「…ユナイトです」
『よぉーし、行くぞ!』
「エエエェェエーーーーッッックス!!!」
「っと…セヤッ!」
東方ウルトラマン列伝
企画 東風谷早苗
二ツ岩マミゾウ
監修 宇佐見菫子
本人役 聖白蓮
本人役 村紗水蜜
本人役 雲居一輪
雲山
本人役 寅丸星
ナズーリン
本人役 上白沢慧音
主題歌
「ウルトラマンX gensou cover」
ボイジャー feat.聖白蓮
ウルトラマンX 岩田栄慶
円盤生物ノーバ 野良妖精
鬼大将スイクイーン 伊吹萃香
ウルトラマンXの声 中村悠一
鬼大将スイクイーンの声 伊吹萃香
本人役 博麗霊夢
伊吹萃香
宴参加者 幻想郷の皆様
音楽 堀川雷鼓
プリズムリバー楽団
脚本 稗田阿求
監督 アベユーイチ
「ウルトラマンX幻想入り製作委員会」
製作・著作 円谷プロダクション
「シェヤッ!!」
掛け声とともに、ノーバへ蹴りを叩き込む。赤い雨を浴びながら、私は何度も拳を放った。慣れないユナイトに『引っ張られる』ような感じもするが、それでも押している。
「だあっ!!」
蹴りを叩き込み、ノーバは大きく怯んだ。そこへ光弾を数発食らわせる。さらにラリアット。転んだノーバを前に、私は空へと跳び上がった。
「『Xクロスキック!』」
その勢いままに飛び蹴りを放つ。吹っ飛ばされたノーバが草原の土へ叩きつけられ、さらに身を怯ませる。続けて殴りかかろうとするが、ノーバレーザーがそれを阻む。とっさにシールドを張るが、防ぎきれず少し食らってしまう。
『すまない、対応が間に合わなかった』
「いえ…私の動きの問題でもあります」
インナースペースでエックスへと語りかけたのち、私は立ち上がった。ノーバが振り下ろした鎌を受け止め、思いっきりぶん投げる。しかし今度は円盤形態になって空中で受け身を取り、レーザーでの反撃を行った。
「はぁっ!」
二度も食らうウルトラマンではない。側転で素早く回避し、懐へ飛びかかる。スライディングの勢いままに飛び膝蹴りをぶつけ、空中からはたき落した。
「イィーーッ、サァっ!!」
私のパンチをくらい、ノーバは最後のあがきとばかりにレッドクレイジーガスをまき散らした。しかしこの一帯には人妖誰もおらず、私もバリアを張れる。虚しく立つノーバを前に、私はザっと身を引いた。
揺れる草たちの上に、閃光が伝う。溢れ出たエネルギーの中、私は構えた。
「『ザナディウム光線!!』」
Xに組んだ腕から放たれた光線がノーバへと直撃する。閃光ののち、爆散。一つに収束し、スパークドールズとなって草の上に落ちた。ユナイトを解き、私はそれを拾い上げる。
「…ありがとうございます」
『それは私の言葉さ、ありがとう白蓮』
『いい朝だな、白蓮』
「ですねぇー。ここのところ怪獣も現れてないですし」
朝日に向かって背伸びをし、私は日めくりのカレンダーをちぎった。今日は4/12。舞い散る桜の中、紙がぺらりと私の元に舞った。そこに書かれたのは宴会のお誘いである。
「今日もなんですね」
『そうだな。あれ、いつだったか……とにかく最近有った気はするんだが』
エックスもうろ覚えで、特に書き記したりもしていない模様。お酒を飲んでいない私でさえ記憶が曖昧なのは変だが、かといって知る術があるわけでもない。正直言えばどうだっていい。ひとまず今夜博麗神社に行くという予定だけは確かだ
「ウルトラマンエックスは何者なのか…ですか」
「なんなんでしょうねーアイツ」
新聞の記事を見てみる。そこには、戦うウルトラマンエックスの姿と、宴会の席で私が『ウルトラマンエックス』と名付けたくだりが書かれていた。同じ記事を見たようで、一輪もその話に乗る。
「なぞの妖怪…もしかして神霊?ま、暴れる怪獣を倒したり村紗を元に戻してくれたって事ですごく感謝はしてますけどねー」
「そうですね、私もエックスには感謝しています」
一輪に言うが、私はそれに今巻物の中で話を聞く彼にも向けて言った。どんな顔をしているかはわからない。実際彼のおかげで多くのものが救えたので、純粋にありがとうを述べたいのだ。
『いやぁー照れるなあ』
