オラリオディズニーダンジョン   作:カイバーマン。

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ディズニー豆知識

『報いを受けなかったヴィランズ』

ディズニー映画に登場するヴィランズ(悪役)は本来、しでかした悪行に報いを受けて終わるのがセオリーです。

しかしその中でもなにもお咎めがなかった者達もいます。

それは『ピノキオ』に登場するヴィランズです。

ピノキオを騙して人形劇に売り飛ばし、更には拉致して恐ろしい遊園地に連れて行ったフェローとギデオン

ピノキオを金稼ぎ目的にコキ使ってやろうと企む人形師・ストロンボリ

そして当時観た子供達にとって強烈なトラウマを残した事で有名な夢の遊園地の支配人・コーチマン

彼等は皆、散々の悪行を働いたにも関わらず、ちゃっかりとなんの報いも受けずにフィードアウトしてます。

悪い事を下ヴィランズは必ず制裁を受ける、というディズニーの基本ルールから外れた数少ないケースですね。


ハイ・ディドゥル・ディー・ディー

偶然出会った親切なピートのおかげで、ベルは長旅を終えてようやく辿り着いた。

 

そこは正に田舎暮らしであったベルには新世界にも思えた。

 

迷宮都市・オラリオ

 

富や名声、力、その気になれば運面の相手も手に入る「世界の中心」

 

門衛の許可が下りると、巨大な城壁をくぐり、ベルは晴れて冒険者となる為の第一歩を踏み出したのだ。

 

 

と思っていたのだが……

 

「おうおうおう! まさかこれっぽっちしかねぇって事はねぇだろ! 本当は隠し持ってんだろ! ええ!?」

 

「も、持ってないです!」

 

内部に入ると、ベルは興奮冷め上がらない内に、飛び降りる様に馬車から降りた。

 

すると今まで親切にここまで乗せてくれたピートの態度が急変し、大きな腕で彼の後襟を掴み、唾が飛ぶ程顔を近付けてドスの低い声で脅され始めたのだ。

 

「さ、30ヴァリスで乗せてくれると聞いたんですけど……!」

 

「おおそうだ、馬車に”乗せる”のはな、だが馬車から”降ろす”のは30万ヴァリスだ!」

 

「30万!? そんな! 聞いてないですよ!」

 

「だろうな、聞かれなかったら言わなかった! ガァ~ハッハッハ!!!」

 

してやったりの表情で豪快に笑い声を上げるピートにベルは唯々唖然とするばかり。

 

世間って怖い……ここに来るまであまりにも良い人ばかり過ぎて疑う事を忘れてしまっていた。

 

昔からティモンに「お前は泣きたくなるぐらい騙されやすいぜ、騙されチャンピオンだ!」とバカにされていたのを、ピートに掴まれながらベルは思い出す。

 

「おらぁ! とっとと有り金全部寄越しやがれ!」

 

「そ、それが全部です! 僕の全財産の五千ヴァリス!」

 

「あぁ~ん? そこのスーツケースの中はどうなんだ~?」

 

「!?」

 

彼から財布をひったくると、ピートの視点はすぐにベルから馬車の中に残されている手荷物に移る。

 

アレはティモンが餞別代わりにくれたスーツケースだ。

 

「ダ、ダメです! あれだけは絶対渡せません! うわぁ!」

 

必死に抵抗を試みようとするベルだが相手は自分よりもずっと大きな巨体な大男。

 

捕まれながら暴れる彼を、ピートはうっとおしそうに地面に向かってほおり投げた。

 

「へ、神の恩恵さえ貰ってないお前なんかに、”ステイタス”を”封印”されたとはいえこのピート様が負ける訳ないだろ」

 

地面に頭から着地して痛がるベルをよそに、ピートは「ゲヒヒヒヒ!」と品のない笑い声を上げながら馬車の中にあるスーツケースを手に取る。

 

「元々コイツが目当てだったんだ、大切そうに持ってやがるからなに入ってんのかと期待してな、さてさて一体何が……」

 

「ま……!」

 

楽し気にスーツを開けようとしてるピートに

 

顔に付いた泥を払いながらベルが咄嗟に彼に向かって手を伸ばそうとしたその時……

 

