目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「そういえばお兄ちゃん。あのポケモンのこと知ってる?」
夕暮れ時。そこでナナはチャンピオンにマナフィの話をした。それに対してチャンピオンは静かに語り始めた。
「マナフィ。海の王子と言われる幻のポケモンだ。なんでも海底神殿に導くとか」
「そう……しかし厄介なことになったわね」
マナフィ。現在は海にある人目の付かない洞窟にドラミドロとメロエッタ、そしてベアリングと共にいる。また厄介なことにマナフィは何故かドラミドロを母親と勘違いしてしまった。本来ならドラミドロを手持ちに戻したいのだが、それすら出来ない状況……
「ゴゥー団のアジトは海底にあるが行くのは不可能。そして増えていくUB……」
「うん……状況はどうなの?」
「最悪だ。ジムリーダーや四天王が対応してなんとか持ちこたえているが……」
「なるほど……」
間違いなく鍵を握っているのはマナフィ。相手の場所は海底神殿。もう答えは見えている。それなのに伝える術がない。カタコトの言葉では細かいことを伝えるのは不可能。そして伝えたとしてもどこで知ったのかという話にもなる……
手詰りの中でチャンピオンは改めて情報収集。ナナはドラミドロの様子を確認することにして一旦解散となった。そして幸いにもUBは特に現れず、無事に辿り着くことが出来た。
「ベアルン。ドラミドロ達の様子はどう?」
「特に問題ないですよ。元気に遊んでいます」
「そういえばこのポケモン。マナフィというそうよ」
「マナフィですか……それまた初めて聞くポケモンです」
僕は二人が話してる中でメロエッタの方に近づいていく。メロエッタはぼんやりとマナフィとドラミドロを眺めながら退屈そうにしていた。
「調子はどうだ?」
「特になにもなし……メア。大丈夫かな?」
「……少し話がある」
「なにかしら?」
そして今の問題点を伝える。ナナ達にどうやって海底神殿の存在を伝えるのか。それをメロエッタに相談していく。メロエッタは一通り話を聞くと静かに返事を返した。
「……ナナの手持ちにムシャーナがいたわよね?」
「いるが……それがどうした?」
「ムシャーナで夢に干渉。それで匂わせる程度のことは出来るんじゃないかしら?」
「なるほど!」
「ただ向かったところでルナアーラがどうにもならない。オーベムがいなきゃ意味がない」
「しかし……」
「UBが増加しているのは知ってる。だけど急いでも意味は無い」
「そうか……」
「ただ向かえば誰かがオーベムを連れてくるまでの時間稼ぎくらいは出来るかもね」
会話をしているとドラミドロがこちらに近づいてきた。遠目で見るとマナフィは遊び疲れたのか眠っているようだ。
「なぁ……妾はいつまでこのポケモンの相手を……」
「私に言われても知らないわよ。あなたのトレーナーのナナに聞きなさい」
「そうは言われても困るんじゃ……」
「まぁいいわ。マナフィは……」
そんな時だった。ナナがこちらに寄ってくる。なにか用があるのだろうか。
「ダークライ。行くわよ」
「ん?」
「どこって洞窟の奥に行くのよ。この洞窟の奥はどんな景色が広がっていて、どんなポケモンがいるのか気になるでしょ? それにUB関係でずっと張り詰めていたから息抜きも必要よ」
気づいたらナナもベアルンも完全に身支度を整えている。もう完全に探索する気だ。正直言ってそこまで珍しいポケモンもいないと思うし。いたとしてもナナが捕まえるとも思えないよな……ていうか、この洞窟の奥ってどうなってるんだ?
「ナナさん。この洞窟って全体的にポケモンが凶暴で強いらしいです。地元のジムリーダーが訓練に使うくらいで……ほぼ未開の地だとか」
「面白そうじゃない。スピアー。お願いね」
「スピッ(おう)」
そしてナナはスピアーをボールから出して奥へと足を踏み入れた。ドラミドロは流れる水を泳ぐように進み、メロエッタはナナの近くを飛ぶようにして付いていく。そしてベアルンは寝ているマナフィを起こさないように抱き抱えた。
洞窟探検の最初のうちは普通の道でポケモンが出てくる気配はない。だが、しばらくすると目の前に岩の壁が現れて行き止まりになっていた。
「これは……」
「ドラミドロ。ヘドロばくだん」
「ドラァ(承った)」
ナナの指示でドラミドロが毒を吐きだし、岩を溶かしていく。すると更に通路が出てきた。まさかナナは行き止まりじゃないと分かっていたのか!