「ん?」
「あ」
『喋ったら…まずかったか?』
どうやら声が聞こえていたようである。詰め寄る一輪へ、私は『巻物の妖精エックス』と適当にごまかした。流石に偽名を使えばよかったかとも思ったが、エックスという単語が好きなんですねと彼女は勝手に納得した。
『ウルトラマンと同じ名前でね!ハハハハハ!!』
「ふふ、よろしくね。そういえば姐さんはなんだってあの巨人にウルトラマンエックスと?」
「えっと、未知の超人だからです。だから、ウルトラマンX、エックスなんです」
「ほへー。かっこいいですね!」
そんな風に話を繰り広げながら、私達はは朝食を食べ終えた。いつも通りに平和に、1日が始まる。体を伸ばしながら、私は外へと出て行った。
「……」
「水蜜…。えっと」
「へ!?あ…すみません寝てました」
「まあこんな風なら寝たくもなりますけど」
心配する必要はなかったようだ。いつもの水蜜、ただそれだけ。だがそれがまた壊れてしまえば…。私は怖かった。本当にあの子達の救いになれているのか、私は分からなかった。
「あら、慧音さん」
いつも通りの日が通り過ぎた午後。仕事を終えて休憩中の彼女が目に止まった。その表情はどこか物憂げである。
「聖さん、最近調子は?」
「すこぶる快調です」
そう言ってみるが、そんなことより慧音の様子が心配である。遠く山を見届ける彼女の目に、より深く影がかかる。力不足を感じてだろうか。その悔しげな様子は一層増していく。
「…私にできることがあればいいんだがな。聖さんはいろいろ対策を立派にやってるよ。私にも…護らねばならない子たちがいるのに」
そう告げた慧音が見届けたのは寺子屋から帰っていく子供達である。元気で、そして無邪気。慧音は悔しげなまま唇を噛んだ。
「…平和な世を作っていくのは次の子達です。たとえ幻想郷が妖怪の為にある物でも、この場所で生きていくという想いを繋いでいくのは貴女の役割ですよ」
「そうかもしれないがな、私は本当にこの世界で何かを教えられるような立場なのだろうかと思うと…」
そうして、慧音は口をつぐんでしまった。何を言い出そうか迷う、その時。
『いいのか白蓮。宴会の準備を手伝うとか言ってたろう?飲まないのに律儀なことだ』
エックスからの言葉が。空気を変える意図もあったのだろう。私は軽く感謝を述べ、博麗神社へと向かった。ちょうど慧音もそのつもりらしく、気を入れ替えるべく頬を叩いて彼女は立ち上がる。
『いやぁー楽しみだ。人妖入り乱れる空間というのはとても賑やかでいい。あ、ここを直進の後5m地点で右折です』
「わざわざ通路案内…ナビって言うんでしたっけ?それしなくても大丈夫ですよ。博麗神社までの道ぐらいは覚えてますし」
「気持ちは助かるぞ巻物の精」
『ハハハ、それはよかった!』
そうして到着したのは夕方ごろ。軽いセッティングを終え、萃香が宴の始まりだと叫んだのに合わせて呑み会が始まる。もっとも、私はお茶を片手に話してるだけなのだが。
「ほう?月光を活かした術か。私に応用するのも面白いな」
「今度機会があれば教えますよ!」
『面白いな白蓮!もう一度披露してくれないか?』
慧音とここまで気が合うと言うのは予想していなかった。いい人だと言うのは知っていたが、こんな気軽に話せる雰囲気とは。酒はない空間だが、エックス含めてその会話は大盛り上がりである。
『私の友人にマモルというちきゅっ、人間が居るんだがな。彼は酒が入るとすぐ泣くんだ。泣き上戸というんだったか?慧音はどうなんだ?」
「私は酒には弱くてね。しかも少し入るとすぐ説教を始めるらしい。だからお茶で結構だ」
「私出家前に飲んだことがあるんですけどね、すぐ吐いちゃって」
そんな他愛のない話の中、ふと話題が切り替わる。
「そういえば…今日で今月何回目の宴会だ?やけに多い気がするんだが」
同じ疑問を抱いていたのは慧音もそうらしい。私が首を傾げて見せると、不自然だなと語る。
「私も結構違和感は覚えてて…」
『最近なんだがいつやったんだか…分からなくてね』
