目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「我が名はアーモンド。はがねタイプの使い手である。チャンピオンの妹であり悪夢姫として名を知らしめるトレーナーナナ。よくぞまいった」
後日。ジムリーダーの帰還と共に真っ先にジム戦に挑むことになったナナ。彼女は僕だけで勝つつもりだ。そしてジムリーダーは口を開く。
「お主の覇気。既に四天王と同等以上。我では相手にすらならぬであろう。しかしバッジを簡単に譲る気はない。ポケモントレーナーはいつだってバトルの中で成長するものだ」
これは強いな。ナナがゴクリと唾を飲む。こういうトレーナーはバトルの中で成長してくる。もしかしたらナナと同じタイプだ。強敵との戦いというのは大きな成長に繋がる。
「ゆけっ。レジスチル」
「レ・ジジジジジジジジジ」
「悪いが全力でいかせてもらう」
「レジスチル。いかなる攻撃も通さない鉄壁のポケモン。ダークライ。行きなさい」
そして二人は目線を合わせる。それと同時にバトルが始まった。指示もまったく同じタイミングだった。まるで先手必勝と言わんばかりに。
「これしかないな! レジスチル! ちょうぜつらせんれんげき!」
「漆黒の炎で溶かしてあげる! 焼かれる悪夢を見なさい。ダイナミックフルフレイム!」
アザレアさんから貰ったホノオZ。それを使う。相手ははがねタイプなら決定打になりうる。しかし相手も同じだ。相手も自分の全力であるZワザで向かい打つ。爆発的な力がぶつかりあい、世界が大きく揺れる。しかしレジスチルは耐えるだろう。そんな確信があった。
「レ・ジジ……ジジジジ……ジ」
レジスチルはボロボロになりながらも耐えていた。ZワザでZワザを相殺したか。もっとも完全には消せずに大きなダメージを受けているようだが。
「悪夢姫のZワザを受け切るためにはこれしかなかった……それでもこの威力」
「ダークライ。あくのはどう」
僕は手をかざしてレジスチルに技を放つ。手からは紫色の鎖状の光線が放たれていく。今のレジスチルでは間違いなく受け切れないだろう。
「レジスチル! ラスターカノン!」
「ダークライ。もう一度あくのはどう」
レジスチルは苦しみながらも力を振り絞って銀色のビームで打ち消す。そしてナナは打ち消す度にナナはあくのはどうで追撃を命じる。レジスチルは呻きながらも何度もラスターカノンを放って対抗していた。そしてラスターカノンを討つたびに僕との距離をじわじわと近づけながら。まさか近づけば攻撃が通ると思っているのだろうか。
「……なるほど。ダークライ。これは爆発するわよ」
「これで射程内だ! よく頑張った! だいばくはつ!」
そういうことか。ナナの指示が遅れていたら危なかった。僕は体を完全に透過モードにしてレジスチルの攻撃をやり過ごす。そしてしばらくすると戦闘不能のレジスチルがいた。
「……無傷だと?」
「私のダークライは強いのよ」
「なるほど。このポケモンはゴーストタイプの特徴である『透過』も持ち合わせているのか」
「さすがジムリーダー。見事な洞察力」
なんていうか悪役みたいだな。もっとも僕自身があくタイプだし、そういう方がしっくりとくるのだが。そしてアーモンドはレジスチルをボールに戻す。
「レジスチル。ありがとう。おかげでZワザの消費とダークライの特性を掴めた。お前に頑張りは無駄にはしない」
「……良い関係ね。だけど私には勝てない。人は悪夢には抗えない」
「勝てなくともダークライだけでも倒す! いけっ! エアームド!」
「ムドォォォォォ!(勝つ! 絶対に勝つ!)」
出てきたのはエアームドか。さてどう攻めてくるだろうか。
「エアームド。空高く飛べ!」
「空中戦がお望み? ならダークライも飛びなさい!」
空中戦か。相手の地の利で勝ってこその勝利というものだろう。僕はそのままエアームドを追撃するように飛ぶ。途中で何度かシャドーボールを放つがエアームドは全て回避する。
「恐怖を上げていくわよ。ダークライ! ナイトメアシフト46%!」
ナナからの指示が来る。それに従って一気に体にやみのエネルギーを循環させる。いつものように体が内部から裂けそうだ。だけど前よりも楽だ。体が明らかに成長して高度な負荷にも耐えられるようになっている。この調子なら瞬間的に60近くも出せるだろう。
「ならこちらも速度を上げるぞ! ボディパージ!」
それからエアームドの動きは格段に上がる。しかし僕の方が速い。エアームドが身を削って身軽になろうが僕の方が圧倒的に速い! そしてボディパージは耐久を落としてすばやさを上げる技。つまり一撃が先程よりも重く響く! ポッ拳で身につけた技を今こそ見せる時だろう。エアームドの突進を躱して、首元に回し蹴りを入れて地面に叩き落とす。これで勝負はありだろう。そう思った時だった。一気に体が苦しくなる。そして視界も揺れてくる。一体なにをした……
