目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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78話 バトルタワー

 テレポートで着いた町はルルタウン。有名な鉱山都市であり、今日も様々な鉱石や進化の石の採掘がおこなわれている。そしてここのジムリーダーははがねタイプのポケモンを使うことで有名だ。そして相棒はメガハッサム。また最近は例のレジスチルを捕まえたらしい。そんな中でナナと僕は……

 

「相手にならないわ」

「カメックス!」

 

 この街に最近建築された施設。バトルタワーで暇を潰していた。ジム戦をしようとしたが明日にならないとジムリーダーが返ってこないのだ。そして現在は九十九連勝中。当然のように全てのポケモンを一撃で倒して。

 

「悪夢姫。表舞台に最近は出ていなかったと思えば、現れると同時に圧倒的な力を見せている」

「これはスクープね。悪夢姫は今も根強い人気のあるトレーナー。記事にすれば大反響よ」

 

 様々な野次が観客席から聞こえる。バトルタワー。そこは金銭のやり取りが発生しないで気楽にバトルを楽しめる施設であり、トレーナー達の腕試しをする場所として人気が高い。もっとも記録は良くて五連勝だとか。そして今までの最高記録は十六連勝という話だ。もっともキンランさんや四天王の誰かといった凄腕のトレーナーが使用した履歴はないが。

 そんなバトルタワーでナナが九十九連勝という圧倒的な記録を叩きだした。それに伴い辺りはナナのバトルを一目見ようと様々なトレーナーがやってきている。

 

「次のトレーナーは飛び入り参加のベテランさん。先日遂にジムバッジを八つ手に入れてポケモンリーグへの出場権を獲得した男です。続けますか?」

「ええ、でも次で百連勝とキリが良いから最後にするわ」

 

 そして厳格な雰囲気を持つ男が入場する。ナナは僕を出したまま相手を待ち構える。

 

「……うむ。そなたが悪夢姫か。しかし我はジムバッジを八ツ手に入れた身。そこらのトレーナーとはワケが違うぞ」

「なんでもいいから早くポケモンを出しなさい」

 

 男の手からボールが投げられる。現れたのはバクフーンだ。ここのバトルタワーのルールは三対三。それで先に三体を倒したら勝ちというものだ。

 

「そちらからどうぞ」

「ならば先手必勝! バクフーン! ふんか!」

 

 バクフーンは僕が予想したよりも早く動いて背中から噴火する。それによって炎玉が流星のように降り注ぐ。この速さは恐らくスカーフだろうな。まぁなんでもいいが。しかしバクフーンは速くても技が遅い。僕は右手を振って風を起こして全ての炎を風でかき消していく。

 

「な!」

「シャドーボール」

 

 僕は渾身の一撃をバクフーンに飛ばす。それをバクフーンは飛んで回避。今の技を避けるとは少しは鍛えてあるようだな。これならジムリーダーのポケモンとも渡り合えるだろう。いや、でもアザレアのヒードランには劣るか?

 まぁ少なくとも彼女のゴウカザルと同じくらいだとは思うが。うむ。

 

「……接近してくるわよ」

「効かぬならゼロ距離でお見舞いしてやれ!」

「バクッ!(おおう!)」

 

 バクフーンが瞬足でこちらに向かってくる。僕は特に迎撃をする様子を見せずに手を静かに翳す。そして少しだけ動いて優しくバクフーンの頭を撫でる。それによりバクフーンを深い眠りに誘った。そしてバクフーンに触れたまま彼の夢を貪る。ムシャーナから教わった『ゆめくい』という技だ。しかしバクフーンは随分と良い夢をみているようだ。それなら少しばかり改悪してしまおう。最悪な悪夢に。

 

「バクッ!」

「バクフーン!」

「バクフーン。戦闘不能」

 

 気が付いたらバクフーンは動ける状態ではなかった。バクフーンは直ちにボールに戻される。残り二体。どんなポケモンが出てくるだろうか。

 

「……なにをした?」

「悪夢は始まったばかり。次のポケモンをどうぞ」

 

 ナナは優雅に相手に試合の続行を強いる。相手は下唇を噛みながらボールを投げる。出てきたポケモンはカビゴンだ。

 

「トレースは終わったわ。あのカビゴンはカゴのみ持ちよ」

「な! どうして分かる!」

「今のバトルの癖や目線、それに発汗等を参考にあなたのことを分析した。その結果からあなたの場合は高確率でカビゴンのカゴのみを持たせてねむるを使うと分かった」

「なんだよ……それ……」

「昔から目は良いの。それじゃあ次は私からいくわ。ダークライ。あくのはどう」

 

