風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ついに今回から、ポポが逆行した世界でのステラグロウの本編が始まります。未来を知るポポが存在することで、どのように物語が変化していくのか。その様を楽しんでいただければと思います。なお、本編とあんまり変化のない箇所はガンガンすっ飛ばしていくので、何卒ご了承ください。



2周目 原作開始後
13話.いざアマツへ


 

 レグナント王国は現在、未曽有の危機に瀕していた。

 福音使徒がグナント王国の街を次々と襲い、福音使徒を束ねる滅びの魔女ヒルダが街を、人を、『堕歌』で次々と結晶化させているからだ。

 

 福音使徒の思想に共鳴する者は増えるばかり。

 かの軍勢が勢力を増すにつれ、福音使徒が街を結晶化させるペースも早まるばかり。

 

 その一方で、結晶化した街や人を救う手立ては、その身にクオリアと称される宝石を宿す魔女4人で四部合唱を行う祝歌計画以外に見つからず。結果としてレグナント王国は、アナスタシア3世女王陛下は、王国が蹂躙される様を、じりじりとレグナント王国が滅んでいく様を、ただ見ていることしかできなかった。

 

 しかしある時。絶望的な情勢に転機が訪れる。

 福音使徒がミトラ村を襲った際、ミトラ村の住民であるリゼットが、水の魔女として覚醒したのだ。さらに、ミトラ村襲撃の報を聞きすぐさまミトラ村に急行した、クラウス率いる王立騎士団が、リゼットを福音使徒から保護できたことで、レグナント王国に確かな希望が生まれた。

 

 風の魔女、火の魔女、土の魔女、そして水の魔女。

 この4名の魔女による四部合唱が、祝歌の詠唱が可能になったからだ。

 

 ゆえに、アナスタシア陛下は、一刻も早く結晶に囚われた王国民を救うべく、英雄エルクレストと己の名の元に祝歌計画の始動を宣言。同時に祝歌計画を確実に完遂するべく、王立騎士団第9小隊の結成を指示し、王立騎士団の精鋭を集結させた少数部隊に勅命を奉じ。出立の儀にて、クラウスに王家の証である『歌唱石』を授けた。

 

 

 かくして。王立騎士団第9小隊は、勅命を果たすべく迅速に動き始める。

 

 レグナント王国の武官の長にして、第9小隊隊長:クラウス。

 クラウスの補佐を担う歴戦の騎士:アーチボルト。

 性格に難あれど優秀な騎士:ラスティ。

 水の魔女に覚醒したばかりの村娘:リゼット。

 そして。第9小隊の選抜試験にただ1人合格した、ミトラ村の狩人:アルト。

 

 上記5名による、魔女3名を保護するための遠征が今、始まろうとしていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「さて。これで出立の儀は完了した。我々第9小隊は陛下の勅命を果たすべく、残る3人の魔女――風の魔女・火の魔女・土の魔女――の捜索及び保護を行い、王都に連れ帰らなければならない。早速、今後の作戦について説明する」

 

 第9小隊用にあてがわれた、たった5人のための部屋にしては広々とした内装をした、城内の作戦室にて。白と青を基調とした、気品と実用性とを兼ね備えた隊服に身を包んだクラウスが、隊員のアーチボルト、ラスティ、リゼット、アルトに向き直り、隊長としての威厳に満ち満ちた口調で第9小隊としての方針を提示する。

 

 

「前提として、残る3名の魔女の内、所在がはっきりしているのは火の魔女だけだ。風の魔女は世界中を放浪しており、所在を掴めていない。土の魔女は3年前の例の件により土のクオリアの継承が途絶えたものとされていたが……1年前にカシミスタンの半径30キロ範囲に大結界が展開されたことで、土の魔女が存命であることが判明した。しかし、結界に認められた、ごく限られた者しか結界を踏み越えることができない状況となっているため、今、カシミスタンへ遠征しても徒労にしかならない。――ゆえに、我々の最初の目的地は、大陸の東。火の属州の州都アマツだ。そこで火の魔女サクヤを保護する」

「日いずる国の魔女、か。うわさは聞けど、会うのは初めてだな」

「火の魔女サクヤ、さん。どんな人だろう?」

「考えてもしょうがない。行けばわかるさ」

 

 クラウスの示した方針を受けて、重厚な鎧を纏うアーチボルトは神妙にうなずき、青を基調としたドレスを着用したリゼットは期待半分不安半分といった声色で疑問を呈し、少し大きめの隊服に着せられてる感のある状態のアルトはリゼットを安心させるように努めて軽めの口調で言葉を紡ぐ。

 

 

「おいおい、大丈夫かよ隊長。火の属州の魔物はちょいと強いぜ。アルトやリゼットには荷が重いんじゃないか?」

「確かに、かの地域の魔物は少々手強い。だが、リゼットは水の魔女だ。火の属性を宿す魔物相手には相性が良い。それにアルトの剣技が日々上達していることは、ラスティもよくわかっているだろう? 問題ないさ」

