1.
私の名前は
「新しい学校楽しみだなぁ!」
「あれ、お姉ちゃん前と違って学校に対してすごい前向きな感じじゃん!」
「妹よ、私はもう前の私ではないぞ…!!今の私は…」
「はいはい、わかったわかった。お姉ちゃんは進化しましたよーっと」
「なんか適当だな……」
叶は妹に小声でそう言い返し、一階の居間から二階の自分の部屋へと戻っていく。そしてベッドに横になって眠りについた。
翌朝、叶は通学カバンに必要な物を入れ、新しい学校へのワクワクが抑えきれないのか、朝食を済ませずに家の外へ出ていった。
「遂にきた!私の新生活!!今回は絶対に充実な学校生活を送ってやるぞー!!」
と、叶が通学路を歩いていると、道端にウサギのぬいぐるみみたいな物が落ちていた。
「何これ、ウサギのぬいぐるみ…?でも、ぬいぐるみにしては妙に生きているような感じがするし…」
「ユ……ヨ…ロ…」
「え?」
「ユメの…ヨ…ロイ…!!」
「うわぁ!?ぬいぐるみが喋ったり動いたりしてる!?」
ぬいぐるみらしき物は小声でそう呟きながらゆっくりと目を開けていく。そして叶の顔をじっと見つめる。
「あなたは?」
「いやいやいや、あなたこそ何!?ぬいぐるみが喋るなんてありえない…」
「失礼な、私はぬいぐるみじゃない!!ムドリン、音鎧 正吉おとがい しょうきちに作られた高性能小型AIロボット!」
「音鎧 正吉……って私の叔父さんだけど…」
「えっ?って事はまさかあなたが音鎧 正吉の姪の音鎧 叶!?」
「そう…だけど?」
ムドリンは叶が自分を作ってくれた音鎧 正吉だと知り、凄く驚いていた。
「…っていうか、叔父さんを知ってるなら今、どこにいるのか教えてよ!」
「分からない…けど、作られた場所ならなんとなく覚えてる」
「どこなの?」
「紋章が壁に書かれている場所…」
「紋章…紋章はどんな感じだった?」
「確か…紋章の中央部に夢って漢字が書かれていた気がする」
ムドリンは自分が作られた場所を微かに覚えており、叶に覚えている範囲の事を話した。
「なるほど……ってもうこんな時間!?早く学校に行かなきゃ!!」
「えっ…僕も連れてくの〜!?」
叔父について話をしていた叶だったが、ふと自分の腕時計を見てみると時間は既に遅刻ギリギリだった。初日から遅刻するのはマズイと思った叶はムドリンを掴んだまま学校へと向かっていった。
学校…
何とか遅刻数分前に学校の正門前へと辿り着いた叶は正門の壁に刻まれている校名を見る。
「夢…見…学園…かぁ!」
そう、叶が新しく通う学校は夢見学園。ここ、夢見学園では禁じられた行為である"夢を持つ事"が許されているらしい。だが、"夢を持つ事"を許しているのは学校だけであり、国は許していないので夢見学園は国は勿論、ドリムポリスと呼ばれる警察達からも目を付けられている。
その後、教室前まで来た叶は担任の"新しい仲間を紹介します"というセリフの後に1ーAの教室へ入っていく。
「じゃあ、紹介するわね。この子は音鎧 叶!」
「はじめまして、音鎧 叶です!」
ソワソワソワ.....
