俺はヴェルナーに連れられ、かつて、なんらかの施設があった痕跡のある場所を訪れる。
「ここに君の望むアラガミがいるだろう。
危害を此方から加えない限り、我々を攻撃するでもなく、ある特定のアラガミのみを狩っている。
その姿は多種多様で様々な目撃はされているが、その生態までは解っていない」
ヴェルナーはそう告げると月読村正を手にその先に向かう俺とすれ違う。
そんなヴェルナーは臨戦態勢で歩いていく俺に問う。
「君とあのアラガミの因縁までは聞かないが、確実に強いぞ。それでも行くのかね?」
「まあ、それが約束だからな。それに此方としても野放しって訳にもいかなくてな」
「・・・そうか」
俺はヴェルナーに片手を上げて別れを告げるとヴェルナーは「健闘を祈る」とだけ言って、その場を去る。
俺はそんなヴェルナーが去るのを気配で察知しながら施設跡へと歩いていく。
そして、そいつは現れた。
「よう。初めましてか?それとも久し振りか?」
俺は上半身裸で両腕から異形な刃を持つ依姫にそっくりのアラガミを見詰めた。
「オオオオオオオォォォッッ!!」
ヨリヒメは歌うように叫ぶと下半身のブースターを噴出させて此方に突進して来る。
俺はそれを回避しながらヨリヒメの脇腹を斬ろうとした。
だが、ヨリヒメはバリアーでも張っているのか、月読村正の刃を弾く。
ちと、バリアーは少々厄介だが、まあ、やれない事はないだろう。
そんな事を思っているとヨリヒメは宙を舞い、そのまま、両腕のブレードを展開して近くのアラガミを補食してバースト化して姿を変える。
今度はブースターが出力を上げ、フワフワと漂う女神みたいな姿となった。
なら、此方も対応するとしますかね?
俺は月読村正の力を解放し、宙を舞うヨリヒメと刃をぶつけ合う。
ヨリヒメがブレードで弾幕を張れば、俺がそれを叩き斬り、俺が斬擊を飛ばせば、ヨリヒメがバリアーで弾いたり、ヒラヒラと避けながら凌ぐ。
お互いに決めてになる一撃を与えられないまま、数刻が過ぎたが、お互いに人間ではないのでスタミナによる消耗戦は意味をなさない。
ただ、俺は俺でパターンを覚えた。
加えて、ヨリヒメの弱点も発見出来た。
「貰ったぞ」
均衡極まる死闘に俺はそう告げるとヨリヒメの唯一、シールドが張られていないブースターを狙い、その部位を破壊する。
宙を漂うヨリヒメは落下するとそのまま倒れ込む。
ーーいや、倒れ込んだと思った瞬間、ヨリヒメのブースターが分離し、人間みたいな白い素足になって素早い動きで俺を翻弄する。
俺はそんなヨリヒメの攻撃を月読村正で防ぎながらじっと観察する。
斬って解った事がある。こいつには明確な意思があり、思考する能力がある。
言ってしまえば、こいつは依姫の姿をした人型アラガミだ。
恐らく、豊姫も想定していなかっただろう。
ヨリヒメは更に両腕の刃を分離する。
その姿は凛とした依姫のそれだった。
そして、分離した刀身とブースターが合体し、2メートルほどの刀となってヨリヒメの手に収まる。
ヨリヒメはそれを振るうと俺と同様ーーいや、それ以上の斬擊を飛ばし、周囲を薙ぎ払う。
今のは飛翔して回避してなければ、俺でも危うかったろう。
そんな俺にヨリヒメが同じく宙を舞い、追撃に出る。
だが、俺はそれをオラクルで出来た分身体の刀を飛ばしつつ、俺自身の分身体を飛ばして本体を切り替えてヨリヒメの背後を取る。
分身体を媒介に本体を切り替え、転移する。俺の奥の手だ。
そうして、俺はヨリヒメの背中を月読村正で斬り捨てる。
ヨリヒメは地面に落ち、背中を押さえて苦痛に悶えている。
そんなヨリヒメに俺はトドメを刺す為に月読村正を逆手に落下した。
しかし、ヨリヒメもまた刀を手に俺に振り返る。
そんなヨリヒメに俺はポツリと呟いた。
「古き世を捨て、新しい世界を生きよ」
その言葉にヨリヒメは一瞬、動きを止め、俺の刀に核を貫かれ、そのまま、虚空を見上げて消滅する。