ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているだろうか 作:空太郎
ホームに帰れば神さまが「お帰り〜!エアくん!ベルくん!」と言って出迎えてくれて、勢いをつけすぎてしまったのか、反動で抱きつかれた。
「今日はなにもなかったかい?怪我は?」
「えーと、今日は危ないところもありましたけど、なんとか大丈夫です」
「本当かなぁ?エアくんはベルくんが来る前からよくそう言ってたからなー?」
信じられてない団長とか。
「あはは、大丈夫でしたよ。神様。確かに今日は命に関わりそうなくらいに危ないことはありましたけど、五体満足ですっ!」
笑い事じゃないよベル・クラネル少年。
「うん!ならばよし!」
結構同じこと言ってると思うんだけどどれだけ信じられてないんだ僕は。
「そうだ!今日はバイト先の人からジャガ丸くんを大量にもらったんだ!だから今日はジャガ丸くんパーティだっ!」
ドヤ顔でサムズアップする神さまに純粋ピュアピュアなベル・クラネル少年は「おお〜!」と喜んでいる。
しかしながら、ジャガ丸くんパーティは大体週二〜週三の周期でやっているような気がしなくもなくもない。
なのでそこまでテンションは上がらないが、食べれるだけマシだと思うタチな僕は甘んじて大量のジャガ丸くんに手をつけた。
ご飯を食べ終わった後はステイタス更新という日課が待っている。
上がってればいいけど…。
「よしっ!先にベルくんからにしよう!」
「宣言してるところ悪いですけどいつもベル・クラネル少年からですよ神さま」
「フッフッフ…ボクは楽しみはとっておきたいタチなんだよ!」
「へーそうなんですかー」
「興味なし!?」
早くやってあげてください。ベル・クラネル少年待ってますよ。目で訴えればすぐさま気づいた神さまはパッと切り替えて素早くベル・クラネル少年をベットに寝かせてまたがった。
側から見ればやばい図である。
方や少年、方や年齢不詳の幼女である。
何かが起こりそうで起こりえない目の前の状態を横目に次は自分の番なので厚着とまで言われた装備を一つ一つ脱いでいく。
「っ」
「どうしました?神さま」
「いや、なんでもないよ。少し手元が狂ったんだ」
「…そうですか」
顔が一瞬強張ったというか、驚愕に染まった風ように見えたのは錯覚だったのかもしれない。
なんてことなかったかのような顔で「はいおしまーい!」と神さまがベル・クラネル少年の背中をバシン!と叩いているのを見て苦笑いを漏らす。
「次はエアくんの番だね!」
手をワキワキさせるのをどうかやめてほしい。
内心そんなことを思いながら先ほどベル・クラネル少年がうつ伏せになっていたところに同じようにうつ伏せになる。
「いやーもうさーいつもは肌をなかなか見せない気になるあの子が珍しくなかなか見せない白い肌色を見られるとか、あまつさえ触れるとか役得だよねー」
「なに1人でブツブツ喋ってんですか」
「いやー一応君の『神さま』だというのに当たりが強いねードライってやつだね!」
独り言の多い主神の言葉を右から左に流す作業をしながら明日のことを考える。
本当は油断とかではないのだけど、ダンジョンではやはり一歩、二歩、いや三歩くらいまで先のことを見据え、危機感を持たなければいけない。
だから、僕はベル・クラネル少年とならもう少し下の階層を行けると思っていたし、エイナ・チュール女史のお説教を聴きながら心配しすぎだし、あんなイレギュラーはなかなか起こりえないと僕は"ちゃんと"油断している。
どちらこというと『余裕』なのだけど、ここは敢えて『油断』だ。
僕よりも理性的で、時たまに冷静を欠いてしまうベル・クラネル少年の方が幾分か団長に向いている。
僕はどちらかというと支える方が得意なのだ。
それに……______
「…ねぇ、エアくん聞いてるかい〜?」
「すみませんなんの話でしたっけ?」
「いやいや、あとで2人で話したいから外に行こっかって…」
「ついに手を出すか」
「待って?まだやらないからね?まだ」
まだとは。
度々怪しい行動というか危ない言動が多い神さまの言葉は、真剣な時以外は大抵聞き流すのが僕的主流だ。
ベルくんにはちょっと散歩してくるからって伝えといたから大丈夫だよ!とまたお馴染みのサムズアップを披露する神さまに真剣な話なのかもしれないと内心思った。
2人で話すってつまり、密会のようなものなのだろう。
そしてホームとして使っているオンボロ教会の外に出てすぐに神さまは口を開いた。
「ベルくんのこと……と、君、エアくんのステイタスについてだ」
「ステイタス……何か発現でもしましたか?」
「…ああ」
スキルか魔法かはわからないけど、2人同時で発現はなかなか珍しいだろう。
だけど珍しいだけならベル・クラネル少年にも伝えれるはず。
なのに伝えれないと判断して団長である僕にこうやって話ずらそうにしているのはもしかしたらヤバイものでも発現したのかもしれない。
