俺のドラゴンなボールが無い転生 作:DB好き
「ウハハハハハハハッ! おい、ターレス! こいつ等ドラゴンボールを長老の家っぽい所に御大層に飾ってあったぞ。探す手間が省けたわマジで!」
ビナスは両手でドラゴンボールを掲げながらターレスにアピールする。ターレスは難しい顔をしながら腕組みをし「こいつ等どうするんだよ?」と倒れているナメック星人達を一瞥する。
ビナスは訝しげな顔をし、ナメック星人達がいないかのように踏みつけながら最短距離でターレスの下へ行き「え? 何? 良く聞こえんかった。もっかい言って」と言った。
ターレスは軽く空笑いをした後「おいおい、お前マジかよ」と引き気味の声色で言った後で改めてナメック星人達をどうするのか問うた。
「え? …………あぁ、こいつ等? ほっときゃええやん。普通なら丸1日寝とる位の力でやったけれど、再生力高いから半日で起き上がってくるやろうな、その前にさっさと二手に分かれて行こうぜ」
ビナスは何でもないように言い、それを聞いたターレスは片手で頭を抱えて溜息を吐いた。
「えーっと、確かお前は平和的でスマートな交渉を見せてくれるんだったよな? 俺の目には暴力的で馬鹿な交渉のように見えたが……それは俺の勘違いか?」
「うるっせぇ! こっからは電撃戦や、さっさと集めんぞっ! 俺は西ぃ! お前は東や! 一目でめっちゃ調子乗っとるって分かる家は最長老の家やからそこは最後やぞ!? 行くぞオラァ!!」
ビナスはそう言うと気を最大限に上げ、倒れている少年を無造作に掴んで西に高速で飛んで行く。ターレスはそれを見ながら「あいつマジかよ……。後、調子乗ってる家ってどんなのだよ」と呟く。
そして倒れているナメック星人達を一瞥して「武人や女としてなら文句無いんだがなぁ」と頭を掻いた後、半分の力で東へ向かって飛んで行きながらやはりビナスは何でもありなら最強だと改めて思った。
ナメック星人たちが倒れている理由は一時間前まで遡る――――――。
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プシューっと空気が抜けるような音がしながらポッドの扉が開き、俺はよっこらセックスと身を乗り出してナメック星の第一歩を踏み出す。空を見上げると、まだ降下中のターレスのポッドと、テニスボール位の大きさに見える衛星があった。
おっとっとぉ、あんまり見ると大猿になってまうから目線外しとこ。1回侵略した後にボーッと半分寝ながら空見上げとって気がついたら大猿になってたからな。一瞬横におったターレスがちっちゃなってもうたと勘違いしてビックリして声上げたわ。
目が覚めたアイツもビックリして大声上げてから全力の気弾放って来よったからな。あんま痛くなかったけれどムカツイて叩いたら30km位地中に埋めてもうたわ。発掘して介抱したったけれど……、女々しい奴やで帰った後もメッチャ不機嫌でグチグチ言いやがってからに。
それにしても外で寝るときターレスがいつも横向いて寝とったのはこういうの防ぐためやねんな、後で聞いて感心したわ。
それにしても周りに何にも無いなぁ。あるのは草とまち針みたいな木と水、澄んだ空気くらいか……。んー、これは若い女限定のヌーディストビーチ位しか活用無さそうやな。
そうなると、オーナーは勿論のこと俺やろ? 凶器隠してあるかもしれんから、安全のためベッドと風呂がある部屋でじっくり取り調べんとあかんな。
そんで遅効性で依存性のある媚薬入りの食い物と飲み物、そんでローションと日焼け止め用意せんとな。クククッ、えーやんけ……「おい、何ボーッとしてんだよ」何やねん! 目の前で指をパチパチ鳴らすなや!
「取り合えずすぐ近くの集落から行こうぜ」
「ん? おー、せやな。お前はすぐ手ぇ出すから俺が平和的、非暴力でしかもスマートな交渉であっさりとボール貰たるわ」
「………………ここまで成功しねぇって気分になったのは生まれて初めてだぜ」
心配性やのーこいつは。言うつもりは無いけれど、俺は先進国でも治安がトップクラスの国で生まれた元日本人やぞ! 今じゃ考えられへんけれど楽しい喧嘩も命のやり取りもせぇへんかったからな。そんな俺を見たらナメック星人は『おお、何と純粋で清い心をお持ちなのでしょうか! 目を見れば一目で理解致しました。どうぞどうぞこのドラゴンボールは貴女様にあげましょう』ってなるやろうな~。
ちょれぇわマジで。
「大丈夫や! チョロっと話して長老が言う試練受けたら貰えるわ。楽勝やで!」
ターレスは胡散臭せーと言いたそうな顔をしながら「本当かよ、それ……」と言いながらも俺についてくる。まぁ、こいつの心配もナメック星人が俺にボールを素直に渡す所を見れば無くなるやろ。
「異星人よ、一目で分かってしまう程のこの世のものとは思えぬ邪悪を感じる。故にドラゴンボールを貸すわけにはゆかん。お引き取り願おうか」
……………………ほえ?
