ベル・クラネルは困惑していた
「え~……か、神様だったんですか……?」
「なんだい、ボクが神に見えないとでも?」
スクルージに神を紹介してやると言われ、連れて来てもらったはいいものの
そこにいたのは自分よりも幼そうな外見をした小柄な少女であったからだ。たわわに実った一部を除いて……
「ふふん、ヘスティアって女神は知ってるだろ? なにを隠そうそれがボクさ」
「すみません、存じ上げないです……」
「ええ!? 知らないの!?」
これ見よがしにえっへんと威張りながら名乗る女神に対し、頬を掻きながらベルは正直に伝えると、彼女は少しショックを受けた様子で
「じゃあどんな神様なら知ってると言うんだい!?」
「えと、ヘラクレス様とか、あと彼が主役の英雄譚に出て来た神様なら、冥界の神のハデス様とか……」
「がーん! ヘラクレス君なら潔く知名度に負けている事は認めるが! よりにもよってあの神々の間で最も陰険で性格も顔色も悪いハデスの奴を知ってボクを知らないだって!?」
ヘラクレスはまだ許せる、彼が下界で行った偉業の数々に比べては、ずっと天界でダラダラしていた自分等到底叶う筈が無いと悔しいが認めよう。
しかしよりにもよってあの一時は天界を支配し掛けた悪名高いあの冥王の神以下とは……ぐぬぬと奥歯を噛みしめながらヘスティアは恨めしそうにベルを睨みつけた。
「いいかい、ハデスの事はすぐに忘れるんだ、アイツが天界でも下界でも暴れたせいで、ボクやヘファイストスが酷い目に遭ったんだ、ヘラクレス君が助けに来なかったらどんな結末を迎えたか想像したくないぐらいにね、だからボクはアイツが大嫌いなのさ、何もかもね」
「あ、それはヘラクレス様の英雄譚で読みました、ハデス様がモンスターの中でも極めて危険なタイタン族を率いて天界を乗っ取ろうとしたとか」
「いやはやあの時はいくら寛大な心を持つ女神であるボクでも本気でアイツを殴ってやろうと……おっと、ハデスの話なんかしてる場合じゃなかった、君としたい話はそんなつまらん事じゃない、もっと大切な話だ」
このままだと延々と忌々しいあの神の話を愚痴り出してしまう己に気付いたヘスティアは、早速ベルに本題を話し始める。
「さっきも言ったんだけど、君、ボクのファミリアに入る気はないかい?」
「神様のファミリアに?」
「ああ、スクルージのじいさんから聞いているだろ、この女神であるボクが君を眷族として迎え入れてあげよう」
出会ったばかりだと言うのに、彼女は微笑みながらこんな自分に手を差し伸べてくれて、こちらがお願いするよりも先に誘ってくれるヘスティアにベルは一瞬喜ぶが、すぐに「でも……」と少し腑に落ちない様子で
「僕達まだ会ったばかりですし、お互いに何も知ら無い事ばかりですし……こういう大事なのはもっと時間掛けた方が……」
「なんだいそれ!? お見合いか!」
「アハハ……実はちょっとここに来る前に、「眷族になるならまずはその相手がどんな神様なのかちゃんと見定めておけ」と”彼等”にキツく言われちゃいまして……」
「もしかしてスクルージのじいさんから言われたのかい?」
押しに弱そうな相手だし簡単に誘えばコロッと受け入れてくれるのではと、淡い期待していたヘスティアだったが
どうやら現実はそう甘くは無いらしい。
申し訳なさそうにベルは後頭部を掻いて頭を下げると、彼の服の中がモゾモゾと動き出し……
「僕達が言ったのさ、悪い神様に引っ掛からない様にって」
「へ~なんだかちっこい神様だね! 僕達程じゃないけど!」
「うわ! なんだいそのちっこくて可愛い子リスとネズミ達は! 虫までいる!」
ベルの服の中から現れたのは二匹のリスと二匹のネズミ、そして一匹のハエ
