では!どうぞ!
朝、いい匂いによって目覚めた。少し申し訳ない気持ちになりながら身支度を済ませ居間に移る。既に胡蝶姉妹に百合に加え、煉獄家までも揃っている。しかも杏寿郎は配膳などの手伝いもしているのを見るとますます申し訳ない気持ちが積もる。炎柱は泊まらせて貰っている身なのだから当然のことと言って下さったがこちらは内心穏やかじゃない。そんな中、食事が始まり、杏寿郎に最終選別について根掘り葉掘り聞かれ、それに丁寧に対応している間には全て食べ終わっていた。後片付けはさすがに手伝いを申し出、あとはこちらで終わらせておきますと言われたので部屋に戻ろうと思ったのだが炎柱に話しかけられた。
「少しいいかね?」
「はい?」
昨日今日でなんだろうと思ったが、内容を聞くと、ワクワクしてしまったのはまだまだ幼いからなのだろうか。提案されたのは杏寿郎との模擬戦だ。呼吸は使ってもいい。木刀で対戦。降参の合図を出すか、戦闘不能と判断されたら終了など、それなりに決め事はあったが基本的に死なない殺さないようにという程度のもの。煉獄家の呼吸は炎の呼吸だと分かってはいるが自分のとは遥かに練度の差がある事だと思うと心が躍る。暫くの準備時間を設けたあとに行うことになった。
「手合わせ感謝する!」
「手加減は抜きでいいよな?」
「うむ!手加減は無しでお願いしたい!」
「両者、準備はよろしいか?」
「いつでも」
「うむ!」
「では、はじめ!!」
杏寿郎は壱の型、不知火を選択したようだ。不知火は一蹴りで一気に間合いを詰め横薙ぎに敵の首を切り落とす技。初見で避けきるのは困難の技だろう。そして炎柱が直々に教えているからか俺のよりも身に染み付いているようだ。
俺が選択したのは水の呼吸漆の型。雫波紋突き。水の呼吸唯一の突き技である。これで杏寿郎の振るう木刀の切っ先にぶつけ威力を相殺する。驚いた表情をしている杏寿郎だがすぐに表情は真剣さを増し一度距離をとる。お返しとばかりに雷の呼吸壱の型、霹靂一閃を放ち決めにいく。それを見た杏寿郎は弍の型、昇り炎天を放ち俺の木刀の軌道を止めるばかりか吹き飛ばそうとしてくる。
何とかそれに耐え、一度距離をとる。
お互い、突進技を使い、それぞれ対処しきった。ただ、さすが炎柱の息子であり継子だと言うべきか。例え最終選別を受けていなくても、今回参加した者達より強い。距離をとるタイミング。一瞬の判断力。なにより技の応用力が高い。そして柱との稽古の中での経験をかなり活かせている。正直今までの中でこの上なくやりにくい相手だ。
「やるじゃないか」
「そちらこそ!よもや複数の型を使うとは!」
炎柱はどうやら伝えてないみたいだ。別に伝えていてもよかったのだが。いや、鬼との戦いは常に情報不足。それを見越してか。だとすると杏寿郎の洞察力が優れているということ。ただ、何の呼吸かは把握していないみたいだ。まだまだこちらが情報的に有利ということか。
よもやよもや。一度目で決まったと思ったのだが、まさか威力を相殺するとは。一体、どのような集中力なのだろうか。それぞれ別の呼吸を状況に応じて使い分けられる繊細さに加え思考力。既にその実力は並の隊士の頭一つ、いや二つほど抜けている。これほどの実力者と剣を交えられるとは。感謝せねばなるまい。ただ、負ける理由にはしたくない。
一呼吸おいて再び接近する。右肩に向け振り下ろすがそれを体を拗じることによって寸前で左脇腹へ攻撃先を変える。それをぎりぎりで躱した杏寿郎はそれを振り払う力を利用して上段からもの凄い勢いで振り下ろしてくるがこれを雷の呼吸の足だけに集中し使うことによって回避。再び距離をとる形になり打開策を見つけるためまずは懐に迫る。
風の呼吸壱の型、鹿旋風・削ぎ
炎の呼吸肆の型、盛炎のうねり
風の呼吸でもそれなりに威力のある技は盛炎のうねりによって完全に遮断された。炎の呼吸は防御にも有効な技が多いらしい。いやこれは杏寿郎の実力というやつか。俺では炎の呼吸を防御に利用してもこれ程までの結果は出せないだろう。これは攻めあぐねる。攻めるのに岩の呼吸は最も不得意なので選択するのは論外。炎の呼吸なんてその使い手に対して放つのは自殺行為。となると、風と水と雷しかないのだが、どうしようか。いやもう出し惜しみは無しだ。
