ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているだろうか   作:空太郎

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エアくんのステイタスちょいと変えました。






13話『軟弱ヒーラーが通ります』

 

ベル・クラネル少年を追いかけてみたはいいが、どこにいったのかわからずに路上で棒立ちして雲がない澄み渡った夜空を仰ぐ。

 

 

ん〜ダンジョンかな?…ダンジョンだな。

 

 

一人で自問自答をして即さまにダンジョンと決めつけてからは行動が速かった。

 

 

ダンジョンの階層を1、2、3…と増やして行くごとに不安が募る。

 

 

安否が気になってしょうがない。

 

 

何故ベル・クラネル少年があんな焦ったような、どこか思い詰めたような表情で駆けて行ったのか。

 

 

その時の情景を思い浮かべて速度が一段階速まる。

 

 

4、5と階層をさらに重ねるがベル・クラネル少年らしき気配が一切しないのが怖い。

 

 

これ以上僕が下にいくのは危険すぎる。

 

 

だがしかし、ベル・クラネル少年がわざわざ階層の奥深くにいるとは考えにくい。

 

 

なら、やはり5階層より下、6階層にいると考えるのが妥当。

 

 

だからといっておいそれと戦闘力がバカみたいにないヒーラーの自分がいって運良くベルをすぐに見つけれて、運良く危なげなくダンジョンから離脱できるとかそんな強運は持ち合わせるわけない。

 

 

でも見捨てれないのが内情だ。

 

 

自分勝手で、周りを見ない行動だからといって見捨てる理由にはなり得ない。

 

 

純粋無垢で人懐っこいというかあの真っ直ぐにこちらを見るルベライトが自分的にはお気に入りだった。

 

 

あんなよくできた後輩ができて内心しめしめと思っていたし、神さまとだって「これからどんどん盛り上げていこうっ!」と冗談も交えてよく話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______…行こう。6階層へ

 

 

決心してすぐさま行動に移すのは長所だと思っている。

 

 

何もできないで立ち止まっているよかいい。

 

 

6階層に下りてゴクリと唾を飲み込む。

 

 

ここからはエイナ・チュール女史との勉強会でしか知り得ない領域なせいか緊張感が増して肩の力がなかなか抜けない。

 

 

何が起こっても全責任を背負う責任があってやっと冒険者と名乗れるとはよく言うたんもんだ。

 

 

それが今の僕の立場だと言うんだから恐ろしい。

 

 

もともと保身家で自分の周りがそこそこ平和ならまあいいやと思うタチだったというのに、何故にこんな危険なことに……

 

 

まあいいか、探そう。

 

 

と、キョロキョロとなるべくモンスターから見つからないように音を立てないように辺りを見渡してから恐る恐る目を瞑る。

 

 

本当はいつでもどこでもかっぴらいで危険を察知していたところではあるが、音に集中したいのだ。

 

 

エルフやその他の種族と違って人族(ヒューマン)は平均的で種族的には下の下な視覚や嗅覚を有している。

 

 

聴覚もその一つである。

 

 

でも、幼い頃からお師匠様から鍛え上げられた雑多な音が多い森の中から一つの音を探るよりかはこのダンジョンは"わかりやすい"。

 

 

そうすると音がかすかに聞こえてきた。

 

 

誰かがモンスターと戦う音。

 

 

ベル・クラネル少年…かな。

 

 

声的にそうだ。

 

 

なんというか心配しているわりには冷静に物事を判断できているような気がする。

 

 

聴覚もいつも以上に研ぎ澄まされているし、もしここでモンスターが現れたとしても真っ向から戦える自信も腹づもりもある。

 

 

連戦は厳しいけど、ベル・クラネル少年がすぐそばにいる。

 

 

いつもいつも頼ってばかりで申し訳ないとは思うけど、でも僕はそうしなくてはいけない。

 

 

僕の真髄はヒーラーとして、仲間へ回復をいち早くすること。

 

 

だから、見つけた奥の方で大量のモンスターと戦っているベル・クラネル少年の生傷を見てもいつも通り口からは癒しの言葉が端的に紡がれる。

 

 

「ハイヒール」

 

 

ベル・クラネル少年が生きていたことにひどく安心する一方、このモンスターが蔓延るダンジョンからなるべくモンスターとエンカウントせずに出ることができるかを素早く考える。

 

 

「ベル・クラネル少年!他に痛むところはない?少しでも違和感があったら言って。すぐ癒すから」

 

 

自分から見える範囲では癒したが、それでも見えない部分で怪我をしていたら僕には判断がつかない。

 

 

ということでベル・クラネル少年に聞いてみるが反応がない。

 

 

「ゼェ…ハァ…」

 

 

癒しはしたがヒールやハイヒールでは傷を癒す効果だけで疲れは取れない。

 

 