それが良いもので悪いものであれ僕は団長たがら聞かなければいけない。
そして判断をしなければいけない。
「聞かせてください」
「…うん、じゃあまずエアくんのからかな。一先ずこれを見てもらいたいんだ」
ペラっ
先ほどの自分のステイタスを写した紙と似通った紙を渡される。
だけど記入欄が増えていて、スキルの欄が先程までなかったのだが、書かれていた。
僕の元々のステイタスは…
エア・ウィッチ
Lv.1
力:G 258
耐久:G 210
器用:F 347
敏捷:G 269
魔力:D 501
《魔法》
【
・付与魔法
・知識を増やし、習得すれば二倍の促進で成長する
・使えない魔法はないが使えない質は身の丈と同義として扱う
《スキル》
【】
だったかな。
【
最高がどのくらいなのかはわからないが、神さまがこれを初めて見た時はたいそう驚いていた。そして言葉の意味はよくわからなかったけど「チートかよ!?」と叫んでいたのを覚えている。
で、今神さまからもらった紙が…
エア・ウィッチ
Lv.1
力:G 255→258
耐久:G 209→210
器用:F 344→347
敏捷:G 242→269
魔力:D 493→501
《魔法》
【
・付与魔法
・知識を増やし、習得すれば二倍の促進で成長する
・使えない魔法はないが使えない質は身の丈と同義として扱う
《スキル》
【
・地肌に触れることによって魔力を供給できる
・与えることもできるが与える場合は並行して魔力も減る
・オンオフ関係なく微量ながら自然から供給できる
結構すごいものかもしれない。
神さまは未だ顔を強張らせていたのを唐突に懐柔させて僕を見つめている。
「これは…あまり外聞にしたらいけないですね……」
「うん、だからこれだけは言わせてもらうよ。次に見せるベルくんのステイタスも君と同じくらい。いや、もしかしたらそれ以上に規格外なものになっている。だから、ベルくんには教えることができない……」
そう言ってもう一枚同じ品質の紙を渡される。
ベル・クラネル少年のステイタスが書かれている紙だ。
ベル・クラネル
Lv.1
力:I 77→82
耐久:I 13
器用:I 93→96
敏捷:H 148→172
魔力:I 0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・早熟する。
・懸想が続く限り効果持続。
・懸想の丈により効果向上。
たしかに、これはダメだ。
とても有望なスキルなだけにベル・クラネル少年に伝えれない理由に足り得る。
「ベルくんは純粋すぎて嘘がつけない。つけたとしてもバレバレだし」
「ですね」
わかりやすい性格なだけに不都合もある。
その分を僕が補っているわけだけれども。
「一先ずこのスキルの情報は口外しませんし…ていうかできませんね。引き抜き大戦争とか勃発しそうですしね」
「あはは…よろしく頼むよ」
早々に想像ができてしまうのだから怖い。
後輩が両手でも足りない神々に追いかけ回されている図を脳裏に思い浮かばせるだけでなんとも言えなくなる。
まるで哀れなうさぎを一心不乱に狩ろうとする狩人の図である。
さて、今日はとても濃い1日だったな。
神さまとなんてことなかったかのようにケロっとした様子で教会の奥の部屋に行けばソファでソワソワとして待っていたベル・クラネル少年が待っていた。
神さまが事前に変えていたスキルの欄が空欄なステイタス表を持って笑顔でこちらに見せてくる後輩を守るのは先輩の役目であり、使命でもある。
「そろそろ寝よっか」
「だね」
「そうしよっかー」
ベル・クラネル少年とお喋りしていた僕がそう口火をきればベル・クラネル少年は頷いて寝る準備を整え始める。
神さまは読んでいた本をパタンと閉じていつものベットに潜り込む。
神1柱人2人が全員ベット使えるわけは元々備え付けられていた1つのベットプラスにお師匠様のところにいた時に何回も壊されたベットを直していた技術で新たにもう一つ作った。
費用の関係と部屋の広さでもう一つは無理だと判断して一応性別は女らしい神さまに二つのうちの一つのベットで、もう一つは僕とベル・クラネル少年がまだ未発達な体を活用してそこまで狭々しくなく寝ている。が、
今回はどうやらいつも通りの睡眠はできないようだ。
「ぼ、僕はソファで寝るね!」
「え?なんで?」
いつもはそんなことを言わず愚痴すら零さないベル・クラネル少年が唐突にソファで寝ると言い出した。
「やっぱり狭かった?僕がソファで寝るよ」
「い、いやいや!今日はソファで寝たい気分なだけだから!大丈夫!」
なぜか挙動不審だけど特別嘘というわけでもなさそうだから「そっか」と未だに疑問に思いつつも納得することにした。
少し広くなったベットに寝そべった。
そうして眠りについた。
エアくんのステイタス若干変わりました