風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。前回で第9小隊がアマツに行く流れになっていましたが、途中の展開はほぼ原作と同じなので、アマツ編クライマックスの場面まで展開がすっ飛びます。また今回は、サクヤに厳しい回になっていますので、サクヤをこよなく愛する方は閲覧注意です。



14話.絶望の追加演出

 

 レグナント王国3大祭りの1つ、アマツの火祭りの最終日。

 ポポは旅人タンポポ(♂)の姿に扮して、ゴウラ火山の火口に赴いていた。ポポは早速、火口の地形を確認した後、目星をつけた岩盤を風魔法で削って人1人が身を隠せる空間を作る。同時に、付近の岩をかまいたちで細かく削り、塵と化した粉塵を全身に浴びて簡易な迷彩を施した。これでポポがここで身を隠していることを悟られる可能性を限りなく低くできただろう。

 

 

「……これでよし、だね」

 

 今こうして。ポポがゴウラ火山の火口周辺で身を潜めているのは、保険のためだ。

 今日はアマツの火祭りの最終日であり、これからサクヤによる焔鎮めの儀が開催される。祝歌計画が水面下で進められていること、王立騎士団第9小隊がアマツの火の魔女サクヤを保護しに向かったことを、ポポが福音使徒に密告した以上、この後待ち受けている展開は、ポポがヒルダの魔法で過去に戻る前とほぼ同じ、以下のような筋書きとなるはずだ。

 

・アマツ神社の境内で執り行われる焔鎮めの儀でサクヤが歌を奏でようとして何度か失敗する。

・福音使徒のドロシーがサクヤを襲撃し、サクヤをゴウラ火山の火口まで誘拐する。

・ドロシーは、アルトたち第9小隊がサクヤを探して噴火寸前のゴウラ火山の火口まで駆けつけてくるのを待った上でサクヤをマグマに突き落とそうとして、サクヤの従者であるののかや、アルトに阻まれる。

・アルトに調律され、歌えるようになったサクヤの歌でゴウラ火山の噴火は防がれ、ドロシー自体も敗北する。

・第9小隊に捕縛されそうになったドロシーは、ヒルダやダンテに助けられて撤退する。

 

 だけど、ポポが1度経験した通りの、想定通りの展開になるとは限らない。

 例えば、ののかが身を挺して、ドロシーの凶刃からサクヤを守ったタイミングは、とてもギリギリだった。あと1秒でもののかの到着が遅れていたら、サクヤは致命傷を負い、マグマへと落下していたことだろう。

 

 ポポはヒルダの魔法で3年前の世界に逆行し、みんなを、世界を救うために精力的に活動してきた。その結果、ポポは自分の行動で良くも悪くも過去を変えられることを身をもって経験している。

 

 ポポが介入したことで、カシミスタンが滅亡せずに済み、ニキの命が救われたように。

 ポポが福音使徒に祝歌計画のことを知らせる介入を行ったことで、ゴウラ火山でサクヤが死なずに済む、という展開が消えた可能性がある。ここでサクヤが普通に死んでしまう可能性が否定できない。

 

 ポポのせいで、サクヤが死ぬ。その可能性に備えて、ポポは待機している。サクヤを、死なせるわけにはいかない。サクヤの命を何が何でも守らないといけない。それが、祝歌計画を福音使徒に密告し、サクヤをあえて命の危険にさらしたポポの、最低限果たすべき贖罪なのだから。

 

 

「……」

 

 地響きが徐々に大規模になり、ゴウラ火山の火口から時折小規模のマグマが噴出される中。ポポは息を殺して、火口という舞台にドロシーたちが集結するその時を待つ。そうしてしばし時が経った後、ポポの聴覚が、嗅覚が。火口への人の訪れを察知した。

 

 

「いい加減、離しなさいよ! このイカレウサギ! アタシを誰だと思っての狼藉よ!?」

「誰って、歌も満足に歌えない失敗作の性悪女?」

「こんの……!」

 

 サクヤとドロシーだ。上半身をロープできつく縛られ、ドロシーに引っ張られるがままに歩くことしかできないサクヤがドロシーに対して語勢を荒らげるもドロシーはどこ吹く風のようだ。

 

 

(来た……!)

