オラリオディズニーダンジョン   作:カイバーマン。

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好きなキャラを出そうと思ったらディズニーのキャラほぼ全部出すことになると気付いたので

色々悩み苦しみながらなんとか選別する毎日です


私の願い

人気の無い路地裏にひっそりと建っているのはうらぶられた教会。

 

人々から忘れ去られた形跡が残り、廃墟と呼んでもならんおかしくないみずぼらしい建物だが

 

これが今のベルにとっての家であり「拠点」なのだ。

 

「神様ーただいま戻りましたー」

 

教会内の奥に設置されている薄暗い階段を下りた先にある扉を開け、ベルは少ない戦利品を携え温かい我が家に無事帰還した。

 

いつもならここで彼の主神が笑顔を浮かべて「おかえりー!」と言って迎えてくれるのだが……

 

「わー!! だからごめんって何度も言ってるじゃないかー!!」

 

「ごめんで済むか馬鹿者! 自分が何をしたのかわかっとるのかぁ!!」

 

扉を開けた先でベルの目にまず映ったのは

 

幼い外見とは裏腹に一部だけ豊満な”女神・ヘスティア”が、怒りの形相で追いかけて来るオラリオ一のお金持ち、スクルージ・マクダックから狭い部屋の中で逃げ回っている光景であった。

 

「ええ神様!? それにスクルージさん!? 一体何があったんですか!?」

 

「おお、ベル君おかえり! いやいやせっかく帰って来たのにこんなドタドタしててすまないね! 実はこのどケチな頑固爺さんがボクの功績にイチャモンを付けてきて! いた!」

 

「なにが功績じゃ! こっちは一体どれだけの損害を被ったと思っとるんじゃ!」

 

ベルが帰って来た事にヘスティアは立ち止まって出迎えようとするが、その隙を突いて手に持った杖で何度も彼女の頭を叩くスクルージ。

 

しかしこの光景はベルにとってはさほど珍しいモノではなかった。

 

「あ、あの……スクルージさん、もしかしてまた僕の所の神様が失敗しちゃいました……?」

 

「おぉベル、今日も無事に生還出来たみたいじゃな」

 

まずはヘスティアの頭を執拗に叩き続けるスクルージを止めよう

 

そう思って話しかけると、彼は初めてベルの存在に気付いた様子で、杖を掲げたまま振り返る。

 

「そろそろ冒険者としての板が付いて来たか?」

 

「いえ~僕なんてまだまだですよ、実は今日も何度も死にかけてホント大変な目に遭いまして……」

 

「ハッハッハ! 結構結構、命がけのスリルある冒険こそ冒険の醍醐味、冒険者は冒険してこそ一人前になる近道なんじゃ、命の危機のない楽な冒険などなーんの値打ちも付かんからな」

 

冒険者は冒険すべきではないというエイナの主張とは全く正反対の意見を得意げに言ってのけるスクルージに、ベルはどう答えればいいのかと迷いながらとりあえず「アハハ……」と後頭部を掻きながら苦笑するしか無かった。

 

「それでスクルージさん、先程から随分と神様にお怒りですけどなにかあったんですか?」

 

「フン、今回の件に関しては特に酷いぞ、あろう事かウチの大事な商品を街中でばら撒きおったんじゃ、こ奴が」

 

「ええー! 大事な商品ってじゃが丸くんの事ですよね!? 一体どうしてそんな真似を!?」

 

ヘスティアは女神の身でありながら、眷族である新米冒険者ベルの稼ぎだけでは生計を建てられないので、スクルージの下でバイトとして日々働き生活費を稼いでいる。

 

バイトの内容はじゃじゃ丸くんというスクルージ開発の揚げ物を屋台で売る事なのだが……

 

「誤解しないでくれたまえベル君! ボクはあくまで女神として人助け! いや”犬助け”をしたまでだよ!」

 

「犬助け!?」

 

大事な商品をどうしてまたばら撒くなんて勿体無い事をしたのだろうとベルも不思議に思っていると、ヘスティアは慌てて今日起こったエピソードを語り始めた。

 

「あれは夕方頃、ボクが店番しているといかにも小悪党みたいな見た目の二人組が、大きな袋を抱えて人気を避けるようにしてコソコソと歩いているのが遠くから見えたんだ……」

 

「はぁ……」

 