そうして怪しんだ様子の私達へ、霊夢は近づいた。そして裏の方へ来るよう言うと、ぽつりぽつりと語り始める。
「違和感はあんたらもなのね。…本来ね、予定していたのは今日の4/12だけなの。宴の話」
「でも…最近やったような……」
「本来はあり得ないはずなの。数日の間を振り返ってるんだけど、どうも宴会と紐付けられない。でも最近。謎なの、とてもね」
霊夢の語る話を聞き、私は困惑した。確かに檀家を回った記憶や、神子と戦ったのは日付まで思い出せるにもかかわらず、前回がいつだったのかはわからないのだ。ここまでくると流石の私も疑わしく思ってしまう。
「…もしかして」
私の中で、ぼんやりと思考が始まる。決定的な事は何も分からないが、なんとなく予想が立ってくる。私は向き直り、駆け出した。だがすぐ曲がった先の縁側で、目的の人はポツンと座っていた。
「…なんか、いつかはバレる気がしてたんだよね」
「やはりあなたですか」
伊吹萃香である。鋭い視線を向けてくる彼女に対し、私は警戒の体制をとった。彼女は立ち上がったかと思うと、左腕のリストバンドを外した。隠されていた不思議な腕輪を見せつけながら彼女は歩み寄る。
「この腕輪っていうか……腕輪に封印された鬼の鎧はね、私の想いに共鳴して力を高めてくれるんだ」
『それを使って…今日という日を繰り返していた…』
「あっはっはっは!巻物の妖精さんも勘がいいこった!ああそうさ。完全に記憶は消えないからぼんやりと残るが…脳ってのはそれに勝手に説明をつけちゃうんだよね」
ペラペラと語りながら、萃香は私へと歩み寄った。何をしてくるのかと身構えてみるが、敵意自体はなさそうだ。しかし警戒を解くわけにはいかない。
「…なぜそんなことを教えるのですか」
「そりゃ今日の12時にリセットされるからさ。あんたと霊夢は術を強めてしっかり記憶消去しなきゃだねえ」
「させません」
「なんでさ?毎日宴ができるんだよ?それに怪獣に怯える必要もない!こんなにいいことってある?」
萃香は少しうつむきながら語った。
「…それは違います。このままだとあなたは前に進めなくなる。あなたは立ち直れなくなる。この術を解くのです」
「やだね」
「そうですか…お節介は承知の上ですが……!」
私はつくづく身勝手だと思う。彼女を救いたいのは本心だが、この行いは彼女の意思は全く無視している。それでもやらねばならないと、明日を取り戻さなければと思った。
「だぁっ!!」
「なんのつもりだ!」
「…その腕輪を破壊させていただきます」
「させるもんか!」
私の掴みかかりを避け、萃香は飛び上がった。エックスの上だという声に合わせ、蹴り上げを放つ。それを食らって吹っ飛ばされ、萃香は地面を転がった。
「くそっ……やめてたまるか…私は……宴会を続けるんだあああああああぁぁーーー!!!」
そんな彼女の叫びに応えるように、腕輪が光る。そこから飛び出した金の鎧が彼女を包み込んだ。自分の腕を見つめながら、彼女は構え直す。きっと、仮面の中で彼女は笑っているのだろう。
「せあああああ!」
「っと…危ないですね」
「まだ逆らうってのか…なら……捻り潰すだけだあああああ!」
さらに、巨大化を果たす、金色の鎧の鬼『スイクイーン』が暴れる。流石に異常事態なのか、宴会の参加者たちは散り散りに逃げていった。立ち向かう少女達もいるが、叩き落とされ撤退を余儀なくされる。
「ったく…」
「向かわないでください霊夢さん!」
「でも…」
「でももだってもないですよ!巨大化な敵と戦うなら我々命蓮寺の呪術があります!」
「…任せていいのね!?」
霊夢はそれだけいうと、ほかの少女を避難させていく。それを見届けた私は物陰へと隠れ、巻物を取り出した。
『ユナイトだな?』
「ええ!」
交差経典をその手に、私は構える。広げた巻物から現れたスパークドールズを術式的に読み取り、発動。一度閉じ、X字にした巻物の軸を構え、私は空に掲げた。
「エエエェェエーーーーッッックス!!!」
広がったXの光の中から、一度腕をクロスさせ、そして右手を突き出しながらウルトラマンエックスは巨大化した。
『イィー…サァーーッッ!!』
