風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回からポポ編ですね。しばらくシリアス展開が続きます。いやはや、21話でラスティやカヤジと食事会を楽しめていた頃のポポはいつ戻ってきてくれるのやら。不安は尽きない。



23話.うずまく思惑

 

 王都ランベルトに潜入したヒルダ率いる福音使徒が、水の魔女リゼットに魔剣カルブンケルの呪いを与えて撤退した後。第9小隊はリゼットの命をむしばむ呪いを解くために、ポポの情報提供を信じて廃都ファーレンハイトへと遠征した。そして第9小隊が、ファーレンハイトでの福音使徒との激戦を征して、意気揚々と王都へと帰還した時。王都の門前でアルトたちを出迎えたマリーは、ボロボロと泣きじゃくっていた。

 

 

「マリー、どうしたんだ!?」

「アルト。えぐ、ポポが、ポポが……」

「ポポ? ポポがどうしたんだ?」

「ふぇええええええええええええええ!!」

 

 マリーはえづきながらもどうにかアルトに自分が見た光景を伝えようとして、しかし血の涙を流しながらもさも何もなかったかのように振る舞うあの時のポポの姿が濃密にフラッシュバックして、マリーは恐怖に震えて再びわんわんと泣き始める。今のマリーからは話を聴けそうにない。アルトたち第9小隊は一旦、マリーを連れてランベルト城内の作戦室へと場所を移した。

 

 それから、アルトたちはマリーから少しずつ何が起こったのかを聞き出した。

 マリーはポツリポツリと語る。呪いに苦しむリゼットの側にいようとマリーが救護室に向かったら、ポポと出会って、友達になったこと。ポポが何かに気づいて、リゼットの胸に手を当てた時から、痛そうな声を上げたり汗を凄く流したりと、様子がおかしかったこと。マリーがいつの間にか救護室で眠ってしまっていて、目を覚ましたら、ポポが赤い涙を流しているのに平気そうにしていたこと。ポポが、アルトたち向けに、1週間後の正午に東の森で会おうと伝言を残して、マリーの前から去ったこと。

 

 

「「「……」」」

「ポポが苦しんでるって、マリーなら気づけたのに。ポポのそばにいたマリーならきっと、ポポがリゼットといっしょに苦しんでるんだって、気づけたのに。でも、マリーは気づけなかった。ごめんなさい、ごめんなさい……!」

「私の、せい? 私にかけられた呪いをポポが引き受けようとして、それでポポがおかしくなっちゃったの?」

「やめてくれ! マリーもリゼットもこれ以上、自分を責めないでくれ!」

 

 マリーから示された衝撃極まりない内容に、誰もが言葉を失い、立ち尽くす。その間も、マリーは誰に言うでもなく謝罪を繰り返す。マリーが話してくれた内容から、ポポがリゼットの呪いを軽減してくれていたことを知ったリゼットもまた顔を青ざめる中、アルトが衝動のままに叫んだ。ここでマリーやリゼットの発言を遮らなければ、立候補制で誰が悪いかを決定する雰囲気になりそうだったからだ。

 

 

「然り、この件について誰が戦犯かを決める議論に意義はない。それよりもポポ殿への今後の対応を協議するべきだろう」

「ポポが言うには、1週間後には俺たちと会うつもりらしいが。……それを悠長に待ってていいのか? ポポの居場所を割り出して、とっとと俺たちから向かった方がいいんじゃねぇか?」

「しかし、ラスティ。肝心の風の魔女殿の居場所がわからないのでは、どうしようもなかろう。ユアン少年、風の魔女殿のいそうなところにどこか心当たりはあるか?」

「……心当たりだけならいっぱいありますけどね。ポポさんが物資を都度ユアン商会から買い付けていた関係上、ポポさんとはこれまで全国各地で会いましたし。だけど僕の心当たりなんて無意味でしょう。ポポさんは僕たちと1週間後に会う予定とのことですから。裏を返すと、1週間経つまでは僕たちと会う気がないということです。……風の力で空を自在に飛び回れるポポさんに本気で隠れられたら、残念ながら探せっこないです」

 

 アルトの意図を察したクラウスが話題を切り替えると、ラスティはポポの指定した日時を待たずに動くべきとの方針を提示する。アーチボルトはラスティの主張に理解を示しつつも、ポポのことを全然知らないがゆえに、ポポの行方に皆目見当がつかず、ユアンに問いを投げかける。一方のユアンは困り顔で力なく首を左右に振るのみだ。

 

 

