風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回は華蝶庵編の後半です。前回、サクヤに思いっきり焚きつけられたニキは、温泉の後、何を思い、ポポにどのように働きかけるのか。



29話.告白×2

 

 国内最高峰の超人気温泉旅館こと『はなれ湯 華蝶庵』。そこでの一泊二日の慰安旅行の機会に恵まれた第9小隊は、成り行きで女湯を覗いた末にポポに見逃された一部メンバーを除き、華蝶庵での最高級の温泉や夕食を堪能した。そうして、夜が更け。ポポは一人、華蝶庵の瓦屋根の上にちょこんと腰かけていた。アマツの高台に位置する華蝶庵から見下ろすことのできるアマツの夜景は、カラフルな提灯によって彩られていて、人工物の美しさをこれでもかと体現していた。

 

 今現在。ポポが華蝶庵の屋根の上にいるのは、ニキと待ち合わせをしていたからだ。温泉から上がった時に、ニキから唐突に「とても大事な話があるから、今夜2人きりで話がしたい」とお願いをされて、その結果、華蝶庵の屋根の上でこっそり会う約束を結ぶこととなったのだ。この時、ニキの背後でサクヤたち女性陣が妙にニコニコしていたことが、不思議とポポの印象に残っている。

 

 

「……」

 

 ポポは敢えて、ニキと約束した時間より少し早めに、集合場所の屋根の上に到着していた。1人でじっくりと考える時間が欲しかったからだ。

 

 

(結局、誰に協力してもらおう?)

 

 ポポは夜空を見上げ、各々の個性を存分に発揮する星のきらめきを鑑賞しながら、己の心にうずまく悩みを内心で吐露した。そう。ポポはこの期に及んで、未だに協力者を誰にするか悩んでいた。復活祭の日に、エクリプスが発動する日に、ポポの計画に誰を巻き込むかを未だに決められずにいた。

 

 否、そうではない。本当はもう、検討はついている。この人にポポの全てを話そう、と心に決めた相手はちゃんと存在する。ただ、どうしても勇気が出ないのだ。今まで、いくらでも話せるチャンスはあったのに、ポポは結局、その人に何も話せずにいた。そして、ズルズルと日時はどんどんと過ぎていき。もう復活祭まで残り数日という段階にまで来てしまっている。

 

 いい加減、誰かをポポの策に巻き込まなければ、エクリプスに向けてロクな作戦を立てられなくなってしまう。それなのに、ポポはいつまで経っても動けずにいて。二の足を踏んでいて。一歩を踏み出せずにいて。

 

 

 ――俺は、俺たちはみんなポポの味方だ。強くて弱い、そんなポポの味方なんだ。愚痴や悩みのはけ口にくらいはなれるし、たとえ理由を伏せられたって、やってほしいことをポポから言ってさえくれば、喜んで協力することだってできる。だから、独りで何もかも全部抱え込むのは今日でもうやめて、一歩を踏み出してみないか?

 

 炎の災禍に見舞われたポート・ノワール。あの時、アルトがポポに遺してくれた言葉があってなお、ポポは結局、一歩を踏み出せていないのだ。なんて、情けないのだろう。なんて、いくじなしなのだろう。ポポは、これまでみんなを、世界を救うために頑張ってきた。だけど結局、どれだけ頑張ろうと、人の本質なんてものは変わるはずがなくて。ポポはダメでグズでどうしようもない魔女、ということなのだろう。

 

 

「ポポ、もう来てたんだね」

「うん。ちょっと風を感じていたかったから」

 

 ポポの思考がどんどんとネガティブな方向へと歪んでいく中。ふと、ポポの耳に他者の声が届く。膝を抱えていたポポが顔を上げると、地上に立つニキが土魔法で生成した土の階段を昇り、ポポが座る華蝶庵の瓦屋根にたどり着く光景を捉えた。

 

 

「それで、話ってなに?」

「あ、う。えっとね、ポポ……」

(あぁもう。サクヤのせいでポポの顔をまっすぐ見るだけで変に意識しちゃうようになったじゃない……)

 

