風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ところでこの作品、ステラグロウの二次創作を謳っておきながら今まで1回も『オーヴ』という言葉を使ったことがないことが判明しました。なので此度はオーヴの話題に触れつつ、話を展開することとしましょう。ステラグロウ二次創作のにわか疑惑をここで払拭するのです!



38話.白光

 ポポとニキが元通りの仲を取り戻すことに成功してから、数日後。ついに魔女5名はマザー・クオリアを倒すための切り札こと星歌を完成させることができた。星歌完成の朗報を受けた調律騎士団の団長アルトは、団員たちに宣言した。明朝、マザー・クオリアを倒しに月へ出発すると。

 

 そのため調律騎士団の面々は各自、明日に向けた準備を行っていた。武器を念入りに手入れしたり、調達済の物資に不足はないかを再確認したりと、己の長所を生かして、万全の状態で明日を迎えられるように速やかに行動していた。

 

 

「うぅ……」

 

 そんな中。ポポは、特にやることがなかった。

 天使の大群が空から襲来してきた時に、歌を歌って天使を殲滅する以外は、特に役目を持たないポポは騎士団庁舎内の自室で暇を持て余していた。本当はポポも皆の準備を手伝いたかったのだが、誰に手伝いを申し出ても、ポポの体調を気遣われて、断られてしまうからだ。

 

 普段のポポなら自分の時間があり余っている時は、本を読んだり、王都のカフェでくつろいだり、大通りで買い物を楽しんだりと、充実したひと時を過ごしている所なのだが。月を舞台とした、2度目の最終決戦の前日という状況でマイペースに余暇を楽しめるほど、ポポの心は強くない。何せ、2回目だって失敗して、アルトたちが全滅する可能性が十分にあるのだから。ゆえに、ポポは焦燥感や不安感を抱えて、自室でいたずらに時間を消費することしかできなかった。

 

 

「あ、ポポ見つけたー!」

 

 と、ここで。不意にポポの自室の扉が開かれ、そこから翡翠色のゆるふわな髪を引き連れた、白いワンピースを身にまとった少女:マリーが姿を現した。マリーはどうやらポポを捜していたようで、ポポを見つけるや否や嬉しそうにポポに指をさしてくる。

 

 

「マリー、どうしたの?」

「ポポ! 今からマリーと一緒に、フランツ工房に遊びにいこう!」

「ほぇ?」

 

 マリーは己の目的を元気よく告げると、ポポの元へと駆け寄り、ポポの手を握って、ポポをフランツ工房へと連れていくべく、勢いよくポポの手を引っ張り始める。

 

 フランツ工房とは、様々な超常現象を起こせる『神秘の宝石』こと『オーヴ』を武器にはめ込む用に研磨・精製した上で販売しているお店である。その工房を営むフランツの娘のレナと、マリーは暇を見つけては遊ぶ親友となっており、それゆえ今日もマリーはレナと遊ぶためにこれからフランツ工房に向かおうとしているのだろう。だけど、どうしてマリーは、フランツ工房にポポも連れて行こうとしているのだろうか。

 

 

「でも、みんなが色々準備してるのにポポだけ遊ぶのは……」

「……ポポは、マリーと一緒に来てくれないの?」

 

 現在進行形で暇を持て余していたポポだったが、『世界の命運を勝ち取らねばならない調律騎士団の一員が、決戦前日にのんびり遊んでいいものか』といったある種の罪悪感がポポの心の大半を占めたがゆえに、ポポはマリーの誘いを断ろうとする。だが、ポポから乗り気でない気配を感じ取ったマリーが、シュンとした様子でポポへと向き直り、弱々しい声で訪ねてきたことで、ポポの心の内の罪悪感という名の砦は一瞬にして瓦解した。

 

 

「うッ……い、行くよ!」

「わーい!」

 

 これ以上、ポポのせいでマリーに暗い表情をさせてはいけない。ポポがマリーの誘いに応じる旨をはっきりと宣言すると、マリーは両手を上げてぴょんぴょん飛び跳ねるのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 マリーに先導されるがままにポポはフランツ工房に足を踏み入れる。大小様々で、色とりどりなオーヴが店内の至る所に飾られたフランツ工房は、幻想的な美しさを醸成していた。

 

 

「レナ、フランツ! ポポを連れてきたよ!」

「さすがね、マリー。ありがとう」

「ありがとう、マリーちゃん」

 

