風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ただいま私の中で、原作キャラが絶望の未来から逆行し、未来を変えるべく頑張る話がマイブームです。なのでこの度、なぜかハーメルンで凄まじく連載数の少ないステラグロウの二次創作を手掛けることにしました。今の所、30話くらいで完結する予定です。そして本作品では1話から全力で原作のネタバレをかましていきます。そのため、「これからステラグロウのゲームをプレイするんだ。とっても楽しみなんだ♪」って方は絶対に本作を読まないことをおススメします。



1周目
0話.最後の希望


 

 

 この日。その世界では、人類の命運を賭けた死闘が繰り広げられていた。

 戦場の舞台は、月の最奥。そこで戦うのは、人類代表と、怪物代表。人類の正の感情を味方につける指揮者アルトが率いるレグナント王国調律騎士団と、人類の負の感情によって生み出された悲しき化け物、カルテジアン。

 

 調律騎士団には個性豊かな様々な戦士がいた。

 指揮者アルト。水の魔女リゼット。風の魔女ポポ。火の魔女サクヤ。土の魔女モルディモルト。時の魔女ヒルダ。斥候ラスティ。重騎士アーチボルト。商人ユアン。サクヤの従者ののか。傭兵キース。人形使いドロシー。槍使いダンテ。人造天使ジゼル。旧時代の人類代表(テクノロミー)ヴェロニカ。

 

 彼らは皆、人類代表として力の限りを尽くした。世界を守るため。身近にいる大切な人を守るため。レグナント王国を守るため。カルテジアンによる人類滅亡に抗うため。調律騎士団は各々譲れない理由を胸に秘め、己の役割を十全に全うして戦った。

 

 しかし。戦況は、カルテジアンが圧倒的に優位だった。敵は、カルテジアンはあまりに強すぎたのだ。カルテジアンに力を与える負の感情は月のサイズほどに大きく。指揮者アルトに力を与える正の感情は人一人の手のひらに収まる程度に小さいサイズであることからして、カルテジアン優勢な今の戦況は当然の帰結だったのかもしれない。

 

 カルテジアンの行きつく暇もない、容赦のない猛攻により人類代表はジリジリと劣勢に追い込まれ。調律騎士団の勇敢な戦士は、1人、また1人と倒れていき――。

 

 気づけば、戦闘不能になっていないのは、たったの3人だけになっていた。ポポ、ヒルダ、そしてアルト。この3人を除いた皆は例外なく地に伏している。生きているかどうかはわからない。だが少なくとも、腹部に大きな風穴が空いてしまっている者や、首を刎ねられてしまった者の生存は期待できないだろう。

 

 

「うぅッ……」

 

 どうすれば。どうすればいい。ポポは酷く焦燥感に駆られていた。少しでも気を緩めてしまったら最後、仲間の死に号泣してしまい、まともに動けなくなってしまう。それゆえに、ポポはギュッと唇を噛みしめて膨れ上がる悲しみの感情をこらえ、足りない頭でカルテジアンを倒す方法を必死で考える。カルテジアンの取り巻きであるダーククオリアが一定時間を経て復活し、ダーククオリアが己の忠実な手勢である『黒いもの』という敵を大量に召喚して、カルテジアン側の戦力がみるみる増えていく中。ポポは近くの『黒いもの』を風魔法『かまいたち』で吹き飛ばしながら、ポポは必死に。必死に起死回生の一手を閃こうとする。しかし、何も思い浮かばない。ポポごときの頭では、カルテジアンに勝つ方法を導き出してはくれない。

 

 

「ポポッ!」

「わわッ!?」

 

 と、ここで。アルトが唐突にポポの名前を叫んだかと思うと、アルトがポポの背中を思いっきり突き飛ばした。結果、ポポの小さく軽い体は数メートルほど吹っ飛ばされる。いきなり一体何を。どうにかバランスを取って着地に成功したポポがアルトへと視線を向けた時、ポポは気づいた。カルテジアンがブルリと身を震わせ、下腹部に光が収束し始めている。あの動きは、カルテジアンが広範囲に強烈なレーザーを照射する時の準備動作だ。ポポがあのままさっきの場所から動かなかったら、きっと。ポポはカルテジアンのレーザーにより消し炭になっていただろう。

 

 

(……あれ。それじゃあ、今。ポポのいた場所にいるアルトは、どうなるの?)

