目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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81話のあとがきにメロエッタの前世の補足PART1を追加しました


82話 UBと海の王子

 ナナに飛びかかるフェローチェ。それをメロエッタが蹴り飛ばす。メロエッタは既にステップフォルムに変化している。そして蹴り飛ばしたフェローチェに瞬く間に追撃をかける。小さな拳から放たれるパンチは真空波を生み出し、体重の軽いフェローチェの動きを縛る。そして動作の途中で蹴りを交えて的確にダメージを与えていく。そして分が悪いと判断したフェローチェは地面を蹴り、とんぼ返りでメロエッタと距離をとる。しかしメロエッタはそれを許さず、ボイスフォルムに変わり、すぐにシャドーボールで追撃へと入る。しかしフェローチェはメロエッタの技を全て叩き落す。それをメロエッタはチャンスと言わんばかりにナナを庇うようにナナの傍に立った。

 

「メロッ!(ナナは私に任せて!)」

「ウム」

 

 これでナナを気にせず戦える。しかしフェローチェの動き。あれは想像以上だ。恐らくメガスピアー以上。あの動きに対応できるとはとてもじゃないが考えにくい。

 

「ダークライ! 正面から来るわよ!」

 

 ナナの指示と同時にしゃがんで回避。フェローチェの攻撃はナナの予知無しでは回避は

不可能だ。そしてナナが一瞬でもフェローチェから目を離したら負ける。ナナもそれを分かっている。だからナナは全神経をフェローチェに集中させているはず。

 せめてナナに楽をさせられればミミッキュやジャノビーといったポケモンを出せて少しは有利になるのだが。

 

「右下よ!」

 

 後ろに下がりフェローチェの右下からの蹴りを回避。そしてナナがなにか喋ろうとするが間に合わない、フェローチェは足を振り上げ、僕の脳天に綺麗なかかと落としを入れた。それにより頭が割れるように痛い。しかしフェローチェは止まることなく連撃を仕掛けてくる。僕は瞬時に体を透過させてフェローチェの攻撃をやり過ごす。

 

「かぶりん!?」

 

 フェローチェはそれに少し動揺を見せた。あまりに速すぎる動き。連撃をされたらナナの指示も間に合わない。そんな時だった。ナナがフェローチェに背中を向けて走り出した。フェローチェは瞬時に僕からナナへと攻撃の対象を変える。しかし僕はなんとかフェローチェの動きに対応して、ナナとフェローチェの間に闇の結晶を作り、盾にする。

 そしてナナはそのまま海へと身を投げる。それにメロエッタは軽い動揺を見せる。しかしナナは落下する中で腰に手を回してボールを投げていた。

 

「信じてるわよ! スピアー!」

「スピッ(任せろ)」

 

 スピアーはナナを無視して上に飛んでいく。そして上に飛びながら光に包まれて姿を大きく変貌させ、メガシンカした姿となる。その姿はとても禍々しく、痛々しいものだった。しかしメガスピアーは苦しみに耐えて戦闘態勢をとっている。そしてメガスピアーは音を置き去りにしてフェローチェを吹き飛ばした、しかしフェローチェも同時にメガスピアーに蹴りを入れる。それにメガスピアーは少し苦しむ素振りを見せるが、瞬時に吹き飛ばしたフェローチェへの追撃へと転ずる。メガスピアーは連続的な突きで的確にフェローチェを突いてダメージを与えていく。それと同時にナナがドラミドロに乗って海中から脱出。そして命じる。

 

「スピアーはエレキネットでフェローチェを抑えて!」

 

 指示から一瞬の間もなく放たれたエレキネット、それによりフェローチェは数秒だけ身動きを封じられる。その数秒。たったそれだけで充分だった。

 

「ダークライ! ここで決めるわよ! この世の混沌を全てこの身で受け止め、逃れようのない闇を体感しなさい! ブラックホールイクリプス!」

 

 ナナの口上と同時に僕に力が湧いてくる、そして大きなブラックホールを作り出し、それをフェローチェに叩きつけた、ドカンと大きな爆発音と同時に船がぐわぁっと大きく揺れる。そしてブラックホールが消える頃には戦闘不能になったフェローチェがいた。

 

「ウルトラビースト……とんでもなく強いわね……」

 

ナナがその場に膝をついて息を切らしながら言う。そしてスピアーのメガシンカを解除してボールに戻す。しかし一体でこれだ。Zワザを使わされるくらいに強い。それが数百規模で襲ってくるのか。考えただけでゾッとする。

