完全に沼りました!()
最初から苦手な場面が多いかもしれません。
では、どうぞ!
俺が初めて鬼と呼ばれるモノと会ったのは、11の頃。肌寒い時期だった。母の実家へ妹と共に帰省していて、父が待つ我が家に帰って来ている道中だった。それと出会った。雪がぱらぱらと降り始める中それと出会ってしまったのだ。最初はなんだか解らなかった。だが、それが発する異臭から人為らざるものだと理解した。まだ7つの妹はきょとんとした顔で俺の顔を覗きこむ。そして俺の視線の先を見ると途端に震え出した。振動が俺にまで伝わる。その様子を見て、どうやら嫌悪感や恐怖感は感じるのだと理解した。ただ、何でこんな気持ちになるのかは理解できていないだろう。いや、身体が、理解するのを拒否しているのかもしれない。俺も立っているのでやっとだ。そんな俺達二人の様子を見て、母は意を決したような表情でこう言った。逃げなさいと。あなた達二人で逃げなさいと。その表情は、母親として子を守ると決めたことと、その子ども達にはもう会えないかもしれないと言う絶望や悲しみ、それらが複雑に入り交じった表情をしていた。言葉、そして母の表情で妹は理解したらしい。これから起こりうる可能性が脳裏に過ったのだろう。ここで初めて、妹は母に反抗した。
「嫌だよお母さん!私は残る!」
「裕清!百合を連れていきなさい!」
「.....わかった」
百合が俺を睨む。母は微笑む。腰から短刀を抜きながら俺に続けて言った。行きなさいと。その言葉を聞いて、俺はすぐに百合を背中に強引におぶり、その場から走り出した。後ろを振り返ることはせず、ただ、真っ直ぐ前だけを見据え、ひたすら走った。背中で泣きわめく妹の心情を察すると、胸が締め付けられた。当然だ。まだ甘えたい年頃だ。こうなることは分かっていた。だけど俺には、こうするしかなかった。二人を助けることなんて子どもの俺には出来っこない。今の俺に出来ることは、父の待つ屋敷へ妹を連れて最速で走り、父に助けを求めることしかない。己の弱さにヘドが出る。
妹は相変わらず泣いていた。結局、家に着くまでの間ずっと、泣いていた。幼いながらに、きっと悟ったのだろう。母は帰ってこないかもしれないと。家まで後一直線になったとき、父が門の前にいるのを見つけた。着くなり俺は父に聞いた。百合の泣き声が響いてたから出てきたらしい。そして父は俺に問い返した。事情を一通りかいつまんで説明すると父は一言も発することなく家へと急いで戻っていった。そして家の家宝だと父がいっていた刀を持ってきた。それを持ったまま俺に言った。
「母さんの所へ行ってくる。二人は家の中にいなさい。決して夜明け前まで外にでるんじゃないぞ」
父はそう言い残しあっという間に通りの向こうまで行ってしまった。速かった。もう姿が見えなくなってしまっている。そんなものを見届けた後、泣き止んだ妹と一緒に門を開け、家の中へ帰っていった。
父が帰ってきたのはそれから一時間後だった。
父に呼ばれ、走りながら寝室へ急ぐ。そして母を抱き抱えている父を見て、俺は間に合ったのだと思った。百合と共に母の手をとる。まだ温かい。母は生きていた。だが、怪我しており出欠多量の為、危険な状態だと父から言われた後、妹が母の側を離れようとはしなかった。
そんなとき、父が手招きするような形で俺を呼んだ。きっと、これからの方針について話すに違いない。例えどんな結果になろうと、それを色々と受け入れる覚悟を決めた。
「裕清。私は隊士になる。」
その言葉に、俺は大いに戸惑った表情をしていたに違いない。隊士なんて言うものは色々あるが、今この状況下において、あれ以外には無いだろう。父の言う隊士とは鬼滅隊に所属している人達のことだろう。そして父は話始めた。
「実は前から打診されていたんだ。我が一族、龍ヶ峰家を現当主はお許しになった。もう、戻ってきていいと言われていた。しかし私は迷った。我が一族の先祖がしてしまった過ちは許されるべきことではない。柱であるにも関わらず、同僚の柱と恋に落ちそして身籠らせた。それだけなら、ここまで大事にはならずにすんだだろう。だが、二人揃って鬼滅隊を辞めたのだ。最も、当時からお館様はそれを許していた。幸せを掴んだのなら、無闇に離すべきではないと。だがそれを他の隊士達が許せると思うか?最愛の肉親を亡くした者が殆どの鬼滅隊において、それが許されることなんてなかった。そうして我が一族は約100年もの間、鬼滅隊隊士にはなれなかったのだ。」