 土の階段を送還してポポの隣にそっと腰を下ろすニキにポポが本題を尋ねると、ニキは言葉を詰まらせつつ、何とか続きを紡ごうとして、声を失ってしまう。ポポの幼くも凛々しい横顔を見るだけでニキは冷静さを失ってしまって、ニキは混乱のままに、ポポとニキを包む程度の小さな結界を展開した。サクヤたちがどこかに潜んで、ニキがこれからポポに仕掛ける告白に聞き耳を立てている可能性を、ニキは警戒したのだ。

 

 

「ほぇ? いきなりどうしたの、ニキ?」

「い、いや。どこで誰が聞き耳立ててるかわからないから、念には念を入れようと思って。それで、話っていうのはね、その、えっと……」

 

 ポポがニキの奇行に純粋に首をかしげる中、ニキはポポに告白しようとして、しかしその先の言葉を繋げられずにいた。告白なんて人生で初めてで。それもニキと同じ女の子に告白するなんて常識に外れた行為に踏み込むことも初めてで。ニキは、己の内に湧き上がる想いと、これまでの人生で紡ぎあげてきた常識との狭間で、ただ無様に揺れ動くことしかできなくて。

 

 

「……実はね、ポポからもニキに大切な話があるんだ。ニキがまだ話しにくいなら、ポポの用事から、先に話してもいいよ?」

「へ? そうなの?」

「うん」

 

 ニキがその先の言葉を紡げずにいると、ポポがふとニキに真剣な眼差しとともに語りかけてきた。そんなポポの真剣で、かつ不安そうな瞳を見て、ニキは乙女回路全開だった先ほどまでの己の思考を、速やかに現実路線へと戻すことにした。

 

 

「ポポはね、その――」

 

 そのようなニキの思考の変遷をポポは気にせず、ニキに全てを告白しようとする。そう、ポポが協力者に選んだ相手はニキだった。協力者に手伝ってほしい内容を鑑みた時、その内容を最も完璧に完遂してくれそうな人が、ニキの他にいないとポポが考えたからだ。

 

 また、他にも理由がある。ポポが過去に戻る前、ポポたちが祝歌を歌って、エクリプスを発動させて。もはや取り繕う必要のなくなったクラウス隊長が正体を現した時。それでもなお、誰一人としてクラウス隊長を疑える者はいなかった。だからこそ、ポポはニキを協力者として選んだ。あの時、あの場にいなかったニキならば、既に亡くなっていたために祝祭の間に居合わせていなかったニキならば、もしかしたらポポの告白を信じて、クラウス隊長を敵だと信じてくれるのではないかと期待したのだ。

 

 

「……」

 

 だけど、それでもなお。ポポは続きをニキに告げずにいた。だって、もしもニキがポポを信じてくれなかったら。ポポが告白した全てを、ニキが万が一にもクラウス隊長に共有してしまったら。その時点で、この世界は詰みだ。ポポの計画がクラウス隊長にバレてしまったら、ポポにはもうどうしようもないのだ。

 

 

「「……」」

 

 結局、ポポもニキも、相手に大事な用事があるのに本題を切り出せない。ニキの結界が、外の音を完全にシャットダウンしている中、お互いがただお互いを見つめ続けるだけの、不思議な時間。そのような非常にゆったりとした雰囲気がしばし続いた後、沈黙を切り裂くべく口火を切ったのはニキだった。

 

 

「……ポポ。私ね、今すっごく嬉しいんだ」

「ほぇ?」

「だって、ポポってすごく秘密主義なんだもん。ポポは明らかに何か譲れない目的を持っていて、そのために、ついこの前まで自分の人生を捧げる勢いでお務めを行っていた。だけど、ポポが何のために動いているかについて、ポポはずっとひた隠しにしてきた。ポポがアルトに調律されて、第9小隊に入った後も、『祝歌計画がちゃんと終わったら全部話す』の一点張りだった。……でも、今。ポポは私に教えてくれる気になった、そうなのよね? ポポが今までずっと隠し続けてきた、大切な話をする相手に、他でもない、この私を選んでくれたのよね? それが、すごく嬉しいの」

「そう、だね。ポポは今、ニキにポポの全てを打ち明けようとしてる。……でも、怖いんだ。ニキを信じていないわけじゃない。ポポが、ポポのことを信じられないんだ。ポポは、今ここでニキに秘密を告白することが正解だって思ってる。だけど、ポポはいつも失敗ばかりしてきた。……だから。今日も失敗するんじゃないかって、ここでニキに秘密を告白したことを後悔する日が来るんじゃないかって、不安なんだ」