 

「な、なんの騒ぎだ!」

 

 そして船の振動で起こされた観客達が慌てて飛び出てくる。近くには戦闘不能のフェローチェ。見たことないポケモンに観客達は動揺を隠せずにいる。そしてメロエッタは透明になって隠れている。

 

「あ、あそこの少女は悪夢姫じゃないか!」

「はい。私は悪夢姫ナナです。ただいまポケモンによる襲撃がありましたので少し対処していました」

「ポケモンの襲撃!?」

「相手はここに倒れている新種のポケモン……とりあえずボルノという男の子を呼んできてもらいますか」

 

 そしてボルノがやってきてウルトラボールでフェローチェを捕獲。そうして襲撃事件は幕を閉じた。ウルトラビースト。一体なら手に負えないほどではない。しかし複数体に襲われると厳しくなるな。そしてナナの部屋でメロエッタは治療を受けていた。

 

「もう酷い怪我じゃない。ちゃんと身を委ねなさい」

 

 メロエッタはフェローチェとの戦いの時に『いにしえのうた』を歌わずにフォルムチェンジをしていた。その際に少し体を痛めたらしい。それよりも問題はナナだ。

 

「ナナさん。シチュー作ったのでどうぞ」

「ベアルン。ありがとう」

 

 ナナは普通を装っているが実は体調は良くない。隙を作るために海に飛び込んで体を冷やして風邪を引いたのだ。今では毛布に包まってメロエッタの看護をしながらベアルンの作った温かいシチューを飲みながら体温を取り戻そうとしている。

 

「しかし今後の作戦会議も必要ね」

「そんなに強かったのですか?」

「その質問は難しいわね……」

「どういうことですか?」

「限定的なのよ。フェローチェの場合は速くて攻撃力が高いだけだった。耐久自体はなかった。なんていうか能力が変に偏っているからやりにくいというか……」

「でもZワザを使ったのですよね?」

「ええ。恐らくZワザを使わないと避けられていた。それに他の乗客にウルトラビーストは強いと印象付ける必要があったから。もしもUBは自分でも倒せるんじゃないかって思い始めたら、被害は拡大するもの……」

「そこまで考えて……」

「今の私はデトワール地方でもトップクラスに強い。だから他の人を守る義務がある。そのくらい考えるのは当然よ」

「なんか変わりましたね」

「そう?」

「今まではポケモンさえ良ければ人間なんてどうでもいいって感じがしてましたが……」

 

 ナナの本性にベアルンも気付いていたのか。でもたしかにベアルンの言う通りナナの闇の部分は前より薄くなった気がする。

 

「そうね……今もポケモンが全てだと思ってるわ」

「え?」

「だけど気付いたの。人間が好きなポケモン。人と一緒にいたいポケモンもいるってことに。だから私はポケモンのためにも人間も守らないといけないと思うの」

「……なんか好きです。その考え方」

「そう? でもポケモンにとって人間は道具じゃない。そして逆も然り。最近それが分かるようになってきたわ。ポケモンは人と一緒だからどこまでも強くなれるし、人間も同じ。私がここまで強くなれたのもダークライのおかげ……ポケモンはパートナーなのよ」

 

 いや、僕はなにもしてないだろう。なんで僕のおかげなのだろうか……

 

「何度も挫けそうになった。その度に近くにはダークライがいた。そしてダークライを見ると負けてはいけないと強く思うの。ダークライはほとんど知られていないポケモン。だから私が弱かったらダークライは弱いポケモンという印象になる……」

「なるほど。ダークライが馬鹿にされないように強くなったと」

 

「簡単に言うとそういうことよ。私はダークライっていうのは強くてカッコいいポケモンなんだと知らしめたかったの」

 

 それは初めて聞いた。そのナナの想いは初めて聞いたな。強くなりたい背景にはそんなことがあったなんて……

 

「だから私はなんだって出来た。体から力が湧いてくるから……」

 

 そしてしばらくするとナナは眠りについた。翌朝になるとナナの熱は悪化して喋るのも辛い状況だった。そんな中で僕達はナナの許可も取り、他人に迷惑をかけず許される範囲で船内探索をしていた。

 もっとも表向きはそうなっているが実際は違う。単純な話でメロエッタと少し会話をしたかったからだ。僕はメロエッタの元に行き、話しかける。

 

「なぁメロエッタ」

「なに?」

「ポケモンのゲームのことを教えてくれないか」

 

