クルペッコとの激戦から一夜、ユウカは突然家に来たナルの声で起きることになる。
「昨日のクルペッコ、やっぱり最後にナルガクルガを呼び寄せてたみたいなんだよ!」
ナルの言葉で寝ぼけているユウカの頭でも昨日のことを思い出してきた。
「それで、そのナルガクルガの討伐がユウカの緊急クエストになっちゃったんだ!」
緊急クエスト、ギルドが文字通り緊急で対応すべき事態と判断した場合に出されるクエストである。
そして、この緊急クエストはギルドマスターがこの依頼を誰に頼むかを指名する。
指名されるハンターは原則として、そのモンスターと対峙しても最悪死ぬことは無いだろうと判断されるハンターに限り、今までのモンスターより一回り格上のモンスターを任されることになる。
これを見事クリアするとハンターとしてのレベルが次のステップに到達していると見なされ、ハンターランクが1つ上がる。つまり、ギルドとしても戦力アップの為の試験を併用しているということである。最も、ギルドマスターの人を見抜く力は並みのものではなく、大抵はクリアすることが出来る実力者を指名する。
ユウカの場合は、ナルが酒の場でべた褒めしていたこともあったが、ギルドマスターが自らの目で見て最後の決断をしたそうだ。
「私のハンターランク2への昇格試験の時も既に野生のモンスター相手だったけど、平時は闘技場で格上モンスターと戦うのが試験らしいよ!」
「あ~聞いたことあります。それにしても、私まだハンターになって日が浅いんですけどもう緊急クエスト何ですか!?しかも、ナルガクルガなんて…」
「人手不足だから仕方無いよ!今回の私は基本的に戦闘に関わらないよう言われてるからアドバイス担当ってことで!それじゃ、夕方出発するからそれまでに寝ときなよ!」
そう告げるとナルはユウカの両親にお邪魔しましたと言い、外へ出ていった。
夕方、ガーグァの荷車に乗り渓流へ向かう。
「今回のナルガクルガは昼間は私達じゃ手の届かないようなところで寝ていて、夜になったら狩りを始める奴らしいからわざわざ相手に合わせてるわけ」
「相手の得意なところで戦うことになるんですか?」
「そういうことになるねー。そして今晩片付けないと村の方へ来るかもしれない。失敗は許されないからね?」
「はい、がんばります!」
夜の渓流は昼に見るそれよりも一層綺麗だった。
しかしそんな景色に気を取れるほどの余裕はユウカには無かった。
いくらクルペッコが呼んでしまったナルガクルガとはいえ、まだ危険度4に指定されるようなモンスターとも戦ったことが無いのにいきなり更に各上のモンスターと対峙せねばならないのだから無理もない。
エリア5
木々の生い茂るエリアではあるが空ははっきりと見える。地表も月明かりがあるお陰で真っ暗というわけではない。
そしてナルガクルガは、二人の足音を既に拾っていた。
「ユウカ避けて!」
ナルの咄嗟の呼び掛けも間に合わず、ナルガクルガの不意打ちをユウカは喰らってしまった。
「ユウカ大丈夫!?」
何気に大型モンスターからの直撃は初なんじゃないか?
と、ナルは心の中で驚いていた。
ユウカが起き上がると、重心を低くしまた飛びかかろうとしているナルガクルガの輪郭がうっすらと見えた。
「ほとんど見えない…これじゃ動きが見えない!」
双剣を手に取り集中するも、目でモンスターを追うのは無理だと判断した。
「とりあえずここじゃ不利だからこっちへ誘き寄せて!」
ナルの指示で、比較的明るいエリア6に誘き寄せた。
「ここなら何とか戦えます!」
ナルガクルガがユウカに切りかかるが、胴体と前足の間を回転してすり抜けた。
「尻尾も気を付けて!」
ナルガクルガの尻尾が横方向からユウカを攻撃してきた。これをナルガクルガの懐に潜り込み回避し、双剣で腹部を攻撃する。
懐に潜り込んでいたせいで、ユウカはナルガクルガが体を大きく半回転し、棘を出した尻尾を地面に叩きつける攻撃に気付けなかった。
「危ないにゃ!」
オトモのメラが渾身の力でユウカを突き飛ばし、尻尾の直撃を避けた。しかしメラが直撃を受け、やむを得ず地面に退散していった。
「っこのぉ!」
ナルガクルガは自らの力で尻尾が地面に埋もれ、急いで抜こうとするのだがユウカがその間鬼神化状態で斬り続けたため、尻尾に傷がついた。
ナルガクルガはユウカの方に振り抜き突撃してきた。