俺の父はまるで思い出話を語るかのように、一つ一つ、言葉を噛み締めながら話した。そこで俺は初めて自分の先祖についての話を聞いたということが嬉しく感じていた。こんな事情があって鬼滅隊に入れなかったのだということを知れて良かったと思った。ただ、確かにそれが許されることではないことも同時に理解したし、鬼殺隊の方達が許せないと思うのも当然だと思った。今の鬼殺隊の中にも父や母、兄や姉たち兄弟をころされた殺された人たちの数は計り知れない。そんな人たちが、戦いから逃げた一族を許すわけがない。これは期間の問題ではない。だが、父は当然そのことを理解しており、そしてそれを全て受け入れいた。それでもなお、父が鬼殺隊に入るという決意が目を通して伝わってきた。それほどまでに今回の件は心にくるものがあったんだろう。父の目は、鬼に対しての復讐で燃えていた。そしてそれを止める手段は俺にはなかった。
今の父を突き動かすものは、家族との幸せや安寧ではない。
鬼に対しての復讐。ただ、それだけであった。
そして父が隊士になってから一年がたち、十段階ある階級の最上級である甲にまで上り詰めたころ、柱に空席ができたことにより晴れて父は、柱へと昇格したのであった。それと同時に、俺は父の継子になった。継子とは、柱が直に育てる隊士のことである。
その間、母はずっと寝たきりであった。例え寝たきりであっても生きているだけで嬉しい。あの状況下で生き延びたのだからこれ以上は望むべきではないとは思う。ただ、それでも望んでしまうのが人なのだろう。あの日、鬼に襲われてなければ。なんて考えてしまう。そういった妄想は無意味であって何にも生み出さないことなんてわかりきっている。それでも望んでしまうのは傲慢であろうか。鬼さえいなければ。なんて考えた日々がどれ程続いただろうか。気づいたら俺は、この世から鬼を滅ぼすと心に決めていた。
俺は剣士としての才はそれほどなかったと思う。俺は7歳の頃から鍛錬を始めた。全集中の呼吸を会得したのはそれから半年後。さらに半年後に常中を会得した。基本の呼吸を覚えるだけで一年も掛かってしまった。それでも父は決して投げ出さず、根気強く俺に教えてくれた。呼吸を習得したら次はいよいよ一族の呼吸を学ぶのだとばかり思っていた。だが次に叩き込まれたのは、水や風、炎に岩に雷の呼吸だった。何でもこの呼吸がある程度習得できないと一族の呼吸の力を存分に発揮できないらしい。よって渋々鍛錬を始めたんだが、これがかなりきつい。毎日死ぬかもしれないと思いながら鍛錬をした。正直何回死にかけたかわからない。ただそれでも止めることなく、投げ出さなかったのは代々受け継がれてきたものを、俺の代で途絶えさせるのは男が廃ると思ったという単純なものだ。後は母や妹にいいところを見せたかったという誰にでもある感情だ。ただそれは11を境に終わりを告げた。無様でもいい。兎に角、鬼を殺せる技術が欲しかった。
鍛練を初めてから実に4年の月日が過ぎていた。12になった俺はその日から一族の呼吸を学ぶことになった。八割ほどとは言え、死に掛けながらも鍛錬した日々を思えば今回も乗り越えられると思った。
あまかった。自分の認識を遥かに超えていた。正直言っている意味が分からなかった。ここで俺は初めてあの日父が話していたことの意味を理解した。
あらゆることを学び、一つのことを完成したというのが、本当の専門家だ。
一つのことを極めるには数多くのことを学ばなければいけない。それができないのに極められるとは思うな、とよくいわれた。
地獄の始まりだった。切り傷なんて日常茶飯事。骨折したこともある。鬼を殺す前に鍛錬で死ぬと思った。何度蝶屋敷に運ばれたことか。五つある型を修得するのに更に二年もの月日を費やした。
更にそれから一年。ひたすら型の練度を高める為に鍛錬していたある日。俺が15になってから数日がたったころ、父の訃報が届いた。母も既に亡くなっていたので、俺と妹は、蝶屋敷に引き取られる。そこで俺は初めて、他の鬼滅隊士に会った。二人とも女性で美人であった。俺は、女性と言えば母と妹しか知らなかった。二人とも町では有名なほどの美貌を持ってはいたがこの姉妹には敵わないと思う。この美貌だけで生きていけると確信できるのだが、そんな二人がここにいる理由。想像に固くない。だが、姉の方のカナエと呼ばれる人はそんな俺の印象を意図も容易く打ち砕いた。
「あなたが裕清さんですね。初めまして。胡蝶カナエと申します」
