ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているだろうか 作:空太郎
お師匠様は知識が豊富で、俗に言う大魔法使いというもので、僕の最終形態的な夢の総体図ですらある。
こんなのよりももっといいのを見つければいいとかそんなことを言わないでほしい。
僕の憧れはあなた以外にはいない。
そんなお師匠様との出会いはとても快晴な嫌味なくらいの陽射しが強い日だったのを今でも瞼の裏にこびり付いている。
結構なチビ助だった気がするが、何故か記憶が鮮明で、それがすごく衝撃的だったのをよく覚えている。
捨て子なんてよくいるもので、田舎もんなプロフィールに付け足しでもう一つ単語が追加されただけのことだ。
森にぽつんと身なりはそこそこにいたらしくて、気まぐれであるお師匠様は自分が好きな花の花弁の色に酷似した髪とその花の希少種とまで謳われている種によく似過ぎた瞳の色で育てることを決めたそうな。
もしその色ではなかったら完全に森に放置して森の糧にすることに決まっていたそうで、弟子なんて人生の間に作る予定などなかったらしい。
もともと魔物に殺されかけていた立場ではあったけど、瞬殺で助けられて、それで恩を感じはしたけど、自分に何もないことは理解はしていたから何かを返すことができなかった。
自分の命以外。
どうせ死ぬ運命だったので、僕は「助けて」ではなく「連れてって」と頼んだ。
これ以上は助けられなくても自前で生きていけなくてはまたこんな危機に陥ってしまう。
そして気まぐれな魔法使いはそれを承諾し、僕は育ち、そして育てられた森からオラリオに着て、あの頃と似たような危機に陥った。
結局は僕は凡人だったのを今にして理解が及んだ。
それをまた助けられた。
お師匠様はここにはいない。
育った家から出る時、初めて貰ったお師匠様からのプレゼントを被り、それに合わせた装備を纏い、僕は半人前以上を傘に着たまま目の前の少年のような見た目の男に助けられた。
強い。そう一言で済ませれるほどに洗練された技。
血を頭からかぶって白かった装備は真っ赤っかになった。
これが染色かーとかいつものようなふざけた思考は未だ停止中。
何故なら、「大丈夫かい?」とこんな獣臭くなった僕に手を差し伸べてくれる目の前の人に目がいってしまって逸らさないから。
その手を取れないでいると、「もしかして怪我をしているのかな?」と気に掛けてくれている。
だけど心配はいりませんだとか、ありがとうございましたとかのお礼は口からこぼれもしない。
彼が一撃で倒す一歩前くらいのところで足元を崩してしまい尻餅をついてしまったせいで、反動でベル・クラネル少年も一緒に道連れにしてしまったことは申し訳ないことだと思っているる。
そんな頭がうまく回っていない僕に本格的に心配をし始めた見ず知らずの人は小さな身体をしゃがみ込ませてこちらを上目遣いで見てくる金髪少年。
一瞬ほど見上げて見つめて以降目線を落としていた僕はいきなりドアップに現れたキラキラの本体に息の仕方を忘れかけた。
そして一言。
「あ、ありゅ、ありがとうございましたぁ!」
本当は「助けてくださりありがとうございました」と言うつもりだったというのに、何がどうなってこんな噛み噛みな言葉になってしまったのか。
顔が熱い。
未だに手を繋いでいたベル・クラネル少年の手をまた引っ張って僕は走り出した。
先程まで体力の限界を感じていたというのにアホなくらいにスピードが加速する。
これが俗にいう火事場の馬鹿力というものなのかもしれない。
若干使い所がおかしい気もしなくもなくもないかもしれないが、今そんなことよりもどうしても腑に落ちない音が僕の中で燻っていることに対してのみ頭を働かせていた。
なにか、僕の中でコトンと音をたてて落ちた音がした。
駆け足で出たダンジョンの外はあの頃と同じくらいに嫌味なほどの快晴な空が広がっていた。
だけど、何故か嫌な気分には全然ならなかった。