「(あれ、変な事言ったかな?私…)」
入った時からだったが、皆、ずっと叶の方を見て隣の席同士でコソコソと何か話していて、叶は今、皆がコソコソ話していることに気付いた。
「あ〜!音鎧さん、名札反対よ!」
「えっ、そんなはずは…って本当だ!」
皆がコソコソ話していたのはどうやら、叶の名札が反対で変だったからのようだ。叶は苦笑いしながら制服の名札を正常位置に直していく。そして先生に自分の座る席を聞く。
「先生、私はどこに座ればいいですか?」
「音鎧さんの席ねぇ…あ、丁度空野さんの隣が空いているわね!音鎧さん、空野さんの隣に座って!」
「分かりました!」
叶は自分の席へ歩いていき、叶が入った時からずっと外を見ている隣の席の空野に声をかけてみた。
「これからよろしくね!」
と、叶は元気よく空野に挨拶をした。空野はこちらを向き叶に"こちらこそよろしく!"とかいうよくある返事をすると思ったが、返事ではなく、何かを話し始める。
「あなたはまだ知らない…夢の力を持つ者がどれだけ肩身の狭い生活を送っているかを…」
「どういう事?」
「まぁ、いずれ知る事になるわ。だってあなたは"音鎧 正吉の姪"だから」
空野はそう言い、席を立って廊下へと出て行ってしまった。叶は空野にまだ朝のホームルームの途中だよ!と言おうとしたが、いつの間にかチャイムが鳴り響いており、皆、休み時間に入っていた。
「叔父さんの名を知っていた…。あの子は一体…」
叶は空野が自分の叔父の名前を知っている事を不思議に思いながら廊下へ出ていく。すると、廊下へ出た瞬間、制服のポケットの中からムドリンが出てきた。
「懐かしい感じだ…まさか、ここが…!」
「こら、勝手に出て来ちゃダメでしょ!」
叶は勝手にポケットから出てきたムドリンを軽く叱り、再びポケットの中へとしまう。
その頃、町外れにあるソニード・アルマと呼ばれる組織の施設では1人の男が施設内の柱に拘束されている男性の元へ歩いていた。
「夢の鎧の力を感じる…さぁ、君の出番だよ」
「俺を縛ってどうするつもりだ!!夢の鎧の力なんてどうでもいいだろう!」
「どうでもよくないんだよねぇ…」
男はそう言いながら、柱に拘束されている男性の体内に恨という漢字一文字が表面に書かれたバッテリーみたいなものを差し込んでいく。
「うっ…ぐっ…うわぁぁ!!!」
男性の姿は蜘蛛のような姿に変わっており、人間と言える要素は何一つ無くなっていた。
「いいじゃないか!んじゃ、頼んだよ。スパイダー・オミクロン」
この怪物の種類名はオミクロンというらしい。スパイダー・オミクロンは男の声と共に夢見学園の方へと向かっていった。
怪物が向かって来ているのを知らずに叶が廊下から外の景色を眺めていると、またポケットの中からムドリンが出て来た。
「ムドリン、出て来ちゃダメだって!」
「いや、分かったんだ。ここは私が作られた場所…でも、部屋はどこにあるか分からない」
「隠し部屋でもあるんじゃない?」
「隠し部屋か…そういえば、私の身体には私自身でも解けない暗号入力画面があったような」
ムドリンは隠し部屋と聞いて暗号を連想させ、自分の身体に暗号入力画面がある事を思い出す。
「暗号入力画面!私が暗号打っていい?」
「いいけど、解けるわけが…」
叶は015,045,111,012と暗号を打った。すると、どこかから扉が開く音が聞こえて来た。
「正解みたいだね!」
「何で分かったの!?」
「音鎧一族にだけ言えば伝わる共通の暗号があってね…」
「凄い…」
「んじゃ、扉が開く音がした方へ行こうか!」
叶はムドリンに暗号がなぜ解けたかを説明し、ムドリンをポケットにしまってから音がした方へ向かっていく。
「こんなところに扉があったんだ…!」
「叶、とりあえず中に入ってみようか」
普段は上がるのが禁止されている屋上の階段上に来た叶とムドリンは壁の食い込んだ所に中へと繋がる場所があるのを見つけた。どうやら、叶に開けられる前まで隠し部屋の扉は普通の壁に隠されていたようだ。叶とムドリンは部屋の中へ入っていく。
「ここだ…私が生まれた場所!!」
「ここが叔父さんの部屋…」
叶は部屋を見渡していく。そして部屋の大体を見終わり、近くにある机の上に目をやるとそこにはバッテリーのようなものと腕に装着するであろうブレスレット型の銃があった。
