年月が経過している。また携帯の電波も繋がるようになる。ナナは最初にこの間でなにがあったのか確認作業に入っていた。

 

「……なるほど。『ポケモンマフィア等を制圧する覆面の少女』ね。恐らくメアのこと」

 

 その記事の一つにメアのことも書かれていた。そしてジムリーダーによってレジスチルとレジロックも捕獲されたらしい。そして記事の多くは覆面少女。現在の彼女はダークヒーローとして物凄い人気を放っている。そして対象は全てナナのダークライを狙おうとしていた輩のことから一部では過激な悪夢姫信者ではないかという考察もある。もっとも間違っていないが……

 

「そしてポケモンリーグ開幕まで残り一ヶ月。つまり一ヶ月で残りのジムバッジを確保しないといけないのね」

 

 少なくともポケモンリーグ開催が残り一ヶ月になるまでの時間を消化したというわけか。圧倒的に時間が足りていない。しかしやるしかないだろう。

 

「そしてお兄ちゃんがデトワール地方に帰ってきた。お兄ちゃんを軸にゴゥー団のボスであるラルムとの戦いが間もなく始まる……か」

 

 チャンピオンの帰還か。良く悪くもこれはどう影響するのだろうか。しかしまず最初にナナがやるのはジム戦だ。そして次のジムはルルタウン。相手は『はがね』タイプの使い手。もう時間もない。恐らくテレポートで移動することになるだろう。

 

「少なくとも決戦の日は近い。ポケモンリーグもゴォー団関係も。だから私達もジムを終えて力をつけましょう。ダークライ」

 

 


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