どうも、ふぁもにかです。前回の投稿からもうそろそろ2年が経とうとしているとか嘘でしょ?
ここの所、すっかり執筆意欲が消え失せていた私ですが、久々に意欲を取り戻したので、こっそり投稿します。
さて、今回はポポとラスティとの交流シーンとなります。ラスティは敏捷値の高さがものを言うステラグロウの戦闘において凄まじく頼りになりますからね。ここで仲良くなっておくべきだよなぁ! ポポはその辺をよくわかっているようです。
(ここは、どこだ?)
ラスティが目覚めた時、真っ先に目に入ったのは見知らぬ天幕だった。周囲を一瞥した限り、かなり狭い空間だ。ここはテントの中といったところだろうか。ひとまずラスティは体を起こそうとして、しかし体が鉛のように重く感じ、自力で起き上がれない。
(俺は、一体……)
ラスティは現状の情報収集を行うべく、まずは額に手を当て、目を瞑る。体に痛みは感じない。大怪我を負っているわけではないようだ。だが、今の自分にはかなりの熱があるとラスティは理解した。ラスティの頭には湿ったタオルが置かれていて、しかしそのタオル越しから額を触ってなお、手のひらに異常な熱を感じたからだ。
「あ、ラス……じゃない。お兄さん、起きたんだね。よかったー」
と、ここで。いかにも快活そうな少女の声が聞こえたかと思うと、ラスティの足元にあるテントの入り口から金髪をツインテールにまとめた小柄な体格の少女が入り、ラスティの顔を覗き込んでくる。
「お前が、俺を助けてくれたのか?」
「うん。お兄さんが砂漠でふらふら歩いてると思ったらいきなり倒れるんだもん。だからひとまず近くのオアシスまでお兄さんを運んで、このテントの中に寝かせてたの」
「……そうか。そいつは悪かったな」
ラスティは眼前の少女に迷惑をかけたことを謝った。この少女の細腕で大人の男を運ぶのはさぞ大変だっただろうと容易に想像できたからだ。なお、当のポポが風魔法を用いてラスティを軽々運んだことを、今のラスティには知る由もない。
「それで? ポポはポポだよ。あなたの名前は?」
「……ラスティだ。世話になったな、ガキンチョ」
「え!? 待ってよ、ラスティ! どこに行くつもり!?」
「俺がどこに行こうと俺の勝手だろ、ほっといてくれ」
「ほっとけるわけないよ! ラスティの熱はまだ下がってないんだよ? このまま砂漠に戻ったら死んじゃうよ!」
「だから、俺がどこでくたばろうと、お前の知ったことじゃないっつってるだろ。余計なお世話なんだよ」
ラスティはどうにか気合いを入れて自力で起き上がると、ポポに己の名前を告げた後、足早にテントから出ようとする。ここでグズグズしている間にも、騎士団を裏切り福音使徒へと寝返ったルドルフは、福音使徒としてやりたい放題街を壊し、人を殺しているのだろう。早く、あのクソジジイの息の根を止めなければラスティの気が済まないのだ。しかしそんなラスティの行く手をポポが遮ってくる。ラスティの腕を掴んで、ラスティの歩みを妨害してくる。ポポを目障りに感じ始めたラスティに対し、ポポはここでマグカップに注ぎ入れた黒い液体を差し出した。
「ほら、まずはこれでも飲んで落ち着いて? たんぽぽコーヒーだよ」
(たんぽぽコーヒー? 聞いたことないな……)
「ッ!?!? まッッッッッッッッず!? テメェ、何のつもりだ!? 毒で俺を殺す気か!?」
「ええええ!? こんなにおいしいのに、ラスティは大人の味がわからないんだね」
ラスティはマグカップ内の黒い液体、もといたんぽぽコーヒーを見て、そこでのどがカラカラに渇いていることを自覚した。ポポには悪いが、一口だけ飲んだら、さっさとテントから出よう。そう思ってたんぽぽコーヒーを軽く口に含み、直後。あまりの名状しがたい味に思わずその場に膝をつき、何度も咳き込んだ。毒でも盛られたかと思い、ポポにブチ切れるラスティだったが、ラスティからマグカップを回収して平然とたんぽぽコーヒーを飲む様を見て、ポポの味覚のおかしさに絶句した。
「とにかく、お願いだからもう少しだけ休んでてよ。じゃないとラスティ、本当に死んじゃうよ? ポポ、ラスティが死んじゃったら悲しいよ……」
(ッ。なんでお前は……)
「じゃあ、ポポは今からちょっとお務めしてくるから、ラスティはここでゆっくりしててね。絶対だよ? 絶対に絶対だよ?」
ラスティとポポは所詮、初対面だ。そんな、さっきまで名前すら知らなかった相手のことをどうしてそんなに心配してくるのか。肩入れしてくるのか。ラスティが不自然に思っていると、ラスティの無言を、ラスティが己の言うことに従ってくれたものと解釈したポポは、ラスティ1人をテントの中に残して外へと出て行った。
「……」
ポポはラスティを砂漠で拾ったと言っていた。テントを用意している辺り、ポポにはこのムシャバラール砂漠自体に泊り込みを必要とするような用事があるのだろう。こんな何もない砂漠で、あのガキは一体何をやっているのか。ラスティはポポのお務めとやらに少しだけ興味が生まれたため、ポポの言いつけを破ってテントから顔を出す。