 

 これでもかと強い言葉をぶつけて己の命の危機をどうにか回避しようとするサクヤと、どこまでも余裕綽々なドロシー。2人の言葉の応酬がしばらく続いた後、複数人の足音が次々とサクヤとドロシーの元に集まる音を、ポポの耳が捉えた。

 

 

「サクヤ! 無事か!?」

「姫巫女殿! 助けに参りましたぞ!」

「ここは完全に包囲されている。火の魔女を返してもらおう」

「んなこと言われて返すわけないじゃん☆ そんなこともわかんないのー?」

 

 アルトとアーチボルトが真っ先にサクヤに声をかけ、クラウスが淡々としつつも圧を込めた声色でドロシーを脅し。大人数がドロシーの前に押し寄せてもなお、己の優位を疑うことなくドロシーがカラカラと嗤う中。ポポは極力音を発しないよう慎重に弓を構え、矢をつがえる。弦を引く指に力を込めて、いつでも弓を射出できる状態のまま、待機する。矢を放つ対象は、ドロシーだ。ドロシーがサクヤに危害を加えようとした時にののかの到着が間に合わないようなら、ポポはつがえた矢を解き放つ。そのつもりでスタンバイし続ける。

 

 

「アンタたちだって、歌えない魔女なんてゴミクズ、いらないんじゃない?」

「お前にとってはそうでも、他の誰かにとってはそうじゃない。サクヤはお前たちには渡せない!」

「あー? 何それ、イラっとくるなぁ。いいや、もう生かす気も失せちゃった。死んじゃえ、ポンコツ性悪女!」

「サクヤ様! 危ない! うぐッ!?」

「ののか、ののかッ!」

 

 だが、ポポの保険が発動することはなかった。ドロシーがアルトの主張に苛立ち、サクヤを刀で斬りつけようとした所で、段ボールで顔を隠した忍びことののかが颯爽と駆けつけ、サクヤの盾となった。結果、ののかは深手を負い、その場に倒れる。サクヤの驚愕と悲鳴の織り交ざった声が、ポポの耳をうがつ。あそこで倒れるののかもまた、ポポが福音使徒に密告したせいで生まれたものだ。ポポは多量の血を流し倒れるののかの姿を、己の所業をしっかりと目に焼きつける。

 

 

「あーあ、失敗しちゃった☆ でもま、いーや。どうせみんな死ぬんだし。てことでみんなにドロシーからお知らせ! 今からこの女を火口に突っ込みまーす!」

「まさか、火山を今すぐ噴火させるつもりか? そんなことをすれば君もタダでは済まないぞ?」

「えー? 別に自分の命とかどうでもよくない? 大事なのは、ヒルダのためになること、ヒルダの役に立てること、それだけだよ。はーい、それじゃあ姫巫女様を火口へごあんなーい☆」

 

 意識がもうろうとする中、それでもサクヤの安否のみを心配するののかにアルトがサクヤの無事を伝え、リゼットが水魔法でののかの怪我の治療を試みる中。ドロシーは例え自分が死ぬことになろうとも、火山を大噴火させて第9小隊もろとも滅ぼす旨を宣言する。クラウスの制止を欠片も気にせず、ドロシーはサクヤを火口まで引っ張っていく。

 

 サクヤの一度目の命の危機はののかにより回避された。だがポポは変わらず矢をつがえたまま、ドロシーに照準を合わせ続ける。まだサクヤの命はドロシーに握られている。これから何が起こるかわからないため、ポポは待機し続ける。

 

 

「い、嫌よ! やめなさい! そ、そうだ、歌を、焔鎮めの歌を歌わないと――」

「――歌えないくせに必死になっちゃって、無様な奴。くすくす☆」

「無様でも何でも、アタシは歌うの! それがアタシの責任なんだから!」

(? なんだ、今の鎖は……?)

 

 サクヤの生殺与奪をドロシーに握られている状況で、第9小隊の面々がうかつに動けない中。ドロシーに引っ張られ、どんどん火口に近づくことを強制されるサクヤは震え声で、どうにか歌を奏でようとする。しかし、サクヤは今もなお、歌えない。その刹那、サクヤの体をまとわりつくようにうごめく、黒い鎖の存在をアルトのみが感知し、心の奥で疑問符を浮かべる。

 

 

(まだ? まだなの、アルト?)