萃香は私の方と足元を見たかと思えば、うなずく動作を見せ、改めて戦闘態勢をとった。
「あんただったのか」
「他言無用ですよ」
「なあに、そんな無粋はしない」
魔力と妖力に乗せたテレパシーで会話が繋がる。きっとにやっと笑っているのだろう。私の方へと駆け出し、その拳を放った。
「シュワっ!」
「ぜえぇぇええええい!!!」
私が手で押さえ、そこへ萃香がキックを叩き込む。私は吹き飛ばされ、神社の横の木々へ身を乗せる。メキメキと音を立てたそいつらから立ち上がり、私は、いやエックスは地面を叩いて駆け出した。
「たっ!!」
「おらぁっ!!」
だが萃香は強い。ぶつかった体が大きく私を投げ出す。鳥居を壊してはいけないと踏み止まり、鳥居を越えさせる形で私は彼女を投げ飛ばした。
「うおりゃあああああ!」
「シュウウウウゥゥアッ!!」
お互いがタックルの形でぶつかり、石段を滑り落ちた。幸運にも私が上の体勢。思いっきり飛び上がり、私は体を大きく広げた。
「『アタッカーX!!』」
「うぅお!」
放った爆熱を受け、立ち上がりかけていた彼女は今一度地面へ叩きつけられる。苛立ちを見せながら、彼女は駆け出した。拳がぶつかり合い、力がせめぎ合う。
「邪魔をするな…!」
「…なぜ、こんな今日に固執するんですか?あなたなら死ぬ心配なんてないでしょう?」
「私はね。…でも!」
「大事な人がいるならこんなことに巻き込むより守るべきです!同じことの繰り返しはいつか狂気を持つ。妖怪にとって…精神の揺らぎは致命的なんです!」
何かを考え込むが、黙れと叫んでまた駆け寄ってくる。そうして拳を叩きつけるが、私はとっさに避けて背中を蹴り込んだ。しかし大きくは怯まず、また私と組み合う。
「綺麗事ばかり…言ってんな!」
「理想を綺麗事と吐き捨てるだけでは何も見えませんよ…!」
「人間に生まれたくせに生意気をッ!お前は知らない!愛したものが朽ちゆく瞬間の苦しみ!」
「知らないものですかッ!いくらでも見届けましたよそんなもの!でも…私は何度でも愛を護り続ける意志を持った!」
「護り方までお前に指図されてたまるかァーー!」
そう叫ぶと、彼女は強烈な波動を放って私へと蹴りを叩きつけた。どうすればいいのかわからない。私は拳を握り、立ち上がってみる。これ以上説得できないのだろうか。それでも戦いの手は止めるわけにはいかない。
「……どうすればいいんだろうな」
だが、意外にも彼女の手は緩んだ。後ろの博麗神社を振り返り、悔しげに手を握る。
「あんたは忘れてる…っていうか曖昧になってるかも知れないけどさ。一回現れたんだ。巨大な怪物がさ。エックスが負けて、みんな死ぬかもしれない。そんな時に12時が来た」
「……」
「信用できないとは言わないけど。またあんなことがあれば…」
「だったらあなたの力を貸してください。それだけじゃなく、みんなの力を。次は負けないと無責任には言えませんが……。それを知るあなたを信じることにします。あなたがいれば、負けない」
「…本来二度も三度もあるものじゃないんだぞ、チャンスって」
「なら今ここにある二度目を掴むだけです」
「呆れた奴だ。ま、慕われてる理由はわかったかも」
それだけ言うと、霧になった彼女は鎧から抜け出し、先程の少女サイズへと戻った。中身を失った鎧が、ただ萃香の先程のまでの願いのために殴りかかる。
『…いくぞ白蓮』
私達を見届けていたエックスが、静かに語る。大きく身を引き、サイバー的な光が石段を、木々を、床を伝って駆け抜けていく。
「『ザナディウム…光線!』」
クロスされた腕から放たれたエネルギーの波が鎧を襲い、弾け飛ぶ。そしてスパークドールズへと姿を変え、その手の上に収まった。
「…朝日だな」
人がいない、がらんとした神社の屋根の上で萃香が告げる。戦いすんで朝が来る。その瞬間を彼女はどこか複雑そうに眺めていた。
突如妖怪の山に現れた謎のロボット
動かない絶対秘封神話レンメリアは何者なのか?
そして現れる機械龍!
その目的とは?幻想郷に何が!?
次回、東方聖交差
「あばかれし物」