「結局、ポポの出方を待って臨機応変に動くしかないってことね。全く、骨が折れる子ね」

「ポポ……」

「あぁもう! この世の終わりみたいな顔しないでよ、ニキ! ポポが多少、情緒不安定になってるから何だってのよ。アタシたちの力で、アルトの調律で、ポポを救えばいい。それだけの話じゃない。違う?」

「そうですよ、ニキさん。これまで第9小隊は幾度も困難に見舞われました。サクヤ様の時も、ニキさんの時も、リゼットさんの時も。だけどいつだって、わたしたちは最後には困難を打ち砕けたじゃないですか! 大丈夫です、今回もきっと上手くいきます。元通りのポポさんを取り戻せますよ!」

「サクヤ、ののか……ごめんなさい。少し、弱気になっていたみたいです。すぐネガティブな方向に考えてしまうのは私の悪癖ですね」

 

 ポポのお務めが完了して第9小隊の前に姿を表すのをただ安穏と待つわけにはいかなくなった現状に、サクヤは深々とため息を吐く。と、そこで。すっかり意気消沈しているニキに気づいたサクヤは、ニキを見るに見かねて圧の強めな口調でニキを励ましにかかる。続けて、ののかもサクヤの主張を補強してニキに語りかけたことで、ニキはどうにか平静を取り戻すことに成功した。

 

 

「皆の忌憚のない意見に感謝する。――ポポ殿については、調査隊を全国各地に派遣し、行方を探る。もしもそこでポポ殿が見つかれば、我々第9小隊がただちに目撃地点に急行する。見つからなければ、1週間後に備えるとしよう。各自、いつ何があっても即時に動けるよう、くれぐれも準備を怠らぬように」

 

 第9小隊の一通りの意見や反応を確認したクラウスは、第9小隊の今後の方針について指示を出す。かくして、クラウスが現状を陛下に報告するため、作戦室を後にしたことを機に、この場は解散となるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……事態は深刻ね」

 

 レグナント王国某所に設けられた、福音使徒の仮設アジトにて。福音使徒幹部のダンテ、ドロシー、ルドルフを見据えて、福音使徒を束ねるヒルダは、小さくため息を零す。

 

 現在、福音使徒を取り巻く状況は最悪の一言に尽きた。福音使徒は現状、レグナント王国が第9小隊を使って推し進めている祝歌計画を防ぐことを至上命令に据えている。しかし、王国は現時点で、3名の魔女を王都に集結させている。ここにあともう1人、風の魔女が加われば、祝歌を実行されてしまう。世界を滅ぼされてしまう。対する福音使徒は、第9小隊との激戦に敗北したために、活動拠点であるファーレンハイトすら失った状況だ。

 

 

(福音使徒が圧倒的に不利になった状況で、残る魔女――風の魔女の争奪戦を制さないと行けなくなった、ということね)

「ヒルダ、これからどうする?」

「当然、第9小隊よりも先んじて風の魔女を見つけ出し、殺すまでよ」

「ドロシーもヒルダにさんせーい! 風の魔女には、土の魔女の自殺を思いっきり邪魔されて、むかむかしてたところだしぃ☆」

「だが、風の魔女は他の魔女と違い、特定の地域に定住せずに、風のように世界中を奔放に練り歩く魔女だ。どのようにして見つけ出す?」

「見つけ出す必要なんてないわ。風の魔女をあぶり出せばいいのよ」

「あぶり出す?」

「それってどーゆーこと、ヒルダ?」

 

 ダンテに福音使徒の方針を問われたヒルダは即座に風の魔女殺害の指針を示す。ヒルダの指針にドロシーがすぐさま賛同し、ルドルフが具体的な方策をヒルダに問うと、ヒルダは怜悧な眼差しとともにルドルフに端的に回答した。ヒルダの策にダンテとドロシーが疑問を呈する中。ルドルフはヒルダの意図を察して、首肯する。

 

 

「……なるほど。これまでの風の魔女の行動を解析し、風の魔女が我々の前に姿を現さざるを得ない状況を作り出せば良いのだな。……風の魔女は3年前、カシミスタンの滅亡を阻止するべく姿を現した。つい先日も、土の魔女を救うべく、孤月の丘に姿を現した」

「奴にとってカシミスタンは思い入れのある土地ってことか? そんでもう一度、カシミスタンを襲えば、風の魔女をおびき寄せることができる、そういうことか?」

「方向性はそれで合ってるわ、ダンテ。だけど、カシミスタンは襲わない。今、カシミスタンには王都の騎士が多く派遣されているわ。私たちが土の魔女を殺すために、再び土の魔女の妹を誘拐する可能性を、王国も警戒しているようね。……ゆえに、ファーレンハイトを失い、十全な準備を行えない今の私たちがカシミスタンを襲えば、無視できない被害を被ってしまう」