 

 ポポが秘密を1人で抱え込むことをやめて一歩を踏み出そうとしている。その相手にニキを選んでくれている。ニキはそのことがとにかく嬉しくて、己の素直な気持ちをポポに告げる。一方のポポは、うつむきながら、一歩をどうしてもためらってしまう己の心境を弱々しく吐露した。そんな、膝を抱えて体を縮こまらせてしまうポポの姿に、ニキの中でポポへの感情が段々とあふれ出していく。

 

 

(……ポポ)

 

 風の魔女ポポ。ニキが初めて本気で恋をした相手。

 魔女としての強さは尋常でなくて、しかし心はとても繊細で。

 虚構の強さで己の心を装飾して、暗躍することを強いられた女の子。

 強くて弱くて。頼もしくて儚くて。健気で愛らしい。そんな女の子。

 

 私だって、私だって、ポポの力になりたい。ポポに救われるばかりじゃなくて、私だってポポを救いたい。アルトみたいにポポの心を調律できなくたって、ポポの助けになりたい。ポポの心に巣食う闇を少しでも取り払ってあげたい。そうして。この秘密主義な女の子を、何もかも丸裸にして。心に荷物を抱え込む必要のなくなった、ありのままのポポと話してみたい。

 

 

「ポポ、大丈夫だよ。あなたの判断は、絶対に合ってるよ」

「……ニキ?」

「ポポ、あなたはね。私にとってヒーローなの。3年前のカシミスタンの大乱の時に、私が自分の命を諦めて、モルディだけ生き残らせようとした時に、ポポが颯爽と私たちの元に駆けつけて助けてくれた、あの日からね。……私はあなたに尽くしたい。あなたが苦しい思いをしているのなら少しでも楽にしてあげたいし、あなたが1人では限界を感じているというのなら、私はあなたの力になりたいの。この気持ちは、誰にも負けない。この気持ちだけは、誰にも負けてなんてやらないわ。……大丈夫、大丈夫だよ。これからポポが私に何を語っても、悪いようにはならない。ポポが後悔する日なんて絶対に来ない。――だって私はポポのことが世界で一番、好きなんだもの」

「んぇ!? ニ、ニキ!? 好きって、どういう……?」

「そのままの意味よ、私はポポのことが恋愛的な意味で大好きなの。ポポの言葉が、所作が、何もかも愛しくて愛しくて、仕方ないの。今日、私がポポをここに呼んだのは、こんな私の想いを知ってほしかったからなのよ」

「ふぇぇええええええええ!?」

 

 ニキは己の内からあふれ出る感情の為すがままに、満面の笑みを携えて、ポポに己の想いを告げる。まさか同性のニキから、しかもこのタイミングで告白されるとつゆにも思っていなかったポポは、驚愕に声を轟かせることしかできなかった。もっとも、ポポの声は、ニキが展開中の結界に遮断され、外に漏れることはないのだが。

 

 

「ポポ。私は、大好きなあなたがこれから何を語ったって、全部受け入れる自信があるわ。……それでもまだ、話すのは怖い?」

「ご、ごめんね、ニキ。ポポが弱くて、怖がりで……」

 

 ニキがズイッとポポへ体を寄せつつ問いかけると、ポポは顔を真っ赤にしながらニキから視線を逸らし、消え入りそうな声を漏らす。どうやらニキの告白は、ポポに拒絶されずに済んだようだ。ニキは内心でホッと安心すると同時に、己のポポへの好意を全力投球でポポにぶつける今の手法では、ポポが一歩を踏み出す手助けをできないと察した。そのため、ニキは切り口を変えることとした。

 

 

「ねぇ、ポポ。実は私、ポポが秘密にしていることの一端について、薄々察してるんだよね」

「え、ニキ?」

「――祝歌計画って、罠だったりしない?」

「ッ!!?」

 

 ニキはポポの耳元に口を近づけてそっと、己が近頃抱いていた疑念を囁いた。対するポポは、ニキから不意に放たれた爆弾発言につい、息を呑み目を見開く。ポポの態度は、ニキの疑問への十分な回答となった。十分にポポの反応を確認できたニキはポポから離れて、ジッとポポに視線を注ぐ。

 

 

