ゼロの使い魔×ポケットモンスター 仮題名『メタモン物語』 作:蜜柑ブタ
「メタモン…、もしかしてお腹すいてる?」
仮面の男にやられた傷もあるだろうが、それにしたって元気がないので聞いてみると、メタモンは、ぺっとりと甲板に広がった状態で頷いた。
「なにかないかしら…。ねえ、何か食べ物ない?」
「わるいね、お客さん。うちの船に食事のサービスはないぜ。」
「そんな…。」
「携帯食ならある。これでいいかい?」
「ありがとう、ワルド。」
ワルドから干した携帯食を受け取り、メタモンに与えた。
しかし、ムグムグと携帯食を噛んだメタモンは、渋い顔をする。
「不味いのは分かるけど、我慢して。」
う~っとか、む~っとか唸ってムグムグと口を動かしているメタモンに、ルイズがそう言った。そしてメタモンは、不味い携帯食を頑張って飲み込んだ。
「アルビオンが見えてきたぞーー!」
そこに見張りの船員の声が轟く。
やがて、雲よりも高い位置にある巨大な浮遊大陸アルビオンが姿を見せる。
「だいじょうぶよ、メタモン。アルビオンにご飯あるから。」
「…それどころではないかもしれないがね。」
「どういうこと?」
「聞くところによると、今、ウェールズ皇子は、布陣を敷いているニューカッスル城を反乱軍に包囲されているそうだ。食料を得る前に皇子の安否が気になる。」
「そんな……。」
どうやら状況は、想像していた以上に悪いらしい。
ルイズは、青ざめる。頼りのメタモンは空腹でぐったり。ワルドもいるのだが、船に足りない風石のブースターとして風の魔法を使い続けていて精神力もいずれ尽きるだろう。
ルイズは、しゃがみ込み、メタモンを抱き上げて抱きしめた。
そんなルイズの肩にワルドが手を置いた。安心させるように。
その時、見張りの船員が声を荒げた。
右の方角から、一回りも大きな船が接近してきていることを。
その船には旗はなく、船長は空族だと判断し、急いで逃げるよう船員達に指示した。
だが、逃げようとすると向こうの船が大砲を一発撃ってきた。こちらにも武装がないわけじゃないが、圧倒的に向こうの大砲の方が上だ。
船長がワルドに助けを求めるように見たが、ワルドは首を振った。自分はもう魔法が使えないという意味で。
従うより他なかった。
空中で止まったこちらの船の横に、空族の船が近づく。
ワルドのグリフォンがギャンギャン鳴くが、眠りの雲という魔法が浴びせられてしまい眠らされた。
ルイズは、メタモンをギュッと抱きしめる。
その後、空族の船長らしき人物がやってきて、船長に積み荷のことを聞き、船員達の命を代金に船を全部買い取ると言い出した。
ルイズとワルド、そしてルイズに抱きしめられていたメタモンは、船倉に連行された。身代金をたんまり貰うための人質として。
ルイズは、連行される前に空族に触られたため、その手を払ったりと気丈に振る舞ったが抱きしめられていたメタモンは、ルイズが震えていることに気づいていた。
杖も剣も奪われた中、船倉の壁を背に座っているルイズは、ずっとメタモンを抱きしめていた。
メタモンは、手をウニョ~ンと伸ばし、ルイズの頬を撫でる。その優しい撫で方にルイズは、涙を浮かべた。
メタモンは、ハッとして、ワルドに手を伸ばしてつつく。
「なんだい?」
そしてメタモンは、自分の手の先を鍵に変えて見せた。
しかしワルドは、首を横に振った。
「見張りもいることだし、それに僕らは杖がない。君もロクに力が出せない状況でどうやって武器を奪還するんだい? しかも、ここは空の上だ。」
それを言われ、ガーンっとなったメタモンは、鍵の変身を解いてへにゃりとなった。
「すまない。言い過ぎたね。」
「飯だ。」
そう言って太った見張りがスープを一皿もって入って来た。
それをワルドが受け取ろうとすると、見張りの空族は、皿を持ち上げていった。
「その前に答えろ。お前達は何をしにアルビオンに?」
「りょ…旅行よ!」
「トリステインの貴族が、今時のアルビオンに? 何を見物しに来たんだ?」
「そんなことあんたなんかに答える義理はないわ。」
「そのプルっプルの生き物がぐったりしてんで、すっげー強がってるくせによく言うぜ。」
「っ…。」
痛いところを突かれ、ルイズは、ギッと相手を睨んだ。
見張りの船員は、スープの皿を残して、気にせず去って行った。
「これっぽっち…。」
「身代金目当てだけなら、コレでも十分すぎるだろう。ルイズ、食べるんだ。体が持たない。」