「よし開いた、さぁてお宝ちゃん出てこ~い、隠れていても無駄よ~……ぶふぅ!!!!」

 

「うえぇ!?」

 

開いたスーツケースから急に飛び出して来たのは、バネの力で勢い良く飛び出したパンチンググローブ。

 

予想だにしなかったその高速かつ鋭く重たい一撃を、顔面にクリーンヒットしたピートは驚くベルの前でフラフラと後退し

 

「あ、あひぃ~!!」

 

最後にはバタンと背中から仰向けに大の字で倒れてしまった、彼の頭の上では綺麗な星々がクルクルと回っている。正に一撃KOだ。

 

思わぬ助けにベルはホッとしたのも束の間、すぐにハッと気づいて倒れたピートからスーツケースを取り返し、全速力でその場から逃げ出す事に。

 

「こ、ここまで連れてってくれてありがとうございました~!」

 

「ま、待ちやがれ~! お、俺から逃げれると思うなよ~!」

 

律儀にピートにお礼を述べると、野次馬が増えて来たので一目散にその場から立ち去るのであった。

 

 

 

 

「ピートの奴から無事に逃げれたみたいだけどどうする?」

 

「ここはやっぱり僕等の出番かな?」

 

「そうね、でもその前にちょっとあの子の様子を見ましょう」

 

「よしわかった、あの坊主を追いかけるぞ!」

 

背後から”小さい何者”かが彼の背中を視線で追っているのも気付かずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……! ありがとうティモン……!」

 

オラリオに来たばかりの彼はこの辺の地形など知る訳がない。

 

とにかく逃げなければという一心であちこち駆け巡り

 

ようやく人気の少ない路地裏まで逃げ込めた頃には、既に荒い息を吐いて倒れそうだった。

 

「なんだかドタバタしながらオラリオに来ちゃったな……もっと人生において大事な一歩って感じで神聖な気持ちで来たかったのに……」

 

最初のスタートラインに立ったとは思えない前途多難なオラリオデビューに、肩で息をしながら嘆くと。

 

ようやく周りが見える余裕ができたベルはキョロキョロと首を回して辺りを見渡す。

 

「それにしてもここどこだろう……」

 

なんだか薄暗いちょっと不気味な場所に来てしまった、時刻は朝だというのに太陽の光もあまり届いておらず

 

まるでさっき見えた活気ある表路地から一気に別の姿に変わったみたいだ。

 

「早い所出た方がいいかな、ピートさんに見つからないようにしながら」

 

このままここに居続けるとなんだか嫌な予感がする……そう思ったベルはすぐに道を明るく照らしている方向へ歩を進めようとするが……

 

「やあやあやあ! こんな所で迷子かな坊や!」

 

「うわ!」

 

突如曲がり角からヒョイと首だけ出して来たのは1匹の狐。

 

一見紳士的な出で立ちに見えるが頭に被る帽子も手に持つステッキもよく見ると何処かみずぼらしい。

 

そしてその狐の後から出て来たのはこれまた小汚い格好をした猫。

 

明らかにこれでもかときな臭い印象が強い二人組だ。

 

「あ、あなたは……?」

 

「おおっと失敬、私とした事が挨拶も無しにいきなり話しかけてしまうとは、なんたる失態だ! 許してくれたまえ!」

 

妙にわざとらしく舞台に立つ役者みたいな言葉を並べると、狐の方はベルの方へそっと一歩歩み寄りながら友好的かつ紳士的な態度で

 

「私の名前は”J・ワシントン・ファウルフェロー”、このオラリオでは正直ジョンという名で通っております、以後お見知りおきを」

 

「どうも……」

 

「そしてコイツはギデオン、こっちは覚えなくても構わない」

 

「!?」

 

ボロボロなマントを翻し深々とお辞儀をしながら挨拶すると、相方のギデオンの方は雑に紹介するフェロー。

 

そんな紹介をされてギデオンの方は驚いた様子で彼の方へ目をパチクリさせるが、フェローは完全に無視してベルに愛想よく笑いかけながら。

 

「して、あなた様のお名前は?」

 

「え~と……ベル・クラネルって言います」

 

「ベル・クラネル! なんと素敵な名前だ! 発音の響きも最高!」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「それで素敵なお名前のベル・クラネル、あなたはどうしてこの様な所に?」

