どうも、ふぁもにかです。ようやくポポが第9小隊に加わったことで、今回は原作キャラを何名か一気に登場させられそうです。
ポート・ノワールの大火から5日後。ポート・ノワールを発ち、第9小隊の新メンバーとして改めて王都ランベルトの地を踏んだポポは、ポポの付き添いで一緒に王都入りしたニキに、王立騎士団の庁舎を案内された。過去に戻る前、アルトたちと賑やかな日常を育んだこの庁舎に再び戻ってきた。その事実を意識した途端に、ポポの心に懐かしさが大挙して押し寄せてくる。
「……ふぅ」
それから。ポポは一旦ニキと別れて、己に割り当てられた自室で、マグカップに煎れたたんぽぽコーヒーを飲んで、一息つく。こうして、コーヒーの味を、温もりをただ堪能して、ゆったりと進む時の流れを堪能したのは、随分と久しぶりだ。それだけ、今までのポポには心の余裕というものがなかったのだろう。アルトがポポを調律して救ってくれたおかげで、ポポの心は今、平穏を保てている。
「ポポ、いるか?」
と、ここで。静謐を保っていた空間にドアのノック音が響く。ポポがたんぽぽコーヒーを飲み終えてからパタパタと扉に駆け寄り、扉を開くと、ポポの視線の先にいたのはアルトだった。
「アルト、どうしたの?」
「クラウス隊長から、第9小隊が謁見の間に集合するよう伝えてくれって頼まれてな。呼びにきたんだ」
「そっか。ついに魔女が4人、王都にそろったんだもんね。わかった、すぐ行くよ」
「あぁ、よろしくな。俺は他の人にも声をかけてくるから」
アルトは手短にポポに用件を伝えると、他の第9小隊のメンバーを探しにポポの前から去っていく。ポポは軽く己の身だしなみを確認し、問題ないと1つうなずくと、ランベルト城内の謁見の間に向けて出発するのだった。
◇◇◇
クラウスの命令により、召集された第9小隊(クラウス、アーチボルト、ラスティ、アルト、リゼット、サクヤ、ののか、ユアン、ニキ、ポポ)は一同、謁見の間へと集結する。謁見の間は、床も、壁も、天井も金色の豪勢な装飾を施されており、床の中央には明らかに高級そうな素材で作られているであろうレッドカーペットが敷かれている。王国の、国王陛下の威厳を示すことを最優先にして構築されているこの空間は、ポポにとっては目がちかちかする世界で、未だに慣れそうにない。
謁見の間では1人の男性が待ち受けていた。ツンツンとした黒髪に丸眼鏡、そして気難しそうな顔をした男性こと、エルマー閣下だ。レグナント王国の文官の長として、アナスタシア陛下を誠実に支えている忠臣である。
「王立騎士団第9小隊。総員、御前に参りました」
「……よろしい。皆、頭を上げよ」
第9小隊を代表してクラウスがエルマー閣下に宣言し、ポポたちはそろって頭を下げる。そして、レグナント王国を統べるアナスタシア陛下が謁見の間に姿を現すまで待機した後、エルマー閣下から許しの得たことを機に、各々顔を上げる。すると、謁見の間の玉座の前に優雅に立つ、気品あふれる金髪の女性がポポたちに柔和な視線を投げかけていた。この人こそが、アナスタシア陛下。建国千年に及ぶ、レグナント王国の今代の女王陛下だ。
「あなたが風の魔女、ポポですね。私は神聖レグナント王国女王、アナスタシアです。あなたの祝歌計画への賛同に、心より感謝します」
「ポポの方こそ、ありがとうございます。陛下の祝歌計画のおかげで、ポポは魔女の力でみんなを救うことができます。……それより、何日も待たせてしまって、ごめんなさい」
「……それは、仕方のないことです。ポポには心を落ち着ける時間が必要でしたから。むしろ、まだ無理をさせているのではないかと、心配でなりません」
「陛下、ポポはだいじょーぶです。みんなが、いてくれますから」
「ポポは、とても強い子ですね。本当に大丈夫そうで、安心しました」
アナスタシア陛下から話しかけられたポポは、全然慣れない『ですます』口調で、どうにかアナスタシア陛下に応対する。ポポは、アナスタシア陛下が一刻も早く国民を救うために祝歌を発動させがっていることを知っている。それなのに、ポート・ノワールの大火から5日間も待たせたことをポポが謝罪すると、当のアナスタシア陛下は一切ポポを責めずに、ポポの心を親身に心配してくる。ポポが己が既に立ち直っていることを自己申告すると、アナスタシア陛下はポポの紺碧の瞳をジッと見据えた後に、安堵の息を吐いた。