「私はいいわ。メタモン、私の分も飲みなさい。」
「君の分をあげても、メタモンくんの回復には足りないだろう。今のメタモンくんには、固形でカロリーの高い物がたくさん必要だ。」
「でも…。」
それでも食い下がろうとするルイズに、メタモンが、スープの皿を押しつけるように渡そうとした。
「メタモン…。」
自分のことよりルイズを優先してくれるメタモンに、ルイズは、涙が出そうになった。
そして、二人と一匹でスープを分け合った。
そうするともう本当にやることがなく、空腹で力が出ないメタモンが座り込んでいるルイズの横に寄り添っているだけになる。
どれくらい経っただろうか…、やがてまた扉が開かれ、痩せ細った男が入って来た。
「おまえら…、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」
「……違うわ。」
「ほんとうかい? 俺たちゃ貴族派の皆さんのおかげで商売させてもらってんだ、王党派に味方する連中がいてな。そいつらを捕まえる密命を帯びてんのさ。」
「ってことは、この船は、反乱軍の軍艦なのね?」
「いやいや、俺達は雇われてるわけじゃあねぇ。あくまで対等な関係で協力しあってるのさ、まあお前らには関係ねぇことだがな。で? どうなんだ? 貴族派か? 王党派か?」
「もし王党派って言ったら?」
ルイズは、必死に顔に出さぬよう気丈に振る舞う。
「ただじゃ済まないな。」
「……私達は、王党派よ。トリステインの大使として、アルビオン王室に向かう途中。大使としての扱いをあんた達に要求するわ。」
ルイズが気高く言い放つと、痩せ細った男は、笑った。
「美徳はいいが、時と場合を考えるんだな。まあ、いい。頭に報告してくる。」
そう言い残して去って行った。
メタモンが心配そうにルイズの頬にペチッと触れた。
「分かってるわよ…。でもね、メタモン。あんな奴らに嘘言って姫様の任務を放棄するほど腐っちゃないのよ。私は…。」
「いいぞ。ルイズ。さすが、僕の花嫁だ。」
そう言われルイズは、複雑そうな表情を浮かべて俯いた。
それから少しして、また痩せ細った男が来た。
「お頭がお呼びだ。」
そう言われ、他の空族が入って来て剣やナイフを手に二人に突きつける。
ルイズは、メタモンを抱き上げ、ワルドと共に船倉から出された。
***
そこは豪華な船室だった。
豪華なディナーテーブルの向こうに、これまた豪華な椅子に座り、水晶のついた杖を指で弄っている空族の頭がいた。
「話は、聞いた。王党派だとな?」
「ええ…、言ったわ。」
ルイズは、震えそうになる体を心の中で叱咤して気丈に振る舞う。
「何しに行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまうよ?」
「答えるとでも? 空族ごときに。」
「気丈なのは別にいいが、自分達の状況を考えたらどうだ? どうだ? 貴族派につく気は無いか? あいつらは、メイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ。」
「イヤよ。そこの男にも言ったけど、もう一度言うわ。私達を、トリステインの大使として扱いなさい。」
「……もう一度言う。貴族派につく気はないか?」
「断るわ。」
ルイズがキッパリと言うと、空族の頭は大笑いした。
「トリステインの貴族は、気ばかり強くってどうしようもないな。まあ、どこぞの恥知らず共よりもは、何百倍もマシだがね。」
ルイズは、その言葉から、恐らくゲルマニアのことを言っていると考えた。
「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな。」
途端、周りでニヤニヤと笑っていた空族の船員達が、ビシッと直立した。ニヤニヤ笑いも止めた。
そして頭である男が、席を立ち、ボサボサのカツラであった物を取り、眼帯を取り、ヒゲも外した。
現れたのは、凜々しい金髪の若者。
「アルビオン…、王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」
威風堂々と名乗った頭…、否、アルビオンの皇子、ウェールズが、そこにいた。
突然のその展開に、ルイズもワルドも、メタモンもビックリ仰天、開いた口が塞がらなかった。
ここの回は、書くの大変で……、他の作品でも書くのが億劫で…。
次回は、色々と飛ばして、ワルド裏切り。