世間に疎いベルをサポートする為について来た、レスキューレンジャーだ
唐突に現れた彼等にヘスティアがビックリしていると、彼女の足元に他の連中よりも少し大きい、力持ちのモンタリーが眉間にしわを寄せ
「おいおいまさかアンタ、わし達の事を知らないってのか!? ここに住んでるというのに!?」
「すまないねぇ太ったネズミ君、下界に来てみたもののあまりにも覚える事が多過ぎて、君達の様な小さい子達の事まで把握できていなかったんだよ」
「全くとんだ神様だ、こりゃひとつ減点しておくぞ」
オラリオに来て半年、未だに自分の生活だけで手一杯の彼女はあまりこの街の事は詳しくはない様子。
その事に不満げな反応を見せるモンタリーをよそに、今度はネズミサイズの紙とペンを持ったガジェットがヘスティアの方へ歩み寄り
「そんな所まで気にする必要無いわよモンタリー、大事なのはこの神様にベルの主神になるのに相応しいのかどうかでしょ」
「おお! そこの女の子のネズミ君はわかってるね!」
「という事で、今から私があなたを彼の主神として適任なのかテストさせて頂くわ」
「んん!?」
女神である自分を主神として相応しいのかテストするだと?
そう言われて面食らっている様子のヘスティアに、ガジェットは時間を無駄にするつもりはないらしく、早速ペンとメモ用紙を持ったまま彼女に向かって口を開いた。
「それでは女神様、まずはお名前を聞かせてくれませんか?」
「ボク? ボクはヘスティアさ!」
「ヘスティア……ん~この辺じゃ聞いた事の無い名ね、それじゃあ本拠と現在の団員数、資金を教えてください」
「本拠はここから少し離れたもう使われていない教会の地下だよ! 団員数はゼロ! 資金もほとんど無し! むしろ友達に借金を肩代わりしてもらってる!」
「教会の地下ですって!? それに団員も持ってない上に借金まであるの!?」
「ああ! 下界に降りるときにスクルージのじいさんの屋敷を壊しちゃったからね!」
「まあ! 信じられない!」
何故か自慢げにえっへんと胸を張って答えるヘスティアにガジェットは開いた口が塞がらない様子でしばし固まる。
「こりゃあ僕達の方がよっぽどいい暮らししてるよ」
「本拠は広々とした大きな木の中だし、最高の仲間達もいるし、お金なんて持ってなくても生活出来るしね」
「……一人、トラブルメーカーがいるけどね」
「ハッハッハ! 自分の事をそんな風に言うなよチップ!」
「デールの方だよ!」
彼女の背後にいる自分の両肩にいるチップとデールがそんな会話をしているのを両耳で聞いていたベルも苦笑いを浮かべている中、ガジェットはめげずに最後の質問をヘスティアに
「それじゃあこれで最後よ、あなたのファミリア、つまりヘスティアファミリアの運営方針を教えて下さる?」
「決まってるじゃないか! 眷族は冒険者としてダンジョンに潜り、ファミリアの為にモンスターを倒してお金を稼ぐのが当たり前なんだろ? だったらとにかく頑張ってダンジョンでバンバン稼いで貰う事がボクの望みさ!」
「……」
両手を腰に当てて力強くそう宣言するヘスティアに、ガジェットは「はぁ~……」とため息をついて無言で紙もペンも懐にしまい込んで諦めた。
彼女がオラリオの情勢だけでなくファミリアの事に関してもてんでわかっていない様子がわかり、呆れてしまったのである。
「あのねヘスティア様、オラリオで探索系、つまりダンジョンを入る事を目的とするファミリアを結成するなら前々から準備が必要なのよ」
「そうなの!?」
「大抵の神様はまず下界に来たばかりの頃は都市外でキチンとした準備を整えてからこのオラリオにやって来るの、人員とか資産とか、そういうのを最初から持っていないと誰だって入ろうとしないわ」