 どこまで役立つか分からない。しかしあって損はないはずだ。この世界はゲームではないが近い部分も多い。きっと参考になるはずだ。

 

「うん。いいよ」

「まずダークライはゲームではどうなんだ?」

「強いよ。ただダークホールの弱体化が少しキツイくて、最近USUMでトリックホリックっていうダークライを使えるインターネット大会があったのだけど、そこではアクZを持たせたりした特殊アタッカーとして使う人もいたわね」

「なるほど……」

「そしてマーシャドーに上からインファイトで殴られたり、ミミッキュにじゃれつくされたりで落ちるケースも多かった」

 

 ミミッキュ。あれに僕は負けるキャラなのか……ていうかミミッキュってそんな強いのかよ。噂には聞いていたがダークライよりも強いとは。

 

「ただ第四世代では化け物みたいに強かった。全体催眠はズルいよ」

「そんなにか?」

「そんなによ! そもそもアニポケのタクト戦とか……とにかくダークライは四世代において最強なのよ!」

「なるほど」

「でもゲームの話。実際だとダークホールは避けられるし、眠りも強いけど、ゲームほどではない。それとダークライならあれが欲しいのよね」

「あれ?」

「わるだくみ。Cを二段階上げて抜き性能を向上させる技」

 

 なんかよく分からないが強そうだ。そんな技があるのか。これは少し覚えておきたいな。もしもわるだくみを覚えれば出来ることが広がる。

 

「あとは広い技範囲。れいとうビーム、10万ボルト、きあいだま、サイコキネシス、シャドーボール、ヘドロばくだん、やきつくす。一通りの技はある。まぁそこは私と同じね」

「それは使える」

「そう。それなら火力向上ね。他に聞きたいことは?」

 

 ダークライというポケモンについても分かった。だけど僕は根本的な部分を知らない。それは原作ゲームでのポケモンバトルだ。それはどのようなものなのか。

 

「原作でのポケモンバトルでの勝ち方を教えてくれ」

「同じよ。相手を倒す」

「他には?」

「うーん……ポケモンって使える技の限界があって、それをPPと呼ぶんだけどPPが枯れると技が打てなくなってわるあがきしか出来なくなるの。それでPPを枯らすという勝ち方もあるけど……この世界ではPPなんて無いから無理だと思う。それに技も4つじゃないし」

「そんな勝ち方が……」

「ていうかそこら辺のことなら私よりナナちゃんの方が詳しいでしょ。彼女ほど知識があって指示もしっかりしてるポケモントレーナーなんて早々いない」

「それはそうだが……」

「まぁいいわ。あなた前世でチェスとかやったことある?」

「いや……」

「それと同じよ。相手の強い駒を倒せば、こちらが有利になる。そして逆も然り」

「相手の強いポケモンを倒せということか……」

「違うわよ。自分の他のポケモンが苦手なポケモンを倒すの。そしたら他のポケモンが通しやすくなるから」

 

 ところどころ分からないが、なんとなく言いたいことは分かる。ようするに自分が苦手なのは他人。他人が苦手なのは自分で倒せということだろう。

 

「そして時として一つ。相手の王を取るという考えもある。例えば相手のパーティーがジャローダ、エンブオー、ダイケンキの場合はそれでこちらがドヒドイデの場合。私はジャローダを倒せば勝ちとなる」

「待て。それはどうしてだ?」

「相手にドヒドイデの突破手段がないからよ。それがキングを取るということ。相手の唯一の勝ち筋を潰す。チェスと同じよ。問題はキングがどれか分からないことくらい」

「キングをとるか……」

 

 これは少し面白い考えだな。チェスの要領でポケモンバトルを考えるなんて想像したことがなかった。

 

「ただ何度も言うけどゲームとリアルは違う。他の駒がいきなりキングに昇格することもある。リアルは常にイレギュラーの連続だよ。だから参考程度にして、その考えに固執しない方がいいよ」

 

 それからしばらくメロエッタと会話して、その場を後にする。僕も周りと同じように船内探索をしていると、船員の仕事の手伝いをしているジャノビーを見つけた。

 ジャノビーはつるのムチを上手く使い、的確に荷物の運搬をしている。

 

「なにしてるんだ?」

「見ての通り仕事を手伝ってるのよ?」

「お前……そんな性格だったか?」

「ここの荷物を片付けたら、あそこの物置にあるもの自由に貰っていいと言われたのよ」

「ていうかジャノビー。人語喋れたか?」

「身振り手振りで会話したのよ」

「そうか。とりあえず僕も暇だし手伝うか」

「ありがとう。それなら、そっちの荷物を運んでくれるかしら?」

 