「やっぱり、ポポは知っているのね」

「どうして。どうして、ニキはそう思ったの?」

「……かつて王立騎士団の団長でありながら、福音使徒に寝返ったルドルフ。彼に以前、福音使徒の目的を尋ねたことがあったの。ほら、福音使徒が孤月の丘で私を自殺させようとした時にね」

「……」

「ルドルフは、福音使徒が人類のために戦っていると主張した。私とモルディの母さまを殺して、カシミスタンの大乱を勃発させておきながら、よ。それでもルドルフは、自陣営にこそ正義が、大義があると主張した。……もしもルドルフが王立騎士団の団長の時と何ら変わらない信念を心に宿しているのなら、彼が己の信念を貫くためには福音使徒に入信するしか手段が残されていないと判断したのなら。実は本当に福音使徒こそが正義で、ヒルダの堕歌による人や街の結晶化を解除して世界を救おうと祝歌計画に参加している私たちこそが、実は無自覚のまま世界を滅ぼそうとしている悪なんじゃないかなぁってね」

「……」

「そして、私たちを都合の良い駒として使い倒して、世界を滅ぼそうとしている主犯格は、アナスタシア陛下かエルマー閣下、あるいはクラウス隊長あたりなんじゃないかなぁってね、ちょっと疑ってたんだ。それなら、お務めを理由にして、なるべく第9小隊への加入を遅らせていたポポの動きにも、ある程度は整合性をつけられるしね。……ま、これは私のただの邪推だったわけだけど、ポポのおかげで信憑性が増してきた」

「……」

「さて、ポポ。今の私って、ポポの隠し事に片足踏み込んでる状態だと思うんだけど、このまま私を中途半端に放置するより、いっそ思いっきり巻き込んだ方がいいんじゃないかな? だって、私の知的好奇心はこの謎を決して看過しない。このままポポが私を放置すると、私は今後、罠だとわかっている祝歌を奏でることなんて放棄して、真実を求めてもっとアグレッシブに動き始めるよ。そうしたら、私はレグナント王国サイドの黒幕に目をつけられて、大変な目に遭うんじゃないかな。それでポポは良いの?」

「……その言い方はズルいよ、ニキ」

「この世で最も大好きなポポを助けられるのなら、私はいくらでもズルくなってみせるよ」

「ぇう!? うぅぅぅ……」

 

 ポポの問いかけを受けて、ニキはかつて、孤月の丘でルドルフが語った福音使徒の目的を軸としてこっそり積み上げていた己の推測を披露する。そうして、ニキはポポが己の秘密をニキに告白する踏ん切りをつけられるように、ニキ自身の身柄を盾にしてポポを脅す方針に切り替えたのだ。ニキの方針転換はポポに非常に効果的だったようで。ポポからジト目で睨まれて文句を言われたニキは、にこにこ笑顔でポポに真っ向から好意の塊を投げつけていく。一方のポポの顔はますます紅潮し、ニキ相手に反撃の言葉を何も紡げなくなってしまう。

 

 

「わかった! わかったよ、ニキ! ポポのこと、全部話す! ……だから、その。あんまりポポのこと、好きって言わないで。ニキから言われると、どうしてかすごく恥ずかしいから……」

「ふふふ。ごめんね、からかっちゃって。もうしないから、安心して」

「うん、約束だよ? ……それで。長くなっちゃうけど、ポポの話を聞いてほしい」

 

 このままニキの好きなように言わせてしまうと、ポポは完全にノックアウトされてしまう。ポポはその場に勢いよく立ち上がり、己の秘密の暴露を宣言した。そのようなハチャメチャとした紆余曲折を経て、ポポは当初の予定通りに、ポポの計画にニキを巻き込むべく、まずはポポの秘密から語ることとなった。

 

 

 ポポは語り始める。かつて、風の属州『サウス・ヴァレー』で孤独にお務めを続けるのみだったポポが、アルトと出会ったことで始まった、ポポの1つの物語を。そして、物語の終盤で、カルテジアンとの戦いに敗北した際に、ヒルダの時魔法で過去に戻されてしまったことを契機として始まった、風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記。未だ道半ばな、ポポの軌跡を。

 

 

「それでね。ニキにやってほしいのはね――」

 