 2周目の世界に逆行してからは一度も訪れていなかっただけに、ポポがフランツ工房の内装に改めて圧倒されている中。すっかり工房に通い慣れているマリーが、工房内の2人の人物の元までポポの手を引いて連れていく。すると、薄黄緑色の髪をリボンでまとめた、ポポと同年代の少女:レナと、レナの父であるフランツが、それぞれマリーに感謝を表明する。

 

 

「えっと、これは……?」

「戸惑わせてしまって申し訳ありません。初めまして、僕はフランツと言います。ここ、フランツ工房でオーヴ鑑定士をやっている者です。そして、こちらが僕の娘のレナです。今日、僕からマリーちゃんにお願いをして、ポポさんをここまで連れてきてもらいました。……どうしても、ポポさんにお礼がしたくて」

「お礼?」

「えぇ。まずはこちらを受け取ってください」

 

 フランツはポポに自己紹介を行うと、ポポにオーヴを差し出してくる。そのオーヴはひし形をしていて。オーヴの至る所に小さな穴が開いていて、その穴にもまた別種のオーヴの欠片を埋め込まれていて。オーヴ全体からはほのかな翠色の光を灯していて。ポポが少し見ただけでも精巧に作られた代物だとわかるほどのオーヴだった。

 

 

「このオーヴは、僕のオーヴ鑑定士としての技術の粋を結集させた傑作です。ポポさんの弓に装着してください。必ずや、ポポさんの力になってくれますよ」

「え、え? 待って、こんな見るからに高級なオーヴ、受け取れないよ! それに、どうして――」

 

 ポポはフランツから渡されたオーヴを返そうとして、そもそもフランツの意図を確認しようとして、思い出した。1周目の世界で、この目の前にいるフランツは、死んだのだ。復活祭の日に、ポポたちが奏でた祝歌によってエクリプスが開始してしまったことで、空から大量に襲来した天使によって、フランツは殺されたのだ。娘のレナを1人残して、理不尽な死を遂げてしまったのだ。

 

 

「復活祭の日に、いきなり空から降りてきた謎の生物――あれは『天使』と言うそうですね。天使が空から降臨した時、僕はちょうど城の衛兵隊にオーヴを届けていました。そこで、あの天使たちが僕や衛兵隊の人を見つけるや否や、攻撃を仕掛けてきたんです。……僕に戦う技術はありませんからね。そのまま天使に殺されてしまうところでした。だけど、その時に一陣の風が吹き抜けて、天使を倒してくれたんです。……ポポさん。あなたのおかげで、僕はレナを1人にさせずに済みました。……このオーヴは、僕の感謝の気持ちです。どうか、命の恩人のポポさんに、受け取ってほしいんです」

「フランツ……うん、わかった。このオーヴ、大切に使うね。ありがとう」

「こちらこそ、僕たちを救ってくれて本当にありがとうございます」

「パパを助けてくれて、ありがとうッ!」

 

 ポポから理由を問われたフランツは、復活祭の日にポポに救われた事情を簡潔に説明し、改めて己の最高傑作のオーヴをポポに差し出す。ポポはこれまでの経験を経て、知っている。相手から強い感謝の想いとともに差し出された物は、ポポごときの拙い言いくるめの技術で断れるわけがないということを。それゆえポポがフランツからオーヴを受け取り、ペコリと感謝の言葉を告げると、フランツ&レナは眩しい笑顔をポポに返してきた。

 

 こうして。工房でフランツとレナから感謝されまくったポポはその後、お礼の続きと称した、レナとマリーの遊びに付き合うこととなった。レナも、マリーも幸せそうに笑っている。この笑顔を守り抜くために、ポポたちは明日、死力を尽くすのだ。今日、マリーと出会うまでは負の感情に苛まれていたポポだったが、マリーのおかげで、図らずもポポは己の気持ちを前向きに持ち直すことに成功するのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「今日は楽しかったね、マリー」

「うん! ポポもこれで、秘密基地のメンバーだね!」

「ポポを仲間に加えてくれてありがと。ところで、もっとメンバーを増やしたりはしないの?」

「うんとね、今はユアンをメンバーにしたいなって思ってるよ」

「ユアンかぁ。ユアンが秘密基地のメンバーになってくれたら、もっとカッコいい秘密基地にできるね。ユアンはとっても優秀な商人だもんね」

「でしょー?」

 

 ポポ&レナ&マリー。この3名で外で十分に遊びつくした後の夕暮れ時。ポポはレナをフランツ工房へと送り届けた上で、マリーと一緒に騎士団庁舎へと歩を進める。今日は何時間も秘密基地拡充のために動き回ったマリーだったが、今もなお元気いっぱいのようで、ポポが秘密基地の今後の展望を尋ねると、マリーは満面の笑みを携えて、ユアンを新メンバーに引き込む腹積もりを主張する。