「神の目を持つボクはすぐに怪しいなと思って眺めていると、なんと彼等が抱えている袋がゴソゴソと動いたと思ったら! 袋に穴が開いて”黒いブチの付いた可愛い子犬”が1匹出てきたんだ!」

 

そう叫ぶとヘスティアはテーブルの上にピョンと乗っかかると、演劇をするかのように立ち上がって大げさなリアクションを取り始めた。

 

「1匹が出て来た途端、そこから同じ見た目の犬がゾロゾロと出てきたんだ! すると袋を抱えていた怪しい二人組が慌てふためき、のっぽの男が小柄の男の頭をポカンと殴った後すぐに逃げ出した子犬達を捕まえようと始める、その時ボクは気付いたのさ、彼等はここ最近オラリオで噂になっている、同じ見た目の子犬を攫い続ける泥棒だってね!」

 

「え、子犬を攫う泥棒!?」

 

余所から流れ者がやってくるこのオラリオはなにかと物騒なトラブルが後を絶たず、しょっちゅう報告が上がっている。

 

善良な人間を上手く騙してモノを掻っ攫うキツネが出没

 

食い逃げ、コソ泥、店の女の子のお尻を触る等、数々のしょうもない事をあちこちで起こす海賊

 

冒険者の戦利品を盗んで逃げ去る悪質な盗人サポーター

 

世間知らずな連中を誘惑して呪術を使って操ろうと企む呪術師

 

深夜の孤児院にて、寝ている子供達の所に、突如現れた全身緑のギョロ目モンスター

 

歓楽街で働く狐人の娼婦、彼女の傍にいるオウムがやかましくて邪魔ばかりするので何も出来ないというクレーム多数

 

闇派閥に関与していると思われていたファミリアが、あの有名な蜘蛛男の活躍によってあえなく全員捕まった。

 

一般人相手にぼったくり商法していたファミリアが、背中に刀を二本差した全身ピチピチの赤スーツの男によって壊滅した。

 

 

大きい事件小さな事件、このオラリオでは日常茶飯事の事であり、これらの報告はあくまで極一部。

 

特にここ最近では非冒険者でありながら、冒険者と同等レベルの強さを持つイレギュラーの発見が起こっており、街の運営側はなんとか治めようと寝る間を惜しんでハードワークに徹している。

 

そしてヘスティアが見つけたという「オラリオで特定の犬種だけを攫い続けてる泥棒」もまた最近起こっている事件の一つなのだ。

 

ダンジョンにこもりっきりで街の事情に詳しくないベルとは違い、一日中街中で汗水たらして働いてる(らしい)ヘスティアは、あちこちから噂話が飛んでくるおかげでそれなりにこの街で起こっている出来事を熟知している。すぐに忘れてしまうのが難点だが

 

「そしてボクはすぐに犬泥棒に向かって叫んだんだ! 「君達が噂の犬泥棒か! 女神であるボクの目は誤魔化せないぞ!!」ってね! そしたらあろう事か、あの二人はボクに背を向けて逃げ出したんだよ!!」

 

「そりゃそうですよ! どうしてそこで叫んじゃったんですか!?」

 

「しかしそんな状況でもボクは冷静だったのさ! ボクは機転をいかして手元にあった揚げたてほやほやのじゃじゃ丸君を!! 力いっぱい彼等に投げつけた! ありったけね!」

 

「その時点で冷静もなにも無いですよ……」

 

身振り手振りでその場の状況を再現する彼女にツッコミを入れつつも

 

さっきから背後でイライラした様子で腕を組みながらこちらを睨みつけて来るスクルージの方も気になる様子のベル

 

だが、ヘスティアは気にしてないのか気付いてないのか、誇らしげに胸を張って話を続ける。

 

「全部のじゃが丸くんを投げつけた頃にはあの二人も観念して逃げた犬達を拾うのを諦めて行ったよ。いやー久しぶりに良い事をするとやっぱり気分が良いモノだねー」

 

「泥棒は逃げちゃったんですね、それじゃあ逃げた子犬達はどうしたんですか?」

 

「ああ、それなら」

 

泥棒を取り逃がしたのは仕方ないとして、子犬達の安否が心配なベルの前で、ヘスティアが軽くパンパンと手を叩くと、ソファの下からモゾモゾと……

 

「とりあえずみんなウチに連れて帰って来たよ」

 

「へ? わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

二人だけしか住めない様なこじんまりとしたスペースの部屋の中で

 