 

いささかおべっかが過ぎるんじゃないかと苦笑しながらベルは後ずさりするがフェローは一向に逃がそうとしない。

 

表の道が見える方向にギデオンを軽く小突いて塞がらせると、彼はジッと困惑するベルに尋ねる。

 

「ここは滅多に住民でさえ立ち寄らない少々危険な場所です、あなたの様な綺麗な目をした純粋そうな人が来たら、すぐここに潜む怖い連中が騙しにやってきますよ?」

 

「そうなんですか!?」

 

「ええ! こうしてる間にも何処かであなたを見て悪巧みしてる輩がたぁくさんいるかもしれませんね~!」

 

「それじゃあ早く立ち去らないと……!」

 

「お待ちさない! 焦ってはいけません!」

 

周りを見渡しながら警告してくれた彼に従い慌てて逃げようとするベルであったが、そこへすかさずフェローが手に持ったステッキを使って、ベルの体をグイッと壁に押し付ける。

 

「見た感じあなたは田舎者……いえ、このオラリオに来たばかりですかな? ならばこの辺の事はあまり詳しくないでしょう」

 

「はい、そうです……」

 

「先程あなたはあちらの明るい方角に行こうとしたでしょ? 実はあそこが最も危険な場所なんです」

 

「え!?」

 

本当なのかとベルはそちらに振り向くが、残念ながらそこには彼の相方がギデオンが思いきり背伸びして遮っていてもう見えない。

 

「しかしあなたは運が良い! こうして出会えたのもまた神様のお導き! よろしければこの正直者ジョンがあなたを道案内してあげましょう!」

 

「い、いやでも……」

 

「遠慮なさらず! さあさあこちらへ!」

 

そう言ってフェローはまだ承諾していないベルの腕を無理矢理掴み、明るい方向とは逆に更に暗い方向へと誘う。

 

「なにやってるギデオン! この路頭に迷いし哀しき少年を! 我々が正しき場所に導いてやらんと!」

 

「!」

 

フェローに怒鳴られ、慌ててギデオンはベルが逃げられないよう背後を陣取って歩く、その右手には人一人容易に気絶させるぐらいは出来るであろう木製のハンマーが……

 

「な、なんかこっちの道の方が危なそうなんですけど……!?」

 

「安心なさい、そう見えるだけです、”こちらに進めば絶対に楽な道を歩めます”、つまり”成功への近道”、わざわざ生き辛い人生を歩むよりも……あなたも”こちら側”になればきっと素敵な人生を送れると私が保証しましょう」

 

「え? それってどういう……?」

 

妙な言い回しが気になってベルが尋ねようとするが、フェローとギデオンは鼻歌交じりに歌い出してもう聞いていない。

 

彼を拘束したままどんどんと危なげな道に誘おうとしたその時……

 

「させるかー!!!」

 

「はぁ!? へぶッ!」

 

「!?」

 

いきなり頭上から甲高い声が聞こえたと思いきや、突然フェローが被っていた粗末なシルクハットが彼の頭を覆い被さる。

 

まるで上から何者かに無理矢理帽子を押し込まれたかのように

 

不可思議な現象に本人であるフェローは、ジタバタと帽子から頭を引っこ抜こうとするが何故か取れない。

 

困惑していたベルは彼の様子を見てその謎がすぐに解けた。

 

フェローの帽子の上に2匹のリスがしがみ付いていたのだ。

 

しかも1匹は探検隊の様な格好をしており、もう1匹は赤いアロハシャツを着ている。

 

その場で立ちすくんでいるベルをよそに、アロハを着た方のリスが、フェローの帽子を押さえながらギデオンに向かって挑発する様に舌を出し

 

「へへーん、こっち見ろマヌケー!」

 

「!!」

 

彼の安い挑発を受けたギデオンは、望む所だと言わんばかりに手に持っていたハンマーを振りかざす、そして思いきり振りかぶって

 

フェローの頭の上にいる2匹のリスに向かって振り向いた、すると寸での所で彼等はフェローの帽子から飛び降りて

 

「ぎにゃあああああああ!!!!」

 

ハンマーはリス達の代わりにフェローの頭を思いきり捉えた。

 