すると、ラスティの鼓膜に歌声が響いた。歌声の聞こえる方へと視線を向けると、ポポが両手を重ね、手のひらを掲げて歌っていた。その歌声は、さっきまでの会話から感じたキャピキャピとした声色とは違い、荘厳さや神聖さを纏っているように感じられた。
ポポは歌を紡ぎ続ける。そんなポポの周囲には、ポポの歌に呼応するように風が取り巻き、しばらくすると、空から何かの鉱物らしき物がポポの両手に舞い降りてくる。そこでポポが「ふぅ」と息を吐き、歌を中断したため、ここでラスティはポポに歩み寄った。
「ちょっと、ラスティ。テントでゆっくりしててって言ったのに……」
「お前、歌が歌えるってことは、魔女なのか?」
「え、うん。ポポは、風の魔女だよ?」
「そっか」
ポポが魔女であることを知ったラスティの脳裏に、5日前のカシミスタンの光景が鮮明によみがえる。『土の魔女が殺された。殺ったのは騎士団長だ』と叫ぶ女性の住民の声が幻聴と化してラスティの鼓膜を震わせる。
「……だったら、忠告だ。これからは絶対に人のいる場所で歌うな」
「ほぇ?」
「福音使徒は魔女の命を狙っている。カシミスタンでも、土の魔女があのクソジジイに、ルドルフに殺された。お前が魔女だってバレたら、どこで誰が襲ってくるかわかったもんじゃないぞ」
「……うん、わかった。気をつけるね。ありがとう、ラスティ」
「全然わかってないだろ。もしも俺が福音使徒だったら、何にも警戒してないお前なんか、その首かっ切って簡単に殺してるぞ。死にたくなかったら、もっと危機感を持てよ」
「んー? でも、ラスティはそんなことしないよね? だったらここで歌っていても問題ないよね? だってポポ、ラスティを信じてるもん」
「……はぁ、お前なぁ」
人がせっかく脅しも混ぜてかなり強めに忠告しているというのに。ポポはどこまでも能天気で。そのくせ、なぜかさっき会ったばかりのラスティに心からの信頼を寄せてきていて。ラスティは何だか真剣に考えていたのがバカらしくなってきて、深々とため息をついた。
「ん。今のラスティ、良い顔してる」
「は?」
「さっきまでは凄く怖い顔してたから。……何があったのかはわからないけど、ずっと張り詰めた心のままじゃ、いつか壊れちゃうよ。だから、今はそういういつも通りのラスティを取り戻すことが大切だって、ポポは思うよ?」
「ったく、だからお前は俺の何を知ってるってんだよ……」
ポポは紺碧の瞳でラスティの顔をジーッと覗き込み、安心したかのように朗らかな笑みを零す。この時、とても不思議なガキだとラスティはポポを評価した。馴れ馴れしいわ、わかったような口調で語りかけてくるわで、普通なら絶対ムカつく性格をしているはずなのに、なぜかポポが相手だと、それが自然体に感じられて、全く悪印象を抱かないからだ。
ゆえに、ラスティは今回は大人しくポポの方針に従うことに決めた。己の熱が下がるまで、テントから離れず、ポポの手当てを受けることとした。そうして、同じテントの下。ラスティはポポの作った夕食を堪能したり、ポポの薬湯の苦さと格闘しながら飲み干したりと、ポポと一緒に一夜を明かした。
そして翌朝。万全の体調を取り戻したラスティは、身支度を整えた後、テントから退出して砂漠の空気を胸いっぱい取り込む。砂漠のカラッとした空気は、ラスティにさらなるやる気を提供してくれた。
「昨日は世話んなったな、ポポ」
「もう大丈夫なの?」
「ま、俺も騎士の端くれだからな。あの程度の熱で何日も寝込むほど、やわな鍛え方はしてないさ」
「……うん、本当に大丈夫そうだね。ポポ、安心したよ」
「お前は、これからどうするんだ?」
「ポポはまだ、この砂漠でやることいっぱい残ってるから、しばらくは残るよ。ラスティは?」
「一旦王都に戻るさ。まずは俺が生きてるってことを騎士団連中に伝えないとな。下手したら俺ごとカシミスタンの一件の戦死者の葬式をされててもおかしくないしな。……クソジジイの後始末はその後じっくり作戦立てて取り組むさ」
ラスティはポポに手を差し出す。ポポは一瞬ラスティの意図がわからず首をコテンと傾けるのみだったが、すぐにラスティの手を両手でぎゅーっと握った。
「じゃあな、ポポ」
「またね、ラスティ」
そうして。ポポと別れを告げたラスティは、王都へ向けて着実に歩を進めるのだった。
ポポ:風の魔女たる15歳の金髪ツインテールな少女。荒れているラスティのことを内心怖いと怯えつつも、その気持ちを一切表に出さずにラスティと向き合い、ラスティを看病する名カウンセラーっぷりを発揮した。なお今回、ポポはラスティと同じテントの中で夜を明かしたが、ポポ的には親しみやすいお兄さんと同じ布団で眠っただけだからセーフ。
ラスティ:21歳の騎士団所属の青年。ルドルフの一件で中々に荒れていたが、ポポの言動の影響により、少しはいつものラスティさを取り戻した模様。ラスティは女好きだが、守備範囲はあくまで『オネーチャン』なので、ポポと一緒に寝ても何も問題なかった。
というわけで、5話は終了です。ポポ、狙ったわけではない自然体な発言の数々でラスティを調律して彼の心を浄化するの巻。ラスポポ始まったな。