新任提督と憑依深海陽炎   作:ヨメナ

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陽炎が好きです






気づいたら陽炎になっていて、妹に殺されそうです。

―――――――私は、廃棄躯体だった。

大本営の愚かな計画、艦娘と深海棲艦の合成というとち狂った妄言の果てに生まれた混ぜ物。

艦娘でも無く、深海棲艦でもない。どちらにも混ざれぬ半端者。

実験の失敗とともに凍結されたその計画。実験艦だった数名の混ぜ物は解体処分と称された廃棄処理を受けて海の藻屑となり

――そして、そんな"私達"は"この体を"得て。いつしか海の上に立っていた。

目的も無く、意味も無い生を再び受けたこの体。

駆逐艦陽炎の体を得た、陽炎でもあり陽炎でもないこの体を。

私達を害した艦娘共を、深海の鉄クズ達を殲滅戦がため

 

―――――――重いわ!

それが、偶然この体に入り込んだ"俺"の第一の感想だった。

 

艦隊これくしょん、所謂艦これと呼ばれて愛されるブラウザゲーム。

歴史ある大日本帝国の軍艦達を擬人化したSLGゲーム、と言えば単純なものだが。

史実に基づいた運営の秀逸なキャラ付け、そして歴史を重ねた軍艦故のバックボーンの積み重ね。

元々の軍艦マニアも、艦娘達の可愛いビジュアルに釣られてプレイし始めた提督たちも。恐らく歴史に疎い提督たちも嫁と言われる艦娘を見つけ、その子の歴史を調べたりしたはずだ。

そして何よりも、俺が心を動かされたのは。低レア艦でも愛をこめて育成すれば十分な戦力になるという点だ。

昨今のガチャゲーにも見習って欲しいサービス精神、浮いたお金は母港拡張等にお布施として払えるくらいにはこのゲームを愛していた俺だけど。

……いや、まさか自分が艦これの世界に取り込まれるとは誰が思った事だろう。

あれはそう、デイリーウィークリーをこなし、秘書艦の陽炎を弄り回していた時の事。

突然画面が光ったと思ったら、脳内にエコーがかった低い声が満たされて。脳みそをぐっちゃぐちゃに掻き回されるような不快感を覚えた後……

そして、冒頭に至る。

 

「アー……なにがなんだか……」

「よりにもよって陽炎なの?、嫁艦ではアったし。思い入れも愛着もあるけど。これは……どうなのかしら。」

 

……口調に関するツッコミは受け付けない。これは俺が突然オカマ化したとかそういう訳ではなく。

恐らく何らかのフィルターがかかっているようだ。口に出した言葉は"艦娘の陽炎"のものに置き換えられるようで。妙になれない感覚を覚えながらも女の声帯が奏でる声は良く知る陽炎のもの。

さて、ではなにがないのか、水面に映る自らの姿

右半分は艦娘としての陽炎のもの、しかしもう半分は……

明らかに深海棲艦なのだ。

真白く色素の抜けた、結ばれていない髪は流れるように左眼を覆い隠し、

flagshipを示す黄金色の炎が内側に燃え盛る。

それでいて右側はきつね色、元々のツインテールはサイドテールとなり。チャームポイントの黄色く大きなリボンが可愛らしい存在を主張する。

武装も服装も恐らく艦娘としての陽炎のもの、腰にジョイントされた箱型の背部ユニットから右側にはマジックアームに保持された連装高角砲。左側には駆逐艦の最大の武器である魚雷が積まれ

お弁当箱みたいに肩がけ紐で吊るされた両手持ちの主砲がキラリと光る。

武装を取り除けば、もはやただの女の子としての陽炎がそこにはいることだろう

白のカッターシャツに、グレーのブレザーベスト。首元には黄緑色のリボン紐を結び。両手は真白い手袋があたたかい。

上半身から下は活発な印象を与える黒いミニスカートに、陽炎と言えばこれ!と言わんばかりのすべすべした黒いスパッツ。白いハイソックスの下には赤茶けたローファーがその存在を主張していた

ちなみに胸部装甲に関しては……深海化の影響なのか。並より大きい。イラスト上の判断でいいのなら榛名並ってところか

 

……しかし相変わらず、可愛いものである。こうまじまじと嫁艦の姿を眺めていれば、胸中から湧き上がるリビドーのようなものを抑えられない。

こればっかりは提督のサガというか、水面に映る嫁艦を前にして冷静でいられようか。

白い手袋がセミロングの髪に伸びて、塩気を孕んだ前髪を指で擦り。

細っこい腰にジョイントされた部分をなぞる、腹部に手を添えれば筋肉質な硬さの中にも女の子らしい柔らかさを残し

贅肉のない二の腕の感触が心地良い。流石は軍属と言ったところか。

ぺたぺたと両頬に触れれば、陽炎の部位は温かみがあれど、深海化した左半分には温度がなく冷たい。

試しに水面を跳ねてみれば、重力に従ってばいんばいんと揺れる両胸、これはとても痛かった。

バレリーナのようにターンを決めてみたり。準備運動と称して一通りの柔軟を試して見たところ。動作にも問題は無い様子。

――はてさて、そして。先程からチラチラ視界に入り込む立派な胸部装甲。男だった身からすれば今まで無かったものに興味を引かれるのは必然

罪悪感に胸を焦がしながらも、童貞みたいにぷるぷる震える両腕は立派なお椀にのびて……

 

「ふぎゃっ!?」

 

そして、轟音のような射出音。燃えるような激痛に背中を焼かれ、もんどり打って水面を転がる。

ばちばちと赤黒く揺れる視界。鈍痛に苛まれながらも状況確認にと振り返ったその先に居たのは

―――戦艦をも射殺しそうな眼光を驚愕に歪めながらこちらを見据える妹艦。駆逐艦不知火の姿と

その後に続く五隻の艦娘の姿

 

半分深海、半分艦娘の半端者、攻撃されたことの意味。頭の中にガンガン鳴り響く警報と、遅れてやってくる恐怖心に大量の発汗

……あれ、これ詰んだ?

 








比叡も好きです
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