「ァァァアアアアアアアアアアア゛――!!」

 

 ポポの疑問の答えはすぐに示された。カルテジアンの下腹部から白い幾条もの暴力的な光が折り重なったレーザーが解き放たれ。ポポをカルテジアンのレーザーから逃がすためにポポを突き飛ばしに行ったがために、レーザーの射線上からの退避に間に合わなくなってしまったアルトが、ポポがレーザーの範囲外にいることに「良かった……」と安堵の息を零した直後、アルトの体はレーザーに飲み込まれた。その時。ジュッと、肉を高熱で焼いたかのような音が、ポポの鼓膜を打つ。

 

 

「ア、ルト?」

 

 ポポは、呆然とアルトの名を呟く。アルトが携帯していた短刀型の宝剣:歌唱石がポポの足元まで転がってくる中、ポポはさっきまでアルトのいた場所を凝視する。その場所はカルテジアンのレーザーにより発生した煙で白く染まっており、何も見えない。だが、ポポは嫌な予感がしてならなかった。なぜならとても嫌なにおいがしたからだ。それは濃厚な血のにおい。

 

 嘘だ。そんなこと、あるわけない。だって、アルトはポポの友達で。ヒーローで。今までだって何度もピンチになったけど、それでもアルトは死ななかった。いつも、いつもピンチを乗り越えてきたんだ。だから今回だって。確かに状況は凄く絶望的だけど。でも、アルトなら何とかしてくれる。死んでしまった仲間だって、アルトがいれば。蘇らせることだって、きっとできるはずだ。だから、だから。あり得ない。アルトが、今のカルテジアンの攻撃で死んでしまうなん、て――。

 

 ポポは己の心に巣食い始める嫌な予感を振り払うようにして、アルトの生存を心から信じる。だが、ポポの思考はそこで止まった。煙が晴れたからだ。そこには、アルトの下半身のみが残っていて、そこからおびただしいほどの血を噴出させていたからだ。アルトの上半身はカルテジアンのレーザーにより吹き飛ばされた。そう理解した時、ポポはその場にガクリと膝をついた。

 

 

「ああああぁぁ……」

 

 この時。ポポの心は、完全に折れた。紺碧の瞳から涙がポロポロとあふれ出る。もう、ポポは涙を我慢できなかった。

 

 アルトがいたから、ここまで頑張れた。アルトが諦めていなかったから、アルトがカルテジアンとの戦闘に勝ち筋を見出すことを諦めていなかったから。皆が次々に倒れていっても、ポポは頑張れた。でも、アルトという名の希望はたった今潰えた。ポポが足を引っ張ったせいで、アルトはポポを庇って死んでしまった。調律騎士団はカルテジアンに負けてしまった。人類がカルテジアンに滅ぼされる未来が確定してしまった。ポポのせいで。ポポのせいで。

 

 

「……ここまでのようね」

 

 ヒルダもまたポポと同様に、アルトの死と星のクオリアの消滅によって心が折れていた。完全に戦意喪失していた。アルトがその身に宿していた、正の感情エネルギーの結晶体である星のクオリアがなければ、負の感情エネルギーの塊であるカルテジアンには絶対に勝てないからだ。カルテジアンを倒せる唯一の希望を失ってしまったことにヒルダは絶望し、構えていた鎌を手放す。

 

 しかし。それでも。ヒルダは諦めていなかった。

 すぐ諦めるのは己の悪い癖だと、アルトに教わったからだ。アルトの教えは、アルトが死した今もなお、ヒルダの中にしかと息づいている。

 

 アルトが死んだ以上、カルテジアンにはもう勝てない。だけど、まだヒルダにはやれることが残っていた。このままヒルダもポポもカルテジアンに殺され、人類が滅亡するなんてふざけた未来は許してはならない。だから。

 

 

「ポポ」

 