視界を失ってる状態で更に頭に激痛が走り、彼はそのままその場に倒れてダウン。

 

ギデオンはやらかした事に焦っていると、一体何が起こっているのだとベルが唖然としていた、すると今度は明るい道の方から

 

「こっちよ! 早く来て!」

 

「坊主! モタモタするな!」

 

声はするが姿は見えない、そんな光景にベルは何が何だかさっぱりだと思いつつもとにかくここは逃げた方が良いとそちらへと駆け出す。

 

しかしそこへ我に返ったギデオンが、彼が逃げた事に気付き、急いで両手でハンマーを持って追走。

 

ようやくベルが裏路地から抜けて表へ出るが、ギデオンは彼を仕留めんと猛ダッシュで追いつく。

 

だがギデオンが彼を追って裏路地から抜けた次の瞬間

 

「今よ!」

 

「任せなさんな!」

 

「!?」

 

突然彼の足元からビィーン!と長い紐が現れる、まるで両端から小さい何者かがタイミングを合わせて引っ張ったかの様な

 

ギデオンはそのまま紐に足を引っかけてしまうと、哀れそのまま前のめりに転んで、顔面を堅い地面に激突。

 

そのまま舌を出して目をグルグルさせながらノビてしまうと、それを目撃していたベルの所へ先程の2匹のリスが彼の肩にぴょんと飛び降りて

 

「危ない所だったね、この二人はオラリオじゃ有名な詐欺師なんだ」

 

「あのままついて行ったら、今頃君は一生酷い目に遭わされるような場所に連れてかれてたよ」

 

「そうなの!?」

 

自分の両肩に座った2匹のリスの話を聞いて、少々マヌケな声を漏らしてベルが驚いていると

 

「本当よ、あなたもうすぐ危ない目に遭う所だったんだから」

 

「わしらが助けに行かなかったら……やれやれ、考えたくもないな」

 

「あ、ありがとうございました……」

 

今度は足元から整備服を着た女の子のハツカネズミと、でっぷり体系の少し大柄なネズミが、自分の髭を指でなぞりながら寄って来る。

 

そして続いて頭上からブゥーンと羽音を立てながら、1匹の緑色のハエがこちらに友好的に手を振って現れた。

 

「この虫も……あなた達の仲間ですか?」

 

「ああ、危なっかしいお前さんをずっと空から尾けてくれたんだ、お前さんがあの小悪党のピートの奴に逃げ出した所からな」

 

「え! てことはずっと前からつけてたんですか!?」

 

「ちぃっとばかり危なっかしい坊主だなと思ってな、それとコイツはお前さんの忘れモンだ」

 

「あ!」

 

実は彼等がずっと前から自分の後を追っていたのだと聞かされてベルが目を見開く中、今度は大柄なネズミが背中のコートに隠していたモノを取り出す。

 

先程ピートに取られてしまっていた全財産が入っている財布だ。

 

「アイツが寝ている間にちょいとな」

 

「うわぁありがとうございます! これが無かったら僕今日は何も食べられない上に野宿でした!」

 

彼から財布を受け取ると、ベルはペコペコと頭を下げて感謝しつつ

 

ふと自分の周りにいる彼等が何者なのか気になり始めた。

 

「あのすみません、皆さんは一体どういう集まりなんですか?」

 

「それを言う前に、まずは僕等の自己紹介が先に済ませようか! 僕はチップ! このチームのリーダー!」

 

「僕はデール! このチームの本当のリーダー!」

 

冒険隊の服を着たリスがチップ、アロハシャツの方がデールと名乗ると

 

「私はガジェット、発明担当よ」

 

「わしは力仕事と長年の知恵を担当するモンタリー・ジャックさ、そんでコイツがハエのジッパー、小さいが相当役に立つ相棒だ」

 

紅一点のガジェットと、最年長っぽいモンタリーがお供のハエと共に挨拶する。

 

「僕達はオラリオで困っている人達を助ける為に結集したチームなんだ、その名も……」

 

彼等に対してまだポカンと固まっているベルの前でチップが手を掲げると

 

彼等は一斉に拳を掲げて大きな声で

 

 

 

 

 

「「「「レスキューレンジャー!!!!」」」」

 

