『背部損傷、動作に問題は無し。』
「ふぎっ!?」
――はてさて、状況を整理しよう
ただ今計6隻の艦娘に包囲されようとしている状況の中
ぶすぶすと黒煙をあげる背部ユニット、恐らくは不知火の主砲の一撃を受けたと推定
……が、ぎこちなくとも艤装の動作には問題なし、思考のままに接続されたアームは動き。戦闘続行は可能
半分深海棲艦と化しているのが幸いしたか。耐久に関しては駆逐艦陽炎よりも上らしい
振り返った先、驚く不知火の顔は可愛らしい……というのと、画面を隔てない生の不知火に出逢えた興奮という、提督としての感動。
……ちなみに現在、身を焦がすような激痛を初体験中。戦況の分析は俺ではなく。俺の中のエコーがかった謎の声が教えてくれる。
有り体にいえば"混ぜ物"の思考だ。
……混ぜ物の正体についてはこの声の言及通りなのだろうが、今は思考をそちらに回すほどの余裕はない
―――――なぜならめちゃめちゃ痛いからだ!
そして、何故かは知らないが不知火が驚愕しているお陰で他の艦娘達も二の足を踏みつつこちらを遠巻きに見詰めるばかり。
なればこそ背負った黒煙と共に立ち上がれば、痛みを逃がす余裕も生まれようというもの、若干涙目になりながらも不知火の姿を見据え、口火を……
「……陽炎、どういう事ですか。不知火達程度であるのなら、一発入れられても余裕と言いたいのですか?」
こちらよりも先に口火を切るのは、同じ陽炎型の姉妹艦、二番艦の不知火。
陽炎と同じタイプの制服に身を包み、セミロングのピンク髪、特徴的なのは戦艦もを射殺しそうな鋭い眼光
首元のリボンは陽炎とは違う赤い紐リボン、可愛い。
「僕達も舐められたものだね、いい加減いつまでもキミに構っているのは嫌なんだけど。提督の命令だから仕方ない」
敵意と殺意を隠そうともせず、こちらを見つめるは。白露型の二番艦、時雨。
黒髪セミロングを、赤いリボンで後ろに結び、海をそのまま映したような青い瞳。
女子学生のような青に、白いラインの入ったセーラー服。チャームポイントは右手にのみ付けている黒い手袋。可愛い。
「時雨ったら言い過ぎっぽい!でもでも、提督さんに執着されるのは羨ましいっぽい!なんで?ふしゅーがるるー」
通称ぽいぬ、夕立
背中まで伸ばされた亜麻色のストレートを遊ばせ、翡翠のような瞳が特徴的、白露型の四番艦である少女は、時雨の妹でもあり。時雨と同じようなセーラー服に、黒いハイソックスと茶色いローファー。
駆逐艦の中でもトップクラスの胸部装甲の持ち主である、可愛い。
「あんたもいつまで追われたい女を続ける訳?こっちも飽き飽きしてるのよね。今日こそは引導を渡してやるわ」
鋭い口調のツンデレみたいな吹雪型の五番艦。叢雲
腰までゆったりと伸ばされた銀髪に吸血鬼みたいな赤い瞳。
同色のスカーフが首元を彩り、その下には肋が浮き出るくらいボディラインにぴっちり沿ったセーラー服。
右手に携えるのはマストを模した槍のような武装、刺されたら痛そうだけど可愛い。
「ちょっと皆……言い過ぎよ、大丈夫よ陽炎さん!こっちに来たら雷が守ってあげるんだから!だから……」
何故か殺気立つ艦娘たちを諌めるのは終身名誉ママ駆逐艦である暁型の三番艦、雷。
茶髪のボブヘアーに同色のクリクリっとした丸い瞳。
こちらは例によってセーラー服、胸元に錨が描かれた、水平を想像させるようなわかりやすいタイプのセーラー服に身を包み、黒いストッキングからスラリと伸びる脚全体的に幼さを感じさせる彼女は、やたらお母さんぶる天使でもあり、数多の提督をバブみによって轟沈させてきた猛者でもある。可愛い。
「ぜえっ……ぜえっ……み、みんな早すぎ……提督が余計な装備沢山積むから追いつくので大変よ……」
太ももに両手を当てて既に満身創痍の体をなすのは、軽巡洋艦夕張。
へそ出しの黒いセーラー服の上にはオレンジのリボン、引き締まった細い腰に小さなおへそ。緑がかった銀髪は名前とセットでメロンを連想させるけれども、その胸は平坦である。
緑のミニスカートの下には黒いストッキング、可愛い。
『……警告、敵艦隊は砲撃の用意が整っているため、応戦の準備を』
「いやいや……そうは言われてもこれは。」
はてさて、艦娘に出逢えた興奮から我を忘れてはしゃいでいたけれど
ぶっちゃけピンチです、逃げ場を防がれた上に艤装の展開にもまだ慣れていない現状。
というか時雨と夕立は魚雷発射管がこっちを向いて……
「どうせキミならすんなりかわすんだろう?けれどそれからが勝負だ。改造にまで漕ぎ着けた僕達の力、見せてあげよう」
「ぽい!なんだかんだ言って陽炎との戦いは面白いっぽい!かくごー!」
……迫る魚雷の航跡
体の小さい艦娘の特性上、またこの体の特性上。回避は可能であるとエコーがかった声は忠告してくれるけど
ぶっちゃけ無理です、足がすくんで動けません。
魚雷直撃の痛みなんて想像したこともないけど、船が沈むくらいだから相当なものだと想像できるし
何よりどう避けていいかが分からない、かと言って動かないままでは確実に炸裂する
ならばどうすればいいのか、結局動くしかない。
素人の浅知恵は、放たれる魚雷と魚雷の隙間を縫うように体を差しいれ。後方へと魚雷を望むべくとの結論を得る。
『……』
エコーがかった声の呆れたようなため息が聞こえた。
気がした。
ともあれ、海上へ強く右脚をたたきつけ、アイススケートでも滑るみたいに華麗にかわそうとしたのが間違い。
艤装の補助によって加速される移動速度、頬を撫でる潮風をその身に受けながら、足元に迫るは淡い魚雷の航跡
「ア」
「「「「「「えっ」」」」」」
自分の間抜けな声と、六隻の艦娘の声がリンクする
ちかっと光る視線の先の水面、その直後には―――
「……か、陽炎?」
口をポカーンと空けた不知火のマヌケかわいい顔が最後に見た景色
耳をつんざくような轟音と共に、弾ける魚雷。
痛いと感じる暇もなく視界はブラックアウト、毛ほども残らない意識は吹き飛んで――
(あ、死んだわ)
ぬいぬいも好きです。