神喰妖影剣ー神機化した付喪神の旅ー   作:陰猫(改)

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第十五話【朽ちた刀の思い】

 ギャラクティックナイトと剣を交えつつ、俺達は互いに空中へと飛翔する。

 幻想郷での基礎的な能力を取り戻した俺は先にも話した通り、違う。

 

 ーーとは言え、ギャラクティックナイトを相手するのは至難の技だ。

 

 俺達は互いに鍔迫り合いをして離れると同時に剣と刀を飛ばした。

 無論、前回の様に飛ばせば、俺にもダメージがある。

 

 だが、今回は人型アラガミだった頃の俺を媒体に作られ、強化された専用の神機がある。

 俺に出来る事をこの神機が出来ない筈はない。

 

 ギャラクティックナイトと俺の飛び道具は互いにぶつかり合って相殺される。

 相殺される度に俺の手の中にある神機が痛みを堪えるかの様にカタカタと震えた。

 

 ーーああ。解っている。

 

 神機だった頃の俺は依姫に救われた。

 ならば、返す義理はあるんだろう?

 

 例え、神機であるその身が朽ちようとも……。

 

 俺は後方まで下がると依姫の前まで来る。

 

「依姫」

「……村正、なの?」

「今は妖刀ムラマサだ。

 そんな事よりもいつまでボーッとしているつもりだ?」

 

 俺はそう言うと神機を正眼に構える。

 

 俺の師であり、共に幻想郷を支えた魂魄妖忌から教わった剣術だ。

 

 そう。俺は思い出した。

 

 幻想郷の守護者として影から支えて来た事も後輩にあたる付喪神の堀川雷鼓の事も全て……。

 

「お前の知る月読村正はもういない」

「それでも、私は……」

「お前がどう思おうと勝手だが、付喪神に戻った俺にそう言った感情は不要だ」

 

 そう告げると神機である俺がカタカタと震える。

 恐らく、否定したかったのだろう。

 

 だが、すまんな。

 

 ただの神機になったお前の代わりは俺には出来ん。

 俺は幻想郷の守護者なんだからな。

 

「解ったら撤退するなり、応戦するなりするんだな」

「……」

 

 依姫はゆっくりと立ち上がると俺の前へと来る。

 

「貴方は穢れ切っていますね?」

「お前達の嫌う地上の存在だからな?」

 

 そう告げると俺は依姫と共に駆け出す。

 

 この周辺に人の気配は存在しない。

 恐らく、ギャラクティックナイトが全て駆逐したのだろう。

 

 つまり、お互いに気にせず、本気が出せるってもんだ。

 

 ギャラクティックナイトも本気らしく目にも止まらぬ速さで迫って来る。

 

「……トリガー……起動」

 

 依姫も本気らしく、アクセルトリガーとか言うバースト化とは異なるオラクル細胞を活性化で俊敏になり、前回の仕返しと言わんばかりに神機を振るう。

 

 次の瞬間、依姫の神機とギャラクティックナイトのランスが砕け散る。

 恐らく、依姫の渾身の一撃だったのだろう。

 

 ギャラクティックナイトは砕けたランスを手に飛翔すると依姫と同時に飛び掛かった俺の攻撃を回避する。

 

『ギャラクティックナイトの損傷を確認!今です!』

「依姫」

 

 俺は依姫の名前を呼びながら神機を放る。

 

「俺の神機を使え」

「え?貴方、何をーー」

「神機のコアは適合者が決まっているってのは解っている。

 だが、そいつはーー月読村正だった俺はお前に使って貰いたいらしい」

 

 俺がそう告げると依姫はしばし考えた後に頷き、そして、俺の神機を手に取る。

 その瞬間、月読村正と綿月依姫の中でエンゲージされたらしい。

 

「……村正。本当に貴方なのね?」

 

 依姫は俺ではなく、俺だった神機を手に涙すると此方を見下ろすギャラクティックナイトを見据える。

 

「……解ったわ。貴方の意思を言葉でなく、心で理解した」

 

 依姫独り、呟くとゆっくりと刀を振り上げ、純白の飛翔する斬擊を放つ。

 ギャラクティックナイトはそれを何故か避ける事も防ぐ事もせずにまともに喰らい、閃光となって空へと消える。

 

 倒したーー訳ではないな?

 

 恐らく、神機となった俺と依姫のエンゲージして思いを込めた一撃がギャラクティックナイトを説得したのだろう。

 俺はギャラクティックナイトの去った空を見上げ、依姫は腰を下ろして項垂れ、嗚咽を洩らしながら神機となった俺を抱えて泣いた。

 

 こうして、ギャラクティックナイトの脅威は去り、残された問題はあと一つとなった。


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