「今だ! エアームド! ブレイブバード!」
「ムドォォォオォォ(私の最後の足掻きを見よ!)」
そして倒したと思っていたエアームドが僕に突進してくる。あのダメージにエアームドは耐えられないはず。いったいなにが……
「なるほど。叩き落される瞬間にどくどく。そして特性がんじょうでダークライの一撃に耐えたわけですか」
「ご名答。どくが回ればどんな強力なポケモンだろうが終わりだ」
「……これは仕方ないわね。ダークライ。戻って」
ナナは僕をボールに戻す。完全にやられた。まさか状態異常で攻めてくるとは思わなかった。僕一人でジムリーダーに勝つという目標が達成出来ないで申し訳ない……
「ポケモンを戻すか……」
「それじゃあミミッキュ。お願いね」
「ゴ……フッ……フッ(久しぶりのポケモンバトル……)」
うめき声みたいな鳴き声。これがミミッキュか。アリスから預かって手持ちに加えたとは聞いていたが実物を見るのは始めてだ。しかしピカチュウの布切れというよりはギラティナの布切れだな。地球でもミミッキュはポケモンをやってなくても名前を聞くくらい有名だし、よく見かけたが……
「ミミッキュ? タイプ相性を理解してないのか?」
「ゴースト技ははがねに等倍よ。そして技は全て避ければいいのでしょう?」
「む……そういえばこのミミッキュは……」
「察しの通り四天王アリスのポケモン。少しワケありで預かっています」
「なるほど。それは強いわけだ」
さて、ミミッキュの実力。どの程度のものなのか見せてもらおうではないか。
「ミミッキュ。かげうち」
「ゴ……フッ(それは得意)」
「な、なに!」
エアームドの影からミミッキュの影が現れた。それによりエアームドは一撃で落ちて戦闘不能になる。素早い一撃。あれを避けられるかと言われた正直に言うと僕でも厳しいだろう。それに技の威力も低くはない。良くも悪くも安定しているだろう。
瞬間火力のドラミドロ、最速のスピアー、搦め手のムシャーナ、広範囲攻撃のジャノビー。ポケモン毎の役割も決まってきたな。
「なるほど。しかしこれならどうだ」
現れたのはドリュウズ。これはミミッキュとの相性は最悪だな。彼はミミッキュというポケモンの定石を分かっている。
「俺の幼馴染にミミッキュ使いのトレーナーがいてな。ミミッキュに勝つためにはどうしたらいいかガキの頃に必死に考えた。それで行きついた答え。それははがねタイプのポケモンを使うことだった」
「……?」
「つまり俺がはがねタイプを使う理由は二度とミミッキュに負けないためなんだよ!」
「ええ……なにそれ……」
これにはナナも引いている。ていうかミミッキュが嫌われ過ぎだろう。こんなに可愛いポケモンなのに。そのなにが気に食わないというのだろうか。
「ばけのかわでどんな攻撃でも無効。硬いはがねで攻めてものろいで体力を削る。挙句の果てにおにびで火力を奪う。そして隙あらばつるぎのまいでチュインチュインしてかげうち! さらにミミッキュZとかいうワケの分からない必殺技まで持っていやがる!」
「……それがミミッキュってポケモンなんだから仕方ないじゃない」
「強すぎるんだよ! このポケモンは!」
「結局のところミミッキュに勝てない自分が悪いんでしょ! 完全に八つ当たりじゃない! しかも強さだけで言うならムラッけオニゴーリの方が悪質よ!」
「ええい! ドリュウズ! アイアンヘッド!」
「ミミッキュ! 避けなさい! ドリュウズの特性はかたやぶりで下手しないでも一発アウトよ!」
ナナが髪をかきあげながら華麗に指示を飛ばす。
「……ゴフッ(わかった)」
そしてミミッキュがドリュウズの攻撃を間一髪で避ける。見てるだけでむずがゆい。僕なら避けると同時にカウンターを決めるというのに。
「ミミッキュ! つるぎのまい!」
「させるか! アイアンヘッド!」
「そのまま背後に回っておにび!」
つるぎのまいをしたミミッキュは一瞬だけ隙が生まれた。そしてドリュウズのアイアンヘッドがクリーンヒットする。しかしミミッキュは何故か背後に回って青い炎でドリュウズを炙って火傷にしていた。これは……
「みがわり。最初のアイアンヘッドの時にみがわりで避けた。あとはミミッキュは暗躍して隙が出来たから現れたわけ」
「みがわり。そんな指示は……まさか!」
「そう。髪をかきあげたのがみがわりの合図だったのよ」
「図ったな!」
「ポケモンバトルはそういうものよ。つるぎのまい」
再びミミッキュは踊りを見せて舞う。攻撃力を上げていく。まるで煽るかのような踊りだ。ナナとミミッキュの動きは息ぴったり。無駄というものがない。まるで相手の行動を手玉に取ってるような動きだ。
「火傷なんか知るか! アイアンヘッド!」
「ミミッキュ。耐えてつるぎのまい」