 僕は右手を振るう。ただそれだけだった。その結果としてカビゴンは一撃。たった一撃で戦闘不能になった。前よりも大きく技の威力が上がっている。僕の力も相当上がったようだ。

 

「三体目は?」

「……降参します」

「し、勝者! ナナ! 悪夢姫ことナナが百連勝です!」

「ダークライ。お疲れ様」

 

 ナナは僕をボールに戻す。そして帰宅の準備をする。そんな時だった。スタッフから慌ただしい声が聞こえる。

 

「続いて次のトレーナーですが……」

「もうやらないわよ」

「な、なんとチャンピオンカナタが名乗りを上げました! どうしまします?」

「……は?」

 

 ナナが唖然とする。うん。これはやめておこう。チャンピオンには今の僕達ではどう足掻いても勝てない。さすがに相手が悪い。下手にやって自信を失うより戦わない方が……

 

「ナナ。久しぶり」

「お兄ちゃん!」

「随分と面白そうなことになってるじゃないか。噂を聞いてきてしまったよ。さて久々に兄妹水入らずのポケモンバトルでもしようじゃないか」

「……」

「それとも負けるのが怖いのか?」

 

 チャンピオンの入場。それに観客達の唾を飲む声が聞こえる。これは明らかに断れる雰囲気ではないな。カナタは既にニャースを出して戦う気でいる。

 

「ニャース。お兄ちゃんのエースポケモン」

「ちょっとしたデモンストレーションだ。ひっかく」

「お任せでニャース!」

 

 ニャースが爪で空間を引っ掻く。それと同時の空間が裂けた。なんだあれは。明らかにバグっている。普通に喋っているのも気になるが、ひっかくの威力の方が気になる。絶対に勝てる相手ではない。

 

「俺のニャースは知っての通り『ひっかく』以外の技は使えないんだぞ?」

「ひっかくだけを極めてひっかくで天を裂くことすら可能にしたのがお兄ちゃんのニャース。ひっかくでありとあらゆることを可能なポケモン。そのひっかくに耐えたポケモンは未だにいない」

 

 一つのことだけを極めたポケモンか。時に一つのことを極めた者が一番強いとはよく言ったものだ。しかし興味がある。恐らくニャースの右に出るポケモンはいない。この世界で最強なのかもしれない。そんなポケモンはどれだけ強いのか……

 

「さて、どうする?」

「お願い!」

 

* *

 

 結果だけ言おう。完敗だった。少し頬に技を掠らせること程度が限界だった。そしてナナの連勝記録は百で止まった。あれはいくらなんでも仕方ない。

 

「しかしフロンティアブレーンへのスカウトを断ったのか」

「うん。そもそもあそこはバトルフロンティア委員会の認可を受けていない非公式の施設だから……」

「まぁな。でも認可されていないのはフロンティアブレーンがいないから。つまりナナがスカウトを受けていれば委員会に認められたかもな」

「それに私がなりたいのはチャンピオン。フロンティアブレーンじゃない!」

「そうか」

 

 僕達は場所を移して喫茶店で少し会話をしていた。もっとも貸切にして人払いは済ませてあるが。それと先程からナナの声が随分と変わっている。それどころか口調も変わる。まるで媚びるかのような猫撫で声だ。もっともチャンピオンの前ではいつものことなのだが。それが兄だからなのかチャンピオンだからなのかは不明である。

 

「ところでお兄ちゃん。個性って知ってる?」

「アリスの唱える一説の論だな。自分のバトルスタイルを極限まで高めて真似の出来ない領域に到達する。そして自分特有の性質であることからアリスは個性と名付けた」

「うん。実際に個性ってあるのかなって……」

「そもそも個性という言葉は独自性を指す言葉。もっというならアイデンティティ。つまり個性の否定は人間性の否定にも繋がるだろう」

「そうなんだけど……」

「別の地方ではチート、異能力、技とか様々な言い方がされている。しかし俺としてはあれは個性という言い方がしっくりくるな」

「どうしてです?」

「チート……ずるではない。異能力……特異的なものではない。技……技術とも少し違う気がる。だから個性が一番それっぽい」

「なるほど……」

「聞きたいことはそれだけか?」

「お兄ちゃんの個性は?」

「ない。そもそも自分のここが周りと違う! なんて分かる人はいないだろう。本来は無意識下で本人の自覚すらなく発動するものなんだ」

「待って。それじゃあ私のは……」

「ん?」

 

 そこでナナはチャンピオンに全て話した。ナナのコピー能力について全てを……

 

「いや、それは個性の枠に収まらねぇよ。どちらかというと異能力だろ」

「やっぱりそうです?」

「瞬時に分析して自分に完璧に投影……やっぱりナナは天才だな」

「もっと褒めてくれてもいいんだよ?」

 

 助けて。ナナのキャラ崩壊が止まらない……

 いや、兄の前だからといってここまで変わるのか?

