風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。ただいま進行中であるステラグロウ原作前の話は、あと6話くらい続く予定です。そのあと、逆行ポポの影響によりちょっぴり展開の変わったステラグロウ原作の話に突入していく予定ですので、どうぞお楽しみに。



4話.カシミスタンは終わらない

 

 

 カシミスタンの大乱から5日が過ぎた。

 5日前。カシミスタンの大乱のことに思い至ったポポがカシミスタンにたどり着いた時、事態は既に手遅れだった。カシミスタンは大火に覆われ、多くのカシミスタンの住民の無残な遺体が転がっている状態だった。

 

 そんな残酷な光景を目の当たりにしたポポは思わず、かつてポポを含めた4人の魔女と協力して祝歌を奏でた影響で発生したエクリプスにより、王都ランベルトの民が天使に次々と虐殺される光景を幻視して、一時立ちすくむも、どうにか己の心を奮い立たせて、カシミスタン住民の生き残りを1人でも救うべく速やかに動き始めた。

 

 まずカシミスタン郊外の砂漠にて、ポポは風魔法で竜巻を発生させ、砂を大量に巻き上げることで、カシミスタンに砂の大雨を降らせた。水を用いた消火に比べれば鎮火能力なんてたかが知れているが、砂による消火もそこそこは効果的だ。火は、燃やすことのできる対象がなければ、燃え広がらない。燃えることのない乾いた砂に埋まってしまえば、火は猛威を振るうことができず、火の勢いを弱めることができるのだ。

 

 その後。ポポはカシミスタン中を駆け回り、鋭い嗅覚でカシミスタン住民のにおいを辿る方法で住民を見つけ、次々とカシミスタンの街の外へと避難させた。そうしてポポが救い出せたのは、ほんの100名程度。ポポの介入により、カシミスタンの大乱から、住民を少しは救うことができた。しかし、カシミスタンの大乱のことをもっと早く思いついていれば、大乱自体を未然に防ぐことだってできたはずだ。ポポが助けたニキたちから心から感謝される中、ポポが内心で己の頭の悪さと、己の無力さを呪ったのは記憶に新しい。

 

 

 結局。大乱の後、ニキは母サイージャの後を継ぎ、若くしてカシミスタンの新しい領主となった。それは同時に、ニキが新たな土の魔女になったことも意味していた。

 

 そのニキの指揮の元、カシミスタンは復興に向けて1つ1つ、着実に活動を始めている。遺体の埋葬。仮設住宅の建設。治療施設への怪我人・病人の収容と治療。壊れた公共施設の修繕等々。生き残ったカシミスタンの住民は己に何ができるかを自問した上で、カシミスタン復興に精力的に取り組んでいる。とにかく体を動かしていなければ、先の大乱のことを思い出してしまうからだ。また、母を失ったというのに、それでもカシミスタン再興を目指して、気丈に振る舞う少女ニキの姿に鼓舞されたという一面も存在していた。

 

 ポポもまた、カシミスタンの復興に微力ながら手を貸していた。ある時は遺体を埋葬するための穴を小さめのかまいたちを起こして掘り起こし、またある時は手持ちの傷や病気によく効く薬草を振る舞うといった風に、風の魔女としての力を存分に活用して、復興に大いに貢献していた。

 

 

「ねぇねぇ、モルディ。ここはどうしよっか?」

「……ここは、しっかり盛る。大盛り」

「はーい。大盛り一丁、入りまーす!」

 

 そして、今日のポポはニキの妹であるモルディモルトと一緒にカシミスタンの街を練り歩き、真っ先に直すべき重要施設の修繕を行っていた。ポポはモルディの指示に従って、風魔法で付近のレンガをまとめて巻き上げ、眼前の半壊した宿屋の壁として積み上げた。

 

 

「こんな感じかな?」

「……うん、綺麗に盛られてる。ポポ、上手」

「えへへ、ありがと。でもポポが上手にできるのは、モルディの的確な指示があってこそだよ」

「そう、かな?」

「そうだよ!」

「……盛る」

 

 モルディモルトから褒められたポポは素直にお礼を言いつつも、モルディモルトのことを称賛する。一方、ポポからの屈託のない笑顔攻撃に晒されたモルディモルトは照れ臭くなって、赤くなった顔をポポに気づかれないように目をそらした。

 

 

「これで今日の建物修繕ノルマは終わりだよね?」

「うん。……ポポ、お疲れさま」

「モルディこそ、お疲れさま」

「――2人とも、精が出るわね。モルディ、ポポ」

「あ、お姉ちゃん!」

「やっほー、ニキ」

 

 と、ここで。ちょうど街に繰り出していたらしいニキがポポたちに声をかける。モルディモルトは嬉々とした表情でニキに駆け寄り、ポポは元気よくニキに手を振りつつ、ニキに歩み寄った。

