では!どうぞ!
強い。流石上弦の弍と言うべきか。鬼の特性である回復力は勿論のことだが、血鬼術の危険度は計り知れない。広範囲高威力でありしかも全ての技に伴う冷気が肺を凍てつかせる。これでは呼吸がままならない。つまりこの童磨という鬼は鬼殺隊にとってかなり厄介な存在であるのは明白だ。
基本の呼吸全て使えてもこれでは意味が無い。何か弱点を探さないと。
「ほらほらどうしたのそんなに離れて。それじゃあ俺の首はきれないよ?」
「いい気になってんじゃねえぞ童磨!!」
血鬼術 粉凍り
龍の呼吸 伍の型 暴龍天
童磨が扇で周囲に扇いだものは、自身の血を凍らせ霧状にしたものだ。これを吸い込むと肺胞が壊死する。一度目の時、本能的に避けたがこれはかなり危険な技であると知った時、背筋がゾワゾワしたものだ。まさに初見殺し。避けたあとわざわざ説明してくれたおかげでより注意深くなった。
血鬼術 蓮葉氷
龍の呼吸 肆の型 龍舞
蓮の花のような氷は、掠っただけでも凍るほどの強烈な冷気を放ってくる。しかもこの童磨という鬼は存外冷静であるようで的確に配置してくる。避けきることはかなわないため、切り伏せたがそれも全てではない。龍舞は本来多数の鬼に効果的な技だ。だから一体の鬼の血鬼術に使うのは殆ど想定していなかった。そのためか右足の太腿付近と左腕上腕あたりに掠ってしまった。掠った範囲は僅かではあるが長い時間戦い抜くのは困難だと伝えてくる。童磨相手に持久戦は敗北を意味する。
「あと何個あるのかな?全て見せる前に死なないでおくれよ」
「……上等!」
血鬼術 枯園垂り
龍の呼吸 弍の型 昇龍穿 三連
扇に冷気を纏えるのか。あれも触れたら、いや、掠ったら確実に死に繋がる。扇ごと童磨へ押し込むがこれは距離を取られ追撃ができなくなった。
「そろそろ全部かな?」
血鬼術 冬ざれ氷柱
龍の呼吸 参の型 龍爪 五連
上から巨大な多数の氷柱を降らせるとか普通なら全身貫かれて終わりだ。迫り来る氷柱を片っ端から砕いていくが五連でも足らず全身を掠めていった。貫かれなかっただけでも幸運と言うべきなんだろうが、この寒さは異常だ。全身が寒さで強ばる。呼吸もままならない。体の表面が凍ると言うより体内から凍っていくみたいだ。血液から侵食されていくような、そんな感じの。
「まだ倒れないでおくれよ。俺はまだ全部出てないよ?」
「………そうか。安心しろ。まだ倒れない」
「うんうんそういうの凄くいいね!人間の無駄に足掻くところとか俺はすごく好きだから!もっと惨めに無様に足掻いてみせてよ!」
「…………土下座する準備でもしとけ童磨」
龍の呼吸 壱の型 牙龍一閃
「おおっと危ない危ない」
「ちっ」
血鬼術 寒烈の白姫
氷の巫女とでも呼ぶのだろうか。それは広範囲にわたって息を吐いた。ただそれだけだ。それだけで周囲が凍った。もし避けきれなかったら足を氷漬けにされていたに違いない。駄目だ。やはり"五つの型だけ"では駄目だ。父の言っていたそれ以降の型。それを習得しない限りこいつには勝てない。
「ねぇ本当に五つだけなの?君の型」
「……なに?」
「昔聞いたんだよね。そしたら"本来は拾ある"って聞いたんだよね。まぁ俺と戦ったあれも五つしか使ってなかったけどね?なに?途絶えちゃったの?それなら悲しいねぇ。」
「……お前の知ったこっちゃないだろ」
「確かにそうだけどね?気になるじゃん?どうせだったら全部お披露目させてから殺したいんだよね。そういうの君はないの?」
「ねぇな。出すまでもないならそれで殺す」
「つれないなぁ」
やはりこいつとは分かり合えない。俺たちは常に全力なんだ。そんなこと考えている暇すらない。こいつは単に興味本位でしかないだろう。大方、ここまで頑張ったのに全部無意味だったねとか言うに決まっている。そんなの最大の侮辱にほかならない。だが一々神経を逆なでしてくる言動を放つこいつは言うだろう。寧ろそうやってこちらの気持ちを煽って煽って隙が出来たら殺すやつだ。やはりこいつは鬼以前に心の持ち方的に嫌いだ。
「君も五つしか使えないみたいだしそろそろいいよね。あぁ他の呼吸はいいよ。もう何人もの見たからね」
「そうか。死ね」
血鬼術 散り蓮華
岩の呼吸 参の型 岩軀の膚