「ず、随分と詳しいんだね君は……」
「ええ、私、ギルドで働いてる友達がいるからその子に教えてもらった事があるのよ」
ファミリアだけでなくその成り立ちについても聡明なガジェット
彼女がそれらの知識を得たのは、各ファミリアの運営を補助し統率する役目を持つギルドの者と親しい間柄だかららしい。
少なくとも彼女は、てんで仕組みを理解出来ていないヘスティアなんかよりもずっとファミリアやダンジョンの事をわかっていた。
「その子から聞いた事あるの、冒険者は常に危険と隣り合わせでいつ命を落としてもおかしくないって、その子はそんな冒険者をサポートするアドバイザーをやっているんだけど、初めて担当した女の子が死んでしまった事に深く傷ついていたわ」
「それは落ち込むだろうね……ダンジョンには冒険者を狙うモンスターがいる、それはいくらボクでもわかっているさ」
「ダンジョンで怖いのはモンスターだけと思ったら大間違いよ、はぁ~やっぱりまだまだ勉強不足ね」
ヘスティアの返事にガジェットはジト目で軽く肩をすくめると、彼女に向かって面談の結果を答える。
「とにかく迷宮探索を生業とするファミリアを作るのは本当に大変って事、だからあなたはちょっと……ファミリアを結成するのはまだ早いと思うわね」
「ええー!?」
「当然、この子は預けられないわね、あなたに任せたら不安だもの」
「そんな! ま、待ってくれ可愛いネズミ君!」
やや辛辣ではあるが正論である意見を述べるガジェットにヘスティアは慌てて叫んだ。
「確かにほんのちょこっとボクは世間知らずだったのは認めよう! しかしそれでも自分のファミリアを作りたいんだ! ボクには誰にも負けないすごいファミリアを作るという”夢”を持っている! という事でその子をくれ!」
「そうじゃそうじゃ、レスキューレンジャー、いらぬお節介を焼いてないでさっさとこ奴にその子を引き渡せ」
「スクルージのじいさん!?」
彼女の必至な叫びに便乗するかのように、まさかのスクルージがフラリと話に加わって来た。
しかもいつも顔会わせるたびに怒鳴り散らしていた彼がまさかのヘスティアの味方側に立って
「おぬし達は知らんじゃろうが、この女神もまあまあそこそこ良い所はあるんじゃよ、例えば……」
自分のこめかみに指を当てながら必死に彼女の良い部分を探ろうとするスクルージだが
「ダメじゃな……悪い所しか思いつかん」
すぐに諦めた表情を浮かべ、隣に立っていたお抱え運転手のランチパッドの方へ振り返ると。
「のうランチパッド? お前から言ってくれ、彼女のその……良い所というのを」
「え~ヘスティアの良い所……あ、やっぱ面白い所じゃないっすか? いつも旦那を怒らせてるし、ほんといつ見ても飽きないっていうか」
「……そういうのは良い部分とは言わん」
「あ、でもやっぱ一番面白いつったら俺の親友の所のファミリアの神様っすね、よく飲みや遊びに誘ってくれるんでマジでいい奴なんですよ、あ、今日アイツと「ハウス・オブ・マウス」行くんですけど旦那もどうです?」
「絶対に行かん!」
ヘスティアの良い所を挙げるどころかなんの脈絡もなく別の話題を上機嫌に話し始めるランチパッドに、スクルージは聞く相手を間違えたと顔を手で押さえてため息をつくと、ジロリと困惑気味で固まっているベルの方へ視線を上げて
「ところで肝心のお前さん自身はどう考えてるんじゃ?」
「へ? 僕ですか?」
「一番大切なのはお前さん本人がこ奴の事をどう感じた事じゃろ、確かにこ奴はちと頼りない部分はあるが、もしかしたら、万が一にも、億が一にもお前さんを立派な冒険者に導いてやれるかもしれん」
