蜘蛛の対魔忍は働きたくない   作:小狗丸

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「それにしても貴方って、本当に規格外よね」

 

 その日。任務の話があるからと銀華と一緒に五車学園の学園長室に呼ばれた俺は、苦笑をするアサギにそう言われた。

 

「そうですか?」

 

「そうよ。両目が邪眼になって、ドローンみたいなハイテク兵器に興味を持って、魔族の討伐任務よりも偵察任務を得意として、オマケに報告書作成等の事務仕事もできる。貴方みたいな対魔忍はそうはいないわね」

 

 俺の言葉に即答するアサギ。

 

 いや、前半の二つはともかく、後半の二つはどうなんだよ? 討伐任務より偵察任務の方を、というのはまだいい。だけど事務仕事ができるのは珍しい、というのは対魔忍以前に社会人として色々マズくないか?

 

 そういえば以前、八津紫の兄で元レンジャーの対魔忍、現在対魔忍の裏方作業のほとんどを請け負っている(というかそうせざるを得ない)苦労隊……いや、九郎隊の隊長、八津九郎に会った時、「君には期待している。どうかそのままで一人前の対魔忍になってほしい」と言われたんだよな……。

 

「まあ、別にいいですよ。それより新しい任務は何ですか?」

 

「ええ、次の任務は……」

 

 今更対魔忍の脳筋ぶりにツッコミを入れても仕方ないので、俺は次の任務の内容を聞くことにした。

 

 アサギが言う新しい任務は、魔族の武装勢力に攻撃するので、突入班が攻撃を仕掛ける前にその武装勢力を偵察しろといういつも通りの任務。しかし任務に参加するメンバーに問題があった。

 

「偵察するのは俺で銀華が俺の護衛。それはいつも通りだしいいんですけど、突入班のメンバーがほとんどが未定な上に、五車学園の学生の中から選ぶ予定ってどういうことですか?」

 

 確かに俺や銀華、他にも学生のうちから任務についている対魔忍見習いはいるが、それでも魔族と戦わなければならない危険な突入班をほとんど学生で構成するなんてあり得ないだろ?

 

「それが……最近、小規模だけどいくつもの魔族の武装勢力が動いているの。だからその対処で人手が足りなくて……」

 

 俺の言葉にアサギは苦い表情となって答える。

 

 小規模の魔族の武装勢力が複数活動しているのは俺も知っている。しかしそれはほとんど学生だけで魔族と戦わせる理由にはならない。というかそうならないように人選を調整するのがアサギの仕事じゃないのか?

 

 そういう気持ちを込めてアサギを見ると、彼女は更に苦い表情となり、俺から視線を逸らす。

 

「と、とにかくこれは決まったことよ! お願いだから従ってちょうだい! ……いえ、従ってください」

 

 そう言って深々と頭を下げるアサギ。マジか? そんなに人手不足なの?

 

 しかし大の大人が中学生二人に頭を下げるなんて酷い絵だな。隣にいる銀華なんて俺にだけ聞こえる小声で「うわぁ……」とか言っているんだけど?

 

「……分かりました。その代わりに突入班に参加する学生、その何名かを俺が選んでいいですか?」

 

「貴方が?」

 

「はい」

 

 

 

 アサギは最初は渋っていたが、最終的に俺の提案を聞いてくれて、俺は今回の任務の突入班に参加する生徒のうちの四名を選んだ。その四名の生徒は……。

 

 相州蛇子。

 

 上原鹿之助。

 

 ニ車骸佐。

 

 そしてふうま小太郎。

 

 この世界の歴史、俺が前世で遊んでいた「対魔忍RPG」の中心人物達だった。


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