 

「……それじゃあ褒めたいからナナの話をもっと聞かせてくれるか?」

 

 それからナナは様々な話をした。それは長い話で二時間くらいが過ぎる。チャンピオンはそれを静かに聞いていた。

 

「そうか。キンランと会ったのか。彼女は強かっただろう」

「でもお兄ちゃん! 知り合いなら言ってくれれば良いのに!」

「聞かれなかったからな。しかし懐かしい名前だ。彼女とイッシュ地方に行ってシビシラスを捕まえた日のことは今でも鮮明に覚えてる」

「そっか……」

「しかしキンランは相当強いぞ。一緒に旅をしていた俺だから分かる」

「分かってるよ。だから勝ちたいの!」

「その試合は俺も見に行くよ。それじゃあ次は俺の話な」

「お願い!」

「まずアローラに行ってきて俺はコスモッグというポケモンについて調べた。その結果としてルナアーラもしくはソルガレオについて進化することが判明した」

「ルナアーラ……そういえばつきのふえ。シノノカップの景品だったつきのふえがルナアーラに関係があるとか……」

「コスモッグはエネルギーを使い果たすとコスモウムになる。そして祭壇でつきのふえとたいようのふえを同時に吹くと進化する」

「祭壇? どこの?」

「ああ。大昔に日輪の祭壇、月輪の祭壇で進化は確認されたそうだ。しかし別の祭壇でも成功する可能性はゼロではない。もっというなら祭壇ではなくとも……」

 

 つきのふえ。たしかボルノが手に入れて終わったな。それじゃあたいようのふえはどこにあるのだろうか?

 

「……大変! お兄ちゃん! たいようのふえだよね?」

「そうだが……」

「それはメアが持ってるの! たいようのふえはメアの家宝なの! あそこの家は大昔から音楽と根深い関係がある。いにしえのうたを知っていたり、曰くつきの楽器を集めていたり……」

「なんだって! メアは今のナナの話だとゴゥー団に協力していたよな?」

「うん」

 

 つまりたいようのふえは既にゴゥー団の手元にあるのか。そしてつきのふえは国際警察の手元にあり。またゴゥー団はコスモッグの身柄を手元に抑えている。

 

「……それなら俺に任せろ」

「お兄ちゃん、どうするの?」

「つきのふえを破壊する。取られるよりマシだろう。その件はこっちに任せろ」

 

 もったいない気はするが仕方ないか。そもそも残しておく理由がない。

 

「……お兄ちゃん。つきのふえって人が作ったものなんだよね?」

「ああ」

「それなら壊しても無駄だと思う。向こうには音楽の天才のメアがいる。メアならたいようのふえの音だけでつきのふえの音を推測して新たに作れると思う」

「どうして言い切れる?」

「メアをトレースしたから。あの子は間違いなく天才……そのくらいやるよ。人が作った楽器ならメアは作れる」

「……ルナアーラとソルガレオはウルトラホールを開き、その先にある異世界に行くことが出来る。俺もアルセ博士の実験で行ったことがあるが、ヤバい場所だ」

「そんなに?」

「アリスのギラティナはそこで捕まえた。ギラティナと同クラスのポケモンがいてもおかしくない。それにウルトラビースト。強力な上に数が多い。もしもウルトラビーストがデトワール地方に流れ込むようなことがあれば……」

「最悪だね」

 

 ウルトラビーストか。恐らくナナ達なら勝てるだろう。しかし問題は数だ。チャンピオンは数千体規模を想定している。そうなるとさすがに厳しいかもしれない。しかしゴゥー団の目的は既に果たされて事実上の解散のはずだ。そんなことには……

 