フォローになってないフォローを付け加えてそう言うと、ムッとしているヘスティアをステッキで指しながらスクルージが尋ねると、ベルは後ろ髪を掻きながら「え~と」と気恥ずかしそうに口をごもらせていると
「ははーん! 読めたぞじいさん! わし等が付いてくる事に嫌そうな顔してたのは! 坊主をこの女神に誑し込むつもりだったんだな!」
「汚いぞー! 金持ちのクセにー!」
「お前らは黙っとれ!!」
ベルが答えようとする前に会話に横やりを入れてきたのはレスキューレンジャーのモンタリーとデール。
スクルージの企みを見抜き、すぐに「その手には乗らんぞ!」と身を乗り出して抗議の声を上げた。
「悪いがわし等は断固反対させてもらうぞ! 全くなにが立派な冒険者になれるかもしれないだ! こ~んなちんちくりんな女神なんぞの下に坊主を預けたら! 数日後にはモンスター供の餌にされるのがオチだろうよ!」
「部外者がわしの交渉事に口を挟むな! こ奴は確かにロクにアルバイトすら出来ない、神の中でもダントツで落ちこぼれじゃが! 自分の眷族が出来れば少しは神らしく真面目になろうと努力するかもしれんじゃろ!」
「へん! アルバイトも出来んろくでなしの神様なんぞに人間の子供一人育てられる訳ないだろうが! そんな奴さっさとクビにして天界に追い返しちまったらどうなんだい!」
「駄目じゃ、こ奴にはまだわしの壊した屋敷の借金が残っとるから働いてもらんといかん! でないとこのわしがこんな奴の為にわざわざ眷族になりそうな候補を探す手伝いなんかする訳ないじゃろ! そうでもせんとこ奴は眷族を探す事にかまけてろくすっぽ仕事も出来んのじゃからな!!」
二人してギャーギャーと言い合いを始めるモンタリーとスクルージ、互いに熱が上がりほとんどヘスティアに対するクレームになってしまっていると、それを聞いていた当の本人である彼女はワナワナと肩を震わせ
「わーん! どいつもこいつもどうしてそんなにボクの事をイジメるんだー! もう沢山だ!」
そこまで言う事無いじゃないかと、女神としてのプライドを引き裂かれたヘスティアは、涙目になりながら天を仰いで泣き叫ぶと
「もう回りにどう言われようが知ったこっちゃない! ボクはなんとしてでも自分の夢を叶えるぞ!!」
もはや手段を選ばないと遂に強行突破に動き出す。
思い切り叫び終えた彼女はすぐに目をキッとさせると、目の前にいたベルの後ろ襟をグイッと乱暴に掴み上げて
「この子はボクのモノだぁぁ!!!」
「へ!? ちょ、神様ぁ!?」
彼の意思を無視して邪魔者がいない場所まで連れて行こうと決めたのだ。
精神的にも追い詰められた彼女は神としてのプライドを放棄し、何がどうなっているのかと驚くベルを掴んだまま、一目散に他の者達を置いて全力疾走して逃げてしまう。
「ああ! ベルが女神に攫われたー!」
「なんてこと! 神様が強引に人間の子供を誘拐するなんて!」
スクルージとモンタリーがまだ喧嘩している中、ヘスティアの突然の暴走に気付いたのはチップとガジェット、そしてハエのジッパーだけであった。
女神に拉致され誘拐されてしまったベル・クラネル
どうやら彼の苦難はまだ終わらないみたいだ。
人間の子供を攫って逃走した女神による「神隠し」
その光景を”彼”は誰からも気づかれずに建物の屋根から見下ろして眺めていた。
女神が去ったあと、残った連中が慌てて話し合っている。。
「全くなんて神様だ! 眷族欲しさに人間の子供を誘拐するなんて!」
「ベルが心配だよ! 追いかけてとっちめてやろう!」
「とっちめるのはダメだよ! 相手は一応女神様なんだから!」
「とにかくもう一度彼女にわかってもらうよう話し合ってみましょう、ジッパー、空から二人を追跡してくれない?」
”彼”は建物の上から小さいネズミ達がそんな会話をしているのを”しっかりと”聞いていた。