 

 

「ニキの仕事はどう?」

「ま、何とかなっているわ。王都からの支援物資もいっぱい届いているし、モルディとポポの頑張りのおかげで復興計画を前倒しにできているもの。政治や経済のことは、時々キースから助言をもらって、それでどうにか回してるって感じ。……まったく、こんなことになるのなら、もっとちゃんと勉強しておけばよかったわね」

「え。キース、役に立ってるんだ。……意外」

「王の器を持つ俺と、たかが領主の血筋でしかない貴様とは頭の作りが違うからな、小娘」

 

 ポポがニキに仕事の調子を尋ねると、ニキはため息混じりに言葉を紡ぐ。そんなニキの発言を受けてモルディモルトがキースの活躍を想定外に感じていると、当の本人がニキの背後から姿を現した。青紫色と紫陽花色とが織り混ざったストレートの髪をたなびかせ、理性的なメガネが似合う長身の青年ことキースは、モルディモルトに対して尊大な口調で己の優秀さを主張した。

 

 

「やっほー、キース」

「……いたんだ、キース」

 

 ポポはカシミスタン復興活動の最中、何度かキースを顔を合わせている。ポポは3年前からキースの性格は全然変わってないなぁと内心でしみじみと感想を抱きつつ、キースに手を振ってキース来訪を歓迎する。一方、モルディモルトはキースに良い印象を持っていないようで、げんなりとした表情でぼそりと呟く。

 

 

「俺は貴様らの母親と、貴様らを守る契約をしたからな。その報酬たる宝剣を先払いで受け取った以上、俺にはいついかなる時も全力で貴様らを守る義務がある。ニキが外出するのなら、俺も当然、外出するさ」

「……ストーカーキース」

「何とでも言うがいい。……ったく。この小娘は今の己がどのような立場であるか全く自覚がないようだ。前領主サイージャは土の魔女であるがゆえにレグナント王立騎士団隊長ルドルフの、福音使徒の餌食となった。その娘の貴様が生きていて、さらに土の魔女を受け継いだとバレれば、貴様もまた標的になるとわかっていて、なぜこうも頻繁に街に足を運ぼうとする? 緩慢に自殺をしているようにしか思えんのだがな」

「ふふ。心配してくれてありがとう、キース。でも、城にこもっているだけでは、復興の実情はわからないもの。それに、私には危険から守ってくれる、とっても優秀なボディガード様がいるもの。だからこうして外に出ても大丈夫、そうでしょう?」

「ふん、当然だ。どれだけ貴様が愚かにも不用意に外を出歩こうとも、契約期間中は守ってやるさ。俺は交わした契約は決して破らない」

「……単細胞キース」

「あはは……」

 

 キースはモルディモルトの直球な悪口を右から左へと聞き流した後、ニキの此度の外出を咎める。が、城に閉じこもっているつもりのないニキは、キースの優秀さを大いに評価する発言を行うことにより、今後キースから外出を咎められない構図を組み上げた。キースが単純なのか。ニキがしたたかなのか。2人の会話を第三者目線で見た結果、さらにぼそりとキースの悪口を零すモルディモルトと、苦笑いを浮かべるポポであった。

 

 

「ところで、気になってたんだけど……ポポはいつ頃までカシミスタンにいてくれるの?」

「んーと。大体半年くらいかな? それだけあれば、ムシャバラール砂漠全土をくまなく回りきれるから」

 

 ポポは3年後の凄惨な未来に備えるべく、月から削り取り変化させた風のクオリアを世界中の地面に埋めるという方針を固めていた。そのため、まずはカシミスタンの復興を手伝いながら、ムシャバラール砂漠全土に風のクオリアを埋め込むことにしていた。ゆえに、ニキの問いに対し、目安としての期間を回答した。

 

 

「やれやれ。何が楽しくてこんな何もない砂漠を完全踏破しようとしているのやら」

「それは内緒。ごめんね」

 

 呆れ顔を浮かべたキースからの問いかけにポポは回答せず、代わりに謝る。未来のことをみだりに話すことはリスクになることを、ポポはヴェロニカ博士との接触を通して学んだからだ。

 

 

「俺には貴様の行動が理解できないな。人間の一生の時間は有限だ。であれば、もっと有意義なことに時間を注ぐべきだろう」

「例えば、キースがこれから作ろうとしてる国の国民になるとか?」

「ほう。よくわかっているじゃないか、小娘」

「……ポポ。それはダメ。絶対に、やめるべき。早まらないで。私は、大切な友達が騙されて、苦しむ姿は見たくない」

「おい。せっかくポポがその気になっているというのに、水を差すんじゃない」

 

