ダンジョンに英雄を求めるのは間違っているだろうか   作:空太郎

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初めてのベルくんside


10話『僕じゃダメ、なのかな』

 

 

 

 

シルさんはとても意地悪な人だ。

 

 

嵌めるとは意味合いが違うかもしれないけど、とても強かな性格をしてると思う。

 

 

商売上手なんだと思う。

 

 

そしてそれにまんまとハマった僕たちは『豊穣の女主人』という酒場のあまり目立たない奥のカウンター席に座った。

 

 

隣には言わずもがなエアくんがいる。

 

 

エアくんはお金の心配をしつつ多分…大丈夫だと思う。と目を逸らしながら言っていたから、ここはいつもお世話になっているお礼として僕が出そう!と意気込んでいると……ヤバイもんが運ばれてきた。

 

 

ちょっとどころじゃない多さのパスタが出てきて、そこでやっと大食漢という誤解があることに気づいて、思わず口をポカンッ…と開けて固まってしまった。

 

 

隣にいるエアくんを見てみると、早くもフォークを持ってまるで死地に行くような雰囲気でそこにいた。

 

 

思わずそれに対して目を離さないでいるとこの誤解の当事者である魔女…じゃなかったシルさんがニコニコと「どうですか?」と聞いてきた。

 

 

エアさんは知らんぷりをしているのか、それとも集中していて聞こえていないのか返事がない。

 

 

でも僕は物申したくて、なんだかそれもどうかと思って「…圧倒されています」と皮肉を込めて返すだけに留めた。

 

 

それから黙々と食べながら今の時間帯は仕事があまりないのだと言って、この酒場の店主だという女将さんのミアさんに了解をとって僕に話しかけてくるシルさん。

 

 

シルさんは特にエアくんに話しかけていたけど、もともとあまり離さない人、これってクール?って言うんだっけ?そう神様がよく言っていたはずだけど、そんな憧れる一面のあるエアくんは頷いたり短く返事をする程度でシルさんはムーと不満顔だった。

 

 

僕はそれを見て僕とだけ溶けない無表情が少しだけ綻んでいるのがひどく優越的で内心ドキドキしていた。

 

 

でも、シルさんの話を聞いている限りここの酒場の話とか、従業員のとか冒険者がよくきてその人たちを観察することが、知らない人たちと触れ合うのがちょっと趣味になってきているのだと聞くと、なんだ結構すごいことを言っているように聞こえる。

 

 

そんな風にシルさんのジョークも交えてエアさんも入れて話し合っていると、ふと、僕の位置のちょうど対角線上の、ぽっかりと席の空いた一角が見えた。

 

 

あそこってどうしたんですか?とシルさんに聞こうとしたら、突如どっと十数人規模の団体が酒場に入店してきた。

 

 

店員が予約客のファミリア名を声高に言って予約客である【ロキ・ファミリア】を案内している。

 

 

そう、あのかの有名な【ロキ・ファミリア】だ。

 

 

しかも昨日ちょうどそのファミリアの団長に助けられた。

 

 

ここはお礼を再度言い直した方がいいのか。それとも迷惑になってしまうのでは??と思案していると隣に少し違和感を覚えた。

 

 

いつもの悠々とした雰囲気でそこに立っているだけで目を奪われる日の光を溶かしたような金眼がこれでもかっていうほど見開いていて、しかも少し顔が赤いようにも見える。

 

 

もしかして…と思ってエアくんが見つめる先にある人を睨むように探す。

 

 

と、エアくんの目線の先に目をやっていたら、バチっと目が合った。

 

 

''女の人"だ。

 

 

線の細い金髪が店内の照明に照らされていてキラキラと輝いているような、そんな美少女だった。

 

 

で、ここではたと気づいた。

 

 

エアくんの視線の先を見やって目が合ったということは、つまりはエアくんが未だに目をそらさないで見つめる先にいたのはあの女の人。

 

 

つまり、つまり、つまり…_________

 

 

なんだこの感情?

 

 

まるであの時の自分とひどく酷似しているようだと僕は思ったのか…………?

 

 

なんだそれ。

 

 

じゃあ僕はこの瞬間に失恋でもしたとでもいうのかよ。

 

 

頭の中で葛藤のような思考の渦に呑まれながらも初めて見たエアくんの横顔から目が離せない。

 

 

「そうだ、フィン!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

 

「ん?あの話?」

 

 

「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、そん時いたトマト野郎の!」

 

 

そして、金髪の女の人の席が2つほど離れたはす向かいにいる獣人の男性の酔った勢いとでもいうような話し声からも、なんだか耳が離せなくなってしまった。

 

 

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