最初の方に放ってきた血鬼術より威力は低い。だが範囲が広すぎる。よって避けきれないと判断したので自身を覆うようにして守ろうとしたんだがやはり完全には防ぎきれない。辛うじて顔の周辺は守り抜いたが胸や肩や腰は凍てついてしまった。かなりやばい。もう、動けないぞこれ。寒すぎる。喰われて死ぬ前に凍死しそうだ。何一つ通用しなかった。何一つ、敵わなかった。意気揚々と殺しにかかったのにこのざまだ。何が柱だ。このままでは、十二鬼月一体も殺せず終わるじゃないか。俺は、柱になるべきじゃなかった。
「うーん、戦意消失かなもしかして。それは困った。俺はそんな人間を殺したいわけじゃないんだけどなぁ。あぁ」
「ねぇ、君家族は?」
なにをきいているんだこいつは。
「家族に女の子いる?」
いるならどうだって言うんだ。
「あっ、その反応はいるね!いいなぁ。さぞ、"美味しい"だろうなぁ」
それは、だめだ。あいつは、ゆりは、普通の女の子として生きていかせるんだ。鬼と縁のない生活へ。普通の幸せを得られる生活へ。子どもがいて、育てられる生活。愛する人と共に生きていく生活を。そんな普通の生活を送らせてくれ。まだ小さいうちに両親を亡くした気持ちがお前にわかるか。頼れるのが兄一人しかいなくて、その兄は鬼狩りの剣士として生活していて、それを待つことしか認められていない妹の気持ちがわかるか。あいつが俺の後を追うように鬼殺隊に入りたいというのは知っている。でも、兄としてはそれを認めたくない。認めるわけにはいかないんだ。だって、本来なら、知らなくていい世界なのだから。だが、ここで俺が死んだら。間違いなくあいつは鬼殺隊へ入る。それだけはだめだ。そんな世界へ踏み込ませてはいけない。こんなところで、権利を
捨てさせるわけにはいかないんだ。
童磨の攻撃を避けながら、息を深く吸う。そして肺に溜める。こんなの、こんな状況下では一度きりだ。肺に酸素をためろ。もっと早く、血液を循環させろ。全身を、廻れ。廻れ。体温を上げろ。体をめいいっぱい動かせ。機会を逃すな。
今だ。
龍の呼吸 壱の型 牙龍一閃 天
「おわっ!?」
本来は一箇所に集中し限界まで速度をはやめ切り裂く技だが童磨相手にはそれではだめだった。なので、六箇所を切り裂くことによって、次へと繋げようと変化させた。あわよくば首を切り落とせればと思ったがそう上手くはいかなかった。だが手足胴を切り刻めた。これならそれなりに時間は稼げるはずだ。それだけの時間があれば、この酷使した肺でも一度くらい技が放てる。
終わりだ。童磨。
龍の呼吸 参の型 龍爪
「ふぅ、危ない危ない。久しぶりに死ぬかと思ったよ」
果たせなかった。やつは間際に氷の分身体を作り壁とした。これにより首を完全に切り落とすことはかなわなかった。あれだけ肺を酷使した後だ。今は一般人程度にしか肺は使えない。体も童磨の近くにいるせいかつま先から凍っていく。そんな俺の体では鬼殺隊隊員としては下の下だ。つまりこの後待つのは死。必ず帰ると約束したのにな。嘘つきですまない。
「まぁあれが最後だろうから。もう、楽にしてあげるよ。俺は優しいからねぇ。それはもう菩薩のように」
鋭い扇が展開される音が聞こえる。しゃらんという綺麗な音はその鋭利さをひしひしと伝えてくる。痛みを感じさせることなく切り落とされそうな音だ。
「さぁて、夜明けも近いしそろそろ、ね。楽しかったよ」
ひゅんと音がたった。目を閉じ最後の時を迎えようとした。だがそれは一向に訪れなかった。
「遅くなってすまない」
「………ぎゆ、う」
「君もいきなり斬りかかってくる口かい?危うく死ぬところだったよ」
「俺の仲間を殺そうとしておいてよく言う。次の相手は俺だ」
「おかしいなぁ。数十体の鬼をそっちに差し向けていたはずなのに。君も柱か。そっか。じゃあまたね二人とも!」
そう言って童磨は消え去った。恐らく夜があけるからだろう。あぁ、陽射しがこんなにも心地いい。この心地良さを知っているから。薄気味悪い夜中には踏み込ませたくないんだ。
「しっかりしろ龍ヶ峰!!すぐ蝶屋敷へ連れていく!!」
なんだよ義勇。お前、そんなに話せたのかよ。いずれこんな状況じゃなくても、話してくれるかな。お前と話したいこと沢山あるんだ。年相応の、他愛もない話を。
薄れゆく意識の中で、見覚えのない記憶が流れ込んできた。二人の剣士と、二体の鬼が相対している場面。一人は上弦の陸、もう一人は上弦の壱。そして剣士の方は、龍が描かれた羽織を着ている男と、藤の花が綺麗に染まっている羽織を着た女。
互いに全力を尽くし殺し合う。
そして最後には、血塗れになる二人の剣士の姿が、映った。
あれは、一体なんだったのだろう。
そうして暗闇の世界へと放り込まれた。
次回はなんだろうな。治療編かな?w
(*´∇`)ノ ではでは~