自己解釈。妄想。口調バラバラがついて驚きのお値段!!!

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自己解釈。妄想。口調バラバラがついて驚きのお値段!!!!


ペルソナ3の天田くんが少々呆れながらも主人公が通う月光館学園まで弁当を届けに行くお話

 これは、S.E.E.Dの一員として僕たちが激闘を繰り広げている、その合間に起きた、日常的な出来事。

 

 平均的に考えて、僕こと"天田乾"の起床時間は、この『月光館学園寮』に住んでいる先輩たち早いと思う。皆は小学生だからといって僕を下に見るが、まともに朝早く起きれない人達には言われたくないと考えてる。

 早起きは三文の徳。大好きな母さんがよく言っていた言葉だった。今はもうこの世にはいないが、僕は僕自身の考えで、それを続けている。実際、大人というのは早起きをするものだと思っている。

 そう考えれば、この寮に住む、特にあの先輩は大人とはかけはなれた存在なのだろうと。朝の修練を終えて思い出す。僕たちS.E.E.Dのリーダーであり、僕の――

「やっ。天田君。おはよう!」

「……」

「えっ。なにそのありえない世界が終わるなんてみたいな顔」

「いえ……。先輩って、そもそも早く起きれるものなのかと、認識を改めただけです」

 その言葉に、酷いだの鬼畜だのなんだのとふてくされながら返してくる先輩は、僕より年上とはとても思えなかった。

 例をあげるとすれば、知らない人からお菓子を貰えばついていく。予定がない日であれば、夜は九時に寝て朝は8時に起きる。

 精神年齢が異常に低い。それが先輩に対する僕の第一印象だった。

 それから続々と、他の先輩達が起きてくる。箸と茶碗を持って、既に机に待機している先輩を見て、他の先輩達は皆目を丸くした。ある先輩は槍が降ると笑い、ある先輩は床に手をつき真面目に落ち込み、ある先輩は笑顔で誉める。それぞれがそれぞれの反応を取ったが、先輩を感心したのはコロマルを含めた二人と一匹だけだった。僕は勿論、呆れた側だ。

 

 月光館学園高等部に所属する皆さんは、基本出ていく時間が早い。早朝テストの勉強だったりとか、モノレールが混むからだとか、理由は様々だ。

 僕は月光館学園初等部、つまり小学生だ。初等部は高等部よりやや遅めに登校時間が定められている。理由は健康面だとか、寝坊をする子が多いからだとか、色々と言われているが、本当の所はわかっていない。今日の僕はというと、登校時間が過ぎても、寮の自室で小説を読んでいた。

 ――やっぱりいいなぁ。と染々と一人で頷く。初等部が休みになった理由、それは『インフルエンザによる学年封鎖』による物だった。

 自分一人だけの時間と言うのは、この上なく素晴らしいものだった。色々と理由はあるが、やはり人に合わせなくていいと言うのが一番大きいのかもしれない。

 学校に行けば、朝から夕方まで子供な同級生に振り回され、夜になれば大人としてS.E.E.Dとして戦う。まぁ僕は大人なのだから、振る舞うのは当たり前なのだけれど。とにかく、そんな毎日を送っていたからこそ、こう思えるんだろう。

 ふと、一階にいる白い犬。"コロマル"の様子が気になった。そういえば、今日のお昼ご飯をまだあげていない。吠えられても面倒だ。僕は早々に一階へ降りた

 

 コロマル。と名前を呼んだ。返事はないが、こちらへ近づいてくる足音は聞こえた。毛色は白の犬が真っ赤な瞳でこちらをみながら、尻尾を振っている。なつかれているのだろうか。ここまで一緒に戦ってきた仲間であり、家族なのだから、そうであってほしい。

 ドッグフードを皿にコロマルの前に「ほら、ご飯だよ」と差し出すと、彼は目を輝かせ(たように見えた)、一心不乱にかぶりつく。

 中々の食いっぷりで、このドッグフードを作ったのは僕ではないが、こちらまでスッキリしてくる。そんなにお腹が減っていたのかなぁ。

「さて……。僕もなにか食べないと」

 椅子に座ってメニューでも考えようと、椅子を引いた時だった。可愛らしいピンクの水玉模様のナフキンで包まれた弁当箱が、椅子の上に置かれていたのだ。

 手に触れずとも、そのナフキンの模様でわかる。これは間違いなく、あの先輩のだ。高校生になってもこんなもので弁当箱を包んでいるのはあの人ぐらいしか居ないだろう。

「……いつかはするだろうな、とは思ってたけど。本当にするんだあの先輩……」

 弁当箱を忘れるという、初歩的なミス。やはりあの人は僕よりも子供っぽい。

 壁にかかった時計を見ると、時刻は12時になろうとしていた所だった。今から行けば、お昼時間までには間に合うはずだ。

「しょうがないなぁ」

 子供らしいナフキンを袋に入れて、僕は服装を整える。幸い今日は少し出掛けようと思っていたし。着替えていて正解だった。

「じゃあ、コロマル。行ってくるよ」

 「俺に任せておけ」と言わんばかりに、コロマルは誇らしく一声上げた。それを見届け、僕は玄関の扉を開けた。

 