 ヒルダは努めて柔らかな口調でポポの名前を呼ぶ。

 

 

「……」

 

 ポポは答えない。ヒルダに一切目を向けない。ポポの視線は、アルトの残された下半身を見つめるのみだ。

 

 

「ポポ。今から私は、あなたにとても残酷なことをするわ。……私の魔法であなたを過去に飛ばす」

 

 ヒルダは返答しないポポに構わずに、その右手に歌唱石を握らせる。

 と、ここで。ヒルダの意味深な物言いが気になり、ポポはヒルダを見上げる。

 

 

「ヒルダ……?」

 

 ヒルダは時魔法を行使するべく、歌い始める。己の魔法でポポを過去に飛ばす。そうヒルダが決意したのには理由がある。

 

 アルトがポポを庇って死んだからだ。アルトには、指揮者には代えが効かない。本来であれば、ポポよりも自分の命を優先するべきだと、アルトはわかっていたはずだ。それなのに、アルトはポポを庇って死んだ。それは、アルトがポポを信じたからではないかと思い至ったからだ。ポポなら世界を救えると。

 

 これは、非常に都合の良い考えだ。アルトの性格はヒルダもよく知っている。きっとアルトはそこまで深く考えてはいなかったはずだ。大方、ポポが死にそうで、自分がポポを助けられる位置にいた。その結果、アルトの体が勝手に動いてしまっただけだったのだろう。だけど、どうか信じさせてほしい。アルトの死に意味があったのだと。アルトに生かされたポポに意味があったのだと。でないと、ヒルダの心は完全に絶望に侵略され、ポポを過去に飛ばすための魔法すら歌えなくなってしまうから。

 

 ヒルダが澄んだ声色で旋律を奏で始めたのを見て、カルテジアンが。ダーククオリアが。大量の黒いものが。ヒルダの歌を妨害するべく一斉に襲いかかる。だが、ヒルダの魔法の発動が一歩早かった。ヒルダが無事歌い終わると、ポポの体は紫電の光を放つ球体に包まれる。同時に、ヒルダが人を過去に飛ばす時魔法を発動した代償により、ヒルダの時のクオリアが砕け、ヒルダの体に黒いものの攻撃が次々と突き刺さった。

 

 

「かふッ!?」

「ヒルダッ!?」

「……お願い、ポポ。どうか、どうか。エルクが愛した世界を守って。アルトが望んだ幸せな結末を導いて。あなたならきっと、できると信じているわ」

 

 ポポが悲痛な声を上げる中。ヒルダはコポリと口元から吐血しつつも、ポポに最期の言葉を残す。そして、ポポに己の想いを託し終えたヒルダはポポに微笑みかけた後、その場にうつ伏せに倒れた。刹那、ポポを包む紫電の光はますます勢いを強め、まばゆい光を放つ。

 

 ポポの意識は、そこで暗転した。

 

 




アルト:星のクオリアをその身に宿し、調律という不思議な力を使える17歳の少年。指揮者として魔女を調律することで魔女の力を引き出し、魔女を正しく導くことができる。調律騎士団を率いて、人類滅亡を目指すカルテジアンを倒そうとしたが、失敗。最後はポポを庇って死亡した。
ポポ:風の魔女。もとい、風のクオリアをその身に宿し、風の魔法や歌を行使できるようになった15歳の少女。アルトの死は自分のせいだと己を責めていたところで、この度、ヒルダの時魔法により過去に飛ばされることとなった。
ヒルダ:時の魔女。もとい、時のクオリアをその身に宿し、時の魔法や歌を行使できるようになった女性。年齢は少なくとも千年以上。ポポに最後の希望を見出し、ポポを過去の世界に飛ばすこととした。
カルテジアン:ステラグロウのラスボス。綺麗な女性の上半身に、幾多の苦しむ人の顔で積み重なったキモい下半身を持つ。その下半身から『カルテジアン劇場』という技名の強力なレーザービームを放つことができる。

 というわけで、プロローグは終了です。この物語はカルテジアンとの戦闘での敗北ルートから始まります。果たして、ヒルダの魔法で過去に飛ばされることとなったポポの行く末やいかに。
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