目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「アグジキングはあくとドラゴンの複合タイプのポケモンよ!」
「ねぇ悪夢姫! あれってなに!」
「ウルトラビースト! 異世界のポケモンよ!」
「倒してもいいんだよね?」
「ええ!」
突然のウルトラビーストの出現。それにより辺りは大混乱になった。ナナ達はそれに動じることなくポケモンを出していく。二人共とも出すのはミミッキュ。あいつはフェアリーに弱いことを理解している故の行動。そして指示を出そうとした時だった。
「プクリン。じゃれつく」
「たぁーーー」
「アグジ!?」
神速で現れたプクリンがたった一撃の殴りで倒した。アグジキングを一撃で戦闘不能に追い込んだ。そしてプクリンは頭にリンゴを乗せながら鼻歌を歌っている。明らかに別格だ。これは間違いなく正面からやって勝てるようなポケモンでは……
「な、なにあのプクリン……」
「セカイイチを頭に乗せるプクリン……もしかして……」
「まったく……最近はウルトラビーストばかり出る。少しは休ませてほしいな」
「お兄ちゃん!?」
「ああ。ナナか。やっとこの街に着いたんだな」
そのプクリン使いのトレーナーは戦闘不能のアグジキングにボールをぶつけて捕獲する。そして強さに納得する。プクリン使いのトレーナーはナナの兄。つまりチャンピオンだったからだ。
「ストロベリータウンでウルトラビーストが出るのは日常茶飯事だ。まぁだからこうして俺が解決に当たってるわけだが」
「悪夢姫……その人って……」
「ええ。この地方のチャンピオンにして私の兄よ」
チャンピオンの戦い。それに一気に歓声が上がる。先程の戦いを見てミミッキュガールは震えていた。しかし震えながらも口を開き、チャンピオンに話しかける。
「ミミッキュガール。どうしたの?」
「悪夢姫……こんなチャンスって二度とないと思うの……だから……」
そして彼女はチャンピオンに近づいていく。その様子にチャンピオンも気付いて彼女の方を見る。
「君は前回のポケモンリーグの……」
「あ、あの……私とポケモンバトルしてください!」
「ほう?」
「勝てないのは分かってます……だけど自分がどこまで通用するか知りたくて……」
チャンピオンは少しだけ考える素振りをみせた。それから彼女の本気の目を見て二つ返事で答えた。
「いいだろう。ルールは一体一だ。それと一切の手加減はしない。泣くなよ?」
「ありがとうございます! 行くわよ! ミミミミ!」
「ミミ! (おうよ!)」
「この俺を超えてみせよ! 期待のルーキーよ!」
チャンピオンの戦いを間近で見れる。その事実に先程のアグジキングの事件が嘘のような盛り上がりを見せる。そして彼女はナナとの勝負でばけのかわを消耗したミミッキュは使わず、別のミミッキュを出した。それに対してチャンピオンはプクリンにフィールドに出るように命じる。
「いつでもこい」
「先手必勝! Ⅴジェネレート!」
「ミミミミミミ(オラオラオラオラ)」
ミミッキュは灼熱の炎を額からV字型に放出する。ものすごい熱量で辺りの温度が数度程上昇し、周りの物質も融解を始める。これほどの熱量は始めてみた。凄いな。
「……珍しい技を使うな」
「私とミミミミの絆の結晶にして切り札。どんなポケモンだろうが焼き尽くす!」
「だろうな。相手が俺じゃなければ苦戦は避けられないだろう。プクリン。ほのおのパンチ」
冷たい言葉とは裏腹に熱を感じさせる指示。それと同時にプクリンは頭の上のリンゴを遥か上空へと飛ばし、ミミッキュに対抗すべく拳を繰り出した。そしてプクリンの繰り出す拳はミミッキュの灼熱の炎を巻き取り、自分の炎へと変えていき、ミミッキュの腹に練り込ませた。それによりミミッキュは吹き飛ぶが、ばけのかわを盾に持ちこたえる。そして同時に彼女の腕が輝き、ミミッキュに力を与える。
「まだよ! 私達はもっと上にいく! 全力の一撃! ぽかぽかフレンドタイム!」
ミミッキュのZワザか。奴はプクリンの周りを駆けまわる。それはあまりに速く、目で追えるものではなかった。その技にチャンピオンも感心した様子を見せる。
