「なんであんな不満そうな声出したんおい」
「いやそりゃあいきなりぶっ飛んだ案出たら誰でも『うわぁ…』くらい言うでしょ」
何が一体いけないというのだ。むしろあそこまでの最善策を思いついた俺は天才とでも言って欲しいものだ。
簡単に言えばこう。
シナのクラスに転入してしまえば学校限定だが見守れるじゃないか!!!
「それ接触してるよね」
「うるせぇもう無理なんだよ俺にはシナが必要なんだ」
「そこだけ聞くと凄く変態さんに聞こえるんだけど。いや事実変態さんだけど」
誰が変態だ誰が。俺はシナと一緒にいたいから転入手続きをしてもらうだけだ。何もおかしい所などない。
「…いや、確かに変態かもしれない」
「うんうん自覚出来るのはいい事だよ。これからはもっと後先考えた作戦を練ろうね」
言い方に腹は立つが実際その通りなので何も言えない。クソがムカつく殺したくなる。
「にしたってさ、どうすんのこれから」
「どうするもこうするも明日から転入手続き終わってシナのクラスに入り込む訳だからその準備をするとしか」
「…どこで?」
「…あ」
________________
「度々何の用?こっちも大して暇な訳では無いよ?」
「嘘つけ暇だろうが実験体いないんだから」
「まぁそこを突かれると痛いもんだね」
ははは、と笑いながら初代は頭を搔く。
「…で?ほんとに何の用?私はこの身分だしあまり関わらない方がいいと思うけど」
「単刀直入に言わせてもらおう。寝床貸せ」
「なんて?」
「そりゃそうなるだろうね」
黙って頷けばいいものをこいつは。寝床貸せは寝床貸せだ。5文字の言葉すら聞き取れんのか。
「そうか。お前にこの日本語は高度過ぎたか。俺達に住処を寄越せと言ったんだ。悪かったな」
「さっきと言い方何も変わってないよね?」
なんだ聞き取れていたんじゃないか。うんとも言わず問いかけしか出来ないとはクズめ。
「いいから俺達に寝床を」
「…俺達に?寝床を?」
そこまで言うと芙佳は一転攻勢したかのように反撃を仕掛け始めた。
「それが人に物を頼む態度かなぁ?んん?」
「わぁこれ火をつけちゃったんじゃないの」
「…俺らに住むところを貸せ」
「貸『せ』?貸してください、だろ?」
やべぇこいつクソめんどくせぇなんなんだこいつ。
「…俺らに住むところを貸してください」
「ふむふむ、嫌だね」
「なっ…」
「だって私の事を散々心の中でバカにしてくるしぃ?やっぱりそんな人には貸せないかなぁなーんて…乙女心も傷ついちゃったしなぁ」
「…オメーが乙女なんて笑わせんな」
「ん?なんか言った?」
「何も言っておりませぬよお嬢様」
「よろしい」
死ね。今すぐ死に晒してくれ。
「…ま、ほんの冗談さ。別に私も鬼じゃないし寝る所ぐらいなら用意するよ」
「最初からそうしろよ」
「口の利き方に気を付けた方がいいと思うよ?」
「はいはいごめんねごめんね〜」
「ちゃんと謝れ」
きっちり返してくるとは流石観測者、格が違うな。ネタが古いと自身でも感じるがこの世界線からしたらむしろ未来のギャグだ。若干複雑な気持ちになる。てか今の人達もこれ知ってる人いるかな?不安なんだが。
「まぁとりあえず君達の住むところは用意しとくから。夕方までにはなんとかしとくよ」
そう言ってヒラヒラと手を振りながら彼女は部屋を出ていく。
「兎に角寝床の確保は出来たし後は準備をするだけ…」
…少しばかし思ったことがあるんだが。
「…どったの?」
「…俺ら、準備する事ある?」
偶然にも自分が着てきた服はこの学校の制服だ。多少の柄の違いはあれど大きくは変わらない。それに何故かは知らんがこいつも同じ学生服を着ている。てかいつ着替えたお前。
とりあえず服に関してはクリア。教科書云々はこの女から渡されるだろうし自分らが用意出来るものでもない。これは除外。となれば後は時が来るまでここで待つ事以外やる事は無い。強いて言うなら生活する為の準備は必要ではあるだろうが。少なくとも学校関係での準備は何一つとして必要ない。
導き出された答えは一つ。
「凄まじく暇じゃね?」
「確かに」
そう。暇なのである。何かやる事があればまた話は違うがそのやる事が無い。金銭面的な問題は持ち分をやりくりすれば何とかなるしそもそも運び屋として働いていたこいつはこの現状も業務の一環と捉えられるらしいので給料も払われるらしい。つまりモーマンタイ。
食事的なあれは今はまだ朝だ。寝床の環境も確認せず、さらに確認したとしてもこの時間じゃまだスーパー等は開かない。つまり意味なし。冷蔵庫とかあるかも分からんし。
「…スーパーって何時に開くの?」
「…前に居た時は確か10時からだったな…」
時計を見ると今はまだ8時半。
「…暇ってこんなに辛いんだね」
「…だな」
前世はシナと一緒に生活してたし学校の時も家事をしてたから何とも感じないがやる事が無い、というのもこういう状況下では考え物だな、と1人納得してしまった。