ファミリアを作りたいあまり、世間知らずな子供を攫う女神、中々愉快で微笑ましい話ではないか。
すぐに”彼”は「これは自分の出る幕ではない」と察し、彼等に対する興味を失って手に持っていた新聞をもう一度開いた。
そこにはこの街の出来事やダンジョン内で起こった事が詳しく書かれている。
”彼”はダンジョンでの情報は読みもせず、この街に入り込んだと言われている「お尋ね者」の記事を読み始めた。
悪どい方法で金儲けをしている連中だけを狙って盗みに入るキツネの義賊、”ロビンフッド”がまた現れたのだの
店員が美人ばかりだが、騒ぎを起こしたら酷い目に遭わされる事で有名なあの「豊穣の女主人」で
あろう事か”食い逃げ”を成し遂げ、怒りに震えた美人店員達が血眼にして探し回っているという海賊、”ジャック・スパロウ”がまた別の店で騒ぎを起こしただの
言葉巧みに騙して、呪術を使って相手を思いのままに操ると噂される危険な奇術師”ドクター・ファシリエ”の発見情報など
今、オラリオ中を騒がせている「悪党」の情報が多く書かれていた。
しかしその記事の中には”彼”が求める情報は載っていなかった。
”彼”には”二人”程知っておきたい者達がいる。
一人は迷惑にも自分と似たような恰好をした、”頭のおかしいチャンバラ男”、この男がこの街でトラブルを起こすおかげで、似た格好をしている自分が犯人扱いされるのでいい加減文句の一つや二つ言ってやりたいのだ。
そしてもう一人は得体のしれない、”謎の黒コートの男”
一度だけ街中で偶然見かけたことがあるのだが、それ以来どうにもその姿が脳裏から離れない……
特に何かをしていたわけではないが、後々この街でなにかしらの波乱を起こすのではないかと自分の勘が訴えているのだ。
危険人物かどうか判断するのは時期早々だが、一度だけ会って話してみたいと思っている。
何処となく不気味で、何処となく神秘的な気配を醸し出し
まるで”光と闇の狭間に立っている”かの様な得体の知れない存在が、一体この街に何しに来たのかと……
そう思って”彼”はオラリオ中を飛び回って探索したり、知り合いの冒険者に声を掛けたり、藁にも縋る思いでこうして新聞を覗いて探してみるのだが、やはり一向に見つかる気がしない。
静かにため息をつき、”彼”は必要な情報は無いと判断した新聞をその場にほおり捨て、また地道に足を使って探そうかなとゆっくりとその場から立ち上がろうとする。
だがその時
「おーい! 大変だレスキューレンジャー!」
突如下から聞こえてきた声に、”彼”はピタリと動きを止め、すぐに声の主の方へ視線を向けた。
先ほどのネズミ達の所へ、盾を抱えた青年が慌てた様子で叫んでいる。身なりからして恐らく冒険者であろう
「なんだマックスじゃないか、どうしたんだい? 確か今日はファミリアのみんなで遠征に行くんじゃなかったの?」
「いやーそうなんだけどさ、実はさっきヤバいモンに出くわしちゃって……」
マックスと呼ばれた青年はリーダー格のリスに対してバツの悪そうな表情を浮かべ
「あの”暴れん坊のピート”が、カンカンに怒った様子で誰かを探し回っていたんだよ……」
「ピートが!?」
「うん、マジでプッツンしてる顔付きだったね……きっと誰かを痛い目に遭わせようとしているんだよ」
話の中に出てきたピートという人物、その名前に”彼”は聞き覚えがあった。
かつてはオラリオで最も人気のあるファミリアに属していながら、その素行の悪さが原因で主神からお仕置きを食らって追い出されたとかなんとか……
今ではすっかり落ちぶれて、自分より格下だと判断した相手だけを標的にして悪さをする小悪党に成り下がってしまったとも聞いている。
