蜘蛛の対魔忍は働きたくない   作:兵庫人

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 ついつい忘れがちになるが、この仮想空間での生活は悟空の修行の準備運動みたいなものである。この仮想空間で悟空と魂で繋がりエネルギーを受けて、魂が加速した状態で死と隣り合わせの戦いを行なって自分の潜在能力を引き出す。これが悟空の修行だ。

 

 そしてその準備運動は突然終わりを迎えた。

 

 相変わらず悟空と八つ目のロボット、忌神と電磁蜘蛛&ライトイーター(二匹)が○ンバーマン対戦をしていて、電磁蜘蛛&ライトイーター(二匹)のチームがいつものように悟空達を爆殺していよいよ五百連勝に達成しようとしたその時、俺と銀華の体が急に薄れ始めたのだ。

 

「これは……!」

 

「体が、消える!?」

 

「キッ!? よっしゃあっ! 準備運動はこれで終わりじゃ! あとついでにこの勝負はノーカンじゃからな!?」

 

 俺と銀華の体の異常を見て、悟空が今さっきまで持っていたコントローラーを投げ捨てて嬉しそうに叫ぶ。

 

 ……大人気なさすぎだろ、この猿。

 

 内心で呆れていると俺と銀華は悟空と一緒に現実世界に戻ったが、電磁蜘蛛達と忌神の姿はどこにもなかった。

 

「え? 忌神達がいない?」

 

「安心せい。あ奴らだったら、お前さん達の中に戻っておる。心配は無用じゃ。それよりそろそろ修行の本番を始めるぞ」

 

 銀華の呟きに悟空が答えると、何もない空中にドアが現れる。そしてそのドアは僅かに開かれており、そこからは果てしない荒野が見えた。

 

「修行の本番……。私達はこれから敵と戦うのですね?」

 

「ほう? 知っておったか?」

 

 空中に現れたドアを見ながら銀華が言うと悟空が意外そうな顔となり、彼女はドア見ながら一つ頷いた。

 

「頼人先輩が言っていました。『仮想空間で生活するだけが修行だとはとても思えない。多分この後に実戦訓練みたいなのがあるはずだから覚悟しておいたほうがいい』って」

 

「ほほう?」

 

 銀華は仮想空間での生活の初めに俺がした原作知識からのアドバイスをしっかり覚えていたようで、それを聞いた悟空が面白そうに俺の方を見てきた。

 

「そこまで分かっておるのなら話が早い。今お前さん達はあの仮想空間で儂からのエネルギーを受けて魂が加速した状態になっておる。その状態で全力をもって戦うことで自らの潜在能力を引き出すのじゃ」

 

 そう言いながら悟空は扉の向こうの果てしない荒野へと入っていき、俺達もその後に続いた。原作ではこの修行を受けた横島はもう少しで本当に死んでしまう所まで追い詰められた。そんな修行を受けて俺は生き残れるのだろうか?

 

「……それで? 俺達はここで悟空先生と戦えばいいのですか?」

 

 原作での修行では巨大な猿と化した悟空と戦うという展開だったが、俺が質問すると悟空は首を横に振った。

 

「いいや。お前さん達の相手はこいつらじゃよ」

 

 そう言うと悟空は自分の体毛を数本むしり取って、それを息で吹き飛ばす。そして悟空の体毛が地面に落ちると、地面が盛り上がってそこから棒を持った猿の石人形(ゴーレム)が現れた。

 

 しかも猿の石人形(ゴーレム)は一体や二体ではなく数十体という大群……! ま、まさかこいつらと……?

 

「儂の毛を核に作った石傀儡じゃ。他者を呼び出して戦わせるお前さん達にはぴったりの相手じゃろ? 安心せい、儂の毛を使っていると言ったが、実力は儂の万分の一もありはせんわい」

 

 マジかよ、やっぱりこいつらと戦うの? 悟空の言葉は何の気休めにもならなかった。……俺、ここで死ぬかもしれない。

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