ミミッキュにアイアンヘッドが直撃する。しかしミミッキュはなんともないようにきのみを食べながら再び舞う。このきのみは……
「リリバのみ。効果抜群のはがねの攻撃を受けた時に技の威力を和らげる。それに加えて火傷状態。そこまでやればミミッキュでも耐えられるのよ。それじゃあかげうちといきましょうか」
「ゴフゥ(おかのした)」
そしてドリュウズの影からミミッキュの影が現れてザクッと小さな手で突き刺す。それによりドリュウズは戦闘不能になる。とても無駄が無くて綺麗な戦闘。そういえばボール越しでナナの戦闘を見るのは久しぶりだ。ミミッキュの動きもだがナナの姿も美しい。いつもの黒いロリィタ服に加えて右目の薔薇の眼帯により触れてはいけないかのような芸術性を放っている。これは熱狂的なファンも増えるわけだ。
「残り三体ね」
「……頼むぞ。ギルガルド」
「ギルッ!(おうおう!)」
出てきたポケモンはギルガルド。それと同時にナナは静かに呟いた。
「トレース。アーモンド」
ナナが手で長方形を作って、そこからアーモンドを見ている。なんでも視界を限定することで情報量を抑えて脳の負荷を最小限にするとか。
「あなたの動きは全て見切った。つるぎのまい」
「キングシールド……はっ!」
「あなたはミミッキュの攻撃力を下げようとかげうち読みのキングシールドをする。あなたの考えは全て分かるわ」
「くそっ! ギルガルド! かげうちだ!」
「ミミッキュ。かげうち」
この技はミミッキュの方が速かった。ミミッキュは瞬時にギルガルドを切り裂いて一撃で戦闘不能に持ち込む。あまりに速い決着。ナナの読みが勝負を完全に分けた。
「それならこいつに任せるしかねぇか! ゆけっ! ギギギアル!」
「ギギギ(いや無理)
「ミミッキュ。かげうち」
またしてもミミッキュが一撃で倒す。そもそもつるぎのまいを三回したミミッキュの攻撃など並大抵のポケモンでは受け切れないだろう。アーモンドはミミッキュにつるぎのまいを三回もさせた時点で負けなのだ。そして残りは……
「まだだ……俺には最高の相棒がいる! 頼むぜ! ハッサム!」
「ミミッキュ。戻りなさい。そして頼むわよ。ドラミドロ」
ナナはミミッキュを戻してドラミドロを出す。ドラミドロは近くにいるだけで足が震えそうになる覇気を放ちながらフィールドに降臨する。この様はまさしくドラゴンと呼ぶに相応しいものだった。
「負けるか。一気に決めるぜ! メガシンカだ!」
「ッサム(ああ)」
ハッサムの姿が大きく変わる。しかしナナは動揺の一つも見せない。まるで勝ちを確信してるかのように。そしてナナは静かに言う。
「新しい戦闘スタイルが確立すると実践で試したくなりますよね。ドラミドロ。りゅうせいぐん」
そこからは一瞬だった。降り注ぐ流星にハッサムは成す術もなくやられる。明らかに過剰な火力。攻撃を終えた時にはフィールドは原型を留めていなかった。明らかにドラミドロの火力が異常であると身を持って実感する。一言で言うなら戦略兵器。ナナ曰くりゅうせいぐんは一度撃てば次の威力は下がるらしい。つまりバトル中にどんなポケモンでも一度だけ一撃で倒すのがドラミドロである。
「う、うそだろ……」
「私の勝ちです。アーモンドさん。ジムバッジを貰えますか?」
そしてナナは本気のジムリーダー相手に自分のポケモンを一体もやられることなく勝ちを収めた。ナナのジムバッジはこれで六つ。残すは二つとなった。
「完敗だ。正直に言うと悪夢だった。もう二度とやりたくねぇ……」
「まぁ人に悪夢を見せるのが私ですから」
「ダークライは素早さも攻撃力も相当なもの……ミミッキュに関してはナナが怖かった。なにをしても全て読まれる。まるで自分の脳が弄り回されているみたいだ。そして最後のドラミドロ。あれはゾッとしたよ。ポケモンであそこまでの威力の技が出せるんだって」
アーモンドはナナにメテルジムバッジを渡す。ナナはそれを大事に握りしめた。
「すまないが当分の間は俺の前で姿を見せないでくれ……もうポケモンバトルってなんなのか分からなくなってきた。それに悪いが滅茶苦茶怖いんだ。今でも生きた心地がしない。体中に寒気が走ってる……バトル中も頑張って明るくしてたがレジスチルが倒れた辺りから冷や汗が止まらないんだ」
「分かりました。ポケモンバトルありがとうございました」
ナナの五つ目のジム戦。それは完璧な勝利であり、とても後味の悪い終わり方をした。
リアルの落ち着く目途が見えてきたので更新頻度を戻せそうです。
ただ一月も少し忙しいのと今までの感覚を思いだすために少し更新は遅くなります。更新頻度を戻せるときとしては具体的に言うならば二月辺りだと思います。この一ヶ月くらい週一更新になってしまってもうしわけありませんでした。また今年の残りは剣盾の色違いキョダイマックス乱数をやりたいため、これで今年は最後の更新になると思います。
それではよいお年をお迎えください。