気がつけば、右眼も邪眼に、なりました(字余り)。
どうも。あまりの異常事態に思わず心の中で俳句(いや、季語がないから川柳?)を読んで現実逃避をしてしまった五月女頼人です。
いきなりだけど上にも書いたとおり、どうやら俺はあの初めて獅子神の素顔を見てしまった夜に、右眼も邪眼に変化してしまったみたいだ。
俺の右眼が邪眼に変化したのに最初に気づいたのは獅子神だった。彼女は五車学園へ帰っている途中で突然、俺の右眼が変色していると言い出し、それから獅子神が持っていた手鏡を借りて自分の顔を見てみると、本当に右眼の瞳の部分が青紫に変色していたのだ。
その事実に嫌な予感を感じた俺は、とりあえず五車学園に任務終了の報告をすると、すぐに対魔忍専用の病院へと行き診察を受けた。そして俺は自分の右眼が邪眼に、それも左眼とは違う「魔」を宿した邪眼に変化していると言われた。
……ということはやっぱりあの時、獅子神の忌神と睨み合っていた八つの目のロボットみたいなのは、邪眼となった俺の右眼が生み出したものなのだろうか?
俺の診察をした医者は「対魔粒子の影響でただの眼が邪眼になるなんて、理論上では可能だが実際にはあり得ない現象なのに、それが二回も起こるなんて非常識だ!」と言っていたが俺に言われても困る。元々俺が忍法や邪眼を手に入れたのは転生特典のお陰で、常識非常識は俺が転生する前に会った、あの光の玉に言ってもらいたい。
というか何で邪眼なんていう、強力だがそれ以上に厄介事を呼び込みそうなフラグの塊を二つも抱え込まないといけないのだ? 普通、転生特典って転生先の世界で生きるのを助けてくれるものじゃないのか? なんか俺ってば、転生特典が原因で次から次へとトラブルに巻き込まれている気がするんだけど?
そんな事を考えながら、診察を終えた俺は学生寮にある自分の部屋に戻る事にした。
「はぁ……。それにしてもこの右眼、一体どんな力があるんだ?」
病院から学生寮への帰り道、俺は自分の右眼に目蓋の上から触れて呟いた。
左の邪眼の能力、ライトイーターの時はすぐに大体の使い方が理解できたのだが、この右の邪眼は宿っている「魔」をどう使ったらいいのか分からないのだ。手に入れたのは全くの偶然で、望んで手に入れたわけではない邪眼だが、手に入れた以上はどんな能力かを理解して、使いこなさないといけない。
邪眼だけでなく、対魔忍の忍法というのは使いこなせれば強力な力となり得るが、逆に知る事を怠ればその力に振り回されて最悪自滅する可能性があるからだ。
『……別ニ、焦ル必要ハナイト思ワレマス』
俺が右の邪眼の使い方を考えながら歩いていると、急に背後から誰かが話しかけてきた。今この道は俺一人だけで、動物の気配すら感じていなかった為、俺は慌てて後ろを振り返る。
するとそこには先日の任務の時に見た、四本の脚を持つ鉄球に背中で繋がってぶら下がっている八つの目のロボットの姿があった。
「お前は……!?」
『頼人殿。貴方様ハ拙者ノ使イ方ヲ知ル前ニ、マズソノ左眼ノらいといーたーヲ使イコナスベキダ。ソウスレバ自然ト拙者モ使コナセルヨウニナルハズ。ソウ……先ズハらいといーたーヲ複数作リ出セル様ニ精進サレヨ』
八つの目のロボットは俺の俺の左眼を指差してそう言った……って!? 何コイツ喋れたの? というかそんな喋り方なの? それにライトイーターを複数って、俺以上に左の邪眼について詳しくない?
『ソレデハ……』
「いや、ちょっと待てって!? いきなり現れてすぐに消えようとするなよ! ……そうだ! お前、お前はどんな能力を持っているんだ!?」
俺は忠告らしき事を言って消えようとする八つの目のロボットに慌てて質問する。そうだ、コイツが自分の意思を持ってコンタクトが取れるのなら、今がその能力を本人(?)から聞く絶好のチャンスだ。
『フム……?』
八つの目のロボットは、俺の質問に顎に手を当てる仕草をした後、こちらを見る。
『デハひんとヲヒトツダケ。拙者ノ能力ハ頼人殿ノ言ウトコロノ、能力者ばとる漫画デ最強ノ能力、アルイハ反則技デゴザイマスル』
それだけを言って八つの目のロボットは今度こそ宙に溶ける様に消えていった。
……いや、一体どういうことだよ?