俺のドラゴンなボールが無い転生 作:DB好き
ビナスは別の村に到着すると、岩陰にデンデを物を捨てるかのように置いてから村人に話しかける。
「どうも皆さん初めまして! 私ビナスって言いまーす。訳あってドラゴンボールで願い事をしたいんですけれど、良かったら貸して下さい!」
「…………一目で分かる程の邪悪なものを感じる。お前にドラゴンボールを貸すわけにはゆかぬ。早々に立ち去るがよい」
自分が悪だと納得出来ないビナスはテンションが高くないのが良くなかったのかと思い、笑顔で明るく元気良く言ってみたが意味がなかった。そして悟空達が言う邪悪で嫌な気というものがわからず、抑える事が出来ないためナメック星人達に容易く悪だと見破られる。
「………ほぉ、ええ度胸やクソカスの雑魚共が」
笑顔のままそう言った後、血管を浮き上がらせたビナスは村人に襲い掛かった。
また一方、ターレスはと言うと……。
「同胞達を生き返らせるその願いは素晴らしいと思います。しかし、あなた達サイヤ人は多くの命を奪って来ました。生き返ったらまた他の惑星へと侵略を繰り返すでしょう。その時あなたはどうするのですか?」
用意された椅子に座っているターレスは長老の問いに目を瞑り、しばし思案する。既にターレスは他の惑星を侵略したいと欠片も思うことは無く、更に宇宙をフリーザに代わって支配したいと思う事は無くなっていた。ターレスが同胞達を生き返らせてフリーザを倒した後、やる事はただ一つだ。
想う事は超サイヤ人になりたいと……、そしてビナスも同じく超サイヤ人になると簡単に予測できるが故に更にその先へと行きたい――、強くなりたいという願いだけだ。それに強くなれば勝手に向こうから頭を下げてくる。
よくよく考えてみれば自ら行くなどまるで媚ているようではないか。それに支配すれば面倒を見なければならなくなる――そんなのは御免だとターレスは思った。
何故なら過去にターレスはビナスに、もしターレスがフリーザに代わって帝王になったらというごっこ遊びをした事がある。最初は正直悪い気分では無かった。
ビナスが跪いて「ターレス様」と頭を下げるその様相は大勢の人間を跪かせている幻覚を見た程だ。だが、彼はこの時ビナスの表情を無理にでも見るべきだった。
全ての赤子が一瞬で泣き出してしまうようなそのゲス顔を――――。
その後は彼にとって凄まじく大変な毎日だった。ビナスは生前にネットや経験で得た、上司が部下にやられたくない笑って済まされない仕事の失敗をわざとし続け、ターレスに全責任を被せたのだ。
これにはターレスも激怒し、ビナスを殴ろうとした所で心底可笑しいという表情でこう言われた。
「宇宙を支配したらこういう奴は腐る程いるんやで? そんな奴も面倒見なきゃあかんのやぞ? 俺1人で参っとってどうすんねんな。いやー、それにしても責任が軽い身分は体が軽くてええ気分やわー。あ、思い出した。お前の名前で報告出すのすっかり忘れとったわ、3日遅れてるけれど大丈夫やろ。後は任せたわターレス様」
下品な笑いをしながら去っていくビナスを見て、この時睡眠不足で目元が隈になり、少し痩せたターレスの宇宙を支配したいという少年時代から育まれた強い欲求の大樹は、ビナスによって根元から一切の抵抗も無く引き抜かれて一瞬で枯れた。ごっこ遊びを始めて僅か1ヵ月も経たない内に……。
それからターレスはフリーザに対して憎き仇相手……とは別に、上司として少し尊敬の念を抱くようになった。
「…………へっ、その時はそんな後先考えない事は止めろと力づくで止めてやるさ」
ターレスは疲れた笑いをして返答する。そして譲られたドラゴンボールを片手で抱えながら次の村へと飛んで行った。
その頃、ビナスは――――
「この問題が解けたら考えてもよい」
絶対に解けない問題を出されていた。
長老はビナスを見た瞬間に邪悪な者と看破し、2つのドラゴンボールもまともな方法で手に入れたものではないと判断した。