「マズイよ、誰がピートを怒らせたのか知らないけど、あのままだと誰かが酷い目に遭わされるって……」
「う~ん、その誰かって人物は恐らく……」
「ベルだよ! アイツさっきやられた腹いせにベルに復讐するつもりなんだ!」
「マックス! あなた冒険者なんでしょ! なんで見つけた時にピートを止めなかったのよ!」
「い、いやだって……ステイタスは封印されててもやっぱりピートはおっかないし……それにああなっても父さんにとっては友達らしいし……」
「ったく、ま~だそのビビリ癖が治ってなかったのかお前さん、それじゃあ一人前として認められるのはまだまだ先だな」
肩を落として両耳をしょんぼりと垂らして項垂れるマックスにネズミ達が叱りつけている。
そんな光景をしばし見つめた後、”彼”はようやくスクッと立ち上がった。
自分の出る幕が来たのだと
”彼”はすぐにその場から駆け出し、向かいの建物に向かって大きく飛躍する。
常人とは思えない跳躍力で、軽々と建物を飛び越えていく。
「おい! あの赤と青のピチピチスーツの男! アイツって最近オラリオに現れた有名な!」
「キャー! 私生で見たの初めて!」
「忌々しい野郎だ……派手な格好を見せびらかす目立ちたがりめ……いつか痛い目に見せてやる……!」
下から自分を見上げて様々な声を上げる民衆や冒険者に軽く手を振りながら、”彼”はグングンとスピードを上げて街中を疾走する。
そして跳躍だけでは届かない建物に対しても、なんの躊躇もなく飛び上がり
バシュ!と手首から白い糸の様なモノを発射させ、何てことも無い様に建物に接着し、そのまま糸を使って体をスイングさせ、勢いをつけてまた別の建物に飛び乗る。
「やれやれ、”この世界”も本当に退屈しないね」
オラリオの中心に立つ、最も高い塔「バベル」の周りをグルグルと回りながら、余裕たっぷりの様子で”彼”はボソッと”赤いマスク”越しに呟く。
「ま、”僕がいた世界”も中々のモンだけど」
軽口を叩きながら”彼”は天高く飛び上がり、そのまま糸を垂らして真っ逆さまに落ちて行くが地面スレスレでまた浮上し、重力をモノともせずに壁を駆けて行ってしまう。
自由自在に糸を張り、オラリオをまるで自分の庭だと言わんばかりに飛び回る。
その姿はまるで”蜘蛛”の様であった、
ディズニーキャラ紹介
マックス
本名はマキシミリアン・グーフ、愛称はマックス
ディズニーではお馴染みの、あの”愉快でお間抜けな天才肌の人気役者”の一人息子。
性格は調子に乗りやすかったり生意気だったりと、父親とは似てない部分もあるが、ドジでおっちょこちょいな所、独特な笑い声はハッキリと遺伝している。
子供の頃からなにかと父親に対して反抗的な態度を取っており、一番周りに言われたくない言葉は「父親にそっくり」、だがあくまで思春期故の反抗であって、本当に嫌っているわけではない。
友人はピートの息子のPJ、お隣同士で住んでいる為、幼い頃から大学まで一緒にいるほどに仲が良い。(ちなみに父親同士も友人関係)
本作では父親の後を追って冒険者となり、現在レベル2、年はベルよりちょっとだけ上。
役割は父親と同じく前衛でモンスターの群れを相手に臆せずに盾として食い止める勇敢な戦士
というのうが本人の希望であるが、過保護な父親のおかげで雑用係しかやらせてもらえず、その事に対して不満を持っており、サポーターという役割も軽く見ている節がある
夢は「父親に認めてもらえる一人前の冒険者」であるが、果たしてその夢が叶う日が来るのか……
代表作は「パパはグーフィー」「グーフィーとマックス ホリデーは最高!」「史上最強のグーフィー・ムービー Xゲームは大パニック」「ハウスオブマウス」