 寮から駅に行き、そこからモノレールで学校に向かい、徒歩で学校まで行く。文字で記せばそこまでの距離は感じないだろうけど、実際はこれが中々遠い。

 まず寮から駅に向かうのだけれど、ここは五分ほどで着く。問題はモノレールだった。このモノレール、それほど速度が出るというわけではなく、乗っている時間が長い。ここで15分ほどかかる。

 満員なら、立ちっぱなしになってしまうし、つり革の位置は高すぎて僕の身長では届かない。まさに、モノレールの時間は苦行の時間なのだ。隣に女性がいれば尚更だった。

 30分ほどかけて、漸く月光館学園に着く。流石は桐条グループが管理する学園と行ったところだろうか、そのスケールは小学生の僕では想像できないほどの大きさだ。ここから先輩の教室を探し当て、弁当箱を渡して、また同じ道を帰る。なんていう手間暇だろう。

 月光館学園の授業時間は、初等部から高等部で一貫して一授業50分となっている。時間管理が簡単なのだろうか。今の僕にそれはまだわからない。今現在の時刻は12時半。まだ20分ほど余裕がある。探す時間はあるということだ。

 まずはグラウンドへ行ってみた。もし先輩が体育であれば、探す手間が省け、あとは手渡しするだけでいいからだ。しかし、どうもそう上手くは行かないらしい。グラウンドで授業を受けていたのは、先輩のクラスではなかった。高幅跳びだろうか、女性の先輩達が必死に飛んで距離を1センチでも伸ばそうと頑張っていた。

 中々どうして、初等部の僕には刺激の強い光景だった。舞い上がる汗、上気する頬、そして飛ぶ度に揺れる女性特有の胸。顔が赤くなっていくのを感じ、思わず顔を俯かせる。

 ――もしこれが、先輩であれば。と考えてしまう。別にどうもしないが、もしそうであれば……。いいかもしれない。

「あれ、君は……。公子の所の子だよね?」

「はいっ!? ぼ、僕なにも考えてませんし、いいなとも思ってません!」

「いや、何の話をしてるの……」

 ハッと正気を取り戻す。考えていたことが考えていたことだったからか、かなり戸惑ってしまったようだ。平常心平常心。

「すぅ……はぁ……。えぇっと、貴女は確か……"岩崎先輩"ですよね?」

「あれ、覚えててくれたんだ。君、公子よりも記憶力いいかもね」

 人当たりのいい笑顔を浮かべてそういう岩崎先輩は、やはり大人らしいという感じがした。少しは先輩にも見習ってほしいものだ。

「と、そうそう。こんな所でどうしたの? 迷子にでもなった?」

「僕はそこまで馬鹿じゃありませんよ。これを先輩に届けにきたんです」

 そう言って袋から子供っぽい弁当箱を取り出す。ナフキンにくるまれた弁当箱を見ると、岩崎先輩はあぁと声を上げた。それと同時に、苦笑いを浮かべた。あの子ならしかねない、と思っているような顔をしている。

「なるほどね。公子ならF組だから…。って、直接案内した方がいいかな」

「えっ。でもそこまでしてもらうのも……。しかも授業中のようですし……」

「あぁいいのいいの。私どうせ見学だし。ちょっと居なくなってもバレないよ」

 なんというか、豪快な人だな。と思った。授業中だからという意識はあまりないように見える。この高等部の人は皆そうなのだろうか。いや、先輩とこの人だけな気もしてきた。

 ここまで言ってくれているのだから、無下に断るのも悪いだろう。僕はお言葉に甘えて、案内してもらうことにした。

 

 月光館学園の二階に、先輩がいる教室はあるという。話を聞くところによると、他にも岳羽先輩、伊織先輩もいるそうだ。岳羽先輩がいるというの聞いた僕の心境を包んでいたのは、先輩をちゃんと扱ってくれる、守ってくれる人がいるという安心感だった。

 実際そんなことはないだろうとは思うが、もし先輩がいじめられていたとしても、岳羽先輩なら守ってくれると、確信できている。伊織先輩は少々信用ならない。

 思考の海に使っていたのを見て、岩崎先輩はクスクスと笑って「本当に好きなんだね」と一言。僕はその言葉に返事はしない。わずかながら、顔に熱が集まっているのを感じていたからだ。少しの間、傍から来る微笑ましい視線は消えることはなかった。勘弁してほしい。