笑顔がとても美しい人だった。鬼狩りを目指しているとは思えないほどの柔和な優しい笑顔だった。そんな笑みに、俺はすっかり虜にされてしまった。百合に手を強く握られてやっと我に返った。そして慌てて、こちらも挨拶をすることにした。
「初めまして。龍ヶ峰裕清と言います。そしてこっちが」
「妹の百合です。よろしくお願いいたします」
「よろしくね裕清くん、百合さん」
胡蝶カナエは初めて会った妹に一目惚れしたらしい。自分の妹であるしのぶとはまた違う可愛らしさがあってそれが、姉心を刺激するとのこと。面倒見がかなりいいことはよくわかった。極度の人見知りである妹が会って程なくしてあんなに馴染むのは初めて見た。カナエにもよくなついていたが、しのぶとの仲のよさは凄かった。しのぶには少し近寄りがたい空気があったのだが、見事打ち解けている。女同士からなのか同年代だからなのか。カナエは俺と同い年で、しのぶは三つ下らしい。となると最年少は内の妹となるわけか。二人にとっては可愛い妹みたいなものなのかと一人で勝手に納得し、そして勝手に悲しくなった。俺ではあの子の悲しさを慰められていなかったという事実に、力不足な自分が勝手に嫌になった。
カナエとはよく話した。同い年というのもあるだろうが長男長女でもあったし、一ヶ月後で最終選抜を一緒に受けることになっていたのもあって、よく一緒に鍛練をしていた。カナエの使う呼吸は花の呼吸と言う。水の呼吸の派生らしいが正直全く別の呼吸にもみえる。カナエが使うからなのだろうか、どの型も繊細で美しく、けどどこかに力強さを感じさせられる。鬼を殺す技なのにこんなにも美しく感じることがこれまであっただろうか。簡単にいうと、綺麗だ。よく鍛練し、技を昇華させているのがわかる。きっと彼女は近いうちに柱として、鬼滅隊を支える存在になると俺は確信した。そして俺は、その隣に立てる男になりたいと思った。彼女を守れるほどの強さを、俺は貪欲に欲するようになった。
最終選抜までの期間、俺達が鍛練していた傍ら、妹はしのぶに薬学や治療方について教わっていた。妹は頭がいい。俺も決して悪い方ではないが、百合に及ばないところもある。百合は本を読むのが好きだった。よく母と眠る前によく本を読んでとせがまれたものだ。百合はただ本を読むだけでなく、そこから感じとるまたは学ぶことに長けていた。自分の中で新しい世界が広がっていく感覚が心地よかったんだろう。あっという間に家にあった本は全て読みつくし、遂には自らの手をで本を求めに買い物をしにいったこともあった。普段は物静かなのに、自分の中に芯をしっかり持っていて、それに沿ったことに対することを行動に移すのは早い。そして心を開いた人には感情がとても豊かである。あと綺麗な黒髪で質もいい。目もくりくりしてて小動物的な愛らしさがある。あと怒ると頬を膨らませる癖がある。眉はすっと真っ直ぐ伸びていて睫毛はめちゃくちゃ長い。体つきは女性らしい丸みを帯びたまさに完璧。それが俺の妹、百合という人物像だ。カナエとお互いの妹のことについて語りに語っていたら一日が過ぎていたこともある。話題の当人達は顔を真っ赤にしていたが、カナエと俺は怒っている顔も可愛いと思い、二人揃って兄・姉馬鹿ねと笑ったものだ。
そんな穏やかな日々はあっという間に過ぎていき、とうとうこの日が来た。最終選抜する藤の山へ向かう日だ。万が一はないようにするつもりだが、それでも不安なものは不安なんだろう。それぞれの妹達が送りにきていた。俺とカナエは顔を見合せ、微笑みながら自分の大事な妹に駆け寄り、きつく熱く抱擁した。何度も噛み締めるように抱き締めた。
「裕清兄さん」
百合が俺を呼び掛けて小指をつきだしてきた。一瞬考えてしまったが、直ぐに理解する。百合と母がよくやっていたやつだ。
指切り弦間嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。
俺は妹と約束した小指を見ながら、歩を進めた。行く道中でカナエに羨ましがれた話を、帰ってきたらしのぶにしてやろうと思った。あのいい子のしのぶなら次回はやってあげるに違いない。その場面を想像したら思わず吹き出してしまってカナエに不審がれた話はしなくていいか。全く緊張感のない二人だが、こんな感じで俺らは最終選抜へと向かっていった。
因みに作者のイチオシはしのぶです!()
可愛いわぁ!
(*´∀`)ノではでは~