突如現れたオラリオのお助け部隊、レスキューレンジャーの活躍によって

 

危うく騙されて酷い目に遭うかもしれなかった、ベルは九死に一生を得るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルがスキューレンジャー達によってフェロー達の魔の手から逃れた頃

 

一方で、彼等がいる所から少しばかり離れた活気ある中心街ではというと

 

「じゃが丸くん、5つ」

 

「まいど~」

 

そんな事も露知れず、女神ヘスティアは呑気に今日も朝からじゃが丸くんのバイトをしていた。

 

彼女に陽気に声を掛け注文しているのは、大きい胸板が特徴的な、顔立ちがキリッとしたデニムとジャケットが似合う長身のアヒル

 

「いやいや~毎日買ってくれてありがとねぇ、”ランチパッド”君」

 

「フ、朝一番に食べる揚げたてのじゃが丸くん、一度コイツを覚えたら、俺はもう止められない」

 

「ん~全然訳わかんないけどまあいいや、ところでランチパッド君、君はどこのファミリアにも入ってない筈だよね?」

 

「ああ、俺は生涯”旦那”のお抱え運転手さ」

 

キザっぽくなんか言ってるランチパッドという男にツッコむのを放棄して、商品を渡しながらヘスティアは目を怪しく光らせる。

 

「ところで女神であるボクが見た限り、君は相当強そうだし冒険者としてもかなりのポテンシャルを秘めていると思うんだけど」

 

「ああ、俺は強い……旦那がお宝を求めてダンジョンに冒険に行く時は、いつも俺がついて行っている、旦那を護るのが俺の役目だ」

 

「へぇ、そりゃあ頼もしいねぇ、君は本当に良い奴だねぇ」

 

「ああ、俺は良い奴だ」

 

「けどさけどさ、今の時点でも強い君に、更に神の恩恵を上乗せしたら……君はもっと強くなれる筈だよ」

 

そもそも神の恩恵が無い状態で、平気でモンスターの巣窟であるダンジョンに潜ってるというのが訳が分からない……いやランチパッド本人もそうだがその旦那も……

 

しかしここぞとばかりに言葉で誘惑し、ヘスティアは先程ベルを騙そうとしていたフェローの様にニヤリと笑みを浮かべながら

 

「もしよければボクが君の力になってあげてもいいよ」

 

「ん~確かに今でも強い俺が更に強くなれば、きっと旦那にも褒めて貰える」

 

「うんうん、ところで君ってば友達とかいる?」

 

「ああ……俺にとって掛け替えのない親友、”ベート”だ……」

 

うっとりした眼差しで空を眺めながら、一人の狼人に思いを馳せるランチパッド

 

「アイツに偶然ダンジョンで助けて貰ってから、俺とアイツは強い絆で結ばれているんだ……」

 

「ならついでにさ! その子もウチに入れちゃおう!」

 

「ああ! アイツも親友の俺の頼みなら絶対に断らない!」

 

「よーしよし! それなら早速……!」

 

勝手な思い込みで断言するランチパッドにヘスティアは機嫌良さそうに更なる犠牲者を生もうと仕掛けようとする。

 

だがそこへまたしても……

 

「わしの運転手になにやっとる!」

 

「痛い!」

 

「旦那!」

 

彼女の頭に固いステッキが炸裂。

 

振り下ろした張本人は当然スクルージ・マクダック、ヘスティアがバイトしているじゃが丸くんのオーナーであり

 

ランチパッドを運転手として雇っている張本人だ。

 

「女神のクセに言葉巧みに誘いおって! 詐欺師か貴様は!」

 

「だ、騙してなんかないやい! ランチパッド君が強くなりたいって言ってたから眷族にしようと思っただけだい!」

 

「旦那、俺強くなります、強くなってもっとダンジョンで旦那を護れる男になります!」

 

「全く……どいつもこいつも……」

 

両手で頭を押さえながら悪びれもせずに言い訳する彼女に、誇らしげに胸を叩いて宣言するランチパッドに呆れながら、スクルージは彼の方へ視線を上げて

 

「ランチパッド、お前、前にわしとダンジョンに行った時、どんなモンスターを倒した?」

 

「えートカゲっぽい奴とヘビっぽい奴と……あ、牛っぽい奴も倒しやしたね、”素手”で」

 