ヘスティアが手を叩くのを合図に数十匹の黒いブチをつけた子犬達がキャンキャンと吠えながら怒涛の勢いで現れ、あっという間に床一面が白黒になってしまった。

 

「これだけ多いと飼い主探すのも大変だろ? だからといってこの子達をその場に置いてけぼりにするなんて出来ないし」

 

「そ、それでみんな連れて帰って来ちゃったんですか!?」

 

「しょうがないだろベル君、君だってこんな可愛い子犬達を見捨てる事なんて出来るのかい? この可愛さならあの神だってイチコロだぜ? ガネーシャなんか卒倒さ」

 

「う……それは確かに……」

 

ヘスティアがひょいと1匹子犬を両手で持ち上げ、ベルの方へ突き出すと彼はすぐに困惑の色を浮かべてたじろく。

 

こちらに向かって無邪気にへっへっへと舌を出し、遊びたそうに小さな尻尾をピョコピョコと左右に振る子犬の姿は正に神も魅了されてしまうほどの恐ろしい破壊力だ……

 

しかしその破壊力をもってしても、ヘスティアの行いに対してご立腹の様子のスクルージには全く効かないようだった。

 

彼はフンと鼻を鳴らすと、子犬達を踏まないようにしながらムスッとした顔でヘスティアの方へ歩み寄る。

 

「わしの店の商品をすべて台無しにしたばかりか、こんなに子犬を拾いおって……これからどうする気じゃ? 自分達だけでも満足に食べれんクセに、これだけの数だとエサ代もかなりかかるぞ?」

 

「うーん、それはどこかの親切で心の優しいお金持ちのおじいさんが、可哀想なこの子達の為にひと肌脱いでくれれば……」

 

「ほーん、そんなお金持ちがお前さんの知り合いにおるのか? 初めて知ったわい、それじゃあわしは帰るぞ」

 

「逃がすか! 今だかかれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「なに!? ぬおぉ!!」

 

ヘスティアの号令と同時に、すたこらさっさと部屋を後にしようとしたスクルージ目掛けて数十匹の子犬達が襲い掛かった。

 

「いつの間にここまで手懐けておったんじゃ! おい、こっち来るな! あっちへ行け!」

 

襲うというより遊ぼうとじゃれている感じだが、それでもこれだけの数の子犬に群がられてはいかに大ベテランの冒険家でもそう簡単に対処出来ず、「よせ! 止めんか!」と必死に叫びながら子犬の中へとあっという間に埋まってしまうのであった。

 

「いやーホントに人懐っこい子犬達だねー、あんなに楽しくじゃれついちゃって」

 

「えーと神様……とりあえずスクルージさんを助けた方が……」

 

「まだだベル君、彼がこの子達のご飯をカンパすると約束するまでしばらくこのままにしよう」

 

「それは女神としてどうなんでしょうか……」

 

「女神だからこそさ、困ってる子達の為ならボクは手段を選ばないよ」

 

「えぇ……ちょっとなに言ってるかわからないです……」

 

助けた方が良いのではと心配するベルをよそに、子犬達に埋もれながらスクルージがもがき苦しむ様をしばらく意地の悪い笑みを見せながら優雅に眺めるヘスティアであった。

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、ワンちゃん達に揉みくちゃにされまくったスクルージはようやく解放。

 

明日の内に引き取り手を見つけて来いという条件で、とりあえず一日分の食費だけはなんとか確保することに成功するヘスティアであった。

 

「全く世も末じゃわい……こんなか弱い年寄りをいたぶって金をせびるとはとんだ性悪な女神じゃな」

 

「お金持ちなんだからケチケチしないでよ、いいじゃないかボク等の一日分の食費ぐらい」

 

「おい! わしが出すのはこの子犬達の分じゃぞ!」

 

子犬に踏まれてボロボロになった帽子をパンパンと手で叩いて埃を払いながら、忌々しそうにヘスティアに向かって目を細めるスクルージ。

 

 

念願の眷族を迎えて晴れて自分のファミリアを結成出来れば少しはその性根も変わると思っていたのだが……

 

「既に一月も経ってるのになーんも変わらず腑抜けたまま……これならまだあの狡猾でずる賢く、人のモンを横取りしようと企んどる卑怯なロキの方がマシじゃわい」

 

