ゼロの使い魔×ポケットモンスター 仮題名『メタモン物語』 作:蜜柑ブタ
メタモンに、悪気はありません。
ルイズは、夢を見た。
まだ6つか、10くらいの頃の夢だ。
『お嬢様も難儀ですね…。』
『上のお姉様方は、魔法がお上手ですのに。』
実家でのそんな陰口に耳を塞ぐ。
夢の中の彼女は、悲しいときにいつも来る秘密の隠れ場所の池の小舟に乗っていた。
二つの月が空に浮かんでいる夜。
ルイズが、その月を眺めていると、やがてルイズを抱き上げる両の手があった。
『子爵様?』
ずっと年上の自分の婚約者。
貴族の間で、年の差婚は珍しくはない。ルイズも漏れなくそういう立場で幼い頃に両親が決めた相手がいた。
彼の名は、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
『ルイズ、小さなルイズ。こんなところにいたのかい? 逃げ隠れしたと聞いて、ビックリしたよ。僕のことが嫌いなのかと思って。』
『そ、そんなこと、ありませんわ!』
『ルイズ、ルイズ、僕の小さなルイズ。』
『子爵…さま…。』
幼いルイズは、ワルドの腕の中で身を任せようと身を寄せると、プルンッとした感触が伝わってきた。
あれ?っと思い、見ると……。
点のような二つの目と、口は優しく微笑んでいるが、間抜けな顔がルイズを見ていた。
「メタモーーーーン!?」
ルイズは、寮の自室で叫び声を上げていた。
直後、ベッドからドサッと何か大きな物が転がり落ちた。
「なに? なによ?」
慌てて明かりを探し、照らすと……そこにいたのは、夢の中で見た、ワルドそっくりになったメタモンがいた。
メタモンは、う~っと、呻き、やがて起き上がって、眠そうな顔でルイズを見た。
「その姿! やめて! その顔でそんな顔しないで!!」
ルイズは、ギャーギャー怒り、メタモンは、目を擦りながら、ハテナっと言いたげに首を傾げ、軟体に戻った。
ルイズは、ワルドの姿が消えたことで、ホッと息を吐いて、バタッとベッドに倒れた。
そして、そのまま寝てしまったため、ルイズに変身したメタモンは、寝ぼけた顔のまま、布団をルイズにかけてやり、自分もベッドの中に潜り込んだ。
そして明け方、異変に気づいたルイズにより、ベッドから蹴落とされることになる。
それで目を覚ましたメタモンの姿は、また若い頃のワルドになっていた。
***
翌朝、ルイズは、むくれていた。
「あ~ら、どうしたの?」
「別に…。」
「メタモンちゃんは?」
「別に…。」
「あんなにお気に入りにしてたのに?」
「違うわよ!」
「え~? あんな可愛がってたのに? 違うってんなら、私が貰っちゃおうかな~?」
「なんでよ!?」
「擬態とはいえ、あれだけ精巧に変身できるんですもの。あんなのや、こんなのや…。ウフフフ…。」
「色ボケのためにメタモンを利用しないで!」
「え~、だってアンタのためにあれだけご奉仕してくれるし~? 教えれば色んなコトできるでしょ?」
ムフフ…っと笑うキュルケに、想像してしまったルイズは、茹でダコみたいに赤面してギッとキュルケを睨んだ。
「待て! 不審者め!」
なんか廊下の向こうから、ドタバタと音と怒声が聞こえた。
見ると、なんか見覚えがある…黒い衣装の青年が教師達に追われていた。
ルイズが、一転して顔を青ざめさせると、青年が走ってきて、シュバッと素早くルイズの後ろに隠れた。
「ちょっと、ルイズ? その人……。」
「し…知らない…。」
「嘘おっしゃい。顔色が最悪よ。」
「と……閉じ込めといたはずなに……。」
「なに?」
「ミス・ヴァリエール! その不審者は…。」
「えっと……。」
「もしかして……。」
焦るルイズを余所に、キュルケが大きな羽帽子で隠れている顔を覗き見た。
「あらま…。そういうこと? メタモンちゃんってば。」
「どういうことかね?」
「これをご覧くださいな。」
