俺のドラゴンなボールが無い転生 作:DB好き
ネイルがビナスに殴り掛かってから数十分後……、ネイルは息も絶え絶えにビナスを睨みつけていた。しかし、これまで1発も当てられなかったため、ビナスに向かって行こうという気概はもう無くなっていた。
代わりに自分自身の無力に対して、どうしようもない怒りをネイルは感じていた。
正直ビナスの事を嘗めていたのだ……、油断せず冷静に対処すれば難なく打倒出来ると思っていた。それもその筈、ネイルは戦闘力4万という数字を持っていて、世間を知らなければ宇宙最強だと自惚れていても仕方がない程だ。
それにこのナメック星にこれまで降り立った異星人達は、殆どが学者かただの観光客達であり、偶に来るならず者達は戦闘力1000にも満たない。それもネイルが生まれてから両の手で数えれる位だけ……、そしてネイルがビナスに1発も当てられない理由がある。
それは……共に鍛錬する相手がいない事、外敵が居なくてこれ以上強くなる理由が無い事だ。
一方でビナスは共に強くなるターレスがいて、フリーザは勿論のこと、原作を知っているためその先まで見据えている。そして自己鍛錬でもビナスは勿論、ターレスも拷問に近い程に過酷であり、しかも気の探知のおかげでお互いに何をしているか分かるので、負けず嫌いの2人は張り合って3~5日不眠不休で気絶するまでやるのはいつもの事だ。
強くなるという気持ちで既にネイルは負けている……、もしもこの時点でビナスの方が本当に戦闘力が2万であっても、積み重ねた技と気のコントロールによって勝っていただろう。
「勝負ありだな」
ターレスが呟きビナス達に近づいていく。
ネイルまで20m程離れていて普通ならば聞こえないが、ナメック星人である彼にハッキリと聞こえ、心で敗北を認める。だが、ビナスに対して「参りました」とは素直には言いたくなかった。
ネイルは悔しさで無自覚に歯ぎしりをしてビナスの動向を窺う。ビナスはネイルを始めから見ておらず、ターレスがこちらに近づいてくるのと、『練習台の人型』が向かって来なくなった事で終わりを理解して構えを解いた。
彼女にとってネイルとの戦いはターレスに技を見せるためだけであり、しかも相手はネイルだと気付いていない。彼女にとって素材1はターレスと共に東へ行ったきりだと思っていて、既に顔を朧気にしか覚えていない。
「十分だろネイル、アンタの負けだ。これ以上やるって言うのなら確実に死ぬぜ」
そう……、ビナスはターレスに技を見せるのはここまででいいと思っていたので、ネイルが次に仕掛けていたならば、道具が突然勝手に動く故障をしたと思い、破棄するように殺していただろう……何の感情も無く、ただ淡々と。
だが、ターレスがネイルと名を言った事でようやくビナスは彼を認識して「何や……お前やったんかい」と言って続いて口を開く。
「お前なぁ、何で弱いか言ったるわ。戦闘力が云々の前にお前技が身についてないねん。知ってますってだけで胡座かいてるようじゃ何時まで経ってもアカンわ」
ビナスの歯に布着せぬ言葉にネイルは唸り、これから惨めな敗者に侮辱の言葉を浴びせるのだろうと思った。
「目線や技の起こりが丸わかり、大してフェイントも無いんじゃあ俺は勿論、ターレスにも通用せぇへんわ。そんなんお前の足下見とるだけでどんな攻撃するかすぐに分かるわ」
ここでターレスは訝しみ、ネイルも違和感を覚える。そんな2人を余所にビナスは続いて気弾の放ち方も分かりやすいや、折角長い手足や、伸びる手があるのだからそれを生かした攻撃はこうした方が良いと言う。
ネイルとターレスはキョトンとした表情で呆ける。ビナスが相手に向かってアドバイスをするなど思ってもみなかったからだ。勿論ビナスは『ネイル』に言っているのではない……、融合した時のピッコロに向かって言っているのだ。
彼女はピッコロを強くしたいと思い、次々と技を見せながら説明をする。そして一通り説明した後に「お前潜在能力を開放してもらってないやろ」と責めるような口調で言い「……あぁ」とネイルはビナスに反抗するように言った。
それに彼女は「やっぱりな」と溜息を吐く。彼女は彼を捕捉した時にうっすらと感じ、彼を認識した時に気を探り確信した。
「ハッキリ言って意味分からへんわ。手っ取り早く更に強くなれる手段あんのにせぇへんって」
「最長老様に潜在能力を開放してもらうには勇士と認められ無ければならぬ。お前のように楽をして強くなろうとすればその後、怠惰になるだろう」
「は? 何言ってんねん。サボるのはそいつの性根次第やろ。そんな奴はほっときゃええねん。つーか強くなろうとせぇへんかったから俺にアッサリ負けとんちゃうんか?」