と、この時。ポポはふと違和感を抱いた。過去に戻る前。ポポが今のように謁見の間で陛下と会った時は、陛下の背後に控えるエルマー閣下が、騎士の規律や陛下の威厳を重要視するあまり、「陛下の御前であるぞ、態度を改めよ」などと、第9小隊に対して都度苦言を挟んでくる印象だった。だけど、今回はエルマー閣下がやけに静かだ。たどたどしい『ですます』口調で陛下と対話している今のポポは、エルマー閣下的には気に障ったとしてもおかしくないはずなのに。
ポポがここで、こっそりエルマー閣下に視線を向けると、エルマー閣下がさりげなくポポを注視していることに気づいた。エルマー閣下の瞳からは、ポポに対する警戒心が感じ取れた。
(そっか、そうだよね)
「エルマー閣下」
「……何かね、風の魔女よ」
「ポポは、ポート・ノワールで多くの福音使徒の人を殺しました。その気になればたくさんの人を殺せてしまうポポのことを、閣下が警戒するのは当たり前だと思っています。……ポポは、この罪を一生連れていきます。だから、まずは祝歌を奏でることをポポの罪滅ぼしとさせてください。そのために、ポポが第9小隊に入り、王都に滞在することをどうか、許してください」
「む、気づかれていたか。その通りだ。私は立場上、そなたを警戒する義務がある。よって、私は祝歌計画が無事完遂されるその時まで、そなたを決して信じない。くれぐれも良からぬことを企むでないぞ」
「なッ!? そんな言い方はあんまりじゃないですか! ポポだって、やりたくてあんなことをやったんじゃないのに――」
「――アルト、ここは矛を引きましょう。エルマー閣下の発言は至極全うですよ。性善説に傾倒して安易にポポさんを信じるようでは、国の重鎮は務まらないんです。国を想えばこそ、閣下にはポポさんに釘を差す責任がある。そこをどうかわかってくれませんか?」
「アルト、ありがとう。でも、ポポは平気だから、アルトも気にしないで」
「ユアン、ポポ。……わかったよ」
ポポはエルマー閣下に対し、深々と頭を下げる。一方のエルマー閣下はポポに悟られたことに一瞬目を見開いた後、咳払いをして己の調子を取り戻すと、ポポに釘を刺す。そのようなエルマー閣下の物言いにアルトが異を唱えるも、ユアンやポポに諭され、一応は納得できたため、アルトは己の主張を渋々ながら取り下げることとした。
「まぁまぁ。不穏な話はそこまでにしましょう。それよりも。第9小隊の活躍のおかげで、今この場に4名の魔女がそろいました。第9小隊には何度感謝しても足りないくらいです。……さて。リゼット、サクヤ、ニキ、ポポ。あなたたちにはこれから、祝歌を完成させて世界中に奏でる、とても大きな務めを果たしてもらいます。クラウス、皆に祝歌の楽譜を」
「はッ」
アナスタシア陛下は場の空気を明るい方向へと切り替えるために、祝歌の話題を持ち出し、クラウスに指示を出す。すると、陛下の命を受けたクラウスは、一時謁見の間を離れた後、4セットの紙束を持ち込み、魔女4名にそれぞれ手渡してきた。
「これが、祝歌の楽譜……」
「なるほど、結構難しそうね」
「祝歌を奏でる当日は、国を挙げての祭典、『復活祭』を催すこととなっている。そなたらには、復活祭に向けて祝歌を完成させる義務がある。ポート・ノワールの大火の折、生き残っている福音使徒を全員捕縛できた以上、祝歌の準備中に魔女が福音使徒に襲われることはなかろうが、早期に祝歌を完成させるに越したことはない。鋭意、四部合唱の練習に努めるように」
「ヒルダの堕歌で結晶化してしまった街を、人を救うまで、あともう一息です。皆、どうか最後まで、よしなに頼みます」
「「「「はい!」」」」
リゼットは、クラウスから受け取った楽譜をどのように見るのが正解かわからず、内心で首を傾げつつも譜面に視線を落とし続け。サクヤはすぐさま譜面を読み解き、祝歌の難易度を理解する。そんな中、エルマー閣下とアナスタシア陛下は4魔女にそれぞれ想いを告げる。その想いに対し、4魔女が各自の意気込みを元気の良い返事の形で主張したことを最後に、第9小隊は謁見の間から去ることとなった。
◇◇◇
「……」