 

 

「――?」

 

 刹那。ポポはふと、違和感を感じた。ポポの周囲を駆け巡る風に、何か異物感を感じたのだ。

 その違和感の正体を探るべくポポは周囲を一瞥し、次に空を見上げて、目を見開いた。

 

 空から、1人の少女が落下しているのだ。機械的な翼を携えた、白と黒を基調とした硬質ボディが特徴的な、藍色の髪をした少女。獅子王ゼノにより作られた人造天使ジゼルが、空から重力の為すがままに落下しているのだ。ジゼルの体中には痛々しい傷が刻まれており、このままでは地面に激突して死ぬにも関わらず、ジゼルが何も反応しないことからも、ジゼルが今現在、気絶に近い状況に追い込まれていることは容易に予想できた。

 

 

「ジゼル!」

 

 かつて、1周目の世界で共に世界を救うべく戦った仲間がこのままでは墜落して死んでしまう。そんな未来を認めてはならない。

 

 ポポはとっさに己の体に風をまとい、己の出せる最大スピードでジゼルの落下地点へと迫る。ポポは必死にジゼルの体へと両手を伸ばし、はたしてその両手は、ジゼルの体に届いた。ポポは己の手がジゼルの体に届いたことを確認すると、その場で地を力強く踏みしめて、跳躍する。そうすることでポポは、重力を味方にしたジゼルの体を地面に衝突させることなく、ジゼルをしっかりキャッチすることに成功する。

 

 

「あなたは、風の、魔女……?」

「ジゼル!? どうしたの、その怪我!? 一体、何があったの!?」

 

 ポポに体を支えられたジゼルはうっすらと目を開き、弱々しい声を零す。ポポは、ジゼルが気絶していないことを知るや否や、ジゼルに速攻で質問をぶつける。人造天使ジゼルは非常に強く、並大抵の者はジゼルに傷1つつけられないことを、ポポは1周目の経験で知っているからだ。そのジゼルが今、こうも深手を負っている。この明らかな異常事態を前にして、ポポが動揺冷めやらぬままにジゼルに質問をぶつけるのはごく自然の結実と言えた。

 

 

「ポポ! その人は、誰……?」

「マリー。えっとね、この人は――」

 

 と、ここで。いきなりマリーの元から離れて駆けだしたポポの元へと何とかたどり着いたマリーが、息を切らしながらもジゼルを指差して問いかける。一方のポポがマリーにジゼルを紹介しようとして、そこでジゼルが一言、今にも消え入りそうな声でポツリと呟いた。

 

 

「――Dシステム、ロック解除」

 

 刹那。ジゼルの体が、仄かに紫電の色に光り輝く。瞬間、ポポの顔から血の気が引いた。ポポは同時に、己の取り返しようもない過ちに気づいた。今更ながら、ジゼルの思惑に気づいてしまった。

 

 このジゼルは、ポポの腕に抱かれているこの2周目のジゼルは、ポポを全力で殺そうとしている。だからこそ敢えて空から墜落する演技をして、ポポをおびき寄せたのだ。そして。ポポはジゼルの読み通りに、愚かにも、まんまとジゼルの至近距離まで近づいてしまったのだ。

 

 

「逃げて、マリー!」

「え――?」

 

 ポポは己とジゼルへと無警戒で近づいてくるマリーに叫ぶ。マリーはどうしてポポがいきなり険しい形相でマリーの接近を拒否したのかがわからず、ついその場に硬直してしまう。ポポはマリーを、王都ランベルトを守るべく、ポポとジゼルのみを包むように風のヴェールを展開する。直後、ジゼルの体から激しい紫電の光が次々とあふれ出し、次の瞬間にジゼルの体が派手に爆発した。

 

 

 ――宿願を果たすのは、風の魔女ではありません。私が敬愛する、マスターです。

 

 爆発の寸前。

 ポポはジゼルの確信めいた声を聞いたような、そんな気がして。

 刹那。ポポの視界は暴力的な白光に塗りつぶされた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ジゼルがDシステムを発動させて王都ランベルトで大爆発を起こしたことにより、ポポが展開した風のヴェールを突き破った衝撃が、付近の建造物を破壊し、ポポやジゼルのすぐ近くにいた人々を容赦なく吹き飛ばしていく。

 

 

「う……?」

 