「ほう……ミミッキュZか。やるじゃないか」
「いけぇぇぇぇぇぇぇええええええ!」
「プクリン。受けろ」
そしてプクリンはミミッキュに飲み込まれて、何度もミミッキュに殴られる。そんなのが数十秒に渡って行われる。やったか……
「うそでしょ!?」
「悪いな。俺とお前じゃ格が違う」
しかしプクリンは無傷で出てくる。それから追撃の炎のパンチで本体への確実なダメージ。それによりミミッキュは戦闘不能になった。そして上から降ってきたリンゴを見事に頭で受け止めた。決着がつくまでに一秒もかかっていない。その事実にミミッキュガールはそれによりガクリと膝をつく。
「本来なら覚えないⅤジェネレート。覚えるまでに相当な努力をしたんだな。凄かったぞ」
「……」
「ただそれだけじゃ俺には届かない。それだけだ」
そんなもんじゃない。リンゴの降ってきたタイミングは完璧。それと同時にバトルを終えていた。つまりプクリンはミミッキュZを使うことを想定し、そこから戦闘にかかる時間を計算してリンゴを宙に飛ばしたのだ。
本当に同じポケモンなのかあやしくなる。これが絶対王者の力……
「ど、どうして……こんなにも強いのですか? 私になにが足りない……んですか?」
彼女が泣きそうになりながらいう。それに対してチャンピオンは優しく諭すようにいう。
「技への認識。多くの人が勘違いしているが基本的にどんな技でも直撃すれば致命傷。耐えることは難しい。君は俺のプクリンの技を避けることに専念すべきだった」
「で、でも私のZワザを……」
「まず最初に技をどんなポケモンでも一撃で倒すまで極める。そしたら技を当てる努力をする。それがポケモンバトル。冷たいようだが君はその域に達していなかった。それだけさ」
「でもテレビとかで技のぶつかり合いを見ますが……」
「あれは技を技で相殺。相性で強引に受ける。もしくは牽制やポッ拳の類だ」
「ポッ拳?」
チャンピオンはポッ拳について説明を始める。しかしポッ拳の技術って知られていないんだな。それにしても一撃で倒すか。そこまで威力を高める。まだ課題は多いな。
ていうか待て。ポケモンリーグベスト4でしか知らない技術ってなんだよ!
まずそれを平然と常識のように教えるキンランさんもあれだし、当然のように理解できるナナもあれだ。なんでこんな普通に常識のように話してるんですかね……
そして一通り話を聞き終えた彼女は一言だけ呟く。
「私の知ってるポケモンバトルと根本的に違う」と。
どうやら今まで僕達がやっていたのは周りのポケモンバトルとは違うなにかだったようだ。後日聞いた話だとポッ拳とかは応用の技術であり、基礎(ジムバッジを8つ集められるくらい)がしっかりしてないと無理なのだとか。
そしてナナの場合は旅に出る前から学校で知識だけなら既にそのレベルまで到達していたから、簡単に習得できたのだとか。しばらくしてチャンピオンは彼女と分かれてナナの元へとやってくる。
「ナナ。潜伏先は恐らく海底だと分かった……だけど正確な座標がわからない」
「そっか。それとお兄ちゃん。他になにかある?」
「ウルトラビーストが他の街でも湧き始めているくらいだな……そしてウルトラビーストでも個体によって大きく実力が違うことが分かった。特にオーラを纏っているのは危険だな」
「分かった」
「問題はどうやって座標を特定するか……」
しかし僕達は完全に手詰まりだった。
※ ※ ※
場所は変わり、シノノタウン。
その町は停電中だった。原因は数分前に現れた一匹のポケモンである。そのポケモンはケーブルのような体であり、明らかに歪。そんなポケモンの名前はデンジュモク。また今までのウルトラビーストとは違い、オーラを纏っており、圧倒的な力で街を蹂躙しようとしていた。しかし今はまだ目立った破壊活動は出来ていない。
「ピカチュウ! 10まんボルト!」
「ピカピッ!」
地面を焦がす程の大電流。デンジュモクと名付けられたポケモンはそれを受けてもビクともしない。しかし次の瞬間に体が吹き飛ばされる。
