「えぇ!!ユウカが捕食されてる!?急がなきゃ!」
ナルは来た道を全速力で戻った。
ナルが駆け付ける間もギギネブラの捕食行動は続いている。
咥え込まれた時は何とか足を出していたユウカだったが、さらに口を大きく開けたギギネブラに丸飲みにされてしまい、中でもがいていると体内から出てくる毒を入れられてしまった。
ユウカも口の中で何とか武器を持ち抵抗しようとするのだが、体内の分泌液で手も双剣もヌルヌルと滑ってしまい取れない。そうこうしているうちに毒も回り、抵抗が小さくなっていった。
「ユウカを吐き出せぇぇ!」
ここで駆け付けたナルが火炎弾を口に放つが、ギギネブラがユウカを吐き出す様子は無い、天井にぶら下がっているためアイルー達は打ち上げタル爆弾で攻撃を加えている。
このままじゃどうにもならない。そう考えたナルはある奇策を思い付いた。
「ルガー!メラ!ギギネブラの張り付いている部分の天井の部位目掛けてありったけの打ち上げタル爆弾を打って!!」
言われた通り全ての打ち上げタル爆弾を吸着部分の天井に当てると、傷付いた天井が崩れギギネブラが地上に落下した。
「このやろ!まだ吐き出さないか!」
ナルはルガーとメラにギギネブラの口をこじ開けさせ、少し開いた口の中に小タル爆弾を仕込み爆発させた。
さすがのギギネブラも思わず口を大きく開け、その隙にユウカを救出した。
「ユウカ!大丈夫?!」
「うっ…うぅ」
ギギネブラの消化液のせいでユウカの装備は殆どドロドロに溶けていた。頭装備の三度笠に関しては元から存在していなかったようになっている。
「とりあえずこの回復薬グレードを飲んで耐えて!」
ナルは回復薬グレードを飲ませると、ユウカをおんぶし、一度洞窟から撤退しベースキャンプへ向かった。
「頑張ってユウカぁ死ぬんじゃないよぉー!」
走れば大した時間を取らない距離だが、おんぶしてとなるとその倍以上の時間を要してしまった。
定期的に回復薬を飲ませながらようやくベースキャンプに辿り着いた。
「解毒薬は……やっぱりないか」
支給品ボックスに新たにギギネブラ用の物が届いていないか期待したが、何も入っていなかった。
「とにかく、ベッドに寝かせとくか」
ユウカをそっとベッドに寝かせ、何か方法はないか考えた。
「あぁぁぁぁ!どうするよぉぉ!」
考えがまとまらず、頭をかきむしり大声で叫んだ。
「なんじゃ~誰かいるのかいのう?」
「えっ……?」
老人の声がした。その声の方を向くと、赤色の肌の竜人族がいた。
「もしかして山菜じいさん?」
「ああ、昔あったことあるかいのう?わしゃあんたらみたいな可愛い娘さんなら一度見たら忘れないと思うが…」
山菜じいさんはナルとベッドで横になっているユウカとを交互に見ながらそう言った。
「山菜じいさん!なんか、なんか解毒薬とか持ってない!?」
「ん~ちょいとまってなぁ、何だか大変そうじゃのう」
山菜じいさんはゆっくりと荷物を漁ると、何かを取り出した。
「苦虫じゃん!それ頂戴!」
「はいよ、頑張りなさい若者達よ!」
早速ユウカの口に苦虫を突っ込んだのだが、最早口で物を噛むだけの力も意識もなかった。
「ユウカ!何とか噛んでよ!頼むから飲み込んで!」
「口移しで渡したらどうじゃ?」
「口移しで!?…それだ!!!」
ナルは自分の口に苦虫を入れ、噛んだ。
「にっがぁ!」
思わず吐き出してしまいそうな苦味が口の中一杯に広がるが、必死にこらえ、完全に液状になるまで噛み砕いた。
「さぁユウカ、これを飲み込んで!」