「う! あの残念絶壁ボディのロキなんかよりダメダメ扱いされるなんて酷いなぁ……直球で言われるといくらボクでも傷付いちゃうぜ? あのロキの方がマシだなんて」

 

二人の間で散々な評価が下されている可哀想な神はさておき

 

スクルージはふと自然な感じで隣にいたベルの方へ顔を上げ

 

「ベル、お前さんどこかに入りたいファミリアはあるか? なんならわしが手配してやっても構わんぞ」

 

「ええ!?」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ちょっと待ってよ! ベル君を引き抜くなんてそれは流石にダメだよ!」

 

ベルにヘスティアを紹介したのは自分だからと、責任を感じて彼の希望のファミリアにでも入れてやろうかと誘ってみるスクルージ。

 

しかしそんなことは許さないと、慌ててヘスティアはベルの腰にしがみつき

 

「ベルく~~~~ん! ボクを置いて行かないでくれぇ! 君がもしあの貧乳アポカリプスのロキなんかのファミリアに入ってしまったらボクはまた一人ぼっちになっちゃうじゃないか~~!!」

 

「いやいや大丈夫ですよ神様! 僕はどこにも行きませんから!」

 

たった一人の眷族がいなくなってしまったらまた惨めで寂しい生活を送る羽目になる。

 

それだけは耐えられないと必死になって涙目で懇願するヘスティアに対し、ベルは慌てて叫んだ。

 

「大体僕なんてきっとどこのファミリアにも入れてもらえませんよ、てんで弱くてゴブリン1匹倒すだけでも必死ですし……今日なんか酷い目に遭ってダンジョンの中を無我夢中に逃げ回ったんですよ?」

 

「うぅむ……確かに言われてみれば冒険者なったばかりのヘタレオーラ全開のベル君じゃどこのファミリアもお断りするだろうね、いらぬ心配して損したよ」

 

「酷い!」

 

ベルに言われてヘスティアは途端に冷静を取り戻して顎に手を当て頷いた。

 

確かにこの田舎臭くて弱っちい子兎みたいな少年など、将来性なしと判断されどこのファミリアからも門前払いするのは目に見えている。

 

こんな落ちこぼれをファミリアに迎えるなど、それこそ同じく落ちこぼれの自分ぐらいだろうなと納得し、それを素直に口に出す彼女にベルはちょっとショックを受けるのであった。

 

「せめて君がもっと頼りがいのある人物に成長できれば、他のファミリアも注目するだろうね、まあその時はボクが全力で君を死守するけど」

 

「え~と、それってつまり僕が”ミッキー”さんぐらい強くなればって事ですか?」

 

「はぁ? おいおいベル君、ミッキーってもしかしてあのミッキーマウスの事かい? ディズニーファミリアの?」

 

 

「はい! そうだ聞いて下さい神様とスクルージさん! 実は今日凄い体験したんですよ!」

 

彼の口から出てきたミッキーという名前にピクリと反応して目を細めるヘスティア

 

すると今日のダンジョンでの出来事と、ギルドで聞いたクララベルの話を思い出し

 

ベルは嬉々として彼女とスクルージに今日自分の身に起こった出来事を勝手に話し始めた。

 

ミノタウルスに襲われて殺されかけた所をとある凄腕の冒険者に助けられ

 

その冒険者の正体がオラリオ一の有名人、ミッキーマウスであることをギルドで聞き

 

更にどれほど彼が素晴らしい人物なのかと歌と踊りと一緒に親切に教えてもらった事を

 

ちなみにダンジョンでミッキーと同じく出会ったおっかない金髪少女についてはもはや語るのも怖かったので黙っておいた。

 

「だから僕は決めたんです! 僕もいつかあんな風にカッコ良くて強くて! 誰からも尊敬の眼差しを向けられて女の子にもモテるミッキーさんみたいになるんだって!」

 

「ああうん、とりあえず君が無事だった点については、ボクとしても大変喜ばしいし全力でハグしてやりたい所だけどさ……ねぇスクルージのじいさん……」

 

「う~む、よりにもよってあのミッキーみたいになりたいか……わしの甥っ子を目標にするよりはずっとマシじゃが……」

 

ミッキーマウスの様な英雄になりたい、そう力強く目標を掲げるベルを前にヘスティアは困った様子で後ろに振り返り、彼女の背後にいたスクルージも渋い表情を浮かべる。

 