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ターレスはやっぱりなと思って溜息をし、ビナスは信じられないという顔となった後、ターレスを見て成程なと納得したような頷きをし、この集落の長老であるムーリに媚びた笑顔で向き直り口を開く。
「あ~すいませんねぇ。この子ターレスって言う子で見た目通りのワル何ですけれどもね、根は真面目でいい奴なんですよ」
と、ビナスは不良を誉める時のテンプレで心がこもっていない適当な言葉を吐く。ターレスは鼻で笑って「テメェもワルだろ」と呟き、ナメック星人達はビナスの言葉に「え?」と戸惑った。
その反応にビナスは眉をしかめ、ターレスはお前も入っていて当たり前だろと溜息をついた。
「あ、いえいえ私が言っているのはそちらのターレスという方ではなく、赤い髪をしたアナタです」
戸惑いのままムーリはビナスの方に指差しをして言った。ビナスは俺? というジェスチャーをして合っているかどうか伺い、それを見たナメック星人達は一様に頷いた。
ビナスはそんな馬鹿な、真後ろにいるターレスと勘違いしているんじゃないか? と思い横に一歩大きく移動する……が、ビナスの動きに合わせてムーリの指も動く。
それでも信じられないビナスは後ろを見て誰かいないか確認をするのだが……当たり前だが誰もいない。そしてビナスはムーリの方を向き、再びターレスの前に立つ。
勿論ムーリの指先も動いた。
ビナスは子供のような小細工をするため、ニコリとムーリに笑いかけ、ナメック星人達の目には捉えられない程のスピードで上空へと高速移動をして気配を殺す。
これによってムーリの指先はビナスではなく、ターレスへと差すのだが、根本的な解決にはならない。ビナスのやった事がわかったターレスは「いつまで経ってもガキだな」と軽く笑う。
「き、消えた!」
「邪悪な者がどこかへと消えたぞ!!」
「皆気をつけろ! 何をされるかわからんぞ!」
ナメック星人達は消えたビナスを警戒し始める。ターレスは笑いを堪えながら上空へと顎をしゃくってビナスの居る所をナメック星人に知らせる。
「いっ、居たぞ! 邪悪な者だ!」
「いつの間にあんな所に……」
彼等はビナスに対して警戒レベルを上げる。そんな事は知った事かとビナスは大声で「邪悪な者、邪悪な者ってうるっさいんじゃボケぇ!!」と怒鳴りながら地が陥没するほどのスピードで降り立った。
「おいお前らぁ! 俺が邪悪な者だったらよぉ、後ろで立ってるあのターレスはどん位邪悪やねん!? 言うてみろや!!」
ビナスは少なくともターレスよりは邪悪じゃないだろうと思い矛先をターレスに向ける。ターレスは苦笑いをしてムーリの評価を待つ。
「う……、うむ。確かにあちらの方も邪悪なものを感じます。しかし、今はまだ小さいですが光が育まれているのもわかります。アナタでしたら素直に試練を従事し、合格すればドラゴンボールを貸し出す事も異存はありませぬ」
ビナスはあんぐりと口を開きターレスを見る。ターレスは大笑いして「だとよ」と肩を竦めてビナスを見る。
「おいおいおいおいぃぃぃいっ!! ターレスちゃんよぉー! お前いつから良い子ちゃんなっとんねん、オオン!?」
ビナスはターレスに詰め寄り、ターレスは笑いながら「絡むな、絡むな反面教師ってやつじゃね?」と両手でビナスを征す。ギリギリと歯ぎしりをし、今度は「お前の判断がおかしいんちゃうんか、コラぁ!!」とムーリに矛先を変える。
「絶対お前の感覚おかしいわ! アイツ見た目通り内も外もワルやぞ! 元祖ゴクウブラックやぞ!! まぁ、俺が寝とる時に布団掛けといてくれたり、怪我したらしっかり手当してくれたり――――あれ?」
うんうんと唸るビナスをよそに、ターレスはまた知らない奴の名前が出やがった……と呆れながらもその名前を心に留める。唸るのを止め、思い出したように自分がターレスより邪悪と納得出来ないビナスはムーリに詰め寄って行く。それを見た腕の覚えのある若者が長老に暴力を振るうのではないかと思い、ムーリを庇うために前に出て「それ以上近づくんじゃない!」とビナスの肩を絶妙な力加減で押した。
「あああああっ! いったぁーーーー!! これめっちゃ痛い!」
だが、ビナスは肩を押された瞬間にチャンスだと思ってどこぞの小物の悪党のように痛がるフリをして跪き、ニヤける顔を隠すために俯く。