「本来なら『いわくだき』とかあると探索は楽なのよね……」
それをメロエッタは啞然としてみる。まぁゲームじゃいわくだきが王道だもんな。毒で溶かすなんて方法は普通はやらない。そしてベアルンの驚きの表情から察するにこれは稀な事態だ。それからしばらくすると次は大きな滝が現れた。その滝は重力に逆らい。下から上へと流れている。なんていう光景だろうか……
「すごい滝! こんなの初めて見た!」
「ナナさん! この滝は逆です! 逆ですよ!」
「ええ……世界って不思議ね」
いや、それで済ますな。不思議のレベルで済むものじゃない。明らかに異常だろ。
「ベアルン。あなたの手持ちってブーバー、ゴンべ、バニプッチよね?」
「はい」
「それならバニプッチを出してちょうだい。それとメロエッタはいにしえのうたでステップフォルムに変身できる?」
「メロ?」
「私に考えがあるわ」
そしてメロエッタは歌い始めて、自分をバレリーナの姿へと変えて、ベアルンはボールを投げてバニプッチを出す。その様子を見てナナが二体と僕に指示をだす。
「これからドラミドロでなみのりを使って波を起こす。メロエッタはれいとうパンチ、ダークライはれいとうビーム、バニプッチもなんか氷の技で水を凍らせてくれないかしら?」
「水を凍らせる!?」
「それで足場を作るのよ。ベアルンは水タイプのポケモンがいないからそうしないを渡れないでしょ?」
「たしかにそうですが……」
「とりあえず私は先に行くわ。ドラミドロ。お願い」
ナナは最初に一人でドラミドロに乗って滝を駆け登った。そして上からドラミドロに軽く命じる。『なみのり』と。
それと同時に少し小さめの波が起こる。恐らく威力も抑えているのだろう。その波を僕は氷の光線を放ち、凍らせていく。下ではメロエッタとバニプッチが懸命に頑張っていた。
「ジャノビー。ベアルンの命綱代わりになってちょうだい」
「ジャノ!(分かった!)」
ジャノビーをボールから出して、つるのムチを上から使い、ベアルンの体に巻き付ける。そしてベアルンは必死に波を凍らせて出来た氷の壁をよじ登る。数十分かけて登り終えたのを確認するとナナは一つの提案をした。
「ここで夕食にしましょう」
「はい!?」
「ここから先から相当な覇気を感じるわ。恐らく強力なポケモンがいるからのんびりも……」
「オムッ!!(侵入者だ!)」
その時だった、上からオムナイトが降ってきた。しばらくすると更に何体ものオムナイトが上から降ってくる。完全に囲まれている。それに対してさすがのナナも少しだけ動揺をみせた。
「化石ポケモン!? まさか古代の環境がそのまま残ってるというね」
もっともオムナイトというポケモンが存在していることに対してのようだが。そしてナナはすぐに戦闘態勢をとる。使うポケモンはどうやらジャノビーらしい。
「つるのムチで叩きなさい!」
「ジャノ!(うん!)」
ジャノビーがつるのムチを華麗に走らせる。それをオムナイトは嘲笑うように飛んで避けて、ナナ達に距離を詰めていく。これはマズい。僕は瞬時にあくのはどうを放ってナナからオムナイトを引き離す。しかしオムナイトはなんともないように立ちあがる。
「助かったわ……このオムナイト。相当強いわね」
「……アァ」
そうみたいだな。ジャノビーのつるのムチを避ける身体能力に僕のあくのはどうにも耐えるくらいの耐久力。これは想像以上だ……
「ムシャーナ。出番よ」
「ムシャャァァァァァ!(久々に暴れるぜ!)」
ナナは珍しくムシャーナを出す。ナナがムシャーナを使うのは稀だ。理由は三つ。一つはムシャーナは技に食べた夢のストックを使うため温存したいから。二つ目は単純に強く、本当に奥の手のため出来る限り隠していたいからだ。
「とびっきりの悪夢を見せてあげる」
「シャャアアアナ(覚悟しろよ)」
その瞬間に辺り一面が血みどろの監獄のような場所になる。そして地面が割れて、針地獄が現れる。そして全てのオムナイトを敷き詰めれた針が串刺しにした。それと同時に大量の血が辺りに舞う。もっとも幻惑だしダメージはない。それどころか噴き出した血すら幻惑。それなのにオムナイトは実際にダメージを受けたと勘違いして精神的なショックで意識が吹き飛ぶ。それと同時に元の洞窟に戻る。オムナイトは全てショックで気絶している。
ムシャーナをあまり使わない三つ目の理由。それは単純にグロテスクでえげつない攻撃をするからだ。それ故に人目のあるところでは使いにくい……
「ムシャーナ。お疲れ様」
「シャァナ(おう)」
そしてナナはムシャーナをボールに戻す。しかし幻惑のリアリティも前よりも上がっている。あのオムナイトを一瞬で片付けるとは……
「さすがです……」
「とりあえず休憩しましょう。なんか来ても私が対応するから安心して」
※ ※ ※
夕食を食べ終え、再び洞窟探索が始まった。途中で水は途絶えたためドラミドロはボールへと戻し、最大限に警戒しながら奥へと進んでいく。そして心なしか少し肌寒くなってきたような気がした。そんな中で現在ナナは……