「電気を喰らうから電気技が効かない。裏を返せば電気技以外なら通用するということでしょう?」
「ジュモク!」
そしてデンジュモクは怒り狂ったように暴れる。それと同時に大量の電撃が辺りを襲う。デンジュモクと戦う金髪の彼女は攻撃を全て見切り、ピカチュウに回避させる。
「この電圧……特性ひらいしんでも受け切れないわね」
「ジョモク! ジョモク!」
「ピカチュウ! ちきゅうなげでカウンター!」
「チゥウウウウウ!」
ピカチュウは接近してくるデンジュモクを受け流し、腕を掴むと空を駆けて、そのまま空中で一回転して地面に叩きつけた。そして彼女は隙を逃すことなく一瞬で指示を飛ばす。
「アイアンテールで胴体を叩いて!」
ピカチュウはすぐにデンジュモクに追い打ちをかけていく。完全にワンサイドゲームだった。ウルトラビースト相手にも一歩も引かず、それどころか戦いを有利に進めていた。
「ジュュュュュモクッッ!」
そしてデンジュモクは緑色の玉を飛ばす。その技はエナジーボール。予想外の攻撃に彼女はコンマ数秒だけ驚いた表情を見せるが、すぐに指示を飛ばす。
「エレキネットで叩きつけなさい!」
「チュウ!」
ピカチュウは尻尾から出すエレキネットでエナジーボールを掴み、そのままネットを手で持ち、振り回してデンジュモクを殴った。それでもデンジュモクは倒れることなく起き上がってくる。
「……並大抵の技じゃビクともしないわね。電気技が通ればどうにかなるのだけど。またこのような個体がくることを考えるとあの手は避けたいわね……」
「ジュモ! ジョモク!」
一瞬だった。ほんの一瞬だけ彼女は気を抜いていた。デンジュモクは地面に手を刺して地面を砕いた。本来ならポケモンに浴びせられるはずの電気が彼女の肉体を襲った。
「あああああぁぁぁぁぁあぁ!」
「ピカピッ!」
そしてピカチュウもトレーナーを心配するあまり一瞬だけ気を抜いてしまう。その隙にデンジュモクはピカチュウを蹴り上げ、でんじほうで一気にピカチュウを吹き飛ばした。許容量を超えた電気はピカチュウの頬袋を爆発させて尋常ではないダメージを与えた。
ほんの一瞬。その隙を突いたトレーナーへのダイレクトアタック。もしもポケモンへの攻撃なら彼女も対応出来ただろう。しかし今回は違う。完全に自身への攻撃だった。
「ピ……カ……」
「ジョモク」
そしてデンジュモクは弱り切ったピカチュウを弄ぶかのように持ち上げ、パワーウィップで何度も叩いた。それが数秒に渡って続く。ピカチュウの弱弱しい鳴き声が聞こえる。
そんな中でピカチュウに掠れるような声で指示が飛んできた。
「1000……まん……ボルト」
そしてピカチュウのトレーナーがフラフラしながらも腕を光らせて立つ。同時にピカチュウにも大量のエネルギーが流れ込んでくる。
「私達はこんなものじゃないでしょ! 全力で倒すわよ! 1000まんボルト!」
「ピカピッ!」
頬袋が破裂して既に電気のコントロールが出来ないピカチュウ。それは無理をして体内に残る電力。それと溢れ出るパワーを使用して最後の大技を放つ。辺りに暗雲が立ち込めくる。
「ジョモクゥゥウウ!」
「あなただってポケモン。私のピカチュウと同じように電気のオーバーフローはありえるわよね。ここで使う気はなかったけど使ってあげる。私達の最強のワザを!」
そして虹色の電気がピカチュウから放出され、デンジュモクを貫いた。それによりデンジュモクは爆発を起こし、少しだけよろける。デンジュモクは渾身の一撃に耐えたのだ。しかし既に勝負はあった。既にデンジュモクの電力は許容上限。
「ばちばちアクセル!」
「ピカッ!」
雷速の一撃。それだデンジュモクの急所に当たり、遂に戦闘不能になった。そして彼女は勝ち誇ったかのように言う。
「シノノタウン、ジムリーダーキンラン。電気タイプのエキスパートが電気で負けるわけがないでしょ」
そして彼女は朦朧とする意識の中でボールをなげてデンジュモクを捕獲する。それと同時に気を失って倒れ込んだ。
今回のデンジュモクのようにウルトラビーストはデトワール地方の各地に少しずつだが現れてきているのだった。