「オボロロロ………!?」
いきなり汚いシーンで大変申し訳ありません。先日、先輩の対魔忍に「君の忍法は偵察に向いているから、偵察任務の回数が増えるよ」とある意味死刑宣告をされた五月女頼人です。
今の声で分かると思うが、俺は任務の途中で胃の中身を盛大に地面にぶちまけていた。……重ね重ね、汚いシーンで大変申し訳ありません。しかしこれには事情があるのだ。
今回の俺の任務は魔族の情報屋から情報があった、下級の魔族達の武装勢力のアジトに対魔忍の先輩達が強襲する前に電磁蜘蛛で偵察をするという、いつもの任務だった。
それで電磁蜘蛛で魔族達のアジトに偵察をしてみると事前の情報よりも多くの魔族の姿が確認されて、俺はこれは流石に分が悪いので一度態勢を立て直すべきだと強襲する予定だった対魔忍の先輩方に進言した。するとその対魔忍の先輩方の中で最も腕が立つという、二メートル近い身長で身体中が凄まじい筋肉で被われたスキンヘッドの男の対魔忍が「多少敵が多くても問題無い」と、典型的な頭対魔忍(脳筋という意味)の発言をして一人で魔族のアジトへと突入していったのだ。
スキンヘッドの先輩が魔族のアジトに単独で突入してしばらく経った後で、今回も任務に同行しているさくらが様子を見てほしいと言ってきたので、俺は魔族のアジトに待機させていた電磁蜘蛛と視覚を共有させた。そして電磁蜘蛛の視覚を通して俺が見たのは……。
雄のオークに後ろから犯されてアヘ顔となっているスキンヘッドの先輩の姿だった。しかも犯されたせいで何かに目覚めたらしく、オカマ口調の大音量のアヘ声つきで。
それを見た瞬間、俺は即座に吐いた。あとついでにSAN値も大幅に下がったような気がした。
「さ、五月女君、大丈夫……?」
俺が何を見たのかを知っているさくらが俺の背中をさすりながら聞いてくる。見ればさくらと他の対魔忍の先輩方は同情するような視線を向けてきていた。
何だろう? 対魔忍の先輩方の、まるで腫れ物を扱うかのような雰囲気が逆に辛い。泣いてしまいそうだ。
「え、ええ……。とりあえず落ち着きました。……って!? マズイ!」
吐き気が治った俺はさくらに返事をしようとした時、魔族のアジトにいた電磁蜘蛛が重大な情報を察知して、それを知った俺は思わず大声を上げた。
「えっ? ど、どうしたの? いきなり大声を出して?」
「魔族のアジトに行ったあのスキンヘッドの先輩! 俺達の情報を魔族に話しているんです!」
「ええっ!?」
『『……………!?』』
俺が電磁蜘蛛を通じて知った情報を話すと、さくらと対魔忍の先輩方が驚いた表情となる。
「五月女君! それって本当なの!?」
血相を変えて聞いてくるさくらに俺は頷いて答える。
「本当ですって! スキンヘッドの先輩、自分を犯しているオークに『もっと欲しかったら、知っている情報を教えろ』って言われたら、ベラベラ俺達の事を喋って! それで今「ストップ! それ以上は聞きたくないから!」……そうでした。とにかく今こっちに魔族達が向かって来ています!」
「くっ!? 皆、作戦中止! 急いでここから離れるよ!」
『『はっ!』』
俺の話を聞いていよいよ不味いと悟ったさくらは作戦を中止して撤退を全員に指示。対魔忍の先輩方もこれに反対せず、俺達は大急ぎでこの場を去るのだった。
クソッ! やっぱり対魔忍の任務なんてロクなものじゃない!