 

 ポポは矢をつがえたまま待機する。アルトがドロシーの一瞬のスキをついてサクヤの元に駆け寄り、調律の力でサクヤの精神世界に潜り込もうとするその時を待つ。しかし、いつまで経ってもその時は訪れない。ポポの眼下では、ドロシーがサクヤの抵抗をものともせずに火口へと引っ張っていく様子しか映し出されない。

 

 

 あれ。どうして、おかしい。こんなのは絶対におかしい。どうしてアルトはサクヤに駆け寄ろうとしないの? どうしてサクヤに近づいて、サクヤを調律しようとしないの? 今頃はもう、アルトにはサクヤに絡みつく黒い鎖が見えているはずなのに。サクヤに調律が必要だって気づいているはずなのに。ポポが焦燥に駆られるがままに、アルトを凝視して――

 

 

「ッ!!」

 

 ――その時、ポポは愕然とした。

 思わず、構えていた弓を、取りこぼしてしまい、矢はあらぬ方向にすっ飛んでいく。

 

 

 ポポは気づいた。ここで己の致命的なミスに気づいてしまった。

 今、ポポの眼下で剣を構えるアルトは、まだ自分が調律という魔法を行使できる指揮者だと自覚していないのだ。だって、ポポが過去に戻る前は。アルトはポポを調律したことで初めて、己が指揮者として調律を行えることを知ったのだから。

 

 でも、今ポポの視線の先にいるアルトは、ポポを調律していない。ポポを救っていない。だから、サクヤの救い方を、サクヤの調律の仕方を知らない。サクヤに纏わりつく黒い茨の鎖を目撃したところで、サクヤを調律しようという発想にたどり着けないんだ。

 

 どうすれば、どうすればいい。

 どうすれば、アルトにサクヤを調律してもらえる?

 今、この状況で、サクヤをドロシーから救うのは簡単だ。だけど、ただ救っただけじゃアルトにサクヤを調律してもらえない。サクヤを調律してもらい、サクヤが歌えるようにならなければ、結局ゴウラ火山は噴火する。

 

 だからといって、ポポがアルトに調律のことを直接話すわけにはいかない。だって、この場にはクラウス隊長が、マザー・クオリアに汚染され、マザー・クオリアの眷属になった獅子王ゼノがいる。ポポがアルトの調律の力を知っていることを、ゼノに教えてしまうのは非常に、非常にまずい。ここでポポが不用意に姿を現しアルトを導いたことで、ゼノにポポの意図を悟られてしまうかもしれない。最悪の場合、ポポがヒルダの魔法で過去に戻ってきたことすらバレかねない。それだけは何としても避けないといけない。いくら今のポポがタンポポに変装しているとはいえ、ポポが姿を現すのはあくまで最終手段でしかありえない。

 

 

「キャハハ☆ 火口が近づいてきたね、姫巫女様」

「この、離せ! 離しなさいよ!」

 

 ポポが必死に考える間も状況は進んでいく。ドロシーがサクヤを伴って、どんどん火口に近づいていく。もはや猶予はない。どうする、どうすればいい。呼吸すら忘れて考えに考え抜いた結果、ポポは1つの案にたどり着くに至った。

 

 そうだ。あの時、アルトがポポを調律できたのは。ポポが、ポート・ノワールのためを思って精力的に励んだお務めが、ボナンザ町長による魔薬マピウム大量生産に利用されていて、多くの人の人生を狂わせていた事実を知って、心の底から絶望したからだ。絶望して、負の感情に呑まれて、暴走したことで初めて。アルトは己が魔女を調律することができるという事実に気づいたのだ。

 

 

 ――だったら。あの時の状況を再現するしかない。

 

 

「到着☆ ほーら姫巫女様、ぐつぐつ煮えたぎってて、きれいなマグマだねー☆」

「い、嫌……」

 

 火口に到着したドロシーがサクヤの頭を掴んで、真下で煮えたぎるマグマを否が応にも視界に入るように、サクヤの頭を無理やり下げる。サクヤはもう、抵抗の言葉すら放つ余裕すら失い、ただ、消え入りそうな声で死への恐怖に震えることしかできない。

 

 

「させるかよ!」

 

 今のドロシーは相当にテンションが上がっているためか、背後の第9小隊への警戒心が薄れている。そのことをいち早く察知したラスティを筆頭に、第9小隊はサクヤ奪還のためにドロシーとサクヤの元へと全力で駆ける。――そこで。ポポは風魔法を行使して、火口からマグマの一部を巻き上げ、アルトたちの行く手に叩きつけた。結果、ポポが誘導したマグマによりドロシー&サクヤと、アルトたち第9小隊とが分断されることとなった。

 

 ポポは、マグマがアルトたちに直撃しないよう細心の注意を払って、マグマの動きを風で調整しつつ、マグマで分断を行った。しかし、サクヤから見た光景は、マグマにアルトたちがなすすべもなく呑み込まれる光景となったはずだ。

 

 

「そん、な……みんな、生きてるのよね? 黙ってないで返事しなさいよ! ねぇ!」

 

 その証拠に、第9小隊の面々がののか含めて死んだのではないかと恐怖したサクヤから、絶望を多分に含んだ絶叫が漏れている。しかし、サクヤの声に返事をする者はいない。否、ポポが火口から第9小隊に向けて強烈な風を送っているため、アルトたちの声がサクヤに届く前にかき消されているのだ。

 

 

(ごめん、ごめんね、サクヤ……!)