そして1メートル手前まで近付いたところで体を大きく横に回転させ、尻尾でユウカを薙ぎ払おうとした。が、これもユウカは冷静に見切って後ろに回避して見せた。
続いて尻尾を上でグルグルと回し始め、棘を飛ばしてきた。
これを前方に回転して回避したユウカは、ナルガクルガの顔の目の前まで近付き、そのまま斬りつける。ナルガクルガは堪らず鳴き声を上げながら体を仰け反らせた。その隙に再び懐に入り込んだユウカが腹部を徹底的に攻撃する。
先程のこともありしっかり尻尾に警戒していたユウカは、再び尻尾を叩き下ろそうと飛び上がったタイミングで既に回避し始めた。既にユウカの居ない場所に尻尾を振り下ろしたナルガクルガ、また尻尾を抜くのに時間が掛かっていた。この隙にユウカは双剣でひたすら尻尾を攻撃、切断に成功した。
尻尾を切られたナルガクルガは激怒し、耳を塞ぎたくなるほどの咆哮を上げた。
「目が赤く光ってる?むしろ好都合!」
スピードの増したナルガクルガなのだが、目の回りが赤く発光していることが仇となり、より姿を確認しやすくしてしまった。
一瞬力を溜めるため動きが止まったかと思えば、次の瞬間には弾丸のような速さで攻撃を仕掛けてくるナルガクルガ。ユウカの集中力は未だに切れておらず、しっかりと動きを見極めて回避する。
攻撃を避けては次の攻撃までの間に反撃をする。この動作に徹底すること二十分。何回かのエリア移動をしたナルガクルガは最初出会ったエリア5に逃げてきていた。
ナルガクルガは再び咆哮を上げ、怒り状態となる。
「流石に目が赤くなるせいで暗さを生かせなくなることなんて、気付かないか」
目の光を頼りにナルガクルガの攻撃を安全な距離で回避するユウカ、流石に体の隅々まで見えるわけではないので慎重である。
ユウカからの反撃が少ないのでナルガクルガの怒りは早く収まった。
「あーそれ困る!」
ユウカは目の光が消えた地点に音爆弾を放り投げた。
キーンと高い音がエリア一体に響き渡る。当然耳のよいナルガクルガは聞こえており、再び怒り出す。
「計画通り!」
大きな切り株の上に乗ったユウカはそこで音を立てて自分の存在をアピールする。
この音に反応してナルガクルガが突っ込んできた。突っ込んできたが切り株のせいでユウカに攻撃が届かない。
ユウカはナルガクルガの無防備な背中に乗り、背中をナイフでひたすら刺す。
想定外の攻撃にナルガクルガは早く振り落とそうと高く跳ねて背中から地面に落下した。
「ユウカぁ!」
「っくぅあがっ!」
何とかユウカは無事のようだが、全身を強く叩き付けたため戦える状態では無いとナルが思った。しかしユウカは立ち上がった。
お互い今の攻防で消耗している。ユウカの方はナルが回復弾を撃ち込んでくれているため、外面上のダメージは一通り治った。
「メラさん、これあげるから怒りが収まった瞬間にナルガクルガの耳元で鳴らして」
ユウカは復活したメラに音爆弾を渡した。
「わかりましたにゃー」
メラはほとんど無の足音でユウカを睨みつけるナルガクルガに接近していく。
二分ほどお互い一歩も動かず隙を窺っていると、ナルガクルガの怒りが落ち着いてきた。
その瞬間、
キーーーン!
とナルガクルガの耳元であの高い音が響いた。
その音を聞いて苦しそうに悶えている。
「今だぁぁ!」
鬼神化したユウカが最後の力でナルガクルガの頭部に斬りかかった。
ナルガクルガの肉が切り裂かれていく、骨を叩ききりついに脳を双剣が刺したことにより、ナルガクルガは命を絶った。
「はぁ、はぁ、終わった…」
戦いが終わり、いつもの雰囲気に戻ったユウカは脱力し、その場に座り込んだ。
「お疲れ様!まさかこんなに手を出さなくて済むとは思わなかったよ!さっ、素材剥ぎ取って帰って寝よう!」
「はぁ、はぁ……はいっ」
剥ぎ取りが終わると、完全にすることを終えたユウカは安心感から眠ってしまった。
結局自宅までナルが運ぶ間目を覚ますことはなく、目が覚めたのは次の日の朝だった。
一日遅れでギルドに正式な手続きを行い、ハンターランクが2に上がった。
キャラ紹介 メラ
ユウカのオトモアイルー、ユウカからは[メラさん]と呼ばれている。
ユウカはメラルー柄だからとメラと名付けた。
勇敢な性格でピンチの場面でいつも以上の力を発揮する。
新米オトモアイルーでまだまだ練度も低いが、自分を雇ってくれたご主人様の為に影で日々特訓中!
その特訓にはルガーも手伝っているらしいが、オトモアイルーはハンター達にその姿を見せない。