「すまない! 力加減を間違えてしまったようだ」
相手を貶めよう……なんて考えない普通のナメック星人達は悲しいかなそんな事には気づかない。皆は純粋ににビナスを心配し、介抱をしようとする。
「いたたたたた……、謝罪の気持ちがあんならドラゴンボールを渡せるやんねー。まさか、まっさっか!? 渡せへんとかないよね?」
ビナスは痛そうに肩を押さえながら演技をし、若者を非難する「そっ、それは……」と若者は口篭る。そこへ幼いナメック星人の子供が意を決したようにビナスへと近づき、両手をビナスに向けながら治癒の力を使う。
「あっ、あのっ。これで怪我は治ったと思うんですけれどどうですか?」
元々怪我など無いビナスは「あ? なんやねんこのガキ?」とデンデに顔を近づけながら威圧的な態度をとり、デンデはやっぱり出て行かなければ良かったと思う事となった。
「デンデ下がっていなさい!」
ムーリはデンデを心配して急いでビナスから引き離す。ビナスは顎に手を当てて「デンデ? デンデ、デンデ……あーー、そっか。でもまぁええわ」と妙な開き直りをした。
「怪我をさせてしまった事は深くお詫び致します」とムーリは頭を下げ、それを見た肩を押した若者も慌ててムーリより深く頭を下げる。
「さっきの子は優秀な治癒の使い手です。さっきので怪我が完治した筈……これでどうかこの場は収めて立ち去ってはくれないでしょうか?」
ムーリは頭を下げたまま静かに言った。ここで良心があれば心が痛んで1度引いて出直すか、2度とこの村には訪れないようにしようと思うがビナスは違った。
「あー、そんなんええから。いいからさっさとドラゴーンボール黙って出せや」
ドラゴンボールを渡す事を渋るナメック星人達に段々とイラついて来たビナスは不遜な態度をとり「何だその態度は!」とまた若い者達がビナスに食ってかかり、引くことをしないビナスはそれに勿論反発をする事となった。
ギャンギャンと揉めているビナス達を見ながらターレスは、暫く放っておいていいだろう、どうせ俺に何とかしろと言ってくるに決まっていると思い近くの岩場に腰をかける。しばらくビナスとナメック星人の言い合いをボーッと見ていると、1匹の緑色のカエルがターレスに近寄ってケロン、ケロンと鳴いた。それに気付いたターレスは可愛げがあるじゃないかとビナスを待っている間カエルを愛でる事にした。
だが、彼は少し誤算をした。暴力行為が出来ない以上、途中で説得が面倒くさくなって何とかしろと言ってくるものだと思っていた。そう、彼はまだまだビナスを甘く見ていたのである。
「もうここまでだっ!! ジワジワと嬲り殺しにしてくれるわーーーっ!!」
「なっ!? 邪悪な者よ、やはり本性を現したな!!」
ビナスが逆上して実力行使に出たのだ。あれほど実力行使に出るなと言っていた当の本人がするのだ、これにはターレスも一瞬思考が止まった。そして急いであのバカを止めようと行動に移そうとした時、ビナスは空中に上がってある構えをした。
ターレスは舌打ちをして目を閉じ、手で目を覆った瞬間に……「くらえや! 太陽拳!!」目映い光が当たりを照らした。その光は完璧に対処したターレスでも数秒の間目が眩んだ。まともにその光を見てしまったナメック星人達は悲鳴を上げて目を手で覆って蹲る。
「シィッ!」
ビナスはナメック星人達の立ち位置を一瞬で記憶し、目を閉じた状態でナメック星人達に近づいて側面から米神、顎の付け根、頸椎の自律神経を通っている部分を正確に中指を少し立てた握り拳……中高一本拳でそれぞれの戦闘力に合わせた力加減で打ち抜いて昏倒させた。
デンデ以外を。
事を終えたビナスはデンデの前にヤンキー座りをして、デンデの目が正常に戻るのを待つ。そしてデンデは涙目で恐る恐る目を開ける。
「あ……あっ」
周りを見るとやはり仲間達が倒れていた。目を閉じている間、聞こえていた打撃音と仲間のうめき声はやはり勘違いではなかったのだ。
今度は自分の番だ……そう思った瞬間、ビナスが顎先に裏拳をしてデンデの脳を揺らして気絶させた。その後ビナスは長老を足蹴にして「バカが! 素直に渡せばこんな目に合わずに済んだのによ!」や「お前等はドラゴンボールとピッコロの強化素材くらいしか価値ねーんだよ!」と地に唾を吐いた。
その後ビナスは長老の家に行き、飾ってあったドラゴンボールを持ってきたのである。これが1時間前の些末である。