そう言ってルイズの後ろに隠れている青年の羽帽子の鍔を掴んで持ち上げた。
隠れていた顔は、点みたいな目と、アワアワと震えた唇の無い口をしたメタモンの顔のソレだった。
教師達は、青ざめ汗をダラダラかいているルイズをよそに青年の顔を見て、アッ!と声を上げた。
「なんだ…あの使い魔か。」
あのルイズに変身できる変な使い魔が正体だと分かり、教師達は肩の力が抜けた。
なんて迷惑な…っと教師達は、ゾロゾロと去って行った。
「メタモンちゃん、どうしたの? その格好? ルイズ好みに合わせたとか?」
「違うわよ!」
「なんでアンタが否定するの? 怪しいわね~?」
「違うの違うの!」
「顔のパーツは、ともかく、顔の輪郭は、整ってるわね。背も高いし、もし顔のパーツがよかったら相当ないい男なんじゃない?」
「違うーーーーーー!!」
キュルケの追求に、ルイズは、頭を抱え、髪を振り乱して否定していた。
***
その後。
「おそらく、ルーンによる主人との共感によるものじゃないかね?」
メタモンを借りようとして来たコルベールが、そう言った。
ルイズの部屋を訪ねたら、顔そのままで見たこともない青年の姿になっているメタモンと、そのメタモンを前にズーーンと暗くなっているルイズがいたので、慌てて事情を聞いたのだ。
メタモンが一向に戻らないため、ルイズは、精神的な疲労も相まってポツリポツリと夢の内容まで答えてしまった。
そして、得られた答えたが上記のことだ。
言われてルイズは、ハッとする。
言われてみれば、メタモンが変身したのは夢を見た晩のこと。
それ以降、何度言っても若いワルドの姿から戻らない……、否、戻れないのだと。
「おそらくだが、あまりにも強くその人物を求めたがために、メタモンくんの体細胞がルーンから情報の流れ込みによって強制的にその形にならざる終えなくなっているのでは? メタモンくん、君は別に悪気があってその人物になっているのではないのだろう?」
コルベールが聞くと、若いワルドの姿(※顔はメタモン)のメタモンは、ウンウンと頷いた。
「顔がそのままなのは…、幼い頃の記憶が曖昧だったせいじゃないのかね? しかも夢とあっては。」
「どうやったら…、戻せるんですか?」
「うーむ、このような事例は初めて見るからな…。そもそも、メタモンくんのような生き物を私は知らないし、生物学に詳しい先生方もメタモンという種族を知らないそうだ。」
コルベールは、腕を組んでウ~ムと悩んだ。
「う~む…、おそらくは、ミス・ヴァリエールの無意識や、潜在意識に反応してしまったいるのだろうから、それを変えるより他ないと思うがね。」
「私の…。」
「例えば、君が言う、君の婚約者に直接会うとか…。」
「そ、そんな!」
直接ワルドと会うことを提案され、ルイズは慌てた。
「しかしだね…、そうでもしないと、君の潜在的な欲求は満たせないのではないのかね? メタモンくんは、君の満たされない気持ちを無意識に満たそうとして、足りない情報を使ってその婚約者に変身しているのでは?」
「……そうだとしたら…、もう、いいわよ、メタモン…。もう十分だから。」
しかし、メタモンは元に戻らない。
鍔に隠れ気味になっている顔を見ると、困っているように笑っていた。
「じゃ、じゃあ、私に変身しなさい。」
そう言うとメタモンは、顔を上げてルイズに変身した。
「なんで、私には簡単に変身するのよ!」
「ふむ、相変わらず、すごい再現度だ。」
足の先から髪の先まで精巧にルイズに変身したメタモンに、ルイズは怒り、コルベールは感心していた。
ルーンの五感共有で、無意識にルイズが夢で見た若い頃のワルドに変身。
ただ、夢の中でメタモン顔のワルドを見ちゃったため、顔がメタモンのまま。
でも、変身しろと命令されれば、他に変身は可能。ただ変身を解くと、自然とまたメタモン顔のワルドに。
メタモン自身も制御できず困ってる。
次回は、アンリエッタ。