「ねぇムドリン、これは何?」
「それは……まさか、ドリームチェンジャー!?」
「ドリーム…チェンジャー?」
「そう、それはドリームチェンジャー。夢の力を持つ者だけが使える代物だよ!」
「へぇ〜!私は使えるかな?」
「分からない。だけど、叶が夢の力を持っていれば必ず使える!まず、左腕にドリームチェンジャーを当ててみてくれ!装着出来れば叶は夢の力を持っている事になる!」
叶はムドリンに言われた通り、ドリームシューターを左腕に当てる。すると、叶の左腕にドリームシューターが巻かれていき、装着完了した。
「うぉぉ!!装着出来たよ!!」
「流石は音鎧 正吉の姪…!彼女ならこの国を変えれるかも!」
ムドリンはドリームチェンジャーを装着出来て喜んでいる叶を見ながら小声でそう言う。と、叶とムドリンが暫くの間、部屋に留まっていると学校の外から崩壊音が聞こえてくる。
「この音は何!?」
「現れたか…叶、学校の外へ行くよ!」
「えっ。あ、うん、分かった!」
崩壊音を聞いた叶とムドリンは学校の外に出る。学校の外に出るとそこには蜘蛛の姿をした怪物がいた。
「あれは!?」
「オミクロンだ。恐らく、ソニード・アルマの奴らが作ったんだろう…」
「オミクロンやソニード何ちゃらとかよく分からないけど、倒さなきゃ!…ってどうすればいいんだっけ」
「叶、まずはドリームチェンジャーの中央の装填部にこれを装填して!」
「こう…かな?」
叶はムドリンに言われた通り、ドリームチェンジャーの中央の装填部に先程、ドリームチェンジャーと一緒に置かれていたバッテリーみたいなものを装填する。
「そしてドリームシューターの左サイドにあるトリガーを引いて変身して!」
「これか!よし、行くよ!変身!!」
叶はドリームチェンジャーの左サイドにあるトリガーを引いてプリキュアへと変身していく。
【ドリームーブ!】
〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉
「うわぁ!変身しちゃったよ、私…!」
叶はキュアアームド マイナーへと変身した。叶は自分がプリキュアに変身出来て大喜びのようだ。
「叶、プリキュアの力で敵を倒して!!」
「了解!」
叶はスパイダー・オミクロンへ向かっていき、十分に近付いた所でドリームチェンジャーのトリガーを何回も引き、スパイダー・オミクロンに向けて光弾を数発放つ。
「凄い!これが私の夢力!」
「ユメチカラって何?」
「私を前へと導いてくれる魔法のワードだよ!」
「な、なるほど…んじゃ、その夢力で必殺技を決めてみて!」
「了解!…私のフル夢力受けてみろ!」
叶はそう言いながら、ドリームチェンジャーの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。
「プリキュア・マイナー・ブレイク!!」
叶は必殺技を発動させた後、必殺技を放つ準備が完了したドリームチェンジャーのトリガーを引いてスパイダー・オミクロンに向けて長い光弾を放つ。
「決まった!!」
「ぐわぁぁぁ!!!」
スパイダー・オミクロンは浄化されて普通の男性へと戻っていった。叶は元に戻った男性をを近くのベンチに座らせ、校内へと戻っていく。
叶が校内へ戻ると、そこには空野がいた。空野は叶に何かを話したいのか叶の方へ歩み寄っていく。
「音鎧 正吉の姪であり、プリキュアになったあなたはこの国を変える
「ラスト・ホープ?」
「とりあえずあなたはドリムポリスと夢零学園の精鋭に気をつけなさい」
空野は叶にそう言い、どこかへと行ってしまった。叶は空野の話をあまり理解できなかったが、自分が何かに狙われる事になるというのは分かった。
「ドリムポリス、夢零学園ねぇ…まぁとりあえず、いつ敵が来てもいいように身構えるとするか…」
怪物が現れた影響で学校が早く終わった為、叶はムドリンと共に自分の家へ帰り、いつ敵が来てもいいように身構える事にするのだった。
to be continued.......
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設定は後日、投稿します!