「ベル、お前さんはミッキーの事をどこまで知っとる?」

 

「え? ディズニーファミリアの団長で強くてカッコ良くてみんなにとっての憧れで、数えきれない程の功績を今もなお作り続ける英雄で……」

 

「ふぅん、随分と話が盛られてるみたいじゃの……確かに奴は冒険者の中で一番人気が高いのは事実じゃが」

 

あのクララベルの事だからかなり話を膨張してベルに聞かせたのだろうと察知したスクルージ

 

ゴシップや噂話大好きの彼女の話を全て鵜呑みにするのはどうだろうかと思いつつ、スクルージは頭を掻いた後口を開いた。

 

「ならどうしてミッキーが多くの者から慕われているのかわかっておるのか?」

 

「そりゃもちろん強いから……あ、でもクララベルさんはそれだけじゃないって言ってた様な……やっぱり優しくて頼りになるからでしょうか?」

 

「ははは、それだけじゃまだ不正解じゃな、それをわかっとらんでは一生経っても奴の足元にも及ばんよ」

 

ミッキーの強さの本質とは単純に力だけではない、彼が持つ強さとはそれとは別にある。

 

それこそが今もなおオラリオ一の人気者として人々から慕われている理由なのだ。

 

案の定、それをまだ理解していない様子でいるベルにスクルージは笑ってみせる。

 

「目標として奴を目指すのは悪くは無い、じゃが本当にミッキーの様な冒険者になりたいのであれば、まずは奴の事をもっと詳しく知るのが先じゃの、直接本人に会って話を聞くのも良いぞ」

 

「うーん確かに会えたら嬉しいですけど……今日出会ったのも偶然でしたし、そう簡単に本人に会えますかね?」

 

「本人に会えなくてもその近しい人物から話を聞いてみるのもありじゃぞ、例えば奴の”主神”とか、いやあの男は駄目じゃな……相手によってはまともに取り合わず、会話すらせん面倒な所がある」

 

憧れるだけじゃ追いつくことは出来ない、まずは相手を知ることが大事と忠告しつつ、ミッキーマウスが属するファミリアの主神の気難しい性格を思い出してスクルージは眉をひそめて撤回。

 

「ああそうじゃ、ならお前さんがわしのお眼鏡に適うほどの成長を見せてくれたら、ミッキーの友人であるわしの甥っ子を紹介してやろう」

 

「ホントですか!? 凄い! スクルージさんの甥っ子さんってミッキーさんの友達だったなんて! あ! てことはもしかしてその人もミッキーさんと同じぐらい凄い人なんじゃ!」

 

代わりに自分の甥っ子を紹介してやろうと提案するスクルージにベルは目を輝かせた。

 

あのミッキーマウスの友人ともなればきっと彼と同じぐらい数々の伝説を築いた逸材の冒険者なのではと期待を膨らませて

 

しかしベルの期待を裏切るかのようにスクルージの方は物凄いしかめっ面を浮かべて面白くなさそうにフンと鼻を鳴らして

 

「凄くもなんともないわあんな奴、いつもやかましく騒ぎ立ててばかりであちこちでトラブルを撒き散らしてしょっちゅうわしに迷惑ばかりかける、甥っ子じゃなかったらとっくの昔にこの街から追い出してやってる所じゃ」

 

「ええー!? も、もしかして怖い方なんですか!?」

 

「この前も自分の家を派手に爆破させて一人でギャーギャー大騒ぎしとったの、まあアレは一緒に住んでる”三つ子”のせいかもしれんが……要するにとことん禄でもない奴だという事じゃから気を付けておいてくれ」

 

 

「……な、なんでそんな恐ろしい人を僕に紹介しようと……」

 

スクルージが言うにはその甥っ子はとんでもないトラブルメーカーのようだ。

 

しかしベルはまだ知らないだろうが、ディズニーファミリアに所属する者達がこの程度のトラブルを起こする事など日常茶飯事。みんながみんな、街中でしょっちゅう周りを巻き込んでトラブルを起こしている。

 

そしてそれは団長であるミッキーも例外ではない

 

「ま、とにかく今はわしに認められるぐらい成長する事じゃな、冒険者成り立てのお前さんでは何年、いや何十年かかるかわからんが、ハッハッハ」

 

「が、頑張ってみます……あの、ちなみにスクルージさんに認められるってどれぐらい成長すれば……」

 