謁見の間から立ち去った後、ポポは前を歩くクラウス隊長に無言で視線を向ける。
ポポが過去に戻る前、アナスタシア陛下は、殺された。ポポたちが祝歌を奏でて、これで世界が救われると安堵した瞬間、エクリプスが発生し、月から次々と降臨する天使が王都の住民を虐殺する中。己こそが千年前に神聖レグナント王国を建国した獅子王ゼノであると正体を明かしたクラウス隊長により、今後の世界は神が統べるのだから人類の女王は不要だとの動機の元に、アナスタシア陛下は殺された。ナイフで胸を一突きされて、殺された。
誰も、クラウス隊長を止められなかった。祝歌が奏でられたことで、月のマザー・クオリアの復活が確定したことで、勝利を確信したクラウス隊長が態度をガラリと変えて、不穏な発言を次々と繰り出したところで、クラウス隊長が陛下を殺すという行為自体を、誰も想定していなかった。それくらい、クラウス隊長はみんなに信じられていた。あのエルマー閣下だって、クラウス隊長を疑えなかった。止められなかった。
でも、今はポポがいる。
ポポはクラウス隊長の正体を知っている。
(クラウス隊長。あなたに陛下は殺させないからね)
ポポは己の意思を、内心で力強く吐露した。
◇◇◇
謁見の間でクラウスから祝歌の楽譜を受け取った地水火風の魔女4名は、早速祝歌を練習をするべく、調律ノ館へと向かっていた。調律ノ館とは、指揮者専門の矯正施設であり、魔女の心に入り込む調律の魔法をアルトが行使しやすいよう、建物の随所に特殊な工法が施されているらしい、謎の多い建物だ。魔女たちがこの調律ノ館を祝歌の練習場所に選んだのは、調律ノ館に訪れる人が基本、アルトと魔女たち、及び調律ノ館を管理する王室付き楽師のメディアだけであることから、練習中に思わぬ邪魔が入りにくい最適な場所だからだ。
「ここが、調律ノ館……」
「最初見た時は、私も凄い変わった建物だなって驚いたよ」
「こんなおかしな建物なのに、今じゃ何とも思わないわね。アタシも最初は不自然に思ってたのに、慣れって怖いわ。ほらポポ、こっちよ」
「あ、うん」
ポポは調律ノ館の出入り口である、巨大な歯車式で開閉する黎明の扉を見上げて、さも調律ノ館に初めてきました風を装って呟きを漏らす。すると、ポポの反応を素直に受け取ったリゼットとサクヤがポポの反応に共感しつつ、黎明の扉を開いて、ポポを招き入れてくる。
黎明の扉をくぐった先は、魔女の園と称される空間がポポたちを待ち受けていた。ここはアルトに調律される魔女の控え室のようなもので、魔女たちが心を落ち着かせることができるように、ソファーなどの一通りの家具が取りそろえられており、仄かな橙色の照明が空間自体を優しく照らし出している。この魔女の園で、これからポポたちは祝歌の練習に励むことになるのだ。
「あらあら、新しい小鳥さんがいらしたのね」
ポポたちが魔女の園に到着した時、魔女の園の奥から水色の長髪をたなびかせた女性こと、メディアが姿を現した。メディアは両目を眼帯で塞いでいるにもかかわらず、しっかりとポポの方へと顔を向けて、口元をほころばせる。聴覚なのか、気配なのかでポポの存在を察知しているようだ。
過去に戻る前のポポにとっての、メディアへの印象は『不思議な人』の一言に尽きた。失明はしていないらしいのになぜか両目を眼帯で隠し、ポポや他の魔女に対して色気たっぷりな声色で意味深な言動を繰り出し続けていたからだ。ただ、今のポポにとって、メディアはただ不思議なだけの人ではなく、少し怖い相手だ。メディアにはポポのことを何でも見透かされているような気がしてならず、今の隠し事だらけなポポのことも全て看破してしまうのではないかと、心配なのだ。
「ふふ。そう怖がらなくていいのよ、黄色いカナリアさん。私はあなたを取って食べたりはしないわ。……秘密は女性をより美しく飾り立てるもの。あぁ、ミステリアスなヴェールに包まれたあなたの神秘的な鳴き声を早く聞きたいわ」
「うッ……」
ポポがこっそりメディアを警戒していると、メディアが恍惚に浸りきった口調とともに笑みを深めてポポへと語りかける。ポポが懸念していた通り、どうやらメディアはある程度、ポポのことを見透かせているようだ。やっぱりメディアは怖い相手だと、ポポは確信した。
「大丈夫だよ、ポポ。メディアは奇抜な格好をしているけれど、良い人だから」