疲れは自然に治るのを待つか最近では練習でしか使っていなかったとある魔法。

 

 

「メディック」

 

 

「…!」

 

 

状態異常を治す効果がある。

 

 

どのくらいの効果までかは毒や麻痺を受けたことがないからわからないが、結構万能だと思う。

 

 

「どう?目が覚めた?ベル・クラネル少年」

 

 

「…エア、くん?」

 

 

「うんエアくんだよ。ベル・クラネル少年、地上に出よう。今の僕たちでは装備も心もとないしここは早い」

 

 

「…ッ。そ、そうだねっ!僕のせいでこんなところまで本当にごめんエアくん。後でちゃんと謝る。…それじゃあ危険だからすぐに戻ろうっエアくん!」

 

 

笑顔がわざとらしいというなんというか。

 

 

なんだか辛そうに見える。

 

 

「エアくん?は、早く戻ろうよ。ね?」

 

 

ジーと見つめていたら返事のない僕に不安になりながら急かしてくるベル・クラネル少年。

 

 

そんな彼に向かって口を開く。

 

 

「ベル・クラネル少年。何か、思うことがあったからここに…ダンジョンに来たんだろう?あの酒場での一件でベル・クラネル少年をそこまで掻き立てるようなことがあったのか、僕には分からなかった。そのせいでベル・クラネル少年の異変にも気付くのが遅れた」

 

 

「…ッ」

 

 

「ごめんね」

 

 

宝石のような紅みをおびた瞳が一瞬揺れる。

 

 

ここは6階層。

 

 

僕たちがこんな会話を余裕かましてできる場所ではない。

 

 

ベル・クラネル少年は人に頼らなさすぎる。

 

 

それは長所でもあるけど、短所でもある。

 

 

なんというか…世渡り下手そうだなって思うよ。

 

 

「別にエアくんが悪いわけじゃあ…!」

 

 

「なら話してよ。どう思ったのか」

 

 

ワケが知りたい。

 

 

「いやっ、でもそれは…っ!」

 

 

駄々っ子か。はよ言え。

 

 

「ッ……僕、は…っ」

 

 

「うん」

 

 

「僕はっ悔しかった!」

 

 

「…うん、そうだね」

 

 

僕もあのまるで僕たちのことを酒の肴にしていたような話され方されたらそりゃ腹にくるだろう。僕も表面は取り繕っていたけど内心は悪態つきまくりだったよ。

 

 

「エアくんが…バカにされてるみたいでっ……!それを言い返せないくらい弱い自分が!情けなくて、惨めで、滑稽で…!」

 

 

あっ、僕なのね。

 

 

「…そっか。なら、ベル・クラネル少年はどうしたい?」

 

 

僕は【ヘスティア・ファミリア】の団長。

 

 

「…強く……強くなりたいです」

 

 

 

そして彼、ベル・クラネル少年はそんな僕の後輩【ヘスティア・ファミリア】の団員。

 

 

こんなにも真摯に、尚且つ真っ直ぐに見つめて僕にどうしたいかを包み隠さず曝け出した彼の手助けを、いや力になるのが団長の務めだと僕は思っている。

 

 

「強くなってエアくんと肩を並べられるくらい強くなって英雄になりたい!!」

 

 

いやもう強さなら余裕に追い越してるよ。

 

 

僕を踏み台においきベル・クラネル少年って感じだよ。

 

 

ていうかベル・クラネル少年英雄になりたかったのか……なんか、いいな。

 

 

「僕も君と一緒に強くなりたいから、よろしく頼むよ。ベル・クラネル少年」

 

 

そう言って不敵に笑ってみせた。

 

 

「ッッ!!!!…ぜ、絶対!絶対に強くなるよエアくん!」

 

 

気持ちが高ぶって興奮でもしたのか、ベル・クラネル少年はボボボボと顔を真っ赤にさせて明後日の方向を見ながら宣言した。

 

 

どこ向いてんだよ。折角いい感じのところだったのに。

 

 

何故か慌てた兎のようになっているベル・クラネル少年がどうも可笑しくて思わず笑うのを抑えた。

 

 

そのせいで若干プルプルと体が震えているが、バレていないみたいだ。

 

 

で、現実問題に戻る。

 

 

さて、はよ離脱せねば。

 

 

モンスターの気配が辺りにちらほらと無視できないレベルで拡大してきていることに若干肝を冷やしながらベル・クラネル少年に「帰るか〜」と呑気に言って駆ける。

 

 

神さま、僕たちの帰りが遅いって起こりそうだな。

 

 

ホームに帰った時に怒り顔で「心配したんだからなぁ〜!?」と出迎えてくれるであろう神さまを思い浮かべて口元が緩んだのを隠そうとして帽子のつばを下げ…………ようとして頭にないことに今更気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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