「んー……まあミノタウルスぐらい一人で倒せるぐらいになって貰わんとな、そしたらわしの冒険に連れてってやらんでもない」

 

「ミ、ミノタウルス……!?」

 

「あの程度に負けてたら話にならん、ランチパッドなんか素手で倒すんじゃぞ」

 

「素手!? あの人、恩恵授かって無かった筈じゃ……と、とにかく頑張ってみます!」

 

「うむ、期待しとるぞ少年」

 

笑いながら茶目っ気たっぷりにとんでもない試練を課してくるスクルージにベルは一瞬怯えた表情を浮かべる。

 

今日散々追い回され、危うく殺されかけたあのミノタウルスを倒せとはなんという無茶振り……

 

そして非冒険者でありながら武器を持たずにそれを倒すというスクルージ専属の運転手の潜在能力の恐ろしさを垣間見た。

 

 

「それじゃあわしはもう帰らせてもらうぞ、ちと話込み過ぎたわい」

 

「ちょ、ちょっと待ってよスクルージのじいさん!」

 

「なんじゃ落ちこぼれ女神、お前とはもうしばらく話したくないんじゃが」

 

ミノタウルスを倒すなんてどうすればいいんだとベルがブツブツ呟いて一人頭を抱えてる中、スクルージはそそくさと自分の屋敷に帰ろうとするも、そこへヘスティアが待ったとしかめっ面の彼を呼び止める。

 

そして彼の方へ歩み寄ると彼女は声を小さくして

 

「ダメだよボクのベル君に変な期待感もたせちゃ……あの子ったらてんで弱っちいのに身の丈に合わない夢を抱く悪い癖があるんだよ? ミッキーみたいになるなんてどう考えても今のベル君じゃ出来っこないのわかるでしょ? このままだと張り切り過ぎて今度こそダンジョンで死んじゃうよ彼」

 

「そういう所が未熟なんじゃお前さんは、主神のお前があの子を信じないでどうする。冒険の中で夢を見つけるのは冒険者としての第一歩を踏んだという事なんじゃぞ? 無理かどうかはあの子自身が決める事じゃ」

 

「ボクは心配なんだよ……! せっかくボクのファミリアに入ってくれた大事な子なんだよベル君は……! あの子がもし叶いもしない夢を追い続けて死んじゃったりなんてしたら! ボクはもうショックで立ち直れず、そのまま天界に還っちゃうからね!」

 

「あ~そうか好きにせい、わしとしてはうるさい女神がいなくなって清々するわい、じゃあの」

 

「どうしてそんな酷い事言うの~~~~!!!」

 

ヘスティアに対してはひどく素っ気なく、冷めきった表情で突っ返すとドアを開けて帰ってしまうスクルージ。

 

これには彼女も声を潜めるのをやめて大声で泣き叫んでいると、一人悩んでいたベルがようやく「あれ?」と彼女の方へ顔を上げた。

 

「どうしたんですか神様? またスクルージさんにイジメられんたんですか?」

 

「ベルく~~~~ん!!!」

 

「おわ!」

 

彼女がスクルージに嫌味を言われるなどしょっちゅうなので、またなにか言われたのかと心配した様子で歩み寄るベルに、ヘスティアは感情のままに飛びついて彼の胸に顔をうずめる。

 

「いいかい、ボクは君の主神だ、だから一つ忠告させてくれ!」

 

「は、はい! なんでしょうか!?」

 

「ベル君!」

 

急にどうしたのだと焦った様子で狼狽えるベルに、ヘスティアはキッと顔を上げて上目遣いで

 

 

 

 

 

 

「これからはダンジョンに行かずにボクと一緒にじゃがまるくんのバイトをしよう!!」

 

「はい?」

 

「そもそもダンジョンに行くことが間違っているんだよ! さあ! ボクと一緒に死ぬ危険も無い平和な日常を謳歌しよう!!! 平穏な生活が君を待ってるぜ!」

 

「いや普通に何言ってるかわからないしお断わりしますけど……」

 

「なんでさぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

大事な眷族を失いたくないという一心で一つの考えを提案するヘスティアであったが

 

既に冒険者として生きていく事を決意するベルの心には全く響かず、あっさりと拒否されるのであった。

 

 

 

 




ヘスティアと泥棒コンビの対決はあまりにも長すぎたので泣く泣くカットしました
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