 唐突に王都で発生したジゼルのテロ行為を受けて、忙しなく人々の悲鳴が轟き。もはや原形をとどめることすらままならない建造物の崩壊する音が断続的に響く中。爆風に吹き飛ばされ、建物の壁に背中を打ち付けたことでほんの数秒だけ意識を失っていたマリーが、地に伏せていた体勢からゆっくりと顔を上げる。頭から血をポタポタと零すマリーの視線の先に転がっていたのはただ2つ。四肢がバラバラに砕け散った藍色の髪の少女:ジゼルの姿と、全身が酷く焼きただれた金髪の少女:ポポの姿。

 

 

「ポポ……?」

 

 マリーはふらふらとした足取りでポポの元へと歩み寄る。幸いにもマリーとポポの間に立ち塞がる障害物は存在せず、マリーは倒れ伏すポポの元に至極簡単にたどり着ける。

 

 

「ねぇ、ポポ。起きて。……返事を、して?」

 

 マリーは黒焦げになったポポの体躯をゆさゆさと揺する。しかしポポはピクリとも動かない。どれだけマリーがポポを揺すろうとも、ポポはマリーが望んだような反応を示してくれない。身じろぎすらしてくれない。うめき声すら漏らしてくれない。

 

 

「ッ!」

 

 と、その時。マリーの耳が遥か頭上からの音を捕らえる。聞きなじみのある音が鼓膜を揺さぶる中、嫌な予感が脳裏をよぎったマリーがゆっくりと顔を上げると、そこには天使の大群が降下する姿があった。天使は単調な声色で鳴き声を上げながら、地上へと舞い降りてくる。

 

 

「……ぁ…あ……」

 

 マリーは絶望した。

 マリーは言葉を失った。

 

 ポポは酷く傷ついている。

 天使がどんどん地上に降臨している。

 もう、時間がない。天使が地上にたどり着くまであと1分もかからない。

 ポポがとても歌える状況ではない。ポポは天使を撃退できない。

 このままだと、みんなが天使に殺されてしまう。

 記憶をなくしたマリーを快く受け入れてくれた、優しいみんなが、大好きなみんなが殺されてしまう。

 

 

「ダメ……」

 

 マリーは思わず呟いた。

 

 

「ダメぇぇええええええええええええええええええええええ!!」

 

 マリーは無意識の内に絶叫した。

 刹那、マリーの中で何かが弾けた。

 

 




ポポ:金髪ツインテールな風の魔女。1周目の経験ゆえにジゼルを仲間と信じたがゆえに、ジゼルの騙し討ちにしっかり嵌ってしまった。はたしてポポは無事なのか否か。
マリー:記憶喪失の少女。見た目年齢は10歳くらい。22話に続き、再びポポによって心の傷を負ってしまった被害者枠。マリー救済ルートの発見が急がれる今日この頃。
レナ:フランツ工房を営むフランツの一人娘。マリーの親友。今回はフランツを救ったポポへのお礼をするために、言葉で感謝したり、秘密基地の仲間にポポを加えたりと、レナにできる方法で精一杯のお礼を示した。
フランツ:フランツ工房の主。己の命の危機を救ってくれたポポへのお礼の機会をうかがっていたが、当のポポが星歌完成がらみで忙しそうだなと気を遣ったがために、お礼を言うタイミングが今回までズレてしまった模様。
ジゼル:クラウスによって作られた疑似生命体。天使に酷似した体つきをしており、飛行も思いのまま。あえて己の体を傷つけた上で自由落下をしたことでポポをおびき寄せることに成功した後、自爆した。すべては創造主クラウスのため。ジゼルの命はここで潰えてしまうが、ジゼルには何の後悔もない。

 というわけで、38話は終了です。2周目のポポの様々な暗躍の結果、ジゼルの仲間フラグがバッキバキに折れていたという話です。具体的には、以下の積み重ねで仲間フラグが完全に折れていました。

・カシミスタン編でポポが介入したことでジゼルの登場シーンが消えたこと
 (ジゼルとアルトたちが接触し、会話しなかったこと)
・リゼットが魔剣カルブンケルに呪われた際にジゼルよりも早くポポが福音使徒のアジトをアルトたちに伝えたことでジゼルの登場シーンが消えたこと
 (ジゼルとアルトたちが接触し、会話しなかったこと)
・復活祭の日にニキが獅子王ゼノのメンタルブレイクを派手に行ったことで、ジゼルのココロがゼノの復活を一番に望むようになったこと


 ~おまけ(ポポがもらった、『フランツのオーヴ』の性能)~
 →SP(魔力)を使用するスキルを使用した時、消費するSPを75%カットする。
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