闇夜も異世界から来るそうですよ?   作:R0

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すみません。思ったより長くなったので、注文数の理由は書けませんでした。次回こそは書きます。


ノーネーム

飛鳥たちが話している中、ピチピチのタキシードを着た男が割り込んできた。

 

「僕らのコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」 

 

ジンは男、ガルドにそう言った。

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ―――そう思わないかい、紳士方にお嬢様方」

 

そう言って、輝夜たちに愛想笑いを向けるガルドだったが、飛鳥と耀は冷ややかな態度で返した。(輝夜は興味なさそうな態度だった)

 

 

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないかしら?」 

 

「ついでに俺たちが喫茶店に入ってから遠くからじろじろと視ていたのも不愉快だな」

 

輝夜の何でもなさそうに言った言葉にその場にいた全員が驚いていた。特に、ガルドは驚愕の表情をしていた。輝夜からすれば、あの程度でわからないのはおかしかった。黒ウサギはあれでも隠れようとしていた。しかし、ガルドは人混みにいれば問題ないだろうという考えから隠れようともしていなかったのだ。輝夜にとってはそんな状況でじろじろと見られたら、黒ウサギよりもわかりやすかったのだ。

 

「っ!?それは大変失礼しました。この名無しが連れてきた御方達がどのような人物なのか気になって遠目から伺わせてもらいました。不快と思われていたなら謝罪させてもらいます。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の傘下であるーーー「烏合の衆の」ーーーコミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!」

 

ジンの横槍を入れた挑発にガルドは怒鳴り声を上げながら激変していった。口が耳元まで大きく裂け、肉食獣のような牙とギョロリと剥かれた瞳が激しい怒りとともにジンに向けられた。

 

「口慎めや小僧ォ………紳士で通っている俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ………?」 

 

「森の守護者だったころの貴方なら相応に礼儀で返していたでしょうが、今の貴女はこの二一〇五三八〇外門付近を荒らす獣にしか見えません」

 

「ハッ、そういう貴様は過去の栄華に縋る亡霊と変わらんだろうがッ。自分のコミュニティがどういう状況に置かれてんのか理解できてんのかい?」

 

「ハイ、ちょっとストップ」

 

険悪な雰囲気で言い争っていた2人に飛鳥が待ったをかけた。

 

「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど―――」

 

そう言って飛鳥は()()を鋭く睨んだ。

 

「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘している、私達のコミュニティが置かれている状況………というものを説明していただける?」

 

「そ、それは……!」

 

飛鳥の言葉にジンが動揺した。それを見て、飛鳥が一気に畳み掛けた。

 

「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼びだした私達にコミュニティとはどういうものなのかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

 

「……」

 

飛鳥に責め立てられたジンだが、それでもジンは答えようとしなかった。それを見て、ガルドは獣の顔から先程の顔に戻して、含みのある笑顔と上品ぶった声音で言った。

 

「レディ、貴女の言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし彼をそれをしたがらないでしょう。よろしければ、“フォレス・ガロ”のリーダーである私が、コミュニティの重要性と小僧―――ではなく、ジン=ラッセル率いる“ノーネーム”のコミュニティを客観的に説明させていただきますが……?」

 

「………そうね。お願いするわ」

 

ガルドの提案に飛鳥が了承した。

 

「承りました。まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によって違うでしょう。人間はその大小で家族とも組織とも国ともコミュニティを言い換えますし、幻獣は“群れ”とも言い換えられる」

 

「それぐらいわかるわ」

 

「はい、確認までに。そしてコミュニティは活動する上で箱庭に“名”と“旗印”を申告しなければなりません。特に旗印はコミュニティの縄張りを主張する大事な物。この店にも大きな旗印が掲げられているでしょう?あれがそうです」 

 

ガルドはそう言いながら、カフェテラスの店頭に掲げられている“六本傷”が描かれた旗を指さす。 

 

「六本の傷が入ったあの旗印は、この店を経営するコミュニティの縄張りであることを示しています。もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、あの旗印のコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうやって大きくしましたから」

 

そう言って、ガルドは自慢げに胸に刻まれた虎の紋様をモチーフにした刺繍を指さした。輝夜たちがこの店に来るまでそのマークがいろんなところに飾られていた。飛鳥もそれに気がついたのか、ガルドに尋ねた。

 

「その紋様が縄張りを示すというのなら………この近辺はほぼ貴方達のコミュニティが支配していると考えていいかしら?」 

 