ナルの口からユウカの口へ流し込まれた苦虫の液体は、そのまま口から喉には流し込まれなかった。ユウカの顔を上に向けさせ強制的に流し込んだ。
暫くして、ユウカは起き上がった。
「あれ、ここキャンプ?」
「ユウカぁ!良かったぁぁ!ありがとう山菜じいさぁん!」
「ええよええよ(良いもの見せてもらったし)。頑張りなさい若者達よ!」
二人はキャンプを駆け足で去っていった。
「それにしても、ハンターってのはベッドで数秒寝れば傷も毒も全部治るものじゃなかったかのう?」
今時そんなハンターは滅多にいない。
二人は再びギギネブラの元に向かった。
「ナルさん、私に良い考えがあります」
「おっ、なになに~?」
「まずギギネブラを洞窟から追い出します。たしかあの表面のヌルヌルは外では長くは持ちません。再び洞窟に入ろうとしたところをシビレ罠で捕らえ、一気に片を付けます」
「確かにギギネブラは表面の体液が取れるのを嫌って外には出たがらないけど、どうやって外に一度出すの?」
「私が囮になります。私が戦いながら少しずつ洞窟の出入口に向かいます。私は外に逃げ出します。それでギギネブラがこっちに来ないようでしたら、後ろからナルさんが攻撃して追い出してください。入る合図はメラさんに送ってもらいます」
「わかった、今度は捕食されないようにね!私は左側の入り口から入るから!」
「お願いします!」
メラを連れ、正面の出入口からユウカが洞窟に侵入した。
洞窟の上にいたギギネブラはユウカに覆い被さろうと飛んできた。
ユウカは後ろに下がり回避した。
思ったより早く外に向かえそうだと感じたユウカは双剣を手に取り、適度に応戦しながらあたかも劣勢を装い後退していった。
「メラさん、ナルさんに合図を!」
メラは土に潜り合図を知らせにいった。
それと同時にユウカは武器を持ちながら洞窟の外に撤退した。
ギギネブラは追おうとしたが、外に出る直前で止まってしまった。
「さっさと外に出たまえこの引きこもり!」
ナルがギギネブラのケツ叩いて…ではなく火炎弾で撃って外に追い出した。
外で待っていたユウカが即座に攻撃を仕掛けギギネブラを転倒させた。
転倒させたギギネブラをナルとユウカが攻撃している間にオトモアイルー二人でシビレ罠を設置、雪の中に隠した。
起き上がったギギネブラは、体液の多くが雪に付着してしまった為、早く洞窟に戻ろうと急いで入り口目掛けて走っていった。
ギギネブラの悲鳴が聞こえた。
見事、シビレ罠に掛かったのだ。
二人の持てる力の全てを注ぎ込んだ。
ユウカはただひたすら双剣をギギネブラの首に斬りつけていた。
ギギネブラの首の大動脈がユウカの双剣により切断された
ギギネブラは数秒後絶命した。
「ふぅ、お疲れ様~早く帰って温泉に浸かろうか~ねぇユウカ」
「はい、そうですね…」
ユウカは疲労困憊していた。
先程までは戦闘中だった為気付かなかったが、一度は捕食されかけた体は既に限界だった。
戦いが終わった安心感でユウカは眠りについてしまった。
「しゃーない。また運びますかね~」
極寒の地での想定外の戦いは終わった。
次にユウカが目覚めたのはユクモ村の温泉だったという…………
キャラクター紹介
山菜じいさん
身長120cm程
何十年も前から危険なフィールドで山菜を取っている竜人族のじいさん。年齢不詳。
伝説のハンターもこの人にお世話になったことがあるが、山菜じいさんは覚えていない。が、昔傷だらけだった彼がベッドに横になると忽ち回復した姿を同じ凍土で目撃したことがあり、そのことはおぼろ気ながら覚えている。