そしてこの問題を解ければドラゴンボールを素直に渡すという餌を用意し、解けずに帰ってくれるなら良し、問題に悩んでいる間に近隣の腕の立つ戦士達に連絡するつもりなので、暴力に訴える頃には到着させるために時間稼ぎをしようとした。
だが、甘かった――――。
ビナスは顔の横に掌を上げて、小指から親指に向かって順にとじていき拳を作った。そして笑顔で「これが答えや」と言って何の事かわからず、戸惑っているナメック星人達に襲い掛かり、急所をまた正確に打ち抜いて気絶させた。
「お、やっぱ全ての問題をズバッと解決してくれる万能な答え……暴力が正解やな」
そう言って気絶をしている長老の頭を掴み「素晴らしい! ではドラゴンボールを持って行って下さい」と腹話術をした後、悠々とドラゴンボールを手にして次の村へと向かった。
そしてターレスは――――。
「勝負あり……だな」
倒れているナメック星人の若者の顔に拳を寸止めして勝利宣言をしていた。若者は数瞬悔しそうな顔をした後で軽く息を吐いて「参りました」とターレスに告げた。
「お見事です。見させていただいた力は素晴らしいものでした。私の勘違いかもしれませんがアナタはワザと力を抑えて戦っていませんでしたか?」
ターレスはそれを聞いて「まあな」と軽く返事をする。本来の戦闘力なら片手で十分圧倒出来る相手だったが、ターレスはワザと相手の戦闘力まで力を抑えて技の鍛錬をしていたのだった。
若者はそれを聞いて苦虫を噛み潰したような表情をした後に「次は負けぬ」と拳を突き付ける。
「おう、いつで……あー……機会があったらな」
ターレスは拳を突き合わせて再戦の誓いを受ける。彼はつい何時でも来いと言いそうになった時、ビナスの顔がちらついた。お人好しのナメック星人達はしないだろうが億が一の時を考えて無難な答えに言いかえる。
本当に何時でも来られたら大迷惑だからだ。そう、彼もまたビナスに何時でも来いと言ってしまった被害者であった。
ターレスは長老からドラゴンボールを受け取り、次の目的地へと向かいながら、ビナスに何時でも来いと言ったまだ気が読めなかった幼少の頃を思い返して自嘲気味に笑う。
「寝ている時はまだわかるが、クソをしている時を狙って仕掛けてくるとは当時は思いもしなかったぜ」
その後、仕返しするために虎視眈々と機会を窺い、ビナスがトイレに入った時を狙い襲い掛かったが、ターレスの気を感知していて予め『全て』の準備を整えていたビナスには通用しなかった。
ターレスはビナスの気によって留められていた汚水を地中から浴びせられ、辛味成分のある粉末で目潰しされた上で一方的に叩きのめされた。
そして騒ぎを聞きつけた大人達が見たものは倒れ伏しているターレスただ1人と、汚水まみれで破壊されたトイレ。ビナスはとうに姿を消し、アリバイ作りをしていたためターレスただ1人の責任となり、大人達にいくら訴えても聞く耳を持ってくれず、罰として掃除と修繕をする羽目になった。
その時ターレスは初めて悔しさで泣き、こんな嫌な奴には絶対にならないと「ねぇ、今どんな気持ちなん?」と煽って来るビナスを睨みながら心に誓った。
ターレスが苦笑いをしながら嫌な思い出に浸っている頃、ビナスはと言うと――
「はい、注もーーーーく!」
と、地面から10m程離れた空中で、片手で気絶しているデンデをブンブンと旗のように振っていた。
「ん? あ、あれはデンデじゃないか!?」
「本当だ! デンデだ!!」
「何て酷いことを!」
その様子を見て村人達はざわつき始め、家の中に居るナメック星人達も何事かと外に出て確かめに来る。そしてビナスは全員が注目したのを気の動揺で確認した後「太陽拳!!」とまた目を眩ませた後、また急所にそれぞれ適切な力加減をして打ち込む。
気絶した村人達を見てビナスは「最初っからこうすりゃ楽やったわ」と薄く笑って言った。その後、ドラゴンボールを持ち出して最後の場所へと向かって行く。
そしてビナスが最長老の家か数キロ離れた小島に到着してから数十分……、ターレスが到着して6つのドラゴンボールが揃い、残るのはただ1つとなった。