「ええ。残念なことにこの店のコミュニティは南区画に本拠があるため手出しできませんが。この二一〇五三八〇外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て私の支配下です。残すは本拠が他区か上層にあるコミュニティと―――奪うに値しない名も無きコミュニティぐらいです」

 

嫌味を込めてガルドはそう言った。それを聞いて、ジンは悔しそうに顔を俯かせた。

 

「さて、ここからがレディ達のコミュニティの問題。実は貴女達の所属するコミュニティはーーー」

 

「大方、何かしらの理由で衰退した弱小コミュニティだろ」

 

そこで、ガルドが店に入ったときからずっと黙っていた輝夜が何でもなさそうに口を挟んだ。

 

そして、輝夜の言葉にまた一同、驚いていた。だが、先程とは違い、ガルドは感心した顔をして、ジンは顔面蒼白していた。

 

「先程の私の観察を見破ったことといい、あなたは優れた観察眼を持っていますね。あなたはきっと、ギフトゲームで優れたプレイヤーになるでしょうね」

 

「世辞はいらない。それよりも話を続けてくれないか」

 

「ちょ、ちょっと、待ちなさい!」

 

輝夜はガルドに話を即したが、飛鳥が割り込んできた。

 

「あなた!いつ、ジン君のコミュニティの状況に気付いていたの!?」

 

「……」コクコク

 

飛鳥の言葉に耀も頷いていた。

 

「私も少々気になります。良ければ御説明をお願いしたいのですが?」

 

「……ハァ」

 

輝夜はめんどくさそうにため息をつきながら、説明した。

 

「気づいていた理由はいろいろありすぎるんだが、まず、黒ウサギと初めて会ったときとギフトゲームのとき、あいつはおどけた態度を取りながらも、俺たちを値踏みするような視線を送っていたこと。それと、俺と逆廻、この場にいないもう1人がコミュニティに入ることを拒否したときにあいつが憤慨したこと。このことから戦力補充のために呼び出されたのがわかる」

 

「……でも、それだけじゃ、黒ウサギのコミュニティが弱体化していることわからない」

 

そこで、耀が疑問を浮かべて、そう言った。

 

「まぁ、確かにあの時点では、俺も予想でしかなかったな。だが、黒ウサギもジンも今の今まで説明すべき、自分たちのコミュニティの状況を説明していない。これだけでも、十分に後ろめたいことを隠していることがわかる」

 

「ッ!」

 

「確かにそうね。ガルドさんが来てやっと、説明し始めたわね」

 

「その説明も余所者のガルドがやっているがな。それとそのガルドがこの店に入ったときに言っていた『過去の栄華に縋る亡霊』や『名無し』、ジンの言っていた『ノーネーム』。これから、昔は立派なコミュニティだったみたいだが、何かしらの理由で今では“名”を失って弱体化したって、考えられる」

 

「……うん。それだと、辻褄が合う」

 

「あと、大きな理由としては、ジンがリーダーをしているってことだな」

 

「っ!!僕ですか!?」

 

いきなり、輝夜に自分がばれた一因だと言われて、ジンは驚いた。しかも、自分がリーダーをしていることがおかしいみたいな言い方をされて、ジンは思わず立ち上がって、叫んだ。しかし、それに対して、輝夜はどこまでも冷静な態度で返した。

 

「客観的に見て、10歳位のガキが一組織のリーダーをしているのはおかしいだろ。普通はその年のガキをリーダーにしない。そんなことしたら、周りから嘗められるのがオチだからな。まぁ、(ベルゼブブのような)リーダーになって当然な大きな力を持っていたり、(沢田綱吉のボンゴレのような)そのコミュニティのリーダーは血縁関係でしかなれないとかなら、話は別だがお前にはそう言った理由は無さそうだ。はっきり言って、黒ウサギがリーダーしたほうが、まだ、見栄えがあった。仮に黒ウサギが何かしらの理由でリーダーになれないからジンに白羽の矢が立ったなら、さっき、言った理由も踏まえて、相当切羽詰まっているって、考えるべきだろうな」

 

そう言って、輝夜はもう話し終えたと言わんばかりにお冷やを口につけて、黙ってしまった。そして、周りは静寂に包まれたが、ガルドの拍手によりそれはすぐに破られた。

 

「いやはや、これだけの情報でここまで当てられるとは私、感服しました。貴方の推測は全て事実であります。“ノーネーム”とは“名”が無いその他大勢のことを指します。ギフトゲームに敗れたジンのコミュニティは“名”と“旗印”に続いて、中核を成す仲間達は一人も残っていないんですよ。今、残っているメンバーはジンと黒ウサギ以外は10歳以下の子供達ばかりで、もう崩壊寸前のコミュニティなんです。………しかし、貴方達の所属するコミュニティは―――数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