「じゃあ、どこを襲うの?」

 

 ルドルフの発言からヒルダの意図を少しずつ読み解こうとするダンテに、しかしヒルダはカシミスタン襲撃案を否定する。そして、ドロシーから問いかけられたヒルダは、漆黒のとんがり帽子を目深に被りつつ、仲間たちに襲撃先を宣告した。

 

 

「ちょうど、おあつらえ向きの場所がある。――風の魔女のゆかりの地、ポート・ノワール。そこを標的にするわ」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「……」

 

 福音使徒が誰1人としていなくなった廃都ファーレンハイトにて。ポポはお務めを行っていた。頭の中でこれからの己の動き方について一通り見直しながら、淡々と、風のクオリアをファーレンハイト全土に埋め込んでいく。

 

 その時。ふと、ポポの脳裏に、とある言葉がよみがえった。

 それは、ポポがヒルダの時魔法で3年前へと逆行する前に残した、ヒルダの言葉。ポポが過去にさかのぼる前の世界のことに思いを馳せる度に、いつもフラッシュバックする、ヒルダの遺言。

 

 

 ――ポポ。今から私は、あなたにとても残酷なことをするわ。……私の魔法であなたを過去に飛ばす。

 

 

「……そっか。そういうことだったんだね、ヒルダ」

 

 いつもならただポポの脳内を流れていくだけのヒルダの遺言に、しかしポポは気づいた。気づいてしまった。ヒルダの遺した言葉に込められた、本当の意味に。ポポは思わずお務めを中断し、呆然と空を見上げる。

 

 

「酷いよ。本当に残酷だよ、ヒルダ。……これがポポへの罰、ってことなのかな。ポポが足を引っ張ったせいで、人類の希望だったアルトが殺された。そのポポの罪に対する、ヒルダからの罰。だったら、受け入れないとね。全部、ポポが悪いんだから。罪は、償わないといけないよね」

 

 しばし空に視線を移したまま硬直していたポポは、体の自由を取り戻した後、ポポは沈痛そうな表情を携えて、軋みをあげる胸にそっと手を当てる。

 

 

「最期まで気づきたくなかったな、こんなこと。……でも、だいじょーぶだよ、ヒルダ。例え気づいたからって、ポポのやることは変わらない。みんなを救う。世界を救う。ポポはそのために、ヒルダの魔法で過去に戻ったんだから。――だからまずは、第9小隊と戦わないとね。第9小隊のみんながポポと本気で戦いたくなるように、ちゃんとした動機を用意しないと。ポポをとことん悪者にしないと……」

 

 ポポは空の向こう側にヒルダを想起しながら、空想上のヒルダに対し決意表明をする。その後、再び己の今後の計画に瑕疵がないか何度も何度も確認しながら、ファーレンハイトでのお務めを進めていく。そんなポポの呟きは、ファーレンハイトの寒風に無情にもかき消された。

 

 




ポポ:金髪ツインテールな風の魔女。何かがおかしくなっているようだが、それはそれとしてお務めにはきちんと励んでいる。なお今回、唐突にアイディアのダイスロールでエクストリーム成功を叩き出してしまったため、逆行前のヒルダの秘めたる思惑に気づいてしまったらしい(クトゥルフ脳な識者の見解)。もっとも、ポポの推測が勘違いしまくっている可能性も否定はできないが。
クラウス:レグナント王国の騎士団長にして第9小隊隊長の男性。水の魔女リゼットを救うことができたと内心安堵していたのもつかの間、マリーからもたらされたポポの異変についての情報により、ポポへの対応方針を迅速に決定することを強いられた。が、そのような状況下でもどこまでも冷静に方針を決められるあたりが隊長の隊長たる所以といえよう。
ヒルダ:時の魔女。年齢は少なくとも千歳以上。王都に歌える魔女3人を集められてしまい、いよいよ後がなくなりつつあるため、風の魔女を殺すために苛烈な手段を選ぼうとしているようだ。

 というわけで、23話は終了です。今回は、第9小隊、福音使徒、ポポの3陣営にそれぞれスポットが当たる回となりました。各陣営がそれぞれ自陣営にとっての最善を尽くそうと策を巡らすノリは個人的に大好きです。なお、福音使徒やポポが何か不穏なことを口走っているのはご愛嬌ですね。
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