「う、うん。……えっと。ポポはポポだよ、よろしくね」
「ご丁寧にどうも。私の名はメディア。あなたが私に心を許してくれるその時を楽しみにしているわ」
ポポがメディアへの返答に窮していると、ニキからポポに見当違いのフォローが入る。さすがにメディアを前にずっと無言を貫いていたら、さらにメディアにポポのことを探られるかもしれない。そのように想定したポポは、ニキのフォローをきっかけとして、おずおずとメディアに自己紹介をする。すると、メディアはポポの隠し事には踏み込まず、にこやかに微笑んでくれた。
その後、サクヤが祝歌の練習のためにしばらく魔女の園を貸し切りにしたいとメディアに依頼をすると、魔女の歌をこよなく愛するメディアはサクヤの依頼を快く了承し、魔女の園の奥へと姿を消した。メディアは魔女たちの祝歌の練習は敢えて見ないで、復活祭当日に奏でられる完成された祝歌のみを堪能するつもりのようだ。
「さて、まずはみんなの好きなように歌ってみるわよ」
それから。サクヤにより祝歌の楽譜をどのように解釈すればいいかの指導を一通り受けてから、魔女たちはサクヤの方針に従い、祝歌を奏で始める。
「~~~♪」
ポポたちは祝歌の楽譜に従い、各自の声を震わせる。ポポ以外にとっては、初めての四部合奏。クオリアを体内に宿すたった数名の魔女しか歌を歌えないこの世界において、誰かと一緒に歌を奏でるなどという行為は、全く未知の体験で。それゆえに、他の3人と声を合わせて1つの歌を作り上げる、初めての祝歌の四部合唱は、各魔女の声がとっちらかって響き渡るだけの、散々な結果に終わった。
「あんまり、上手くできた感じがしないね」
「まぁ、最初ですから。これから上手く歌えるようになればいい。違いますか?」
「……そうだね、ニキ。ここでへこたれてなんていられない。私はミトラ村のみんなを、世界中の人たちを救いたいんだから」
本当に祝歌を完成させられるのだろうか。リゼットが己の心に巣食い始めた不安を呟くと、ニキはどんより気分なリゼットを励ますべく声をかける。すると、リゼットは己の心を立て直してギュッと力強くこぶしを握りしめる。
「とりあえず、アタシからいろいろ言わせてもらうわね。まず、ニキは周りに遠慮しないでもっと声を出すこと。ニキの声がかき消えちゃってるわ」
「……すみません、声の加減がわからなかったもので。次はもっと声を張ってみますね」
「逆に、リゼットは気合いが入りすぎて、声が空回りしてるわね。少し声量を落として、アタシたちの声にもっと耳を傾けてみてちょうだい」
「うぅ、ごめんなさい。もっと気をつけるよ」
リゼットが気持ちを持ち直したタイミングを見計らい、炎鎮めの儀式を何年も完遂してきた経験ゆえに、人前で歌を奏でてきた経験を持つサクヤから、サクヤとリゼットに対し、率直な指摘が入る。サクヤから己の至らなさを指摘されたニキとリゼットは、サクヤに謝りつつも、次の祝歌の練習への意気込みを見せる。
「ポポは――」
「――ポポは?」
「……意外なことに、アンタは割と完璧なのよね。何ならアタシより上手いんじゃないの? 強いて言うなら、アタシやリゼットとは上手く合わせられているようだけど、ニキとはちょっとズレてるわ。アンタはニキと声の波長を合わせられるように、ニキのことをもっと意識なさい」
「はーい」
サクヤはポポにも指摘をしようと声を上げて、しかしそこで発言を中断する。ポポが疑問を呈すると、サクヤはポポをジッと見つめて、ポポの歌の上手さを褒めたたえつつも、少々気になった指摘事項をポポへと伝えてきた。ポポには過去に戻る前に、リゼットやサクヤとは幾度もなく祝歌や星歌の合奏を練習した経験がある。しかし、過去に戻る前の世界では、土の魔女はニキではなく、ニキの妹のモルディモルトだった。そのため、ニキとの合奏が初体験のポポには、さすがにニキに合わせて歌うことはできなかったようだ。
(まずは、ニキが歌う時のペースをつかまないとね)
「ところで、ポポ。アンタはなんで、そんなに歌が上手いのよ。アタシみたいに大勢の人の前で歌ってたわけじゃないんでしょ?」
「んー。ポポは歌うのが好きだから、魔女になってからは毎日歌ってたんだよね。そのせいなのかな?」
