残り93日
始動
「…で、結局俺はどうすりゃいいわけさ」
「さぁ?」
「は?」
「だって今回僕が介入する時点でもう謎の領域なんだもん。立ち回りなんかわかんないよ」
「つまり無策って事で?」
「よろし」
「殺すぞ」
あんなにカッコつけてたくせになんも考えてねーのかよふざけんな俺もなんも考えてないや。
「まぁ少なくとも今回は支那美ちゃんに接触するのは極力避けた方がいいかもね」
「…理由は?」
「もうこのパーティが答えでしょ。僕が君と一緒に支那美ちゃんと接触しちゃったらあいつにバレちゃうでしょ?」
…それもそうか。さらに言えばこいつは組織側の人間なんだし私情で逆らったらどうなるかもわからないし。
要は今回は影からコソコソとシナの邪魔をするやつをいてこませばモーマンタイな訳やな。
「…え、それってもしかして今回シナと話せないってこと?」
「まぁそうなるでしょうね必然的に」
「自害していい?」
「ダメです」
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「もう七時過ぎか…」
この時間帯になればそろそろ彼女は買い物から帰ってくるはずだ。大人しく公園で待っていれば必ず通るはず。
「暇だしベンチでも食おうか」
「君何言ってんの」
なんだ、こいつはネタも通じないのか。寂しいやつだ。
「そんな事よりこんな草むらで待っててもいいの」
「つったって俺らは無闇に接触できねーんだろ。だったら通る所で安全確認してた方がいいだろ」
「いやそうじゃなくてなんでこんなストーカー紛いのことを」
「うるっせぇ家で待ってたらそれこそストーカーで組織にお世話になる前に狭い閉鎖空間のお世話になるだろ」
「そういう思考しかできない時点でもうストーカーまっしぐらだと思うんだけどな…」
横の男はうんうんと唸ってるようだがこうなっても仕方ない。
前の世界とは違って今回は常に隣にいることが出来ないのだ。ならば近くで見張ることによって事前に面倒事になることは防げるだろう。多分。
因みにこの作戦をこいつに話したところ
『浅すぎる作戦だなぁほんと』
と煽りを受けたので力で分からせました。彼は今も元気です。
浅くて何が悪いんだ!いいだろ脳筋!力!power!La force!このさんくすみに勝てる物など存在しない!
「あ、彼女来たみたいだよ」
アホらしい力説を脳内でしている所、隣の男に声をかけられ我に帰った。
「…あ…」
視界の先に映った者は紛れもなくシナであった。とは言っても最後に会ったのは3ヶ月後のシナである訳だから大した差はなかったけれど。しかし俺にはとても懐かしく、そして尊くも思えた。
「…ちょっと!接触しない約束でしょ!」
どうやら反射的に草むらから出ようとしていたようだ。危ない危ない。
「…まぁその気持ちはわかるけど。でも支那美ちゃんを大切に思ってるならこのままじっとしてて」
「わーってるよ」
彼女は買い物袋を下げマンションへと向かっていった。今日も一日疲労しながらも買い物をして帰っているようだ。
「…?なぁ、あれ…」
「あ、隼人君も気付いた?」
心無しか彼女の足取りが重く見えるのだ。疲労から来る、と言われてしまえばそれまでかもしれないが、それとはまた別の問題でああなっている、と直感が告げている。そしてそれは俺だけではなかったようだ。
「…そういえば…」
シナは確か学校でいじめられていたはずだ。その精神的ダメージ、なのか…?いやでもあの教師もどきがそれを黙っているはずがない。必ず何かしらの防御を取っている筈なんだが…
「考えが纏まらねぇ…」
「…取り敢えず明日まで待ってみるかい?明日も平日だろう?」
「そうだな…」
ここで考えていても仕方がないが愚直に動くのはそれこそGefahrだ。一つの行動が命取りとなることを忘れてはいけない。
「そういえばなんだけど」
「なんだよ」
「寝床は?」
「自然を直に感じられる素晴らしい所だけど」
「…あぁそう…」
しばらくはホームレス生活になりそうだ。