風の魔女ポポ(逆行)の奮闘記   作:ふぁもにか

8 / 39

 どうも、ふぁもにかです。ステラグロウとかいう、ゲームのパッケージや宣伝文句からはギャルゲー感がヤバいのに、実際にゲームを進めていくと普通に王道ストーリーという見た目詐欺ゲーム。もっと認知度が広まってくれることを切に願いつつ、第7話始動です。



7話.ミトラ村のお祭り

 

 カシミスタンを中心とした王都西のムシャバラール砂漠全土に風のクオリアを埋め込み終え、カシミスタンを旅立ったポポは、次の目的地として北の一帯をあまねく制覇することを定めていた。

 

 東や南よりも北を優先したことに、大した理由はない。ただ、ポポは無性に会いたくなったのだ。かつて、ボナンザ町長の言いなりになっていて、サウス・ヴァレーでのお務めに熱心に取り組むばかりで、自由を知らなかったポポに、手を差し伸べてくれた、ポポの最初の人間の友達である、アルトに。

 

 そのため、ポポは王都の北に位置するアルトの故郷、ミトラ村へ向けて歩を進めていた。もちろん、その道中の北の街道の随所に、ポポが月を削って作った風のクオリアを埋め込んでいくことも忘れない。

 

 

「ほ、ほぇー」

 

 そうして、ポポがミトラ村にたどり着いた時、村は活況に包まれていた。逆行前に、水の魔女の星歌の楽譜を求めて、調律騎士団がミトラ村に赴いた時は、村はとても落ち着いた雰囲気だった。それゆえ、ポポは己の記憶の中のミトラ村と、今のミトラ村とのギャップに思わず目をパチクリとさせる。

 

 村の広場には様々な出店が立ち並び。多くの家や村の木にはカラフルな飾り付けで彩られていて。どうやらポポはミトラ村のお祭りの日に、村を訪問したようだった。さすがに王都の復活祭とは比べ物にならないほどに小規模だが、見た限り、色んなお店が揃っていて、十分に楽しめそうだ。

 

 

「ふむふむ。お肉料理のお店に、小物のお店に、あっちにはスウィーツのおみ……え?」

 

 ポポはさりげなく風を起こして、手持ちの風のクオリアをミトラ村の地面に埋めつつ、どんな出店があるかを確かめるべく、散策する。と、そこで。ポポは非常に気になる出店を見つけた。その出店は甘いお菓子を取り扱っているようだった。が、陳列されているお菓子がどれも、毒々しい紫色をしていたのだ。

 

 

(こ、これってもしかしなくても――)

「いらっしゃいませ。おひとついかがですか?」

 

 とても見覚えのある紫色をしたお菓子をポポが凝視していると、ポポという名のお客様の存在を察知した1人の少女が出店の奥からひょっこりと顔を出した。ポポはこの、少々くせっ毛のある、淡い赤髪をした少女のことをよく知っている。

 

 リゼットだ。アルトと一緒でミトラ村が故郷で。3年後に水の魔女となった彼女は、『世話好きのお姉さん』という言葉がぴったりな性格をしていて。ポポが騎士団に入ってからというもの、よくリゼットとお茶会をして親睦を深めたものだ。その際、リゼットから振舞われるお菓子や料理はどれもなぜか紫色をしていて。そのせいで一時期、ポポが『ケーキは紫色をしているのが普通』だと勘違いしていたのは記憶に新しい。どうやら今のリゼットはこの紫色オンリーなスウィーツを取り扱う出店の店員をしているようだ。

 

 

「それじゃあ、このクッキーを1袋、ください」

「はい、まいどあり」

 

 ポポはクッキーの値札を見てリゼットに10G支払う。ポポは早速クッキーを包む半透明な袋のリボンを紐解いてクッキーを取り出し、パクリといただく。クッキーは程よい甘みと、サクサクとした気持ちの良い食感が特徴的で。ポポはとても懐かしさを感じた。クッキーが紫色であることからほとんど察していたが、このクッキーは間違いなくリゼット作だ。

 

 

「んー、おいしい!」

「……本当に食べてくれた」

「へ? どういう意味?」

「あ、いや。あなたはこの辺じゃ見かけない子だったから。私の作る料理はなぜかみんな紫色になるけど味は問題ないってことを知らないあなたが、私のお菓子を何も警戒しないで食べてくれたのが意外で」

「……んとね。ポポは料理の見た目はあんまり気にしないんだ。リゼ――お姉さんのクッキーからはとてもおいしいにおいがしたから、味もおいしいんだろうなって思って。おいしいクッキーをありがとね」

「〜〜〜ッ!!」

 

 クッキーを頬張るポポの姿を意外そうに見つめるリゼットにポポが素直に問いかける。結果、リゼットからの返答を受けて、まさか未来でたくさんリゼットの料理を食べてきたから何も警戒していなかったなどと言うわけにはいかないポポは、しばしそれっぽい言い訳を思案し、リゼットに伝えた。すると、リゼットは感極まったかのような表情でポポを熱烈に見つめたかと思うと、ぐいぐいとポポへと距離を詰めてきた。

 

 

「え、え?」

(ポポ、何かマズいこと、言っちゃった!?)