「スピアー! 距離をとってミサイルばり」
「ピアッ(おう)」
大きなティラノサウルスのようなポケモンと戦っていた。そのポケモンの名前はガチゴラスというらしく、既にバトル開始から十分以上が経過している。ナナが野生ポケモンとの戦いでここまで長引いているのは珍しい。
ガチゴラスはスピアーのミサイルばりを受け切り、怯むことなく牙に炎を纏って噛みつこうとしてくる。スピアーはそれを避けていくが、ガチゴラスは地面を蹴って空中で見事なアクロバットを決めてスピアーを追う。
「エレキネットで防御!」
「ピアッ(ああ)」
ガチゴラスの口をエレキネットで塞いで、なんとかその場を逃れる。しかしガチゴラスはすぐにエレキネットを破壊していく。そして物凄い量のエネルギーを集め、一気に放つ。
「こうそくいどうで避けて、その隙にメガホーン!」
「ピアアアアアッ!(これで決める!)」
口から放たれた熱線を間一髪で避けて、その隙に腹にメガホーンを打ち込んで、スピアーはなんとか勝利を収めた。そしてガチゴラスは放ったはかいこうせんに触れた岩はドロドロに溶けていた。そしてナナもさすがに疲れたのか、その場に座り込む。
「さすがにきつくなってきたわね……」
「明らかに野生ポケモンの強さが異常です。戻った方が……」
「ねぇベアルン……ここまで強いポケモンがいる洞窟。その最深部にどんなポケモンがいるのか気にならないのかしら?」
「気になりませんよ! これは冗談抜きで死にます!」」
「このレベルの洞窟……間違いなくいるわよ……」
「なにがですか?」
「神話に名を残すようなポケモン……伝説のポケモンが」
「ほんとにいるんですか?」
「ええ。伝説のポケモンの住処には屈強なポケモンがいて、並大抵のトレーナーじゃ辿り着くことも出来ずに命を落とす。ここまでのポケモンの強さ的に普通のトレーナーじゃ確実に死ぬクラスよ」
「……ほんとにやばくなったらブーバーのテレポートで逃げますよ」
「それは無理よ。この洞窟じゃテレポートもあなぬけのひもも使えないもの」
「え!?」
「よくあることよ。強いポケモンの住処では」
そしてナナは奥へと進んでいく。そんなナナに泣きながら付いてくるベアルン。ちょっとした探索がまさかここまでの大捜索になるとは……
しかし僕も気になる。洞窟の奥にはなにがあるのか……
再び歩く。何度か野生ポケモンが現れる。それを逃げたり、時には死闘を繰り広げて倒したりしながら奥へと進んでいく。すると目の前に大きな広間が現れた。そして階段の前には大広間がある。ナナはごくりと唾を飲む。
「この先が最深部……」
「わかるんですか?」
「ええ。あの奥から足が震えるような重圧を感じる。この覇気はとんでもないわよ」
そしてナナが大広間に足を踏み入れたときだった。上から重圧を放つポケモンが現れた。明らかに今までの化石ポケモンよりも強い! これはとんでもない!
「サザンッッッ(小娘か)」
「サザンドラ! いくわよ! ミミッキュ!」
「ゴ……フッ(任された)」
サザンドラの動きは速かった。ミミッキュが出てくると同時に接近して右腕でミミッキュのボロ布を掴む。それに対してナナも臨機応変に対応する。
「ミミッキュ! シャドークロー」
「ゴ……フッ……」
見事に攻撃を当てて、サザンドラの束縛から離れる。それからナナは指を鳴らして指示。その意味は前進。ミミッキュはすぐに距離を詰めていく。そこにナナは瞬時に次の指示を出す。
「じゃれつく!」
ミミッキュの攻撃は見事にサザンドラへと命中して吹き飛ばす。相手は悪とドラゴンタイプ。今の攻撃は間違いなく致命傷……
「サザン……(久しぶりのダメージだ)」
「くっ……」
ナナは軽く睨む。四倍弱点でもビクともしていない。なんて強さなのだろうか。このポケモンをナナはどうやって攻略するのだろうか……
「サザンッ!(くらえ!)」
「ミミッキュ!」
ナナの指示は間に合わず、銀色の光線がミミッキュを吹き飛ばした。あの技はラスターカノン。鋼タイプの技。それをミミッキュに撃った……
野生ポケモンなのにタイプによる有利不利を既に分かっているのか!? 凄いぞ!
そしてミミッキュはばけのかわを盾にサザンドラの攻撃を見事に受け切った。
ナナはそれを見て少しだけ笑った。まるで楽しいとでもいうかのように。
「ここまで追い詰められたのは久しぶり。私も本気で行くわ。トレースミミッキュガール!」
そしてナナは珍しく人格トレースを使った。それに匹敵するだけの強敵ということ。そんな強大な洞窟最深部を守護するボスとのバトルが始まった。
少し作者の話になりますが遅かれながら欧州版の3DSとUSUMを買いましたので、そろそろ色ビビヨンをコンプしたいなと思い始めました。
ただORASでやるとコンテストリボンが付けられるためそちらでやるか少し悩み中です。しかしORASはひかおまが殿堂入り後なので、殿堂入り前にひかおま受け取れるUSUMの方が効率は良いんですよね……
さて、どうしたものか。