 

 ポポは今、積極的にサクヤを苦しませている。サクヤを絶望させている。その状況に、ポポの心がキリキリと締め付けられ、悲鳴を上げる。だが、ポポはギリッと歯を食いしばって心の悲鳴を押し殺した。ポポの口元から血が滴り、ポタリと岩盤に落ちていく。

 

 

 まだ、足りない。まだサクヤは暴走していない。

 サクヤをもっと絶望させないといけない。

 もっとサクヤを追い詰めろ。もっとサクヤを苦しめろ。もっとサクヤを絶望させろ。もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。

 サクヤを暴走させるまで、サクヤニ希望ヲ与エルナ。

 

 ポポは続けざまに風を操り、未だリゼットに治療されている最中のののかの頭部に強烈な上昇気流を発生させる。そうしてののかがいつも頭に被っている愛嬌のある段ボール箱を奪い取った後、わざとドロシー&サクヤとアルトたち第9小隊とを遮るマグマを突っ切らせた上で、サクヤの視界の先に転がらせた。

 

 

「あ、ぁぁああああああああ……ッ!」

 

 これで。ドロドロに燃え溶けてわずかにしか原型が残っていない、ののかがいつも被っている段ボールを見たことで。サクヤ目線では、ののかがマグマに呑まれて死んだことが確定したはずだ。サクヤの限界まで見開かれた深紅の瞳と、引き絞られるような悲鳴が、サクヤの心境を物語っている。

 

 

「――」

 

 段々とポポの息が荒くなる。サクヤを含めた周囲の状況をあまねく確認している視界から色が消えていき、焦点が合わなくなる。耳鳴りが響き、周囲の環境音が遠ざかっていく。唐突にポポの頬を伝うのは、果たして汗か、それとも涙か。ポポは己の体の状態がまるでわからなくなっていく。

 

 

「キャハハハハ☆ みーんなマグマに呑まれて死んじゃったんだ、チョーまぬけ☆ ウケるんですけど」

「の、のか。みんな……」

「こうなったら慈悲深い姫巫女様に、無様に死んだウザい連中の後を追ってもらわないと。使い道のない、無能魔女は燃えるゴミにポイっとね! バイバーイ☆」

「あ……」

 

 ドロシーが絶望するサクヤの背を勢い良く押したことで、サクヤは為すすべもなく火口へと落っこちていく。サクヤの体がマグマに突入するまで、あと数秒もかからないだろう。と、ここで。サクヤの体から、禍々しい漆黒のオーラが放出し始める。サクヤの心が完全に負の感情に、絶望に呑まれて、ついに暴走し始めたのだ。

 

 ポポは、己の体が、心が、どんどんおかしくなっていく中。それでもどうにか正気を保ち、風魔法でサクヤの背中に上昇気流を発生させ、ドロシーやサクヤが不審を抱かない程度にサクヤの落下速度を緩める。

 

 

「サクヤぁッ!!」

 

 同時に。リゼットの水魔法により形成された、己が体を包む水のヴェールを信じて。マグマに体を溶かされて死ぬリスクを無視して、ポポの用意したマグマを突っ切り。サクヤの後を追って後先考えずに火口へ飛び込んだアルトの背中に、ポポは下降気流を浴びせ、アルトの伸ばした手がサクヤの体に届くよう、調整する。

 

 結果。サクヤの体がマグマに沈む直前に、アルトの手がサクヤの体に届き、その瞬間。2人の体がまばゆい光に包まれたかと思うと、2人の姿が消失した。ポポが視線をマグマで分断した他の第9小隊の方へと切り替えると、そこにいたはずの第9小隊の面々+ののかも1人残らず消失していた。どうやらアルトは無事に、サクヤの精神世界への道を開き、サクヤたち全員を精神世界へと連れ込むことに成功したようだ。

 

 この状況を作り出せたなら、もう大丈夫なはずだ。これからアルトはサクヤの心と向き合い、リゼットを調律した時と同じ方法で、調律する。そうして調律が終わり、現実世界のゴウラ火山に戻った時にはきっと、クラウス隊長が所持している歌唱石がアルトの元に転移し、アルトは歌唱石を用いてサクヤを奏でることができるようになるはずだ。そうすれば、ゴウラ火山の噴火も止まるし、サクヤの歌で強化された第9小隊は、ドロシーを問題なく撃破できるはずだ。