今のところ水に雷に風と実に三つの呼吸を使ってきた。まだまだ他の呼吸に対して未知なものが多い中よくやれているとは思うがそろそろ限界だろう。決めにいかないとこちらが危ない。
再び接近し二度斬り合いをし鍔迫り合いに持ち込まれた。ここで俺は右手の手首の返しを利用しがら空きになった左脇腹へ目掛け一発殴打した、そこで体勢が崩れた杏寿郎へ攻撃を続けようと思ったのだが、体を回転させた杏寿郎が俺の腹部目掛け蹴りを打ち込んできたので思わず距離を取った。その隙を見逃してくれるはずもなく、立て続けに攻撃を組み立ててきた。
炎の呼吸伍の型、炎虎
岩の呼吸参の型、岩軀の膚
炎虎は炎の呼吸の中でも特に優秀な技だ。体勢が万全でなく、間に合いそうなのが一番不得意な呼吸なのは中々窮地であゆ。だがもろに受けるわけにもいかないので、まずはこれで防御。岩の呼吸の中でも得意な方だがそれでも全体的に見れば不得意の為、全ては防ぎきれないが致命的なものは避けられる。ただ、それだけで十分。炎の呼吸はそれぞれ攻撃や防御に応用が効く技であり大変優秀な技が多いが連続攻撃が苦手という部分がある。なので一度攻撃が止められてしまうとそれなりの時間を要する。炎柱である槇鋳郎どのなら避けられるかもしれないがまだ完全ではない杏寿郎ならこの距離なら避けようがないだろう。
龍の呼吸弍の型、昇龍穿
杏寿郎の木刀が取り払われ、その首筋には裕清の木刀が迫っていた。木刀が落ちる甲高い音を聞き届けた後、槇鋳郎が告げた。
「そこまで」
暫くの沈黙の後、先に声を上げたのは杏寿郎だった。
「見事な技だ裕清どの!是非また稽古願いたい!」
「こちらこそ。どの技も練度が高く、見事な剣だったぞ杏寿郎」
次またやる時はまた腕が上がっていることだろう。そう想像するのは固くない。杏寿郎は剣士としての才が溢れている。きっと父同様、いい柱になるに違いない。そうなる日も決して遠くはないだろう。
ここで見学していた人達が次々に話しかける。最初にカナエ。次にしのぶといった順だ。
「2人ともすっごーい!思わずみとれちゃったわ!裕清の強さは知っていたつもりだったけどやっぱり凄いわねー!杏寿郎さんもとても歳下とは思えない技の練度だったわ!」
「えぇ。お二人共素晴らしい試合でした。思わず全集中の呼吸するのを忘れてしまいました」
「それは駄目だろ」
その時しのぶの鋭い突きが溝打ちに刺さる。結構痛い。そして、そういうところですよ。と言われるのだが、駄目なものは駄目だ。言い方は悪かったかもしれないが。
「私とはやってくれないのぉ?」
「いいけど」
「けど?」
「また今度でいいか?」
「えぇー!」
すまないが今日は疲れた。すぐ終わると思ったのに中々決まらないものだから龍の呼吸を使ってしまったし。まだ全快してない中龍の呼吸を使うと疲労が抜けづらいからこれ以上の疲労は避けたい。ただでさえカナエが使う花の呼吸は全く得体の知れない呼吸なのだ。それについての対応も考えながらなんてことを考えるだけでも頭が痛くなってくる。そんな中やってもカナエの為にならないと思ったのでそう伝え俺はまた、一眠りすることにした。
あれから一週間が経った頃。俺達に日輪刀が届いた。日輪刀は色変わりの刀と言われる。持ち主によって色が変わるからだ。因みに龍の呼吸の使い手は濃紺に染まる。カナエの日輪刀は桃色に染った。煌びやかというような派手さはなく、落ち着いた綺麗な色に染った。カナエは花の呼吸の使い手だからぴったりの色だ。因みに俺には父の形見でもある刀を整備してもらってる間はまた別の日輪刀を使うことになる。刀身は勿論濃紺に染まった。更に小太刀に鞘まで注文通りにして下さったことに関して流石代々お世話になっている刀匠さんだと思った。感謝してもし足りない。大事に使わせてもらう。何より聞いた話によると、刀を粗末に扱うと怒り狂うらしい。それだけは避けたい。どうしていいか分からなくなるしな。
こうして俺たちは正式に、鬼殺隊に所属することになった。これから様々な困難に打ち当たるだろう。だが、それを全て乗り越えていけば、必ず、巡り会えるだろう。父を殺したとされる鬼舞辻無惨。この命尽きるまで、追い続け、必ずや。必ず、仇をとる。
次回 柱
先週投稿するの忘れてました!
すみません!
ということで来週も投稿します!
(*´∇`)ノ ではでは~