「ゴゥー団は事実上の壊滅。だけどコスモッグとボスの行方が不明のまま」

「うん」

「そしてラルムの目的は達成済み……しかしコスモッグが気掛かりだ」

「そうだね」

「俺が恐れてるのはゴゥー団というよりコスモッグが人に憎しみを持っていること。そして巧みに騙してラルムを利用して進化。そして人類を滅ぼすためにウルトラホールを開くんじゃないかと」

「それは……」

「優れたトレーナーはポケモンと会話に近いコンタクトが取れる。それでラルムが罪滅ぼしに……とか思い始めたらどうする?」

「……ないとは言い切れませんね」

「一刻も早くコスモッグの身柄を手元に収める必要がある。デトワール地方の平和のためにもな」

 

 面倒なことになったな。悪意がないからタチが悪い。コスモッグを捕まえられれば全ての問題は解決なのだが……

 

「……トレース……ラルム」

「ナナ?」

 

 ナナはそっと呟いた。そして数秒間だけ意識が飛んだようにボーとする。しばらくするとナナは意識を覚醒させて紅茶を飲み始める。

 

「間違いなくラルムはコスモッグを手伝うと思う」

「まさか人格トレースでラルムがどうするのか見たのか!」

「うん。だけどコスモッグの情報が不足してるから絶対とは言い切れない……」

 

 ナナの人格トレース。こういう使い方も出来るのか。改めて思うが少しズルの領域ではないか? もはやなんでもありだ。

 

「既に動き始めてるか。ラルムの居場所とか分かるか?」

「そこまでは分からない。ラルムがどこまでの技術を保持してるのか不明。だけど地上にはないと思う。恐らく空中か水中……それで空中なら宇宙にでも基地を置いてない限り、既に見つかってるはず。そのことから本拠地は水中……」

「水中か……」

「そういえばメアが私と会おうと言ったのはストロベリータウン。そこは海の街として有名……」

「ストロベリータウン。そこを調べるとするか」

「私もジムバッジを7つ集めたら向かう」

「分かった。それとアローラの土産だ」

 

 彼はそういうとナナに一つの巻物を手渡した。その巻物は『りゅうせいぐんの極意』と書かれていた。ナナは瞬時にこの意味を理解する。

 

「なるほど……りゅうせいぐんは秘伝の技だもんね」

「ああ。これでナナのドラミドロにりゅうせいぐんをおぼえさせてやれ」

 

 それだけ言うとチャンピオンは去っていった。ナナは巻物を広げて目を通す。そして数秒だけ見ると僕をボールから出す。

 

「ダークライ。処分しといて」

「エ?」

「これは出回らせるべきではないわ。世界が滅びる」

 

 まぁ世界が滅びるかはさておき、出回っていいならネットとかでばら撒かれるよな。それが現在もされていないというのはそういうことだ。僕は軽く炎を出して完全にやきつくす。そしてナナは店主にお礼を言って軽く出ていく。そして街で『こだわりメガネ』という変なメガネを買ってテレポート屋に頼んで広い荒野に行く。そしてドラミドロをボールに出して軽くなにかを教える。ドラミドロは頷くとナナはドラミドロに変なメガネを付けた。そして静かに一言。

 

「ドラミドロ。りゅうせいぐん」

「ドラァァァァァァアアアア!」

 

 ドラミドロが言葉にならない雄叫びをあげる。その瞬間に大量の流星が降り注ぐ。その流星は一つが地面にぶつかると小さな爆発を起こしてクレータを作る。しばらくすると砂埃でなにも見えなくなる。ドカン。ドカン。ドカンという音だけが聞こえる。数分が経って砂埃がなくなる。そこはデコボコだった。地形が大きく変動している。

 

「てきおうりょく……こだわりメガネ。その二つの効果が適応されたりゅうせいぐんはどんなポケモンでも倒す」

 

 ゴクリと生唾を飲む。とんでもない火力。恐らくナナの手持ちの中で最高レベルの火力。Zワザよりもさらに上を行く。これが今のナナの実力。そしてナナは静かに言う。

 

「これで四天王とも戦える。そして悪夢を見せるには充分ね」

 

 ナナはニッコリと笑った。その後の話だが、このことは大きく話題となった。理屈は知らないが法律的には何故か問題ない。だからナナが咎められることはなかった。しかし、その気になれば地形変動すら可能な凄腕トレーナーとして知られ、それにバトルタワーでの百人狩りも拍車をかける。そして数日後にはチャンピオンに一番近い人物と謳われるようになる。ナナはルーキーからデトワール地方で指折りのトレーナーと認知されていく。

 

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