「ねぇ、あなたポポって言うの?」

「う、うん」

「私はリゼット、よろしくね。それでポポ、お代はタダでいいから、私のお菓子を他にもいっぱい、ここで食べてくれない?」

「ほぇ? いきなりどうしたの、リゼット?」

「……駄目、かな?」

 

 リゼットからタダでもっと自分のお菓子を食べてほしいと頼まれたポポは、リゼットの意図が読めないことや、お金を払わずにリゼットの商品を食べてしまうことへの申し訳なさから、リゼットの頼みを素直には了承できない。が、そんなポポの態度から己の提案を拒否されると考えたリゼットがしゅんと落ち込んでしまう。

 

 

「う、ううん! ポポは大丈夫だよ!」

「本当に!? じゃあ早速お願い!」

 

 そんな、元気のないリゼットの姿をまのあたりにしたポポが、リゼットを悲しませるまいと慌ててリゼットの提案を受け入れると、リゼットは先ほどまでとは打って変わってパァァと喜色満面の笑みを浮かべた後、出店の奥から様々なお菓子を持ち出してポポに差し出してきた。

 

 

「はい、どうぞ」

「そ、それじゃあ……いただきます」

 

 ポポはリゼットから受け取ったスフレチーズケーキ(紫色)やガトーショコラ(紫色)をおずおずと口に運ぶ。その瞬間から、ポポの食事は止まらなかった。

 

 

「おいしい、おいしいよ!」

 

 リゼットのお菓子を頬張る度、懐かしさがポポの胸いっぱいに広がり、ポポの心に安寧を与えてくれる。ポポの緊張していた、張り詰めていた気持ちがほぐれていく感覚。まるでリゼットの優しさにポポの体がすっぽり包まれているかのようだ。ポポはうっかり泣き出したくなる己の感情を頑張って抑えつつ、リゼットのお菓子を堪能した。

 

 そんな、リゼットの出店の前でとてもおいしそうに様々な種類の紫色のお菓子を頬張るポポの姿を目撃した観光客たちの客足が段々とリゼットの出店に集まっていく。結果、リゼットの出店は、先ほどまでポポしかいなかったのが嘘のような盛況ぶりを見せることとなった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「今日はありがとうね、ポポ。ポポのおかげで私のお菓子を、村の外の人にもいっぱい買ってもらえたよ」

「そうなの?」

「うん。ミトラ村の人じゃない、観光客のポポが私のお菓子を凄くおいしそうに食べてくれたから、宣伝になったんだよ」

 

 夕刻。全ての客を相手し終えたリゼットがポポの元へとパタパタと歩み寄り、頭を下げてお礼を告げてくる。どうやらポポがリゼットのお菓子フルコースに熱中している間に、リゼットの出店は集客に成功していたらしい。

 

 

「ふっふっふ、これでお母さんやアルトをギャフンと言わせられる。本当にありがとう、ポポ」

(ッ! アルト! リゼットの口からアルトの名前が出て来たってことは、今、アルトはミトラ村でリゼットとリゼットのお母さんと一緒に過ごしてるんだ……!)

「もう、お母さんもアルトも酷いんだよ? せっかく私が一念発起をして、今年のお祭りに私の料理の出店を出すって宣言したら、2人して『リゼットの料理はどれも紫色になっちゃうから、そのことを知ってる村の人にしか売れないんじゃないか。だからやめた方がいいんじゃないか』なーんて言ってきて、私の料理の腕を信じてくれなかったんだよ? ……ま、まぁ、ポポが来てくれるまでは、実際その通りだったけど。でも酷いって思わない、ポポ?」

「……」

「ポポ?」

「あ、うん。えっと……アルトって?」

「アルトは私の家族だよ。私の弟……いや、お兄ちゃん? まぁとにかく、とってもかわいい私の家族なんだ」

 

 リゼットからアルトの名前を聞いた瞬間、ポポの中でアルトに会いたいという衝動が爆発的に膨れ上がる。今すぐにでもリゼットにアルトの居場所を聞き出して、アルトの顔を見たい。アルトと話したい。アルトにポポを見てもらいたい。そのような衝動が暴発しないよう細心の注意を払いながら、ポポはアルトのことを知らないフリをして、リゼットにアルトのことを質問する。

 

 

「……あれ。でもそういえばアルト、もうこんな時間なのにまだ森から帰ってこないなんて、どうしたんだろう? 狩りの途中で何かあったのかな?」

「ポポ、そのアルトって人を探しに行こうか?」

「え、でも森はウルフみたいな凶暴な動物がいるし、時々魔物も出てくるからポポ1人じゃ危険だよ。ボーゲン村長に相談した方が――」

「――大丈夫。ポポはね、動物とお話することができるんだ。だからポポにとって、ウルフは頼もしい味方なんだよ。それに森の動物に話を聞けば、アルトの居場所もすぐにわかると思うしね」

「ポポって動物と話せるの!? 凄いね!? ……じゃあ、お願いしてもいいかな? 私はボーゲン村長にアルトのことを話しておくから」

 

 ポポはアルトと会うことのできる名目をリゼットから入手すると、リゼットの心配を少しでも取り除くべくキリッとした表情で「うん。ポポにお任せ、だよ!」と言葉を残し、一目散にミトラ村北部の森へと駆け込んでいくのだった。

 




ポポ:風の魔女たる15歳の金髪ツインテールな少女。アルトのことが恋しくなってミトラ村を訪問し、リゼットと出会った。リゼットの料理は何故か総じて紫色になることは知っていたので、躊躇なくリゼットのお菓子を堪能し、懐かしさに浸っていた。
リゼット:ミトラ村出身の少女にして未来の水の魔女。14歳。この時のリゼットはアルトを家族だと称しているが、実際のところ、アルトのことを弟と見ていたのか、兄と思っていたのかは不明。

 というわけで、7話は終了です。リゼットの何が好きって、ステラグロウ海外版のリゼットがアルトから「リ→ゼッ↑ト!」って呼ばれるのが好きです。ところで結局、リゼットの料理が総じて紫色になる理由とは……? 謎は深まるばかりなのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。