 そして。長い時間をかけてポポが丁寧に己の秘密を語り尽くし。ポポの今までの軌跡を、ニキが己の頭できちんと理解し終えるのを待った後。ポポはニキに協力者として、復活祭の日に、エクリプスが発動する日にやってほしいことを依頼した。

 

 

「――というわけなんだけど。ニキ、お願いしてもいいかな?」

「……中々に、厳しいオーダーね」

「ごめんね、ニキ。無茶なこと言って」

「ううん、心配しないで。ポポのためならこのくらいの無茶は何としてでも通してみせる。さて。早速、作戦を考えないとね。長い夜になりそうだわ」

 

 かくして。ニキという頼もしい協力者を得たポポは、ニキとともに復活祭当日の作戦を組み上げていく。風の魔女と土の魔女。夜空に瞬く星々が見守る中、2人の魔女の夜の語らいはまだまだ続いていくのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ポポとニキが華蝶庵の屋根での密会を終えた後。もう少しだけこのまま夜風を感じていたいと主張するポポを残し、ニキは屋根から地上へと軽やかに飛び降りる。そして、就寝のために女性用の大部屋へと向かおうとした時、ニキを廊下で待ち受ける者がいた。

 

 

「――サクヤ」

「遅かったじゃない。結果を聞かせてもらうわよ、ニキ」

「そうですね。結局は保留、という形になったのでしょうね。まぁ、私が一方的にポポに告白しただけで、ポポの返事を聞きませんでしたから。……ポポは私の想いを拒絶しませんでした。むしろ、あの告白で私を意識してくれるようになったようです。ポポの返事はまた今度、落ち着いた時にでも確認しますよ」

「なーんだ。今日決着になると思ってたからわざわざ夜更かししてたのに、時間の無駄だったわね。ていうか、アンタたち長話しすぎなのよ。どんだけ話せば気が済むってのよ、まったく」

「……もしかして、私の告白が玉砕した時に備えて、今までずっと待っていてくれたのですか?」

「んなわけないでしょ。同性同士の異色の恋の行方が気になって眠れなかっただけよ。にしても、返事を保留にされた割には、随分とすっきりとした顔してるじゃない。ま、アンタが納得してるならこれ以上はとやかく言わないわ。それじゃ、アタシはもう寝るから」

「はい、おやすみなさい」

 

 ニキからポポへの告白の結果を聞き出して満足したサクヤは、己に襲いかかる睡魔の為すがままにあくびを残して、ニキに背を向けて大部屋へと戻っていく。

 

 

「……サクヤ。今日は、私の背中を押してくれてありがとうございました。おかげで、ポポと非常に有意義な時間を過ごせました」

 

 ニキは、段々と遠ざかっていくサクヤの背中に、小声でお礼を述べた後。ニキもまたサクヤを追って大部屋へと赴いていく。こうして、『はなれ湯 華蝶庵』での一泊二日の慰安旅行は、第9小隊の各々の心に、決して忘れられない1日として刻まれるのだった。

 

 




ポポ:金髪ツインテールな風の魔女。己の計画の協力者としてニキを巻き込もうとして、しかし勇気が出なかったところでいきなりニキに告白され、好意を全力でぶつけられまくったことで、色々と調子が狂ってしまった今回のある意味での被害者枠。なお、基本的にみんなのことが好きなポポ的には、同性愛について否定的な見解は特に持ち合わせていないようだ。
ニキ:土の魔女にしてカシミスタンの領主だった緑髪の少女。16歳。此度、ポポに告白するだけだったつもりが、ポポが己の秘密を語ってくれそうな気配だったので、あらゆる手段を用いてポポを揺さぶり(手助けをして)、最終的にポポから秘密を引き出すことに成功した。恋する乙女は強いのである。それはそれとして、以前から、祝歌計画が罠であるという可能性を考慮していた模様。
サクヤ:火の魔女にして、アマツの姫巫女として奉られている少女。現在は17歳。ニキに告白するよう焚きつけた手前、告白を終えたニキを出迎えるつもりで、眠気に抗いつつ、美容の敵である夜更かしまでしてずっと待機していた。

ニキ「ポポのこと好き好きビーム発射! 出力最大!」
ポポ「ほぇぇえええ!?(断末魔)」

 ということで、29話は終了です。ニキポポという新しい可能性を私はここで提示して見せます。ニキポポはいいぞ。
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