「それって、観衆の前で歌ってたってこと?」
「ううん。ポポはずっと1人で歌ってたよ」
「誰かに見られてない状態で、心が望むように好き勝手に歌っていた。それでアタシよりも歌唱力があるってのがちょっと納得いかないのだけど……ま、そういうことにしておいてあげる」
「ごめんね、サクヤ。祝歌計画がちゃんと終わったら、全部話すから」
「ええ、約束よ。アルトからざっと話は聞いてるけど、ゴウラ火山でアンタがアタシを追い詰めた件も含めて、アンタには聞きたいことがいっぱいあるんだから」
「ありがとね、サクヤ」
サクヤから投じられたふとした疑問に、ポポは逆行前の経験を隠しつつ違和感のなさそうな回答を醸成してサクヤに展開する。が、サクヤはポポの主張に完全には納得できていないようだ。ポポがサクヤに隠し事をしているせいで、サクヤを無駄に悩ませている。ゆえにポポが謝罪をするも、サクヤは今はポポの秘密には踏み込まずに、ポポと約束を結ぶ。サクヤの優しさはいつもさりげない。そのことをよく知っているポポは、サクヤの気遣いに、感謝の言葉を返した。
「さ、とっとと練習を再開するわよ。さっさと祝歌を完成させて、さくっと世界を救ってやろうじゃないの」
そして、サクヤの世界救済宣言に、残るポポたち3名の魔女がうなずき、魔女4名は祝歌の練習をひたすら続けていく。ヒルダの堕歌により結晶の中に閉じ込められた街を、人を救うために、ポポたちはひたすら歌う練習を積み重ねていく。かくして、魔女4名による祝歌の練習は順調に進んでいくのだった。
◇◇◇
「サ、サクヤ様。わたしはサクヤ様の方がポポさんよりも歌唱力に優れていると思っています! サクヤ様こそが一番です!」
「
なお。時折、サクヤ様ファンクラブの会員番号1番に君臨するののかが、魔女の園へと足を運んで、サクヤを全身全霊応援しまくるという一幕が挟み込まれることにより、祝歌完成が若干ながら妨害されてしまうのは、ご愛敬である。
ポポ:金髪ツインテールな風の魔女。ポポが人殺しであることは事実なのでエルマー閣下から『信じない』宣言をされても特に傷つくことはなかった。祝歌の練習時は、あまりにも祝歌を奏でるのが上手いと変に怪しまれるかもしれないと考え、ちょっとだけポポは歌の出力を落としていた。なお、それでもサクヤを越える歌唱力を披露していた模様。
リゼット:ミトラ村出身の水の魔女。17歳。歌を歌った経験を大して持たないがゆえに、祝歌の四部合奏では人一倍気合いを入れて、全力で臨んでいるようだ。
サクヤ:火の魔女にして、アマツの姫巫女として奉られている少女。現在は17歳。ポポのことは気になってこそいるものの、ポポの意思を尊重してあまり深く踏み込まないように意識しているようだ。
ニキ:土の魔女たる緑髪の少女。16歳。4人が連携して1つの歌を奏でる祝歌は苦手なようで、それゆえに、ニキは祝歌を歌う際に、ついつい声が小さくなってしまうようだ。
アナスタシア陛下:神聖レグナント王国の女王陛下。女王としての威厳を放つ系ではなく、親しみやすさを感じてやまない系の女王である。なお、そんな彼女は祝歌計画の完遂を以て、女王として始めて国民を救うことができると考えているようだ。
エルマー閣下:神聖レグナント王国の文官の長。アナスタシア陛下とは20年前に知り合い、陛下を育ててきた過去がある関係上、アナスタシア陛下のことはすさまじく大切にしている。ゆえに今回は、下手にポポを刺激すると陛下の身に危険が及ぶかもと警戒し、発言を抑えていた。
メディア:先祖代々、調律ノ館を管理する、王室付き楽師な女性。ポポが何か大切な秘密を抱え込んでいると看破しつつも、心を震わせる素敵な歌を奏でられる魔女第一な思考を持つメディアは、ポポの秘密に深く切り込むことはなかった。
ということで、27話は終了です。エルマー閣下とかいう、怪しそうで怪しくないけどやっぱちょっと怪しい良い人。閣下がアーチボルトに放ったあの魂の叫びが今でも心に残ってます。閣下、好きです! ま、それはさておき。王都所属のメンバーをある程度登場させられたので私は結構満足しています。後は、ビアンカ・フランツ・レナをどうにか登場させたいところだけど……どうなることやら。何なら登場する機会すら設けられない可能性すらありますので。