「それだけ強ければ十分じゃろうが……そもそもお前の雇い主はわしじゃぞ? こんな奴と遊んでる暇あるか?」

 

「ん~……無いっすね、やっぱ俺、今のままでいいです」

 

本来の仕事を疎かにしては強くなっても本末転倒である。

 

そのことを短い言葉で指摘してあっさりとランチパッドにわかってもらうと、スクルージははぁ~と重たいため息をこぼす。

 

「まさかわしの部下にまで手を出そうとするとは……ヘスティアよ、お前さんは本当に見下げ果てた奴じゃの」

 

「そっちこそ前々から女神に対して酷い言い草だな! ボクだって必死なんだよ! いつまで経っても一人も眷族がいないと! またロキに馬鹿にされる!」

 

「わしから見ればどっちもどっちじゃわい、やれやれ、仕方ない……」

 

スクルージの所には苦情が来ていた、じゃが丸くんを買おうとしたら店員にしつこくファミリアの勧誘をされて迷惑していると

 

これでは店自体に問題があると見なされ売り上げが激減してしまうと判断したスクルージは、物凄く嫌そうな顔を浮かべながらも、一肌脱ぐ事にした。

 

「待ってろ、ちょいとお前さんに似合う眷族を探して連れて来てやる」

 

「え!? そんな事が出来るのかい!?」

 

「わしを誰だと思うておる、このオラリオはな、全域に網を張って日夜人助けをしている者達がおるんじゃ」

 

金にもならない仕事はしたく無いが、これ以上自分の部下を勧誘されるよりはマシだと考え

 

スクルージは心底めんどくさそうに女神・ヘスティアに救いの手を差し伸べてあげる事に

 

「わしがその者達に直接頼んで、どこのファミリアにも属していない冒険者希望の子を探して見つけてもらう、お前さんみたいなぐうたらの女神でも良いと言ってくれるぐらいの子をな」

 

「旦那、その探してくれる連中ってまさか俺の大好きな……!」

 

「ああそうじゃランチパッド、かつてオラリオにいたアストレア・ファミリアの志を受け継ぎし、小さくとも勇敢なチーム……」

 

ヘスティア以上に期待の眼差しを向けて来たランチパッドに、スクルージがフフッと笑いながら答えた。

 

 

 

 

 

「レスキューレンジャーじゃ」

 

一人の少年と一柱の女神

 

巡り合わせの糸が、いよいよ一つに繋がろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ディズニーキャラ紹介

スクルージ・マクダック

何よりも金を愛する世界一のお金持ちであり多くの事業を展開するやり手の実業家。

スコットランド出身で得意なスポーツはフェンシング、好物はスコーン、好きな物は当然お金、そして家族

その守銭奴っぷりは真正で、お金を貯める事の為だけに並々ならぬ執念を燃やし、周りをドン引きさせる事もしばしば。

しかし実を言うと家族に対しては一応人並みの情があり、身内同然の間であれば困っていたら惜しみなく己の金を出す事もよくあります。

自分の姪っ子が宇宙で行方不明になった時は、破産寸前になるほど捜索を尽くした事さえあるほどです。

ちなみに真っ当に働いた金ではなく、悪事によって得た金はギャンブルで手に入れた金などには全く興味を示しません。彼にとって大事なのは真面目に働いて得たお金なんです。

更に彼は冒険家の一面も持っていて、自ら世界各地を回って危険な場所に赴いて探検に出向く事も

年を取ろうとも彼の冒険心は一向に消える事は無く、億万長者になっても彼は命を顧みずに誰も見た事のない未知の現象を求めます。

そしてその時に見つけたお宝は、大抵は博物館に寄付しています。

彼曰く「寄付すれば払う税金が減るから」らしいです。

本作でもいかにも金持ちだけどケチなじいさんという役柄で登場していますが

いずれ冒険家という彼のもう一つの顔が現れたら

ただのお金持ちではないまた別のスクルージ・マクダックをお見せする事が出来るかもしれません。

代表作「ミッキーのクリスマスキャロル」「わんぱくダック夢冒険」「ダックテイルズ」

スクルージおじさん関連でランチパッドも書きたかったのですが、長くなるのでまた今度にします

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