 キースにとっての有意義な時間の使い方とは何か。ポポが軽く予想して口に出すと、キースは満足げに口角を釣り上げる。しかし、モルディモルトは一瞬信じられないようなものを見るような眼差しでポポを見つめた後、ポポの両肩を掴んで必死に説得してくる。対するキースはモルディモルトに余計なことをするなと告げる。モルディモルトとキースが仲良くなる気配はなさそうだ。いや、こういうやりとりをできること自体が、仲のいい証なのだろう。きっと。多分。

 

 

「それじゃ、ポポはそろそろ砂漠に行ってくるね。明日の夕方には帰ってくるよ」

「あら、もしかして引き留めてしまっていたかしら?」

「ううん。大丈夫だよ、ニキ。ポポのお務めは、時間厳守じゃないからね」

「それなら良かったわ。いってらっしゃい、ポポ」

「……いってらっしゃい」

 

 願わくば、モルディとキースがもっと仲良くなりますように。ポポは心の中で祈りつつ、ニキとモルディモルトの見送りの言葉を引き連れながら、ムシャバラール砂漠に風のクオリアを埋め込むべくカシミスタンの街を飛び立つのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

(今日はここからだね)

 

 カシミスタンの街を後にし、1時間ほど飛行していたポポは砂漠の一角に垂直に突き刺さっていた木の棒の前に降り立つ。この木の棒は、ポポが風のクオリアを埋める作業をどこから再開すれば良いかの目印のために、先日のポポが深々と突き刺した物だったりする。

 

 

(さて。今日もお務め、頑張ろ――う?)

 

 ポポは月を削るための風を生み出すべく歌おうとして、気づいた。ポポの鼻が、懐かしい人のにおいを感じ取ったからだ。においの正体が気になり、ポポがにおいの発生源へと移動すると、まもなくオレンジ色の髪をした青年が、ふらふらとした足取りで砂漠を力なく歩く姿を目撃した。

 

 

(あ、ラスティ……)

 

 その青年の正体はラスティだった。調律騎士団の一員であり、飄々とした、捉えどころのない性格をした、女好きの青年だ。とても優秀な斥候で、戦場を俊敏に駆け回り、敵を撹乱してくれて。それでいて、普段はムードメーカーとして騎士団の雰囲気作りに一役買ってくれていた、ポポにとっての頼もしいお兄さん的存在だ。

 

 

「どこだ、どこだ……ルドルフ、あの野郎……!」

 

 だが、今のラスティの形相はとても恐ろしい。そういえば、ラスティはあの5日前の大乱の時にカシミスタンに滞在していて、尊敬する騎士団隊長のルドルフに裏切られたばかりだ。まさか、5日間もずっと、ルドルフへの怒りを募らせながら、砂漠をあてもなくさまよっていたのだろうか。

 

 

「クソ、ジジイ……」

 

 今のラスティは怖い、とても怖い。けれど。明らかに憔悴した様子のラスティを放っておけるわけがない。ポポがいなくても誰かがラスティを助けるのかもしれないけれど、見つけた以上は、ポポがすぐにでも助けるべきだ。

 

 

「ッ! ラスティ!」

 

 そうこうしている内に、ラスティが力尽きて砂漠にバタリと倒れてしまう。ポポはラスティを助けるべく、ラスティの元へ急行した。

 

 




ポポ:風の魔女たる15歳の金髪ツインテールな少女。困っている人は放っておけない性分であるため、カシミスタンの復興を手伝いつつ、3年後のエクリプスに対する備えについてしっかり取り組んでいる。
ニキ:この度土のクオリアを取り込んで土の魔女になった緑髪の少女。若くして領主にならざるを得なかったニキは、それゆえに領主としての相応の苦労に悩まされているようだ。
モルディモルト:ニキの妹。13歳の青髪の少女。ニキが生きているため、原作よりもある程度は活発的。ポポに懐いている。キースのことを嫌っているのは、キースが変人だからなのか、キースにニキを取られてしまうと警戒しているのかは、モルディのみぞ知ることである。
キース:カシミスタンの大乱が起こるまでは、王国騎士団弓兵隊の荷物持ちだった傭兵。18歳。ニキがサイージャから土のクオリアを託された後に、サイージャと出くわし、その際にニキとモルディモルトを守る代わりに報酬として1200万ゴールド相当の宝剣を貰い受ける契約を行った。そのため、今はニキとモルディモルトを守るべく、カシミスタンに滞在している。時折、ニキのカシミスタン運営に助言しているようだ。
ラスティ:21歳の騎士団所属の青年。この度カシミスタン前領主サイージャを殺したルドルフに、10歳の時に小間使いとして拾われ、育てられていた。それだけに、本当の父親のように思っていたルドルフの凶行に激昂し、ルドルフを見つけ出すべく砂漠をあてもなくさまよっていた。

 というわけで、4話は終了です。モルディは凄く嫌がりそうだけど、でもなんだかんだ言ってモルディとキースは相性が良いと思うのです。ニキとキースも同上。
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