「ま、言ってみただけさ。りょーかい。いやぁ、楽しみだなぁ!」

「ラスティ。言っておくが、温泉はお預けだぞ。第9小隊は今までの隊とは違う」

「その通りだ。この任務は陛下直々の下命。失敗は許されない」

「へいへい、お堅いこって」

「……残念だったな、ラスティ」

「慰めはいらねぇ……」

 

 だが、ここでクラウスの方針に、動きやすさを重視した軽装に身を包んだラスティが異を唱える。だが、クラウスの主張に納得したため、己の反対意見をあっさり引っ込めた。その後、ラスティはしみじみとアマツへの遠征に対する己の気分を口にするも、そんなラスティの様子から彼の考えを読み取ったアーチボルトとクラウスから釘を刺されたため、辟易とした表情を浮かべながらがっくりとうなだれた。今のラスティには、アルトの気遣いもまるで効果がないようだった。

 

 

「――それでは総員、火の属州へ向けて、出立する!」

 

 かくして。隊長クラウスの宣言を機に、個性豊かな第9小隊5名は、火の属州の州都アマツへと進軍するのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……」

 

 北の属州『ソイ=トゥルガー』の中心たる廃都ファーレンハイトの地下区画にて。

 時の魔女にして福音使徒を束ねる長たるヒルダは、福音使徒から随時寄せられる多大な情報に基づき、レグナント王国全域の地図を俯瞰していた。己の『堕歌』で滅ぼす都市を選定するためだ。

 

 マザー・クオリアはこの地に住まう人々の感情エネルギーの総量を常に計測しており、エネルギー量が閾値を突破したら最後、人類虐殺システム:エクリプスを発生させる。そのため、ヒルダは都市の規模に限らず、豊かな感情を育む都市を結晶化させ、感情エネルギー量を減らさなければならなかった。

 

 現在のレグナント王国に君臨する、アナスタシア女王。彼女は国の発展より王国民1人1人の幸せを重視する政策を好んで選ぶ傾向にある。そんな彼女の治めるレグナント王国の住民は、先代より豊かな生活を享受できるようになっており、結果としてより豊富な感情を放出しがちだ。ゆえに、ヒルダはここ数年、福音使徒を引き連れて、ハイペースで街を結晶化してきた。

 

 現状は、とても順調だ。次々と街を結晶化させることに成功している。だけど、油断はできない。何せ、ヒルダたち福音使徒は、1つの国を相手取っているのだから。それゆえに、ヒルダは次に結晶化させるべき街を慎重に見定めていた。

 

 

「ヒルダ、邪魔して悪いな。だが、緊急の要件だ」

「……何かしら、ダンテ?」

「これを見てくれ」

 

 と、ここで。ヒルダの元に、福音使徒の幹部である、燃えるような赤髪をしたダンテが歩み寄り、ダンテの声を契機に地図から顔を上げたヒルダに、ダンテが1枚の折りたたまれた紙を渡す。ヒルダが内心で疑問を抱きつつも、紙を広げて、紙に書かれていたメッセージに目を通して――刹那。ヒルダの視線に鋭さが増した。

 

 

『レグナント王国のアナスタシア3世女王陛下は、魔女4名の四部合唱による祝歌で、堕歌による結晶化の解除を狙い、王立騎士団第9小隊を結成した。第9小隊は祝歌計画を進めるために、近日アマツの火の魔女を保護予定』

 

 そこには。ヒルダにとって決して看過できない、火急の事態が記されていたからだ。

 

 

「ダンテ。これは……?」

「さっきドロシーがファーレンハイトの関門で矢文を見つけてな。放置しようにも『結晶化の解除』っつう聞き捨てならねぇ文言があったから、ヒルダの見解を聞きたくてな。持ってきたんだ」

「ねぇねぇヒルダ? ドロシー偉い? 偉い?」

「えぇ。これは確かに看過できない情報ね。見つけてくれてありがとう、ドロシー」

「えへへ、ヒィルダぁ~☆」

 

 紙に記載された内容を確認したヒルダがダンテに問うと、ダンテが意味深なメッセージの綴られた紙を、ファーレンハイトへと放たれた矢文から入手した旨を報告する。直後、ダンテの背後から、ピンク色のウサギのフードで顔を隠したドロシーが得意満面の笑みを携えてぴょいと飛び出し、ポテポテとした足取りでヒルダに抱き着く。その結果、ドロシーは己が望んだ、ヒルダからの褒め言葉と頭なでなでをもらえたため、11歳児にあるまじきとろけ顔をヒルダにさらすこととなった。

 

 