「と、ついたよ。ここが2年F組」

 岩崎先輩が教室の前の扉で立ち止まる。見上げると、確かに2年F組と書かれていた。腕時計をチラリと見る。時間は12時50分前。なんとか間に合ったようだ。

「そんなところで立ち止まってたら、出てくる先生の邪魔になっちゃうよ? もう少しこっちによらないと」

 そんな先輩の声と共に、僕は引っ張られ、先輩にすっぽりと抱き抱えられてしまった。さっきの授業の先輩達を見ていただけに、僕の意識が岩崎先輩に向けられるのは早かった。

 優しいような、暖かい匂いが鼻孔をくすぐる。きっと少し前の僕なら耐えられなかっただろう。でも、今は違う。それどころか、こう思っていた。

 ――何かが違う。足りない。と。

 学園全体に響き渡る高音のチャイムが、僕を現実へ呼び戻す。また考え込んでいたみたいだ。僕のこの悪い癖は、いつになったら治るのだろうか。出来れば中学までには治したいところだけど。

「ふぅ……。あれ、岩崎さん。なにしてるの?」

「公子待ちでーす。この子が用事があるらしいのでー」

「ふーん。ってこの子小学生じゃない。そういうのは先生に一声言ってから」

 教室から出てきた先生と岩崎先輩がなにやら話し込んでいた、その時だった。教室の中から甲高い、聞いただけで「失敗したんだな」と分かってしまうような絶叫が響く。それは間違いなく、僕がここまで来るはめになった原因、先輩のものだった。

 一声謝って岩崎先輩から離れて教室を覗く。先輩は両腕で顔を覆い、覆いながらも背中を反って天を仰いでいる。とんでもなく、危ないものだった。反っているせいでいつもは目立たない胸が強調されていて本当に危ない。

 実際、教室の何人かが、そういう目で先輩を見ていた。この手に槍があれば振り回している所だ。

「お弁当、寮に忘れた……!」

 今にも消えそうな、か細い声で先輩は嘆いていた。やっぱり今まで気づいていなかったのか。先輩らしいといえば、とても先輩らしかった。とにかく、一刻も早く、あんなみっともない姿を止めさせなければならなかった。

「なにやってるのよ……。珍しく早起きしたと思ったら」

「やっぱり、はむっちははむっちだったな!」

「そんなに嬉しそうに言わないでよぉぉ……」

 教室に入って、人々をかきわける。その手に持っている子供らしいお弁当箱の中身が崩れないように、慎重に、でも迅速に。先輩達のいる所までは、そこまで遠いものではなかった。

「ん? えっ。ちょ、なんで……」

 岳羽先輩が驚いた表情でそう呟く。今の僕には、その言葉に返事をする余裕はなかった。少し、ほんの少しだけ焦っていたから。

「――先輩、そんなみっともない姿はやめてください」

「えっ。あっ……えっ?」

両腕を顔から退けて、純粋な瞳で僕を見つめる。僕が目の前に表れたのが、あまりにも突然だったからかもしれない。そう思うのも、とても驚いたような、間の抜けた顔だったからだ。

「……これ。届けにきました」

「あ、それ公子のお弁当」

「えっ。あっ、あっ……! お弁当っっ!!」

 手に持っていたお弁当箱を差し出すと、先輩は我が子のように、目に涙を浮かばせながらお弁当箱を抱き抱えた。ただのお弁当箱なのに、なんて大袈裟な反応なのだろう。やっぱり子供らしい。

「じゃあ、天田君はお弁当を届けに?」

「……色々と大変でしたよ。本当に」

 満員電車に揉まれるし、体育でいけない考えをしちゃうし、岩崎先輩にからかわれるし。ある意味、女性のせいで散々な数時間だった。少し黄昏ていたのか、そんな僕を見て岳羽先輩の笑顔は、少しひきつっていた。

「あ、ありがとう天田君! 命の恩人だよ!」

「大袈裟すぎですよ…。たかがお弁当で…」

 先輩は「もう離さないよ~」なんて言って弁当をいい子いい子と撫でている。これはもう子供より酷いかもしれない。

 岩崎先輩のように抱きつかれてたり、近かったりなどは一切なのに、彼女にはなかった、足りなかった物のを感じる。足りないものは、匂いなどではなかったみたいで。少し、頭を悩ませたが、先輩を見て。

 ――あぁ、そうか。これだったんだ。なんのことはない、足りないものに気づいたんだ。岩崎先輩にはなくて当然だった。それはとても当たり前で、空気のような物だったのだから。

 

<愛しさという香り>

<これが言葉に出ることは、一生ないだろう>




終わらせ方が無理矢理なのは承知済み


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