 

 

「――は、はう、はぁッ」

 

 ポポはその場で尻もちをつき、己が身を隠していることすら一瞬忘れて、深呼吸を繰り返す。そうして少々呼吸を整えていた時、ポポの視線の先に、アルトたち全員がドロシーの前に光とともに出現している光景が映し出される。魔女の精神世界で過ごした時間は、現実世界だと一瞬の出来事のようだ。そのことが、今回傍観者の立場となったことで、ポポは改めて実感した。

 

 

「は? わけわかんない。なんでみんなして死んでないわけ?」

「サクヤ、俺を信じてくれ。焔鎮めの歌を一緒に奏でよう!」

「ええ。来なさい、アルト!」

 

 ポポの見つめる先では、ドロシーが困惑を隠せない一方、クラウスからアルトへと瞬間移動した歌唱石を手に、アルトがサクヤの胸に、火のクオリアに歌唱石を突き刺し、サクヤを奏でてみせる。刹那、サクヤの凛として力強い音色は周囲一帯に浸透し、ゴウラ火山の怒りを鎮め、第9小隊に多大な力を授けていく。

 

 

「……」

 

 当初、ポポがここに来た目的は、サクヤの死の保険のため。つまり、サクヤを救うためだった。だけど、ポポが結局ここでやったことは、サクヤをひたすら精神的に追い詰めることだった。その結果、ポポの眼下では今、サクヤの歌の加護を十全に活用して、ドロシーとドロシーの操るデクリン人形軍団相手に優勢に戦うアルトたち第9小隊の姿がある。だけど、今回ポポが選択した方法は、かなりの賭けだった。アルトがサクヤを助けるのが間に合わない可能性や、サクヤが暴走したまま元に戻れなくなる可能性は、十分にあった。

 

 ポポは一体、何をしているんだろう。

 みんなを助ける。世界を救う。そのつもりでポポはここにいるのに、サクヤを思いっきり苦しめて、傷つけて、挙げ句の果てに殺そうとして……ポポは一体、何をやっているんだろう。ポポはどうして、こんな残酷な方法しか思いつけなかったんだろう。こんな体たらくだから、ポポは、ポポは。

 

 激闘の末に第9小隊に敗北したドロシーが、ヒルダとダンテの助力を得て撤退する中。ポポはその場で膝を抱えて頭を埋める。直後、極度の緊張状態を強いられていたせいか、強烈な睡魔に魅入られたポポはうつらうつらと船を漕ぎ、無防備ながらもゴウラ火山で意識を闇に落とすのだった。

 

 




ポポ:風の魔女たる金髪ツインテールの少女。己の計画に決定的なガバがあると判明したため、とっさにオリチャーを発動させ、サクヤをメチャクチャ絶望させてアルトに調律が使えることを知ってもらう介入を行った。その結果、ポポのメンタルは大きく損耗した模様。
アルト:原作主人公にして、記憶喪失な第9小隊の一員。一応、17歳。この度、サクヤを救いたい一心で、ポポが用意したマグマを突っ切ってでもサクヤの元に駆け付けたことにより、サクヤの精神世界に入ることができ、己が調律を行えることを自覚した。
サクヤ:火の魔女にして、アマツの姫巫女として奉られている少女。現在は17歳。今回の被害者枠。原作よりもはるかに濃密な絶望に叩き落されたのに、調律の助けがあるとはいえ、それでも結局は立ち直るあたりがさすがのサクヤ様。
ドロシー:魔女ヒルダに付き従う福音使徒の1人。11歳。途中までは(ポポのおかげで)ゴウラ火山の自然現象が何かとドロシーの味方をしてくれていたのでうっきうきでサクヤを殺そうとしたが、アルトによるサクヤの調律により、状況を一気にひっくり返されて敗北してしまった。

ジゼル「もしも本当に火の魔女が死にそうになった時に備えて、ゴウラ火山でずっとスタンバっていました」

 というわけで、14話は終了です。相変わらず場面への登場キャラ数が多いので、今後は各話の主要キャラのみ上で軽く説明したいと思います。それはさておき、この度、ポポ監督の鬼畜な追加演出の数々により、原作よりはるかに重いトラウマを背負わされてしまったサクヤ様。姫巫女様、なんとお労しや……(新参氏子アーチボルト目線)
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