「ぐ……」
ネイルは言葉に詰まる。確かに今まで積極的に強くなろうとはしなかった。あまりに強くなれば身を滅ぼしたり、力に溺れると思って自らを律するために力は求めなかった。だが、今は違う。これほど強くなりたいと……力を求めた事は無かった。
「まぁええわ。話は終りや、願いを言う時にチョロチョロされたら邪魔やから気絶しとけや」
ビナスはそう言うとネイルに無造作に近づいていく。ネイルは警戒して構え……間合いにビナスが入った所で渾身の前蹴りを放つが、躱されて足払いをされてバランスを崩された上で頭を掴まれて地面に叩きつけられる。ネイルの感覚が上下不確かになり、隙だらけになりビナスは追い打ちでネイルの頭を踏みつけて意識を飛ばした。
「容赦ねぇなぁ」
ターレスは笑みを浮かべてビナスを労うように肩を叩き「じゃあ行くか」と言い、ビナスも先程の刺々しい態度はどこかへ行き「おう」とターレスを見上げて笑顔で答えた。
そして2人は周囲に100Kmは誰も居ない場所にドラゴンボールとデンデ……そしてビナスが持ってきた荷物を運ぶ。
「なぁ、いい加減に教えろよ。その包みの中はなんだ?」
「んー? にっへっへっへ。ほらよ」
ターレスの問いにビナスは持ってきた荷物を取り出し、それを見たターレスは「あぁ……成程な」と納得する。
「ナメック星のドラゴンボールにはナメック語が必要やねん。でもそのためだけにナメック語覚えるとかメッチャ怠いやん? それやったら丁度ええやつを洗脳して代わりに言ってもろたらええやん」
って事で持って来ましたーっとはしゃぎながらビナスはゴーグルを掲げながら言うと、デンデに装着して付属の端末を操作する。
するとデンデはフラフラと、立ち上がった。そしてビナスはニヤリと笑いマイクでポルンガを呼び出せと命令し、デンデは呪文を唱えた。
7つの球が光り、夜が訪れると光の蛇が勢いよく風を巻き起こしながら天に昇る。ビナスとターレスは「おー」感嘆の声を上げて眺める。数秒後、光が収まるとそこには上半身がマーマン、下半身が大蛇のようなナメック星独特の龍……ポルンガが現れた。
「ドラゴンボールを揃えし者よ……さぁ願いを言うが良い。どんな願いも可能な限り3つだけ叶えてやろう」
ポルンガは腹の底から響く重低音で2人に言い、ビナスとターレスはお互いの顔を見合わせる。ターレスが「お前から言えよ」とビナスに催促する。
「当り前やターレス。誰のおかげで願いが叶えられると思ってんねん、ちゃんとお礼言えよ」
ビナスは胸を張ってニシシッと笑い、ターレスは「この球を作ったナメック星人達よ、ありがとう。おかげで願いが叶うぜ」と、ちゃんと誰のおかげで願いが叶うかを考えて、ここには居ないナメック星人達を思い浮かべてお礼を言った。
ビナスはその答えに満足しなかったようで「おい! 俺や、俺俺!」と両手の親指で自身を指してアピールする。ターレスはワザとらしくポンと手を叩き「おぉ、そうだったそうだった。サンキュー」と軽く言った。
「かっる!? 軽いなお前っ! 土下寝して奴隷にして下さい位言えや!」
ビナスは極端な事を言い出すが、ターレスは「バ~~ッカじゃねぇの?」と答え、ビナスはそれに「あぁん? 何やと!?」と食って掛かり言い争いになる。そしてポルンガに「あの……願いを言ってくれぬか?」と恐る恐る言われる。
ビナスとターレスはポルンガを一瞥するとお互いの顔を見て、クッと口元を緩める。
「おいターレス、やっぱお前から願えや。お前の願いが何なのか気になるしな。まぁ、残りの2回は勿論俺が貰うけどな」
「おう、いいぜ」
そしてターレスは考察する。
ビナスが言うには作り手の力を大きく上回る願いは叶わない。人1人ずつしか生き返らせる事が出来ない。そして戦闘力が相手と10倍以上離れている奴に殺されれば蘇る事は出来ない……か。最後は半笑いで言っていたからこれは嘘臭ぇが確証が無い。
なら、今回は試すか――。
「なぁビナス。バーダックっていう下級戦士ながら戦闘力が1万の奴が居たのを知っているか?」
ビナスはキョトンとして「おう、知っとるぞ……ってお前、そいつ生き返らせるんか? 雑魚やのに?」とターレスを訝しみながら言った。
「あぁ。今サイヤ人の数は戦う事から逃げたパラガス親子と腑抜けのターブル王子は数に入れずに考えると……11人だ」
「ん? 11人? 10人やろ?」
ブロリーはただの飛ばし子だったが、パラガスは戦う事が怖くて宇宙船を盗んだあげく、飛ばし子のブロリーを連れて逃げたと伝わっている。
