ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているだろうか   作:空太郎

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神様って面白いよね、ある意味。


9話『ウラヤマってどこ?』

 

 

あのやり手の酒場の従業員さん、名前は確かシル・フローヴァさんとの約束を果たすため今夜ということでとても盛り上がっていて外まで笑い声や武勇伝を語る声が轟いている。

 

 

そのBGMを右から左に流しながら先程喧嘩別れしてしまった神さまのことを思い返す。

 

 

いつも通りダンジョンから帰っていつも通りベル・クラネル少年からステイタス更新を行い、多分ステイタスの上がり具合がすこぶる良かったのだろう。

 

 

一瞬息を飲んだ神さまはゆっくりとベル・クラネル少年に気付かれないように僕の方に視線をよこして【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】による経験値(エクセリア)の異常な上昇を視線だけで告げた。

 

 

わかってはいたが、どのくらい上がったのかまだわからない分頷くことしかできなかった僕は神さまにスキルの欄が隠されているステイタス表が記された紙を見て目を丸くしてわかりやすく驚いていた。

 

 

ベル・クラネル少年から笑顔で紙を顔面に受けながらちゃんと見てみたら確かにこの上がり具合やばいなってぐらいになっていて、冷や汗を流しながら考え混んでいる神さまにベル・クラネル少年は何回か核心をつくようなことを言っていて、危なっかしい神さまはそれでもちゃんと神さまなようでなんとか誤魔化していた。

 

 

問題はここからだ。

 

 

「さーてお次はお楽しみのエアくんだねー?」

 

 

誤魔化しついでに変態チックに手をウニョウニョと動かしてこちらににじり寄る神さまに若干引きながら、いつも通りベットにうつ伏せになる。

 

 

「じゃあいくねー」

 

 

「はい」

 

 

そして数十秒経って、いつもならこのくらいに神さまははい終わったよ!と元気に終了の宣言をしてくれるはずなのだが、珍しく無言状態が続く。

 

 

「……」

 

 

「神さま…?」

 

 

うつ伏せになっているせいで神さまが今どんな状況かわかっていないが、それよりもいつもいつも騒がしいったらない神さまが沈黙しているのが一番恐ろしい。

 

 

そして数分経って、この異様な状況に未だ気づいていない希代の鈍感な後輩ベル・クラネル少年からの援助もないまま神さまは静かに復活した。

 

 

「…………エアくん」

 

 

「えっ?あ、はい」

 

 

「ちょっと裏山行こうか?」

 

 

「…ないですよそんな山」

 

 

こんな都会のしかもオラリオのどこに山があるっていうんだ。

 

 

神さまの頭はいつも通りのようで、残念極まる。

 

 

その後からだろうか?目に見えて神さまが不機嫌になり始めて、理由がわからないまま神さまは僕にステイタス表を渡さずにバイト先の打ち上げに行ってくるから2人で仲良く羽を伸ばして寂しく豪華な食事でもしてくればいいさっ的なことを言って出て行ってしまった。

 

 

なんか言葉矛盾してない?

 

 

仲良くと寂しいって普通言葉として両立させるかな?…まあ、いっか。

 

 

そして今、あれよあれよとやり手の酒場従業員であらせられるシル・フローヴァさんから大食漢の烙印を押されている僕たちは誤解を解く気もなければ、当事者ですらある性格魔女なシル・フローヴァさんに色々と抗議していた。

 

 

抗議と言ってもボケとツッコミの応酬という可愛らしいものだけど。

 

 

ベル・クラネル少年は本気ととっているだろう焦ったようにシル・フローヴァさんにそんなにお金ありませんっ!と何回も言っていたが、ああいう笑い方をする人に限ってこういう少し困るような悪戯をするのだ。

 

 

あれは多分常習犯の犯行だろう。

 

 

なんとか落ち着きを取り戻して、それでも目の前に出された量の多めなパスタに僕は静かに目頭を押さえた。

 

 

「楽しんでいますか?」

 

 

「…圧倒されています」

 

 

ベル・クラネル少年が皮肉を垂れるくらいには成長を遂げた頃にはパスタは半分近く減っていて、これからが問題だと再度フォークをギュッと握った。

 

 

それにしてもここ『豊穣の女主人』には名前通りなのかなんなのか女性の従業員しかいない。

 

 

奥でせっせと料理が作られている厨房の方も、お客さんが注文を言いそれを聞き取り厨房の方に注文の商品を報告しにいくウエイトレス。

 

 

そのどれも女性だ。

 

 

よく見ればエルフの人もいる。

 

 

多種族が混在しているんだなぁと感慨に耽っても現状は変わらないし、ベル・クラネル少年はなんとか食べきっていたパスタの皿を見てホッとしていた。

 

 

どうしよう。まだ三分の2くらいしか食べれてない。

 

 

限界も近いし大丈夫か心配すぎる。

 

 

と、シル・フローヴァさんに仕事どうしたと言いたくなるほど笑顔でずっとこちらに応援されているのを横に一口お冷を口に含んでフォークをまたギュッと握った。

 

 

そしてパスタと改めて対面したのと同時に、目の端にそれはうつった。

 

 

黄金色の髪に少年のような小さな体躯、そして意志の強そうな碧眼。

 

 

目が合ったわけではない。

 

 

でも確かに、自分の身体が一気に沸騰したように熱くなって、鼓動が早くなって、意味も分からずすぐに邪魔になるからと横に置いといていた愛用のとんがり帽子を被りたくなった。

 

 

なにこれ、また…?

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