 

「へぇ、それは意外ね」

 

「勿論当時のリーダーはジン君ではありませんでしたけどね。比べ物にもならい優秀な男だったそうな」

 

つまらなさそうにガルドはそう言った。余所のコミュニティの栄光に興味ないのだろう。しかし、次の瞬間、彼の顔は愉悦なものへと変わった。

 

「しかし!………彼らは敵に回してはいけないモノに目を付けられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

 

「「天災?」」

 

「……」

 

ガルドの言葉に飛鳥と耀が聞き返した。そして、輝夜は黙って聞いていた。

 

「此れは比喩にあらず、ですよレディ達。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災―――俗に

“魔王”と呼ばれる者達です」

 

「魔王………ね。それはまた大層な名だこと」

 

「魔王は“主催者権限(ホストマスター)”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたら最後、誰も断ることができない。ジンのコミュニティは“主催者権限”を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまったのですよ」

 

「なるほどね。大体理解したわ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神様のことを指して、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうことね?」

 

「そうです、レディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」

 

(………確かに、ロヴィーノはそう言う奴だったな)

 

輝夜は元の世界の邪神のことを思い出して、内心うんざりしていた。そして、そんな輝夜の心情とは余所でガルドはカフェテラスの椅子の上で大きく手を広げて皮肉そうに笑いながら言った。

 

「名も、旗も、主力陣の全てを失った時、もしも新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名もなきコミュニティの一つでしかありません」

 

「……………」

 

「名もなき組織など信用されませんし、優秀な人材が、名誉も誇りも失墜させたコミュニティに集まるでしょうか?」

 

「そうね。誰も加入したいとは思わないでしょうね」

 

「その通り。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 

品のない、豪快な笑顔でジンとコミュニティを笑うガルド。それに対して、ジンは顔を真っ赤にして両手を膝の上で握りしめていた。

 

「もっと、言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりで殆どリーダーとして活動はしていません。コミュニティの再建を掲げていますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫」

 

「……………っ」

 

「私は黒ウサギが不憫でなりません。ウサギと言えば“箱庭の貴族”と呼ばれるほど強力なギフトの数々を持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられるはず。コミュニティにとってウサギを所有しているのはそれだけで大きな“箔”が付く」

 

「………そう。事情はわかったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」

 

飛鳥は含みのある声でガルドに尋ねた。その含みを察してガルドは笑いを浮かべていった。

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ、黒ウサギ共々、私のコミュニティに入りませんか?」

 

「な、なにを言い出すんですガルド=ガスパー!?」

 

「黙れや、ジン=ラッセル」

 

怒りのあまりテーブルを叩いたジンを、ガルドは獰猛な瞳で睨み返す。

 

「そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材は残っていたはずだろうが。それを貴様の我が儘で追い込んでおきながら、どの顔で異世界から人材を呼び出した」

 

「そ、それは……」

 

「何も知らない相手なら騙しとおせるとでも思ったのか?その結果黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら・……こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」

 

ガルドの言葉にジンが僅かに怯んだ。その様子を見てガルドは鼻を鳴らすと、愛想笑いを浮かべて、輝夜たちに向いた。

 

「……で、どうですか?返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴方達には箱庭で三十日の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達“フォレス・ガロ”のコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」

 

「「は?」」

 

ガルドの言葉を飛鳥が遮った。それに対して、断られたガルド、俯いていたジンは思わず声を上げてしまった。

誘いをばっさりと切り捨てられ、ガルドもジンも飛鳥の顔を伺ったが飛鳥は何事もなかったように紅茶を飲み干すと、耀に笑顔で話しかける。

 

「春日部さんは今の話をどう思う?」

 

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りにきただけだもの」

 

「あら意外。じゃあ私が友達1号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの」

 

飛鳥は自分の髪を触りながら耀に尋ねた。口にしておきながら恥ずかしかったのだろう。

 

「うん。飛鳥は今までの人たちと違う気がする」

 

それに対して、耀はクスッと笑いながら、小さく頷いた。そんな耀の態度に恥ずかしく感じたのか、輝夜に話を振った。

 

「それで光城さんは?」

 

「俺か?俺は……」

 

輝夜はそこで1度、区切って静かにだけどはっきりと言った。

 

 

 

 

「黒ウサギとジン=ラッセルのコミュニティに()()()()()()な」

 

明確な拒絶の言葉を。




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