「どうする、ヒルダ?」

「まず、祝歌で私の堕歌を解除できる、というのは本当よ」

「……マジかよ。あの結晶化を解除できるってのか」

「ウッソー!?」

「ええ。……この情報を私たちに寄越した相手は、この世の理について相当の知識を持っているようね。それなら、まずはこの矢文に記された情報の真偽を確かめるべきね。矢文を放った何者かについて考察するのはその後にしましょう」

 

 ヒルダは今まで誰にも共有していなかった、祝歌で堕歌を無効化できることをダンテとドロシーに伝えた後、驚愕に目を見開く2人に改めて向き直り、迅速に指示を出し始める。

 

 

「ドロシー」

「えっへへ。なぁに、ヒルダ☆」

「あなたはアマツへ行き、事の真偽を確かめなさい。そして、もしも第9小隊が本当に火の魔女を抱え込もうとしているのなら、その時は――魔女狩りをなさい」

「それってつまりぃ。全員、殺せばいいんだよね? キャハハハ! ミンチミンチ、いっぱい作っちゃおっと!」

「……最優先目標は火の魔女と、第9小隊とやらよ。遊ぶのは構わないけれど、ほどほどにね」

「わかってるよヒルダ☆ 安心して、ドロシーが絶対、火の魔女を殺してみせる。まっかせて!」

「ダンテ。あなたは、騎士団に潜ませている私たちの仲間を通じて、国が本当に祝歌計画を進めようとしているのかを確かめなさい」

「あぁ、了解だ」

 

 ヒルダからの、単身でアマツへ赴く命を快諾したドロシーはタタタタと軽快な足取りで地下通路を駆け抜け、ヒルダたちの前から姿を消す。続けて、ヒルダから王都での情報収集を命じられたダンテも、速やかに任務を遂行するべくヒルダの元から立ち去った。

 

 そうして。地下区画に1人残されたヒルダは、スッと切れ長の山吹色の瞳を閉じながら。誰に言うでもなく、ポツリと声を零した。

 

 

「アナスタシア。あの凡庸な女王に祝歌計画を思いつけるほどの聡明さがあるとはにわかには思えないけれど……この矢文の内容がもしも本当なら、もう容赦はしない。……誰を敵にしても、何を犠牲にしても。あなたが愛した世界を守って見せる。そうでしょう、エルク?」

 

 




アルト:原作主人公にして、記憶喪失の少年。一応、17歳。家族として迎え入れてくれたリゼットを守るため、第9小隊の選抜試験に何とか合格し、第9小隊の新米騎士の立場を得るに至った。
リゼット:ミトラ村出身の水の魔女。17歳。福音使徒にミトラ村を襲撃された際、アルトの持っていた水のクオリアにより水の魔女に覚醒した。
クラウス:若くしてレグナント王国の騎士団長に上り詰めた男性。騎士の中の騎士といった実直な性格をしており、現在は第9小隊の隊長も兼任し、祝歌計画を完遂するべく、皆を導くリーダーの役目を十全に全うしている。
アーチボルト:クラウスの補佐を担う、アーチボルト家の28代目当主。32歳。国への、陛下への厚すぎる忠誠心ゆえに、ちょっとだけ頑固だったり、融通が利きづらい一面があったりする。
ラスティ:24歳の騎士団所属の青年。飄々とした性格をしているが、その心の内にはこっそり、福音使徒に、もといルドルフに対する憎悪を秘めていたりする。
ヒルダ:時の魔女。年齢は少なくとも千年以上。人類虐殺システム:エクリプスの発生を防ぐためにペースを上げて街を次々結晶化させている。今回、矢文で密告した内容の真偽を確かめるべく、ドロシーをアマツへ、ダンテを王都へ派遣させる判断を下した。
ダンテ:魔女ヒルダに付き従う福音使徒の1人。18歳。悪人面をしているが、実は家事特化型のオカン属性を保持していたりする。今回、ヒルダから王都での諜報活動を命じられた。
ドロシー:魔女ヒルダに付き従う福音使徒の1人。11歳。この度、ヒルダから単身の任務を与えられたことで、ヒルダから全幅の信頼をもらえたと解釈し、とってもウキウキ気分でアマツへと出発した。

ポポ「うー。矢文の内容ってこんな感じの内容でいいのかな? ちゃんとヒルダたちにポポの伝えたいこと、伝わったかな? 心配になってきた……」

 というわけで、13話は終了です。本編に入った途端に登場人物の数が一気に増えましたね。ここの所、少人数のみ登場させて物語を展開する手法に慣れきっていたせいで、今回の話は執筆するのに結構苦労しました。そして、苦労に苦労を重ねた結果、ルドルフさんの出番が消えました。ごめんね、ルドルフさん。

 でもって、クラウス隊長の口調が難しすぎる件。語彙力皆無な私にクラウス隊長の発言内容を作るのは難易度が高すぎるんじゃあ……!
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