「飛ばし子のカカロットだ。お前が言うには今地球にいるんだろ?」
「あー、地球に居るカカロット入れて11か」
「そうだ。神精樹のジュースをある程度作り置きしているとは言えど飲ます奴は厳選してぇ。コルド一族と最後まで戦えるガッツがあって、尚且つ裏切らない奴がいい」
ターレスは神精樹の実を手に入れた頃、最初ベジータ達にも分けようとしていたが、ベジータ王の野心を受け継ぎ、尚且つ同族に対する態度から、力を手に入れればあっさりと裏切られると推測し、こちらに味方するしか道がない状況の時に渡そうと思って今まで取ってあった。
だがその状況はコルド一族と戦う時であり、今はまだその時ではないし、いざ敵対したときに悠長にパワーアップをしていられるかと言うと疑問が残る。故にターレスは何度も死にかけた状況にも臆せず戦いに行く折れない精神、チームメンバーを一人も欠けさせる事がなかった仲間意識、1人で仲間の仇を討とうとフリーザに戦いを挑んだという恨み、最後に……死んだサイヤ人というフリーザが思いもよらない人物がよかったのでバーダックを選んだ。
最悪、戦闘力が伸びなくてもバーダックに戦闘には参加せず、フリーザに敗れてしまったらドラゴンボールで自分達を生き返らせるという保険も考えた。
ビナスからマイクを受け取ったターレスはバーダックを生き返らせてくれと願いを言うがポルンガに「まだ生きている人間を生き返らせる事は出来ない」断られる。ターレスは訝し気な表情になり、少しの間思案してから別の願いを言う。
「じゃあ連れてくる事はできるか?」
と尋ねるがポルンガは「不可能だ。時の狭間にいる人間を歴史改変が起きていないこの時間に呼ぶことは出来ない」と答え、ターレスはますます訝し気な表情となった。対してビナスは「あっ、そっち? そっちもあるんかぁ」と呑気な声を出す。
「おいビナス……時の狭間って何だ?」
「ん? んへへへへっ、知らんなぁ~」
こんのクソ女、絶対知ってやがるぜ……!
ターレスはビナスの嘘を言うニヤニヤと笑う顔に内心腹が立ちながらも、これ以上聞く事は止めた。経験上こうなったビナスは絶対に言わないからだ。ならば……もう1つの願いを叶えるか。ターレスは溜息をつき、今回はフリーザ戦のために備える願いを言う。
「俺達サイヤ人という種族が、宇宙空間でも平気なようにしてくれ」
「それならばいいだろう」
ポルンガはそう答えると目を光らせて「願いは叶えてやったぞ」と答える。ターレスはビナスの方を向いて「何か変わった感じがしたか?」と尋ねるがビナスは「何となく変わった感じがした」と曖昧な返事をする。ターレスもビナスと同じく何かが変わったと感じるが、それが宇宙空間でも平気になったという変化かと問われれば自信が無い。
「おい神龍! 本当に宇宙空間でも平気にしたのか!?」
「勿論だ」
ターレスはポルンガに確認を取る。ここで押し問答をしても水掛け論になるため、ターレスは念のためにナメック星から出る時に宇宙空間に出て確認をする事にした。
「うっしゃ! 俺の番やな」
不敵な笑みでビナスはターレスが持っていた翻訳機のマイクを受け取ると「まず手始めにこれは外されへんよなぁ」と呟き願いを言う。
「俺にこの宇宙中の全ての星人や神の超能力や魔法、魔術の類を使えるようにしろ」
ターレスはその願いに「ほぅ……」と感心し、宇宙中の全てのという事はこのデンデというナメック星人の能力……治癒を使えるようになる。何だかんだでフリーザ達に向けてビナスなりに準備をしているのだと思った。
「――――――不可能だ。特殊能力の中に私より大きな力が必要な物がある。それ等を除いた物ならば叶える事が可能だがどうする?」
「じゃあそれで」
ポルンガの返答にビナスはあっさりと了承するのを見て、ターレスは不可能だという事を折込済みだったなと推測する。それは正解であり、ビナスは破壊の力等、ポルンガの能力を超える願いを特殊能力の付与という条件下だったならば、自身が出来る範囲に落とし込んだ破壊か、それともビルスを基準とした破壊の能力を得るのか試したのだ。
そしてビナスは最後の3つ目の願いを言う。
「俺のサイヤパワーを常に肉体が耐えれる位まで全快にしろ」
ビナスは原作知識からスーパーサイヤ人4になった時、サイヤパワーが無ければ十分な力を発揮出来ないという事や、もしかして今の状態でもパワーが上がるかもしれないという事を考えて言った。
この時ビナスはこの願いが己の運命を決定づけるとは、後にも先にも思いもよらなかっただろう。
孫悟空達と完全に敵対し、殺し合う運命になると……。