 僕はジャノビーに言われた通りにテキパキと動く。荷物自体はそこまで重い物もなく、簡単に終えることが出来た。そして僕達は船員に報告するとお礼を言われ、物置部屋を開けてもらった。そして船員からも使ってない物だから勝手に持っていってもらっていいという言質をとった。さて、どんな掘り出し物があるだろうか。

 

「あ、この服って可愛い」

「魔女服……なんでコスプレ衣装があるんだよ」

「でもサイズが合わない……」

「少し貸してみろ」

 

 僕はジャノビーから服を借りる。それと同時に近くにあった糸と針を拾い、ジャノビーが着れるように調整していく。前にナナの服がボロボロになった時に今後のために裁縫スキルをムシャーナに教わっておいて助かった。しかしムシャーナはどうして裁縫なんて覚えていたのだろうか。まぁムシャーナは賢いので知っていても不思議ではないが。

 

「ダークライ。あなた器用ね」

「これでサイズ合うか?」

「うん! ばっちり!」

 

 そして魔女っ子ジャノビーが出来る。服を着ているポケモンが見えるなんて新鮮だな。そして僕も適当に辺りを見渡すが、特に目ぼしい物はない。強いて言うなら隅にある小さなビー玉くらい。しかしあのビー玉。どこかで見た気が……

 

「あら、ナナが持ってるビー玉と同じ物じゃない。たしかメガストーンだっけ?」

「うむ。言われてみればメガストーンに見えないこともないな。一応もらっていくか」

「そうだね。あとダークライ。そこのメガネどう?」

「これってドラミドロのメガネの色違いじゃねぇか!」

「あー! こだわりメガネ。たしか特殊技の威力が上がる代わりに精神に異常が起こるんだよな?」」

「そうそう。なんでも『同じ技しか出したくなくなる』とか」

「たしかにメガネをつけたドラミドロも性格が大きく変わってたな。たしか初日は『りょうせいぐんこそロマン! りゅうせいぐんを撃つために生きている!』とか言ってたわね」

「ほんとに恐ろしいメガネだ。見なかったことにしよう」

 

 そして僕達は物置部屋から目ぼしいものを頂いて後にした。そして一通り探索を終えてナナの元に戻ろうと甲板にでる。その時にジャノビーが慌てて言う。

 

「ねぇダークライ! あれを見て」

「あれ?」

「海面よ! あそこにあるのって!」

「ポケモンの卵だな」

 

 そこには波の乗って海を彷徨っている青い卵があった。とりあえず僕は海に飛び込み卵を回収する。それと同時に体温で温められた影響かピキピキと割れてくる。もう間もなく孵化するだろう。そして大事に抱きしめながら甲板に戻る。

 

「あ……」

「マナ!」

 

 そして同時に卵が孵化した。そのポケモンはマナフィだった。たしか幻のポケモンだよな。そんな珍しいポケモンがどうしてここに?

 

「……マナフィ! うそでしょ!」

 

 そしてマナフィを視界に入れたメロエッタが慌ててやってくる。そういえばマナフィとはどのようなポケモンなのだろうか。

 

「メロエッタ。教えてくれ」

「マナフィは海の王様で、どんなポケモンとも心を通わせるの。映画ではカイオーガを従わせたりしてたわ」

「そんなポケモンがどうしてここにいるんだ?」

「おそらくラルムが作った海底神殿レプリカに引き寄せられたんだと思う。その辺についてはあとで話すからとりあえずナナちゃんの元に連れていきましょう!」

 

 卵から生まれたマナフィ。それが意味することを僕達はまだ知らなかった。幻のポケモンが存在する意味。それを僕は理解していなかったとマナフィを通じて知ることになる。

 




The補足 メロエッタについてPart2
ポケモン歴
・初めてやったポケモンはダイヤモンド
・ほとんどのポケモンの種族値と覚える技を言える
・ポケモン関連の質問なら大体は答えられる知識量
・USUMではレートガルーラ、ミミッキュ、キノガッサを軸とした構築で最高レート1934を達成(44話では盛ってる)
・一部を除いた全てのポケモンをラブラブボールで捕獲済み
・アニポケ全話視聴済み
・不思議のダンジョンは空のみプレイでゼロのしまをクリアできず断念
・乱数を使わずORASで色アンノーンを14種類捕まえた。
・ポケモンGOはレベル33止まりで図鑑コンプはしていない

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